新時代のマンション投資とは?長嶋修氏に聞く将来性・リスク・物件の選び方

※ この記事は株式会社さくら事務所より提供された情報をもとに作成しています

日本はいま、本格的な人口減少社会、少子・高齢社会問題など多くの課題が山積しています。日本銀行は、2024年3月19日の金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除を決定しました。金融政策は正常化に向けて新たな段階に突入したのです。

今後の日本でマンション投資を検討するにあたり、「いま、不動産投資市場で何が起きているのか」「今後、不動産市場はどうなっていくのか」、そして投資家は「どのようにしていけばよいのか」などは、今後注視しておきたい大きなポイントです。

今回、国内を代表する不動産コンサルタントである、さくら事務所の創業者・会長である長嶋修氏に、新時代のマンション投資について伺いました。

話し手プロフィール:株式会社さくら事務所 会長 長嶋修氏

    1967年生まれ。東京都出身。不動産デベロッパーの支店長として幅広く不動産売買業務全般を経験後、1999年「人と不動産のより幸せな関係」を追求するべく、不動産業界初の個人向け不動産コンサルティングを実施する、さくら事務所を設立。2008年日本ホームインスペクターズ協会を設立し、初代理事長に就任。不動産売買のノウハウにとどまらず、政策提言にも言及するなど精力的に活動を展開(国土交通省や経済産業省の各種研究会・委員会委員を歴任)。テレビ・新聞などメディア出演多数。講演や出版・執筆活動をとおして、「第三者性を堅持した不動産コンサルティング」の第一人者としての地位を築く。2024年6月現在、YouTubeチャンネル「長嶋修の『日本と世界の未来を読む』」(登録者数6.8万人)を運営。不動産投資・政治経済・金融全般について情報発信。ドラマ「正直不動産」の監修も一部担当。著書に、『不動産格差』(日本経済新聞出版社)、『マンションバブル41の落とし穴』(小学館)など。

目次

  1. マンション投資の将来性は?
  2. 失敗を避けるための投資用マンションの選び方
  3. 管理状態によってマンションの賃料・売買価格は大きく変わってくる
  4. 管理・自然災害がマンション投資のリスクに
  5. ワンルームマンション投資のポイントは「機動力」
  6. 新築マンションも中古マンションも基本は「キャピタルゲイン」狙い
  7. 投資詐欺に合わないために必要なのは「知識」と「信頼できるエージェント」
  8. インタビュー後記

1.マンション投資の将来性は?

Q:止まらないインフレ、34年ぶりの円安、金融政策の転換…。いま、目まぐるしい速さで世の中が動いています。そのような中で、投資家から人気のある「マンション投資」に将来性はあるのか教えてください。

「2013年の政権交代以降、マンション価格は上昇を続けています。賃料の上昇は遅行性があるため少し遅れていますが、これからさらに上がっていくでしょう。とくに昨今は顕著にインフレが進んでおり、今後は通貨の価値が相対的に下がっていくはずです。インフレに強い代表的な資産が不動産となりますが、中でもマンションは、利便性、資産性、流動性、どの観点から見ても将来性のある投資先といえるのではないでしょうか。」

2.失敗を避けるための投資用マンションの選び方

Q:高額な投資となりますが、失敗を避けるためのマンションの選び方を教えてください。

「マンション投資は将来性があるとはいえ、今後、資産価値が上がるマンションは15%ほどと考えます。大半のマンションはだらだらと価値が下がり続け、下位15%ほどのマンションはほとんど価値がなくなっていくでしょう。

投資マンションを選ぶうえで重要になってくるのは、1にも2にも立地です。表参道や赤坂、青山などのブランド立地を除けば、都市部は駅徒歩10分圏内、都市郊外なら徒歩7分圏内程度が許容範囲になってくるのではないでしょうか。これ以外のエリアは、売るのも貸すのも極端に難しくなります。駅徒歩15分で利回り10%のマンションと駅徒歩3分で利回り5%のマンションであれば、私なら後者を選びますね。」

「再開発や企業誘致などがあるエリアも将来性があると思います。品川駅港南口の開発中はほとんど不動産価格が動きませんでしたが、完成後、オフィスビルが林立し、人の往来が増えてから急激に価格が上がりました。多くの方は『現状』を見て投資判断するものです。都心の湾岸エリアも、開発当初は見向きもされませんでした。2001年に東雲で販売された『W Comfort Towers』の今の価値は、分譲時の2倍どころではありません。」

3.管理状態によってマンションの賃料・売買価格は大きく変わってくる

Q:マンション投資で立地以外にも見るべき大事なポイントを教えてください。

「同様の立地や築年数のマンションでも、管理状態によって賃料や売買価格は大きく変わってきます。とはいえ、管理状態の詳細まではすぐに確認できないので、まずは外観やエントランスなどの共用部の清潔感を見るといいと思います。賃貸するにも売却するにも、第一印象は非常に重要です。

検討段階が進んだところで、大規模修繕履歴や修繕積立金額なども確認できるといいですね。大規模修繕は、一般的に12年から15年に1度。たとえば築20年だったら、多くのマンションが2度目の大規模修繕に向けて費用を積み立てている時期です。積立金額が十分かどうか判断するのは難しいですが、1㎡当たりおおむね200円/月ほど積み立てられていれば大きな問題はないと思います。」

4.管理・自然災害がマンション投資のリスクに

Q:今後のマンション投資のリスクは、特にどのようなところにあると考えられますか?

「投資物件の比率が高いマンションは、管理不全に陥ってしまう可能性があります。自分が住んでいないものだから、関心も低い、お金も出したくないということですね。たとえば、修繕積立金の値上げなどの普通決議は、総会出席者の1/2以上の賛成がなければ可決できません。関心の低い区分所有者ばかりでは、必要な決議も成立しにくくなってしまいます。

私の知っている投資家さんは、所有しているすべての区分マンションで管理組合の理事長を務めています。これほどの気概があれば別ですが、管理を他人任せにすると、健全な維持・管理ができなくなってしまうおそれがあります。

また、やはり自然災害はマンション投資のリスクになってきますが、自然災害そのもののリスクに加え、災害リスクが資産価値に与える影響についても考慮すべきでしょう。今はまだ自然災害リスクが担保評価や査定額に影響することはありませんが、織り込まれるようになるのはそう遠くないと思います。」

5.ワンルームマンション投資のポイントは「機動力」

Q:よくワンルームマンション投資は儲からないと聞きます。実際のところはどうなのでしょうか? また、利益を出すためにはどのような工夫が必要でしょうか。

「基本的に、コンパクトなマンションほど賃料の平米単価は高いです。小さいほうが投資効率が高いということになりますが、住まいにはやはり居住性が求められます。コロナ禍以降は家で過ごす時間が長くなったこともあり、20㎡を切るコンパクトマンションの人気が落ちました。ワンルームであっても、最低でも20㎡、個人的には25㎡以上はあったほうがいいと思いますね。

ワンルームマンションの入居者は単身者ですから、2人向け、3人向けの物件と比べて回転が早くなります。退去後は首尾よく必要な修繕を実施し、入居者募集をかけなければ、すぐに数ヶ月間、空室になってしまいます。ワンルームマンション投資は『機動力』がポイントになってくるでしょう。」

6.新築マンションも中古マンションも基本は「キャピタルゲイン」狙い

Q:現在の不動産市況では、新築マンションへの投資は避けるべきでしょうか。

「今、新築マンションで表面利回り5%を超える物件はないと思います。中古マンションであっても、せいぜい5〜6%程度ではないでしょうか。いずれにしても、毎月支払う管理費や修繕積立金、管理委託費に加え、一定の空室率があると仮定すると、そこまで手残りは多くありません。

区分マンション投資は、どちらかといえば資産価値の維持ないしは上昇を期待して投資するのがいいと思います。新築マンションは中古マンションと比べると割高という見方もできますが、賃料を高めに取れるというメリットもあります。どのような投資目的であれ、新築マンションを購入した人はこの10年、キャピタルゲインで大きく儲けています。今後も、新築も中古も好立地の物件は価格が落ちる要素はありません。中古、新築のどちらがいいかは強く意識しなくてもいいと思います。」

7.投資詐欺に合わないために必要なのは「知識」と「信頼できるエージェント」

Q:投資詐欺にあわないための不動産会社の選び方について教えてください。

「不動産会社が言っていることが正しいのか間違っているのかを判断するには、一定の知識が必要です。投資や不動産に関する書籍を100冊ほど読んでいただくのが理想ですが、それが難しければ、物件選びより先に信頼できる担当者、エージェントを探してみてください。

今はスマホで物件探しができる時代ですので、どうしても物件ありきで不動産投資を始める方が多いと思います。しかし、物件選びを先行するとなると、両手取引をするために囲い込みをしているような不動産会社に当たってしまうおそれがあります。両手取引は近年、不動産売買に限らず、企業の売買でも問題になっています。

投資初心者の方はとくに『自分の利益をどれだけ守ってくれるのか』という観点で担当者、エージェントを探していただきたいですね。信頼できる方から信頼できる担当者を紹介してもらうのも良いと思います。」

8.インタビュー後記

さくら事務所は、国内で初めて「個人向け不動産コンサルティングサービス」を事業として展開し、金融機関や事業会社と資本関係を持たず、中立・公正で、質の高い不動産コンサルティングを全国で提供しています。

以前、筆者が実際にさくら事務所のコンサルティングを受けた時には、消費者目線を大切にした、第三者としての専門的な調査やアドバイスをいただけました。これから、日本ではますますインフレが進み、マンション価格も高くなっていくのだろうと予想しますが、長嶋氏からはあらためてマンションの資産価値における立地の大切さを学ばせていただきました。今後の日本各地の再開発情報も目が離せません。

また、投資用マンションの物件選びでは「管理を買え」とよく言います。不動産投資をするにあたり、株式投資などの金融商品と同一にとらえてしまい、購入してから売却するまで一度も物件を見たことがないという投資家の方も少なくありません。

しかし、管理状態によって賃料だけでなく売却価格まで変わってくることがあります。販売図面だけではわからない、現地を確認することの重要性をあらためて学ばせていただきました。

不動産投資というと、どうしても物件だけに目がいきがちですが、不動産会社がどのような想いで顧客と向き合っているかをきちんと確かめ、信頼できる担当者を探せると良いと思います。マンションの資産性や具体的な選び方についてより深く学びたい方は、新著を参考にされてみるのも良いでしょう。

マンションバブル41の落とし穴(長嶋修 著)


発売前からAmazon売れ筋ランキングの5つのカテゴリーで1位*を獲得した本書では、素人にはなかなか見極めが難しいマンションの資産性を落とす様々な「落とし穴」を具体的な事例とともに提示。「“新時代”に資産価値が落ちないマンション購入術」をマンションのプロが伝授する一冊となっています。(*2024年5月10日付)

Amazonリンク:https://amzn.asia/d/04uHxss

株式会社さくら事務所

株式会社さくら事務所は、国内で初めて「個人向け不動産コンサルティングサービス」を事業として展開した不動産コンサルティング会社です。金融機関や事業会社と資本関係を持たず、中立・公正で、質の高い不動産コンサルティングを全国で提供しています。住まいにおける「かかりつけのお医者さん」のようなイメージで、不動産の購入を希望する消費者目線を大事にしながら、第三者として専門的な調査やアドバイスを行っています。一級建築士やマンション管理士、宅地建物取引士などの専門家が多数在籍しており、のべ利用者数は66,000組(2024年6月時点)の実績があります。

【関連サイト】株式会社さくら事務所

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依田泰典

不動産投資家。公認不動産コンサルティングマスター。情報経営イノベーション専門職大学客員教授。
・ソニーにて、ITソリューション関連の法人営業や企画・マーケティング業務に従事(MVP受賞)。ソニー在籍中、株式投資(信用取引)等幅広く金融商品を運用するほか、東京23区の分譲マンションをメインに不動産投資を実践。
・ソニー退職後、不動産会社(ベンチャー企業・東証上場企業)にて、収益用不動産(1棟物件)の仕入・販売、事業開発(不動産ファンド)、経営企画・広報業務に従事。
・独立後は、東証プライム市場上場グループ企業等の社外取締役、顧問、アドバイザーとして活動(営業・資金調達支援)。その後、仲間とIT関連のスタートアップを創業。
・米系PEファンドのKohlberg Kravis Roberts(KKR)への出資をはじめ、国内では不動産テック等IPOを目論む複数のスタートアップ(ミドル・レイターを含む)への出資のほか、複数のVCファンド(シード・アーリーメイン)にLP出資。
・宅地建物取引士(宅建マイスター)、貸金業務取扱主任者、賃貸不動産経営管理士、ビル経営管理士、競売不動産取扱主任者、社会保険労務士、行政書士、情報処理技術者等の資格を保有。
・趣味は街の散策と食べ歩き。YouTube鑑賞(BreakingDown、YOASOBI)。漫画(島耕作、キングダム、ザ・ファブル)。格闘技(合気道有段者)。坂道ファン(推しは櫻坂46山崎天)。
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