不動産投資、空室が埋まらない原因は?物件の収益性を高める5つのステップ

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皆さん、こんにちは。不動産投資の中で、月々のキャッシュフローを多く獲得でき、比較的早く資産規模を拡大できる、ということで人気が高いのが「1棟物件投資」です。

そこで、今回は、収益用不動産を取り扱う不動産会社での私の実務経験をベースに、主に1棟物件投資において空室リスクを減らして、収益性を高めるポイントを取り上げていきます。

この記事で取り上げているポイントは、区分マンション投資における空室リスク対策にも活用できますので是非参考にしてみてください。

目次

  1. 不動産投資で空室が発生する3つの主な原因
    1-1.賃貸ニーズは高いものの、物件価格が割高な駅の物件を購入する
    1-2.物件の家賃や設備が周辺相場・ニーズと合っていない
    1-3.管理会社がリーシングに強くない
  2. 管理会社と連携して、空室を減らし収益性を高める5つのステップ
    2-1.【ステップ1】リーシングに強い管理会社と募集戦略を共有する
    2-2.【ステップ2】管理会社と空室が発生する原因を特定する
    2-3.【ステップ3】入居者が住みたいと思う部屋を作る
    2-4.【ステップ4】賃貸仲介営業マンに直接アプローチをする
    2-5.【ステップ5】賃貸仲介営業マンから物件を入居者に提案してもらう
  3. 賃貸仲介営業マンと広告料について
  4. まとめ

1.不動産投資で空室が発生する3つの主な原因

不動産投資をするうえで注意しておきたいリスクの一つに「空室リスク」があります。空室リスクとは、保有している物件に入居者が入らず、空室となってしまい、家賃収入が入ってこない状況となるリスクを言います。

不動産投資は、入居者が家賃を支払ってくれれば比較的手間がかからず、「不労所得」というイメージがありますが、そう考えられていた時代は既に過去のものとなっています。

国内の総住宅数(2018年10月1日時点)

国内の総住宅数(2018年10月1日時点)総務省統計局が2019年に発表した「平成30年住宅・土地統計調査(住宅数概数集計 結果の概要)」を見てみますと、2018年10月1日時点における国内の総住宅数は6242万戸で、2013年と比較して、179万戸の増加となっています。

空き家数及び空き家率の推移

空き家数及び空き家率の推移そして、居住世帯のない住宅のうち、「空き家」は846万戸と、2013年と比較して26万戸(3.2%)の増加となっています。総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.6%であり、2013年から0.1ポイント上昇して、過去最高となっています。

少子高齢化によって、日本は人口の減少が大きな社会問題となっています。その一方で、アパートやマンション等の新築物件は毎年どんどん建設されています。つまり、需要と供給に大きなギャップが生まれているのです。

この供給過剰の状況の中、不動産投資家が自身の保有する物件に空室をつくらず、高い入居率で運営していけるかは、空室が発生する原因を知り、いかに対策をしていくかにかかっています。

前述した国内の人口の減少、国内全体での物件の数そのものの増加といったマクロ的な環境以外に、この記事では特に、不動産投資で空室が発生する主な原因として、次の3つの点を挙げたいと考えます。

  • 賃貸ニーズは高いものの、物件価格が割高な駅の物件を購入する(エリアの問題)
  • 物件の家賃や設備が周辺相場・ニーズと合っていない(物件の競争力の問題)
  • 管理会社がリーシングに強くない(パートナーの問題)

私は、賃貸ニーズの高いエリアで、入居者が必要とする設備がある物件を保有して、適切な家賃を設定し、リーシング(入居者募集)に強い管理会社に賃貸管理をお願いできれば、空室リスクを低く抑えることができると考えています。

1-1.賃貸ニーズは高いものの、物件価格が割高な駅の物件を購入する(エリアの問題)

これから不動産投資を始めたい、という投資家の方から、「不動産投資はどのエリアでやるのが良いでしょうか」、という類の質問を多くもらいます。

収益用でも居住用でも物件を購入する際、エリアの選定はとても重要です。リクルート住まいカンパニーが発表した「SUUMO住みたい街ランキング2021関東版 ~住みたい街(駅)~」調査によれば、恵比寿駅や吉祥寺駅、中目黒駅等誰もが知っている駅名が上位を占めており、その傾向は毎年ほとんど変わりません。

しかし、私の経験上、不動産投資をするうえでは「投資対象エリア」と「自分が住みたいエリア」は完全に分けて考えた方がうまく行くケースが多いと考えています。

恵比寿駅や吉祥寺駅、中目黒駅は、今後も人気ランキング上位に入り続けると予想していますが、物件価格は獲得できる家賃が高いこととエリアの希少性もあり、相対的に割高になる傾向があります。

この場合、稼働率は高まりますが、キャッシュフローはあまり出ないでしょう。また、融資を活用して物件を購入する場合、ローン返済等でキャッシュフローを気にして設定家賃を間違えると、知名度が高い人気駅であっても賃貸は付かなくなる可能性が高まります。

では、不動産投資をするうえではどのような駅を選べば良いのでしょうか。あまり知られていない狙い目の駅として、例えば、リクルート住まいカンパニーが発表した同調査で、「順位が上昇した街ベスト10」の9位に川口駅があります。川口駅は、ARUHIが発表した「本当に住みやすい街大賞2021」では1位を獲得しています。

川口駅は、JR京浜東北線が使えて、東京駅や新宿駅、渋谷駅に30分程度でアクセス可能です。再開発も進んでおり、駅前にはタワーマンションも多く建設されています。アリオ等の大型商業施設や商店街も多いので、生活もしやすい環境と言えます。

隣駅の赤羽駅は東京都内ですが、川口駅は埼玉県内となり、都心主要駅のアクセスが便利なうえに賃料相場が相対的に低いのが人気の理由であると考えられます。

居住用エリアで人気の高い物件は価格も高くなりがちです。ただし、物件価格が2倍でも、家賃が2倍取れるかと言えば、必ずしもそうなりません。人気エリアの物件をコレクションしたい、というのであれば話は別です。しかし、空室リスクを抑えた、賃貸ニーズの高いエリアの物件を割安で購入する方が投資効率は高く、キャッシュフローも出やすいと言えます。

首都圏以外の地方で物件を探す場合には、前述した視点に加えて、人口動態や最寄り駅の1日の乗降客数等も参考にして探すことが重要です。

1-2.物件の家賃や設備が周辺相場・ニーズと合っていない(物件の競争力の問題)

空室を避けるためには、物件の家賃や設備が周辺相場や入居者が求めるニーズと合っているかどうかを確認することが必要です。

全国賃貸住宅新聞が発表した「人気設備ランキング2020」では、コロナ禍では、人気設備の傾向はコロナ前と比較して少し変動があるように見えます。エントランスのオートロックは変わらず高い人気ですが、TVモニター付きインターフォンの順位が上がっているのはコロナ禍で家に滞在する時間も増えている中、防犯意識が高まっていると読み取れます。

また、ランキングの中で、最も順位を上げたのが、ファミリー物件での宅配ボックスの設置ニーズです。Amazon等のオンラインショッピングのニーズは今後もますます増えてくると見られ、単身者向け物件でも重視されやすいポイントと言えます。最近ではアパート等の1棟物件でも後付けで設置できる宅配ボックスが登場しているので、設置を検討してみると良いでしょう

インターネット設備に関しては注意が必要です。コロナ前からインターネット無料はランキングでは上位でした。つまり、あって当たり前になってきた感があります。コロナ禍では、社会人のテレワーク、学生のオンライン授業等で利用頻度が急速に高まってきており、無料であることに加えて、今度は通信速度が課題になってきています。

経験がある方も多いかと思いますが、インターネットは無料であっても通信速度が低すぎると快適に仕事をすることは困難になります。賃貸仲介会社の知人に確認をしてみたところ、実際にどのくらいの通信速度が出るのか問い合わせもあるようで、今後同様の問い合わせは増えてくるだろう、とのことでした。

空室を極力避けるためには、これらのランキング上位のニーズ対策の重要度は高いと思われます。

1-3.管理会社がリーシングに強くない(パートナーの問題)

不動産投資をするうえで、管理会社は重要なパートナーです。物件の家賃収入を1円でも多く上げ、稼働率を少しでも上げるためには、いかに空室を少なくするかを戦略的に考えなくてはいけません。

不動産投資家の中には、修繕計画を綿密に立て、コストを下げることに終始する人をよく見ますが、まずは企業経営で言うところの売上高(=家賃収入)を確実に確保することが肝要です。

売上高を上げる仕組みとして、リーシングに強い管理会社を見極め、常日頃から関係値を高めていくことができるかが、引きも切らない入居者募集、ひいては高い入居率につながっていきます。

2.管理会社と連携して、空室を減らし収益性を高める5つのステップ

不動産投資、その中でも特に1棟物件投資は、受け身の対応では決してうまくいきません。1棟物件投資は、「賃貸不動産経営」です。その業務内容を理解して、プロの管理会社と強力に連携することが、空室を減らして物件の収益性を高めることにつながります。

不動産投資家の役割は、1棟物件の維持管理に必要な各業務を管理会社に依頼し、満室経営に向けてマネジメントすることです。そこで、ここでは、空室を減らして収益性を高める5つのステップを解説します。

2-1.【ステップ1】リーシングに強い管理会社と戦略を共有する

どのような管理会社に管理を委託するか、によって不動産投資の収益は変わってきます。一番に見るべきはやはり管理実績です。1棟物件の管理にしろ、区分マンションの管理にしろ、業界では管理戸数は3,000戸を超えていることが一つの目安になります。業歴も確認するべきですが、実際にどれだけの戸数の物件を管理しているかが重要です。

管理会社はどこも、まずは管理戸数1,000戸を超えることを当面の目標としています。1,000戸までは力技で何とかなることもありますが、私の経験上、3,000戸を超えるとなると組織として機能をしていないと入居者のニーズに応えることはまずできません。

管理業務は、管理戸数が多ければ多いほど、スケールメリットが効いてきます。管理戸数が多い管理会社では、リフォーム工事の発注単価も低くなり、パートナー企業が積極的に良い商品の紹介をしてくれるようになります。そして、管理戸数が5,000戸を超えると業界でも一目置かれ、10,000戸を超えるとそのエリアでも有数の管理会社として認識されます。

会社の経営方針にもよりますが、管理戸数が増えてくると、様々な管理業務(入居者募集・入居者対応・清掃等の建物管理等)等の窓口を1人でこなすことは難しくなってきますので、セクション(課・チーム)を分ける等、明確に役割分担している管理形態を取っている会社もあります。

また、1棟物件の場合には、管理物件の入居率が90%を超えているかどうかが任せて良い管理会社であるかどうかの一つの目安(指標)になります。入居率の計算方法は、その算出の仕方によって異なりますので注意が必要ですが、主に1棟物件を取り扱っている管理会社で管理戸数が3,000戸以上、入居率が95%を超えていたら優秀であると言えます。

そして、管理会社に管理を委託するうえで、重要なポイントがリーシングに力を入れているかどうかです。管理戸数が多い管理会社はたいていリーシングに注力しています。リーシングの実務面で留意するべきポイントは、入居者付け(仲介業務)を自社で行っているかどうかです。

不動産投資家としては、ともすると、管理会社が店舗を持っていて自社で直接入居者付け(仲介業務)をした方が効率良いと思いがちです。しかし、管理会社の役割は、仲介手数料を獲得することではなく、不動産オーナーの利益を最大化し、空室をなくすことです。

リーシングで大事なことは、入居者を募集する窓口を幅広く持つことです。管理会社が自社で店舗を持っていると、仲介手数料のノルマ(店舗・個人)獲得の観点から、物件を自社の店舗ネットワークだけで囲い込みしようという意識が働き、結果として募集の窓口が自社だけに狭められてしまうのです。

前述したとおり、全国的にも空室率が高まっており、そして今後は、部屋が大量に余る時代です。そのような時代の中、不動産投資家から預かった部屋を自社の店舗ネットワークの中で囲い込んで、果たして想定どおりの条件で決まるのか疑問があると思います。

私が勤務していた不動産会社はグループに管理会社を持っていましたが、自社では店舗を持っておらず、賃貸営業部のメンバーが毎日50~60件飛び込みで店舗を訪問し、空室となった部屋(商品)の紹介に駆けずり回っていました。実績を出している担当者の携帯電話にはひっきりなしに店舗から連絡が来ており、多い日は1日に30件以上は着信履歴があったほどです。

この管理会社は、自社では店舗を持たず、空室となった部屋を広く賃貸仲介会社に紹介することで、私が在籍時に管理戸数は5,000戸を超えていましたが、入居率も常に95%を超えていました。地方郊外の物件も多く取り扱っており、1棟物件の管理会社で、この実績はエリア内でも屈指であったと記憶しています。

2-2.【ステップ2】管理会社と空室が起きている原因を特定する

さて、どれほど素敵な物件を保有していても、入居者を見つけることができなければ賃貸経営は成り立ちません。アパートのほか、区分マンションの一室でも、やり方を間違えてしまうと空室は長期(3ヶ月以上)にわたり、収益率が低い物件となってしまいます。

空室が起きている原因を分析すると様々なことがわかってきます。ほとんどの不動産投資家は、空室が発生していることを認識しても、その原因を調査分析して対策までしているケースは少ないものです。

入居者の退去の原因がわかれば、退去を減らして長期的な入居につなげるため、不動産オーナー側から管理会社に提案することもできます。入居者確保に向けた不動産投資家の積極的な姿勢は今後さらに重要になってきます。

部屋が埋まらないのには必ず理由があります。管理会社をとおして、賃貸仲介会社へヒアリングをかけてもらう必要があります。時間があればヒアリングは自身で行うことも可能ですが、要領を得ない質問や偏った質問は大きな先入観を生んでしまうこともあります。自身でヒアリングをする場合には、管理会社から事前にコツを教えてもらうのも良いでしょう。

空室が発生し、それが続いてしまう原因には様々なものがあります。主には下記の4つの原因が考えられます。

  • 賃貸仲介会社に部屋の認知がされていない
  • 相場に合っていない家賃が設定されている
  • 部屋(商品)の差別化がされていない(=特徴が見えない)
  • 入居者のニーズに合った間取りや設備ではない

ヒアリングの結果、上記が原因であると考えられる場合には、管理会社と連携して早急に対策を講じる必要があります。

2-3.【ステップ3】入居者が住みたいと思う部屋を作る

賃貸仲介営業マンに、「入居者にあの部屋を紹介したいな」、と思ってもらうためにも、入居者が住みたいと思う部屋を作ることは重要です。入居者に気に入ってもらうためには、適度なリフォームを実施して、清潔感のある部屋を作る必要があります。

さて、リフォームには、汚れ等をきれいにする原状回復工事と、部屋の資産価値を向上させるグレードアップ工事があります。物件が古い場合、もしくは、古くなってきた場合には、単に原状回復工事をするだけではなく、入居者が住みたいと思えるような付加価値を付けることも重要です。

実際に私が体験した話をします。コロナ禍では、テレワークが浸透しました。毎日、会社に通勤する必要がない一方、毎日、同じ部屋(空間)にいると気が滅入ってくることもあります。ある入居者から管理会社に、「部屋のクロスが真っ白で息がつまりそう。模様変えできないか」、と連絡がありました。

このとき私は管理会社から連絡を受け、管理会社と相談をしたうえで、壁の一部をアクセントクロスにすることを提案しました。入居者は、毎日テレワークをしていたのですが、「一日中、パソコンと白いクロスを目の前にして参ってしまっていた」、とのことでした。私は入居者の生の声になるほど、と思ったものです。

アクセントクロスをうまく使うと、単調になってしまいがちな部屋も一気におしゃれになります。文字どおり、部屋のアクセントになるように、色や柄を選んで、壁の一部分を張り替えれば簡単に完成します。

リフォームに関しては、単に費用をかければ良いというものではありません。家賃収入に応じて、物件価格が決まりますので、将来売却を視野に入れている場合には、投資対効果を考慮してリフォームする必要があります。

管理会社は、業務量が非常に多いので、リフォーム業者に部屋を視察してもらい、見積もりをもらう際、いちいち部屋を見ないケースも多くあります。できれば、投資家自身で部屋を確認して、必要なリフォームを見極めることが重要です。

若干費用がかかっても、物件の付加価値を上げてみたい場合には、システムキッチンの導入を検討してみるのも良いでしょう。前述の「人気設備ランキング2020」では、単身者向け物件でも、コロナ禍で部屋にいる時間も増えるため、システムキッチンのニーズが上がっています。

2-4.【ステップ4】賃貸仲介営業マンに直接アプローチをする

入居者が住みたいと思える部屋を用意できたら、いよいよ幅広く募集をして部屋(商品)を売り込みます。

管理会社にREINS(レインズ)に部屋情報を掲載してもらった後は、マイソク(賃貸募集のチラシ)を作成して、管理会社からお付き合いのある賃貸仲介会社に一斉にメールやFAXをしてもらいます。物件が所在する最寄駅はもちろん、ターミナル駅も重要なターゲットになります。

例えば、西武池袋線の江古田駅に物件があった場合、江古田駅の周辺の賃貸仲介会社をはじめ、隣の駅の桜台駅や、都営大江戸線の新江古田駅周辺の賃貸仲介会社にもアプローチをします。実務上は、ターミナル駅である練馬駅や池袋駅からの客付けがメインとなりますので、練馬駅や池袋駅の賃貸仲介会社にも積極的にアプローチをしていきます。

次に、管理会社から、取引実績のある(顔が見える)賃貸仲介営業マンに電話で部屋を紹介してもらいます。私も不動産会社勤務時に、部屋の紹介をしたことがあります。メールやFAXだけではなく電話を使うと、営業マンと直接の面識がなくても、話が弾むこともあり、その流れで部屋を紹介してもらえたりします。

そして、最も重要なのが賃貸仲介会社への直接訪問です。この手間を惜しんでしまっては、空室は埋まらないと断言できます。私が勤務していた不動産会社の賃貸営業部のメンバーは1日に50~60件店舗訪問をしたと書きましたが、やはりこの効果は絶大で、あっという間に空室が埋まっていったことを鮮明に覚えています。

エリアによっては、毎週、賃貸営業部のメンバーが、名刺や資料を置いていくので、賃貸仲介会社(店舗)の担当者も社名を覚えてくれます。例えば、私が勤務していた不動産会社は、当時北関東(特に、埼玉県や栃木県)で、その社名を知らない不動産会社はないと言えるくらい徹底的な営業活動を展開していました。

このように管理会社が賃貸仲介会社を直接訪問することができれば理想ですが、投資家自身も時間があれば、賃貸仲介会社を訪問してみましょう。空室が埋まらない原因の一つに、賃貸仲介会社に部屋の認知がされていないことにありますが、実際に訪問をすることでそれが良くわかることがあります。また、賃貸仲介会社の担当者と直接話をすることで、自身の部屋の実力値を知るきっかけにもなります。

私が実践している自身で訪問する際のやり方をご紹介します。まず、物件が所在するエリアにある賃貸仲介会社をGoogle Mapで調べて、全てノートに書き出し訪問します。管理会社と事前に確認をして、管理会社と取引実績がない会社を訪問する、エリアの有力会社を中心に訪問する等、優先順位を付けて訪問するとメリハリが出ます。店舗によって定休日もまちまちですので事前に調べてから訪問することを検討してみましょう。

1棟物件は中々入居が決まりづらい部屋があるかと思いますが、訪問時に営業マンに「空室が埋まらないのはなぜか、どのようにしたら空室が埋まるのか」をヒアリングします。家賃が相場と見合わないからなのか、入居者ニーズのある設備が設置されていないからなのか、理由を教えてくれます。

毎日、実際に入居者に部屋を案内している営業マンの意見はとても説得力があります。自身の部屋に問題点があった場合、例えばそれがインターネット環境等の設備の問題であれば、管理会社と早急に相談をして対策を練ることが重要です。

直接訪問をする場合、店舗の店長さんと面識を持つことができれば良いですが、運悪く不在のこともあります。そこで私は、その店舗で一番仲介実績を挙げている営業マン(トップ営業マン)の名前を教えてもらって、後日再度アプローチをする等、顔が見える営業を心掛けていました。やはり、人は電話やメールでのアプローチだけの場合と、実際に直接顔を見てアプローチされる場合では、印象の残り方が大きく違ってきます。空室を1日でも減らしたいときには、不動産投資家が自ら直接訪問をするのも有力な手法であると考えます。

2-5.【ステップ5】賃貸仲介営業マンから物件を入居者に提案してもらう

入居者が住みたいと思える部屋を作り、賃貸仲介営業マンを直接訪問しても、まだ、それだけでは空室は埋まりません。

なぜなら、ここまでは、他の不動産投資家も管理会社と連携して実施しているからです。そして、同じような部屋は市場に沢山あります。では、どのようにしたら良いかと言えば、最後は賃貸仲介営業マンから入居者に、自身の部屋(商品)を提案してもらう必要があります。

そしてこれが最も重要なステップです。わかりやすい事例をお話します。私は、電機メーカーに勤務していたことがあります。会社のエンジニアは日々、ユーザーに喜んでもらうために、商品をできるだけ小さくしたり、軽くしたり、様々な機能を付けることに腐心していました。

例えば、デザインも洗練され、新機能が付いたパソコンを作って世に送り出すために、何十人、何百人のエンジニアが血の滲む努力をします。皆、自社の商品が一番優れている、と思うわけです。他社にはない優れた機能が付いたパソコンであったらユーザーは皆、そのパソコンを購入する可能性が高いです。

しかし、実際には自社よりもスペックが劣る競合他社の商品が選ばれることは珍しくありません。家電量販店に行って観察すればわかりますが、ユーザーはショップの店員の提案(意見)によって決めていることがあるためです。パンフレットには魅力的な新機能の説明がされていますが、実際には店員の口頭による説明が購入の決め手になることが少なくありません。

賃貸不動産経営も同様です。数ある同じような部屋の中から、営業マンに自身の部屋を選んでもらい、入居者に提案をしてもらわなければ入居申込みは入りません。

では、営業マンに部屋を提案してもらうにはどのようにすれば良いのでしょう。それは、営業マンになるべく手間がかからないようにすること、そして広告料(業界用語で「AD」と言います)を効果的に活用すること、に尽きます。

営業マンはとにかく時間に追われています。多忙な営業マンに気持ちよく部屋を提案してもらうためには、営業マンにスムーズに動いてもらう環境づくりが重要です。例えば、契約書の作成を管理会社が代行してくれる、鍵が物件にあるので入居者に案内しやすい(鍵を管理会社まで取りに行かなくて良い)、等は基本的な対策です。

また、マイソク(賃貸募集のチラシ)に必要な情報がわかりやすく記載されていることもポイントです。仲介手数料や広告料の具体的な記載がなければ、営業マンは案内する気になりません。

また、物件の外観写真や部屋の間取り等が大きく、わかりやすく掲載されていれば営業マンだけでなく、入居者もイメージしやすいでしょう。問い合わせ先に、担当者の携帯電話番号まで記載があれば、チャンスを逃すことも少なくなります。

そして、営業マンが物件を提案し契約に至った場合、どのくらいの売上が立つのかが重要です。それが入居者から支払われる仲介手数料とは別に不動産投資家サイドから支払われる広告料なのです。

3.賃貸仲介営業マンと広告料について

宅地建物取引業法では、賃貸仲介会社は入居者の物件成約時に、入居者とオーナーから、合計で家賃1ヶ月分を上限として仲介手数料をもらえる旨が規定されています。

法律で規定されているのですが、実際の賃貸市場では入居者からもらう1ヶ月分の報酬では会社を維持することが難しいのが現状です。そこで実務的には、賃貸仲介会社はオーナーからもらう1ヶ月分の報酬を広告料として収受しているのが現状です。

ここで私自身の部屋探しの体験をお話します。インターネット上で住みたいと思った部屋を見つけ、賃貸仲介会社に問い合わせをして仲介して欲しい旨を伝えましたがはぐらかされ、提案されたのはまったく別の物件だったのです。

私が借りたい部屋はまだ残っていたので、なぜ別の物件を提案するのかと聞いてみたところ、「実入り(報酬)が少ないので、別の部屋を提案しました。実状をわかって欲しい」とまで言われました。

つまり、私が借りたかった部屋をオーナーから預かっているのは別の管理会社で、この部屋を仲介したところで、仲介手数料は1ヶ月分。それであれば、仲介手数料とは別に広告料をもらえる自社で預かっている(管理している)部屋を提案して、家賃の2か月分をもらいたかった、ということでした。

このように宅地建物取引業法の仲介手数料の規定は実務上機能していないと言えます。仲介手数料とは別に、「広告料」という名目で対価を得ることができなければ、入居者に部屋を提案しない、と言っているのと同じです。

首都圏では、最寄り駅から距離がある、もしくは差別化が難しい物件では広告料を3ヶ月分(時期によっては4か月分)支払わないとそもそも提案をしてもらえない、という物件も存在します。物件購入時にレントロール等を確認するだけではわからないことが多く、広告料の相場を熟知していないと空室を避けることはできません。

ほぼ似たようなスペックの部屋で、早期に入居者が決まる部屋とそうではない部屋では、この広告料が影響している可能性が高いと考えられます。特に、オーナーがファンド等の法人の場合、賃貸市場を熟知していますので、広告料を相場以上に支払って早期に空室を埋める傾向があります。このようなときに、広告料の仕組みを知らない不動産投資家は大きく出遅れてしまうリスクがあり、注意を要します。

賃貸仲介営業マンは、給与が歩合制で定められていることが多く、広告料が出ない物件には積極的な営業活動を行わない可能性があります。逆に言うと、あまり差別化ができていない物件でも相場以上の広告料を支払えれば営業マンは積極的に提案してくれるのです。場合によっては、空室期間の大幅な短縮と相場以上の家賃で決まる可能性もあります。

まとめ

不動産投資には、空室リスク以外にも天災や金利上昇、建物の劣化等様々なリスクがあります。空室率の上昇が見込まれる昨今、不動産投資家としては、これらのリスクに適切に対応しなければ入居者の確保はままなりません。

これまで見てきたように、空室リスクを回避するということは、企業経営で言うところの売上を上げる、確保することにつながります。コスト削減等の交渉も大事ですが、経営はまずは、売上を上げないことにはどうしようもありません。

そして、不動産投資(賃貸不動産経営)をする以上は、利益を出し続けなければいけません。将来の個人年金として考えている投資家も、直近のキャピタルゲインの獲得を考えている投資家もこれは同じです。

ここでは、戦略を立てて、パートナー(管理会社)と連携して商品(部屋)を作り、パートナー(賃貸仲介会社)に販売(仲介)してもらう、という一連の流れを解説しました。これからの大空室時代を乗り切るために、少しでも参考になれば幸いです。

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依田泰典

不動産投資家。公認不動産コンサルティングマスター。情報経営イノベーション専門職大学客員教授。
・ソニーにて、ITソリューション関連の法人営業や企画・マーケティング業務に従事(MVP受賞)。ソニー在籍中、株式投資(信用取引)等幅広く金融商品を運用するほか、東京23区の分譲マンションをメインに不動産投資を実践。
・ソニー退職後、不動産会社(ベンチャー企業・東証上場企業)にて、収益用不動産(1棟物件)の仕入・販売、事業開発(不動産ファンド)、経営企画・広報業務に従事。
・独立後は、東証プライム市場上場グループ企業等の社外取締役、顧問、アドバイザーとして活動(営業・資金調達支援)。その後、仲間とIT関連のスタートアップを創業。
・米系PEファンドのKohlberg Kravis Roberts(KKR)への出資をはじめ、国内では不動産テック等IPOを目論む複数のスタートアップ(ミドル・レイターを含む)への出資のほか、複数のVCファンド(シード・アーリーメイン)にLP出資。
・宅地建物取引士(宅建マイスター)、貸金業務取扱主任者、賃貸不動産経営管理士、ビル経営管理士、競売不動産取扱主任者、社会保険労務士、行政書士、情報処理技術者等の資格を保有。
・趣味は街の散策と食べ歩き。YouTube鑑賞(BreakingDown、YOASOBI)。漫画(島耕作、キングダム、ザ・ファブル)。格闘技(合気道有段者)。坂道ファン(推しは櫻坂46山崎天)。
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