高齢者を受け入れるアパート経営のポイントは?サポートが手厚い不動産会社も

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日本では近年高齢化が進行していて、今後人口の減少とさらなる高齢者の割合の増加が想定されます。高齢者の入居需要をうまく取り込むための工夫することが、健全なアパート経営を維持するためのひとつの有効な方策といえます。

今回の記事では高齢者を受け入れるためのアパート経営のポイントについてまとめました。また後半では、オーナーのさまざまなニーズに応えられるサポートの手厚い不動産会社についても紹介します。高齢者に配慮したアパート経営の方法を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

目次

  1. 高齢者を受け入れる重要性
    1-1.人口の減少と高齢化率の上昇
    1-2.社会的インパクトをもたらす取り組みという側面も
  2. なぜ高齢者の受け入れを躊躇する業者がいるのか?
    2-1.孤独死のリスク
    2-2.意思能力を喪失するリスク
    2-3.事故のリスク
    2-4.家賃滞納のリスク
  3. 高齢者の受け入れをスムーズにするための対策
    3-1.物件のバリアフリー化
    3-2.みまもりサービスで孤独死の予防・早期発見
    3-3.孤独死保険で金銭的な損害をカバー
    3-4.連帯保証人・保証会社の確保
  4. 高齢者を受け入れるアパート経営に強い不動産会社
    4-1.シノケンプロデュース
    4-2.アイケンジャパン
  5. まとめ

1 高齢者を受け入れる重要性

高齢化が進む日本において、高齢者のアパート入居を受け入れるのは経営の持続性と社会性を高めることができる施策です。まずは、高齢者をアパートで受け入れる意味合いについておさらいしましょう。

1-1 人口の減少と高齢化率の上昇

日本は2000年以降高齢化が急激に進行しています。2000年時点では、65歳以上の高齢者の割合は17.4%でしたが、2020年時点では29%に達しています。一方で、日本の総人口はゆるやかな減少トレンドに変化しています。

日本の人口・高齢者率の推移


※出所:e-Stadt政府統計の総合窓口「年齢(各歳)、男女別人口(各年10月1日現在)-総人口、日本人人口(2000年~2020年)

人口が減少すれば、アパートの入居需要の総量も減少するため、アパートオーナーにとって人口減少はリスク要因のひとつです。このような社会構造の中で入居者獲得のチャンスを高めるためには、高齢者に対応したアパート経営をおこなうのが有効な対策となります。

1-2 社会的インパクトをもたらす取り組みという側面も

賃貸住宅で高齢者を積極的に受け入れる取り組みは、社会的な貢献にもなります。

高齢者は収入の低下、住宅ローン組成の相対的な難易度の上昇、健康面・体力の衰えなどを理由に、若年層と比べて転居や住宅購入に制約がある方が少なくありません。そのうえで、高齢者の受け入れのリスクが高いと考えて、高齢者の入居に消極的な不動産業者も一定数存在します。

生活に支援が必要な高齢者なら、サービス付高齢者向け住宅(サ高住)に住むという選択肢がありますが、高齢者の増加と医療技術の進歩により「健康に生活できる高齢者」も増加すると考えられます。誰もが安心して生活できる世の中を形成することは、より一層重要な社会課題となるでしょう。

高齢者の受け入れ積極化は、現時点では課題が残る高齢者の住居提供に貢献できるという点で、SDGsへの貢献の一環とみることができます。公益社団法人 全国賃貸住宅経営者協会連合会でも高齢者を含む住宅確保要配慮者の入居促進が、SDGsの取り組みのひとつとして掲載されています。

【関連記事】少子高齢化で注目される「サ高住ファンド」の仕組みは?投資のメリット・デメリットも

2 なぜ高齢者の受け入れを躊躇する業者がいるのか?

令和2年の(公社)全国宅地建物取引業協会連合会による調査「住宅確保要配慮者への居住支援の取組みについて」では、仲介業者等による高齢者の賃貸住宅の斡旋について、全体の56.1%が「②高齢者世帯の諸状況により判断している」、11.5%が「③消極的である」、さらに24.8%が「④行っていない」と回答されています。

一定数の業者が高齢者であることにより個別判断をしている、もしくは高齢者の受け入れに消極的・行っていないという結果から、やはり高齢者は若年層より住居確保のハードルが高いと懸念されます。

仲介業者やオーナーが高齢者の受け入れを躊躇する理由について確認しておきましょう。

2-1 孤独死のリスク

孤独死や事故のリスクを懸念して高齢者の受け入れに躊躇するオーナーや仲介業者は少なくありません。残りの寿命が相対的に短い高齢者は、どうしても自宅内で亡くなる可能性が高くなります。

孤独死の発見が遅れると、遺体の腐敗が進んで物件に損害を与えるリスクがあります。特殊清掃のコストがかかるうえ、状況によっては事故物件扱いとなり、次の入居で家賃などを譲歩せざるをえなくなります。

また、遺品と賃貸借契約の相続手続きが課題の一つとなる場合もあります。部屋に残された入居者の所有物と賃貸借契約はすべて相続対象の資産となるため、相続人がいる場合は勝手に処分したり契約解除したりできません。相続でもめるようなことがあれば、処分に手間と時間がかかるケースも想定されます。

逆に相続人がいない場合や相続放棄された場合は、残った私物を特殊清掃や不用品回収を通じて処分しなければなりません。

2-2 意思能力を喪失するリスク

意思能力を喪失するリスクも、多くの仲介業者やオーナーが懸念するリスクのひとつです。高齢者は、加齢による判断能力の衰えや認知症の発症などのリスクが想定されます。これらの症状が進行して意思能力を喪失すれば、賃貸物件に入居するうえでさまざまな弊害が懸念されます。

まず、そもそも契約内容を理解できないまま契約してしまい、契約自体が無効となるリスクです。賃貸契約において、高齢者の意思能力有無の判断は仲介業者が行わなければなりません。しかし、実際のところ意思能力の有無を正確に判断するのは容易ではないでしょう。

さらに、契約時には健常でも、年数を経るなかで意思能力を急速に喪失するケースも少なくありません。そうすると、自宅を忘れることによる徘徊、カギなど重要物の紛失、周辺住民とのトラブルなどの原因となるおそれがあります。

2-3 事故のリスク

物件の構造が高齢者向けになっていないことから、高齢者の募集を躊躇するオーナーや業者もいます。

身体の衰えが進む高齢者は、若年層であれば問題なく生活できる物件でも、不便に感じたり、危険性が高かったりするケースが存在します。たとえば、物件内の居室内や共用部分のちょっとした段差を超えるのが大変だったり、転倒して事故につながったりするおそれがあります。便利なはずの宅配ボックスも、共用部分から自室に荷物を運ぶのが大変で有効活用できない可能性もあるでしょう。

重大事故が発生したときに、物件構造が原因であると疑われれば、物件を所有するオーナーの責任問題となるリスクもゼロとはいえないでしょう。そのようなリスクを懸念して、高齢者の入居を制限する方がいます。

2-4 家賃滞納のリスク

家賃滞納を懸念する仲介業者やオーナーもいます。高齢者のなかには、生計を年金のみに頼っていて、ゆとりのある生活を送るのが困難な方もいるためです。さらに、意思能力の喪失により、家賃支払いの義務を失念するおそれもあります。

高齢者が家賃滞納を引き起こした場合、若い方と比べて強制退去の執行が難しい場合があります。そうなると、家賃は回収できないのに退去もしてもらえないという問題に直面してしまうのです。

家賃の滞納があれば、不動産経営の収支悪化の原因となります。さらに、強制退去のハードルが高くなるおそれもあることから、始めから高齢者の入居に躊躇する方も少なくないのです。

3 高齢者の受け入れをスムーズにするための対策

ここまで紹介した高齢者の入居に関するリスクを減らすためのポイントについて紹介します。

近年は管理会社や保険会社など不動産経営と関連をもつ法人が、高齢者受け入れをスムーズにするための対策を行っています。具体的な対策についてそれぞれみて行きましょう。

3-1 物件のバリアフリー化

第一に、賃貸物件をバリアフリー化させるのが有効です。段差の軽減や風呂場でのヒートショック事故回避のための室内の断熱設備の強化、滑りにくい床など高齢者でも安心して住める対策を検討しましょう。

これから物件購入もしくは新築をするなら、あらかじめバリアフリーに配慮した物件を検討されてみるのも良いでしょう。すでに物件を所有しているなら、リフォームやリノベーションの際にバリアフリー化を検討することもできます。

上層階に階段以外のアクセスを持たせるのが難しいなら、たとえば1階だけをバリアフリー化するのもひとつの方法といえます。

3-2 みまもりサービスで孤独死の予防・早期発見

孤独死自体の発生や、発見遅れを予防する対策・サービスを複数の管理会社や警備会社/ガス会社などがおこなっています。

警備会社では、以下のような付帯サービスで高齢者の孤独死を防ぐ対策を行っています。物件のセキュリティ維持のために利用する方は、合わせてこれらのサービスも加入するとよいでしょう。

  • HOME ALSOKみまもりサポート |ALSOK(綜合警備保障株式会社)
  • みまもり安否確認通報サービス|有限会社インターフェース
  • みまも~る|東京ガス株式会社
  • 「つながりプラス」|株式会社こころみ

また、管理会社などがつぎのような設備・サービスを通じて孤独死を予防する取り組みもみられます。

  • センサーによる異常感知|異常発生を検知し、早期発見につなげる
  • 通報機器の設置する|入居者自身が異変に気づいたら通報できる仕組み
  • 定期的な訪問・電話相談|訪問時に応答がなければ迅速対応が可能
  • ガス・水道の使用量の監視|ガスや水道の使用状況から異常発生を検知

3-3 孤独死保険で金銭的な損害をカバー

孤独死保険に加入して、万が一入居者の孤独死で受けた損失をカバーするのも有効な対策のひとつです。孤独死保険は、契約対象の物件で孤独死が発生したときに保険金が下りる仕組みのです。

原状回復費用や特殊清掃、事故物件扱いになったときの減額家賃の補填などに役立ちます。孤独死保険には入居者側が加入するものと家主として加入するものがあります。

家主が加入する保険では、保険料が家主負担となりますが、減額家賃まで補填してくれる商品がある、家主が保険請求できるなどの特徴もあります。少々コストを掛けてでも孤独死の損失リスクを抑えたいなら、家主加入の孤独死保険を利用するのも一案です。

3-4 連帯保証人・保証会社の確保

家賃の滞納については、連帯保証人もしくは保証会社を設定してリスクを軽減しましょう。借主を保証する方がいれば、本人が家賃を支払えなくなっても保証相手から請求できます。

借主に、経済的に自立した親戚や親しい知人などがいるなら、連帯保証人の設定を検討しましょう。子どもなど近親者であれば、契約時や緊急時の支援をお願いできる可能性があります。連帯保証人が見つからないなら保証会社を利用するのも一案ですが、年齢が高いと保証を断られるケースもあるため、注意が必要です。

【関連記事】高齢者向け物件の「家賃債務保証」の仕組みは?オーナー側の申請手順や注意点も

4 高齢者を受け入れるアパート経営に強い不動産会社

今回紹介するシノケンプロデュース、アイケンジャパンは、どちらも自社開発の投資用アパートを販売しています。物件管理も一貫対応していて、物件開発・管理の双方から手厚いサポートが期待できるのが特徴です。

4-1 シノケンプロデュース

シノケンの不動産投資セミナー
シノケンプロデュースは、土地の選定から企画、設計、施工、引き渡し後の賃貸管理まで一貫したサービスを提供するアパート建築会社です。一般投資家向け賃貸住宅経営のパイオニアとしても知られており、アパート供給棟数は自社施工で7,000棟を超えています。「賃貸住宅に強い建築会社ランキング」(全国賃貸住宅新聞)の「年間アパート開発棟数部門」では、9年連続No.1の実績があります。

2023年3月末時点で、グループ会社のシノケンファシリティーズがの管理戸数は47,000戸以上(2023年12月末時点)、入居率98.56% (2023年年間平均入居率)となっています。このような入居率の高さは、5,000店舗以上(2024年5月時点)の仲介業者と提携し、良好な関係を築いていることも要因の一つです。

自社で物件デザイン・開発が可能、高齢者向け住宅の事業経営も

シノケンプロデュースでは、基本的に自社開発物件を投資用アパートとして販売しています。自社でデザイン・新築済みの物件を販売するだけでなく、オーナーのニーズに基づくアパートのプランニング・新築も可能です。

今回紹介したような高齢者受け入れを積極化するなら、同社と共にバリアフリーに配慮した物件を提案すれば、柔軟にニーズに沿った物件をデザインしてもらえるでしょう。

シノケンプロデュースのグループ会社ではサ高住、高齢者向けの運営も行っています。これらのノウハウを活かして、高齢者の方でも安心して住めるアパートの建設が可能です。

管理を一任できるので安心

シノケングループでは、物件の一括管理も手がけています。入居者の管理や家賃回収、入居者及び近隣住民とのコミュニケーションも円滑に行ってくれるのが特徴です。退去者が出たときの原状回復もシノケンが適切に対応してくれます。

4-2 アイケンジャパン

株式会社アイケンジャパンアイケンジャパンは、「堅実なアパート経営」をモットーに「グランティック」「レガリスト」などのアパートブランドを全国で展開する不動産会社です。2023年12月末時点で、アパート開発棟数1257棟の実績があります。

賃貸管理の実績として9,136戸(2023年12月時点)の管理を行っており、入居率99.3%(2023年年間実績)となっています。オーナーの負担が大きく、効果が一時的なフリーレントや家賃の値下げを行わずに高い入居率を維持しているのも特徴です。

利便性の高い土地での新築を重視

アイケンジャパンの物件は原則として、さらに駅徒歩15分以内の好立地での開発を中心としています。利便性の高い土地に、それぞれの街の特性を踏まえて柔軟な発想でアパートを新築します。公共交通が使いやすいアパートは、自動車の運転や移動がしづらくなる高齢者の方にとっても住みやすい物件となります。

オーナー業務を一任して負担を軽減

アイケンジャパンは、自社が販売した物件の管理も手がけています。さまざまなオーナー業務を一任できるため、負担を減らし安心してアパート経営が可能です。家賃の集金や退去後の清掃・原状回復などに対応しています。入居者とのコミュニケーションやクレーム対応なども代行してくれます。24時間体制で入居者をサポートしてくれるため、高齢者の方が住む物件でも安心です。

4 まとめ

高齢化社会で人口減少が進む日本において、賃貸物件に高齢入居者を積極的に受け入れることが経営の安定性を高めることにつながります。また、高齢者の方が安心して住める環境をつくっていくことは、社会課題の解決にもなります。

現状では、高齢者の方が住むリスクが意識されがちですが、保険や管理サービスの進化により、複数のリスクは対策可能になっています。今回紹介したアパート経営会社のように、サポート体制が充実した不動産会社に相談するのも一案です。

人口減少社会での住みやすさ・生きやすさを高めるためにも、今から高齢者の受け入れ体制を整えていくことはとても大切です。

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伊藤 圭佑

資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。 新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。