国土交通省は2024年4月1日に「不動産情報ライブラリ」のサービス提供を開始しました。不動産情報ライブラリをうまく活用すれば、不動産投資や自宅購入などの際に、これまでより正確な情報を元に物件売買や修繕などの判断ができます。
今回の記事では、不動産情報ライブラリの基本的な概要や機能、そして主な活用法について紹介します。この記事を参考にして、不動産情報ライブラリを有効活用しましょう。
目次
- 不動産情報ライブラリとは?
1-1.不動産情報ライブラリの基本的な機能
1-2.不動産情報ライブラリが生まれた背景 - 不動産情報ライブラリの機能を紹介
2-1.価格情報
2-2.地形情報
2-3.防災情報
2-4.周辺施設情報
2-5.都市計画情報
2-6.人口情報 - 不動産情報ライブラリーの活用法
3-1.不動産投資における物件選び
3-2.住宅購入時の情報収集
3-3.物件売却時の検討
3-4.災害リスクの把握や防災対策 - まとめ
1 不動産情報ライブラリとは?
不動産情報ライブラリは、国土交通省が2024年4月1日から運用を開始した、不動産に関するさまざまな情報を無料で確認できるサービスです。これまでの課題の一つであった不動産における情報の非対称性を減らし、健全な取引や意思決定が可能となる機能が備わっています。
1-1 不動産情報ライブラリの基本的な機能
不動産情報ライブラリは、PCもしくはスマートフォンを含むモバイル端末でアクセス可能なサービスです。具体的には、以下のような情報を閲覧できます。
- 価格:地価公示、都道府県地価調査、不動産取引価格情報、成約価格情報(
- 周辺施設等:学校、小・中学校区、市町村役場等、医療機関、福祉施設など
- 防災:洪水浸水想定区域、土砂災害警戒区域等、津波浸水想定 など
- 都市計画:用途地域、防火・準防火地域、立地適正化区域
- その他:将来推計人口(500mメッシュ;2050年まで(5年間隔))など
それぞれの情報は地図上で参照する地域を検索したり、地図上で情報を表示させたりできます。たとえば「洪水浸水想定区域」を選択すれば、地図上には想定される浸水の深さに応じて色分けされます。
また、取引価格や地価についてはエクセル上でデータをダウンロードすることも可能です。市場動向や取引動向を分析するうえで有効な情報の一つとなるでしょう。
1-2 不動産情報ライブラリが生まれた背景
不動産に関する情報は、一元的な情報の把握が困難であることがしばしば課題とされてきました。不動産投資や自宅売買の際などには、たとえばつぎの情報を参考にします。
- 不動産取引価格情報
- 地価公示・都道府県地価調査
- 周辺の公共施設の立地や学区
- ハザードマップなど災害リスク
不動産情報ライブラリが公開される前は、以上の情報ソースはばらばらでした。たとえば、地価に関する情報は国土交通省ですが、成約価格情報は「全国指定流通機構連絡協議会(REINS)」が管理しています。
また、学区やハザードマップは自治体ですが、公共施設や災害リスクに関する情報には国土交通省で管理しているものもあります。このようにデータが散逸した状態では、投資や取引の際に必要な情報をすべて取り入れるハードルが高く、意思決定するのは困難となっていました。
個人としては情報が不足したまま取引を強いられることになるため、不動産取引業者などの間で情報の非対称性が発生します。このような情報の非対称性は、不動産市場の健全な発展を阻害し、また個人が不利益を被る一因となる恐れがあるのです。
このような課題を解決するために、国土交通省はこの度「不動産ライブラリ」を公開し、誰でも簡単に不動産取引において必要な情報を一元的に把握できる仕組みを構築したのです。
※出所:国土交通省「不動産情報ライブラリの概要について」
2 不動産情報ライブラリの機能を紹介
不動産情報ライブラリでは、つぎのような情報を地図上で視覚的に捉えたり、データ集計したりできます。
- 価格情報
- 地形情報
- 防災情報
- 周辺施設情報
- 都市計画情報
- 人口情報
以上の多様な情報を、チェックボックスで選択することにより必要なものに絞って地図上に表示可能です。価格情報については、エクセルで任意の地域・期間のデータをダウンロードすることもできます。
2-1 価格情報
不動産情報ライブラリでは、以下の3つの価格情報を入手できます。
- 地価公示・地価調査価格
- 不動産取引価格情報
- 成約価格情報
地価公示は、国土交通省が地価公示法に基づいて集計・公表しているデータです。地価調査価格は、同法に基づいて都道府県が発表しています。いずれも網羅性や信頼性の高さが特徴である一方、実際の取引に基づく数値ではない点に留意が必要です。
不動産取引価格情報は、取引当事者のアンケートに基づいて集計されるデータです。実際の取引価格が反映されたデータである点は貴重ですが、アンケートの回答に基づいたものである点には、信頼性については留意が必要です。
成約価格情報は、全国指定流通機構連絡協議会(REINS)が持つ不動産の取引価格情報を、匿名性を持たせながら加工して集計したものです。実際の取引価格が反映されている点で、取引状況を捉えるうえで有効なデータとなります。
以上の複数パターンの価格情報を一元的に入手できるため、これまで以上に精緻に不動産市況を把握できるでしょう。
2-2 地形情報
陰影起伏図、土地条件図、大規模盛土造成地マップを地図上に表示できます。陰影起伏図は、土地の起伏がある部分を陰影で表現した図です。
土地条件図は、山地、台地・段丘、低地、水部、人工地形などといった地形分類を色分けしたものとなります。最後に大規模盛土造成地マップでは、谷や斜面に盛土した大規模な造成宅地が表示されます。
2-3 防災情報
つぎのような災害リスクや防災関連の情報を地図上に表示できます。
- 洪水浸水想定区域(想定最大規模)
- 土砂災害警戒区域
- 津波浸水想定
- 高潮浸水想定区域
- 避難施設
- 災害危険区域
- 急傾斜地崩壊危険区域
- 地すべり防止地区
従来は情報ソースが自治体と国土交通省にまたがっていましたが、不動産情報ライブラリを活用すればその土地の災害に関する情報が確認できます。
2-4 周辺施設情報
次のような、さまざまな公共施設などの位置を地図上に表示できます。全てを表示できるのはもちろん、必要な施設に絞って表示することも可能です。
- 保育園・幼稚園等
- 小学校区/中学校区/学校
- 市区町村村役場及び集会施設等
- 図書館
- 医療機関/福祉施設
- 自然公園地域
購入を検討している物件や保有物件の周辺施設を一目で確認できます。
2-5 都市計画情報
都市計画法に基づく都市計画に関する情報をまとめて確認できます。
- 都市計画区域
- 区域区分(市街化区域/市街化調整区域/市街化を抑制すべき区域)
- 用途地域(住居、商業、工業など市町村が定める地域)
- 高度利用地区
- 防火・準防火地域
- 地区計画
- 立地適正化計画
これらの情報は、建築可能な建物の種類や周辺の建造物の状況、容積率や建ぺい率などの制限などに影響を与えます。不動産売買の契約書にも明記される重要情報であり、価格決定にも大きな影響を与えます。
2-6 人口情報
以下のソースにおける人口情報を示します。
- 国勢調査(500mメッシュ/人口)
- 将来推計人口500mメッシュ
- 駅別乗降客数
直近の人口情報である国勢調査に加えて、将来の推計人口を把握できるのが特徴です。さらに、駅の乗降客数も確認でき、駅周辺の発展度合いの参考となります。
3 不動産情報ライブラリーの活用法
不動産情報ライブラリーは、不動産をとりまくさまざまなシーンで有効活用できます。ここでは、次のシーンでの活用法を紹介していきます。
- 不動産投資における物件選び
- 住宅購入時の情報収集
- 物件売却時の検討
- 災害リスクの把握や防災対策
3-1 不動産投資における物件選び
不動産投資における物件選びや立地選びでは、不動産情報ライブラリの情報の多くが役立ちます。価格情報は購入費用を見積もったり、購入可能な物件の割安・割高を判断したりするのに有効です。
また、地形や公共施設などを元にした周辺環境の特徴を確認でき、その地域の現在の人口を確認したり、将来の人口予測などを立てることができます。最寄り駅の利用者数は、都市の発展度合いの指標のひとつとなるでしょう。
都市計画の情報からは、容積率や建ぺい率などの制限や、建築可能な建物を把握できます。制限が厳しければ、それだけ不動産価格の抑制要因となるでしょう。投資用の物件選びでは、多様な情報収集が必要となりますが、不動産情報ライブラリによってWeb上で集められる情報の多くを一気に見つけられるようになりました。
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3-2 住宅購入時の情報収集
住むための住宅を購入するときにも、不動産情報ライブラリの情報はさまざまな点から役立ちます。周辺の公共施設、特に学校や役所、医療機関などは住む場所を検討するうえで重要な判断材料となるでしょう。購入を検討している地域の災害リスクを把握して、立地選びや防災対策に活用できます。
自宅を注文住宅で新築する場合には、都市計画情報も有効です。計画によって決まる建ぺい率や容積率などが、プランニングの重要な制約条件となるからです。
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3-3 物件売却時の検討
価格情報は、投資用物件や自宅を売却するときにも役立ちます。地価や取引情報を確認すれば、物件売却によって得られる収入の見通しを立てられます。また、不当に割安な価格で売却するのを避けることも可能です。
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3-4 災害リスクの把握や防災対策
住んでいる場所の災害リスクを把握するうえでも、不動産情報ライブラリが役立ちます。不動産情報ライブラリは、これまで散逸していた災害関連の情報を一元的に捉えられるのが特徴です。
津波や浸水、土砂崩れや火災など、自分が住む場所を取り巻くリスクをまとめて把握して、防災対策に役立てましょう。また、防災対策の一環として、周囲の避難所も合わせて確認できます。
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4 まとめ
不動産ライブラリが公開されたことで、不動産取引において重要性の高い情報が一元化されました。情報の集約により、価格の不透明性や個人と専門家の情報の非対称性が改善すると期待されます。正しい情報のもと、個人はより適正価格で不動産取引ができるようになります。不動産市場の健全な発展にもつながるでしょう。
不動産ライブラリは、投資家や住宅購入検討者、自宅保有者、物件売却を検討している方など、さまざまな方に役立つ情報を提供するデータベースとして機能すると期待されます。
伊藤 圭佑
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