遺産分割協議書は、遺産分割協議で相続人全員が合意した相続の内容を記載した書類です。
相続財産に不動産が含まれる場合、遺産分割協議書はどのような手順で作成するのか、書き方はどうなるのかお困りの方は多い事でしょう。
本記事では、不動産が含む相続で遺産分割協議書を作る7つのステップと注意点を解説していきます。
※本記事は2022年3月時点の情報に基づいて書かれています。国税庁の最新情報など、ご自身でもよくお調べの上でご判断下さい。
目次
- 相続財産に不動産がある場合に遺産分割協議書を作るステップ7つ
1-1.相続開始・遺言書の有無を確認
1-2.相続財産を調査・把握・評価する
1-3.相続放棄・限定承認の手続き(3ヶ月以内)
1-4.遺産分割協議
1-5.遺産分割協議書を作成
1-6.遺産を分配する
1-7.相続税の計算・申告・納付(10ヶ月以内) - 遺産分割協議の注意点
- まとめ
1.相続財産に不動産がある場合に遺産分割協議書を作るステップ7つ
相続開始から遺産分割協議、遺産分割協議書の作成方法、相続税の申告・納付まで7つのステップで解説していきます。
- 相続開始・遺言書の有無を確認
- 相続財産を調査・把握・評価する
- 相続放棄・限定承認の手続き(3ヶ月以内)
- 遺産分割協議
- 遺産分割協議書を作成
- 遺産を分配する
- 相続税の計算・申告・納付(10ヶ月以内)
1-1.相続開始・遺言書の有無を確認
相続は相続財産を残した人(被相続人)が亡くなった日、もしくは亡くなったことを知った日に開始となります。
医師から交付される死亡診断書又は死体検案書を受け取り、7日以内に死亡届を被相続人の亡くなった場所・本籍地又は届出人の住所を管轄する役所に提出します。被相続人が遺言書を残しているか否かを早めに確認しましょう。
遺言書が保管されている場所を確認するには、主に以下3つのパターンがあります。
- 法務局で保管している
- 公証役場で保管している
- 自宅や銀行の貸し金庫など被相続人自身が保管している
法務局で保管されている可能性がある時は「遺言書保管事実証明書」を請求する事で保管されているか否かが分かります。
1989年以降に作成されており、公証役場に保管されている遺言書は「遺言検索システム」で公正証書遺言の保管について調べる事が出来ます。なお、遺言者の生前は遺言者のみが利用できるため、最寄りの公証役場に問い合わせをして、必要書類を確認しておくと良いでしょう。
その他、被相続人自身が保管している可能性もありますので、自宅や銀行の貸し金庫など身近な場所も探しておきましょう。
遺言書がある場合は基本的に遺言書の内容通りに、遺言書が無い場合は遺産分割協議で相続の内容を決定します。しかし、遺言を書いた当時被相続人が認知症・精神疾患などの病気で遺言能力が無かった、遺留分(遺族に定められた最低限の取り分)を侵害しているなどのケースでは遺産分割協議で相続人全員が話し合い合意した内容で決定する事があります。
1-2.相続財産を調査・把握・評価する
被相続人が残した全ての相続財産を調査・把握します。生前取引のあった金融機関や不動産会社、信託会社などに資産の有無を尋ねる、遺言書がある場合財産目録を参考にするといった方法で相続財産を調べます。
相続財産の価額は基本的に時価で評価されることになります。現物資産である不動産は、不動産会社による査定や、不動産鑑定士に鑑定を依頼することとなります。
不動産会社の無料査定
不動産会社の査定は無料で依頼することが出来ます。ただし、不動産会社によって査定価格が異なるうえ、悪質な不動産会社の場合には相場よりも高値の査定金額を算出して売却を促してくることがあるため注意が必要です。
不動産会社に査定を依頼する際は、複数の不動産会社に査定依頼ができ、価格や査定の根拠を比較できる「不動産一括査定サイト」の利用を検討してみましょう。サイト上に物件情報を登録することで効率的に複数社に査定依頼ができ、売却するかどうかは査定後に判断することが可能です。
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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧
不動産鑑定士の鑑定
不動産鑑定士が行った不動産鑑定は公的証明力や法的責任があるため、鑑定結果の信ぴょう性は不動産査定よりも高いと言えます。不動産相続や離婚の財産分与など、後のトラブルを回避するために不動産鑑定を利用するケースもあります。
ただし、不動産鑑定士の鑑定には物件の規模に応じて数万円~十数万円の費用が発生します。鑑定を依頼する際は、どのように費用を捻出するのか相談をしておきましょう。
【関連記事】不動産査定と不動産鑑定の違いは?メリット・デメリット、選び方も解説
オーバーローンとアンダーローン
なお、不動産にローンが残っている場合には、相続人が不動産と一緒にローンを引き継ぐことになります。ローン残債が売却価格の相場を下回る際にはアンダーローン状態となり大きな問題はありませんが、ローン残債が売却価格の相場を上回るオーバーローン状態の物件の価値はマイナスとなるため注意が必要です。
債務を相続したくない時は、相続を放棄することで同時に債務も放棄できます。また、他にプラスの相続財産があるケースでは、他の相続財産の価額を考慮しながら相続人全員で話し合い相続するか否かを決定します。
被相続人が不動産のローン以外にも借金といったマイナスの財産を残しており金額が分からない時には、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ「限定承認」という方法があります。いずれの場合も相続人が全員で話し合い、合意した上で決定することが重要です。
1-3.相続放棄・限定承認の手続き(3ヶ月以内)
限定承認・相続放棄を選択する際は、相続開始から3ヶ月以内に被相続人の最後の住所を管轄する家庭裁判所で手続きを行います。
なお、相続人全員が相続放棄した場合や一人しかいない相続人が相続を放棄した場合は、相続放棄を行っても不動産の管理義務が残るため注意しましょう。
1-4.遺産分割協議
相続人全員で相続財産を受け継ぐ人や分配の割合などを決定します。不動産のような現物の財産の分割方法には、以下4つの分割方法がります。
- 現物分割:現物のまま相続する
- 換価分割:売却し現金化して分配する
- 代償分割:1人が代表して相続人となり他の相続人に金銭・財産を譲る
- 共有分割:相続人同士の共同名義とする
不動産の価額や相続人の意向などを考慮し、分割方法や相続人を話し合います。相続人が不動産の管理を行う場合、管理できる距離にあるかという点もポイントの1つです。
不動産を含めすべての相続財産について話し合い、内容を遺産分割協議書に記載、相続人は自書で署名し押印します。
不動産を相続した後に売却や賃貸など活用方法で意見が別れることがあります。特に共有分割では所有者(相続した人)全員が活用方法に合意しなければならず、後にトラブルが起きやすい分割方法です。
よって、遺産分割協議書にあらかじめ後の不動産の処遇について明記するなどで、事前に対策しておくことも検討しておきましょう。遺産分割協議の段階でその後の活用方法についても話あっておくことで、後のトラブルが回避できる事があります。
1-5.遺産分割協議書を作成
遺産分割協議を基に遺産分割協議書を作成します。書式が定められているわけではありませんが、相続の内容がわかるように記載する必要があります。記載例は以下の通りです。
遺産分割協議書を法務局や役所などに提出する時には、書類に押した印鑑の印鑑証明書を添付します。
1-6.遺産を分配する
それぞれの相続財産の名義を変更し、遺産を分配します。不動産は法務局で所有権移転登記の手続きを行うことで、名義変更が可能です。
1-7.相続税の計算・申告・納付(10ヶ月以内)
基礎控除額(3000万円+法定相続人の数×600万円)を超えた時には、基本的に相続税を納める義務が生じます。
被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税を計算・申告・納付します。相続税の計算では土地が路線価(時価の約8割)又は倍率方式、建物は固定資産税評価額(時価の約7割)で評価を行います。
2.遺産分割協議の注意点
不動産の遺産分割協議では、以下の2点に注意しましょう。
- 各相続人の事情
- ローン残債
例えば、相続人Aさんが生前被相続人名義の家に同居しており、今後も住み続けたいケースではAさんが不動産を相続するという方向で話し合いを進めることが検討できます。しかし、それぞれ相続人同士で不動産に特別の思い入れを持っている方や不動産の資産性について重視する方など、重視するポイントが異なっているケースもあります。しっかりと話し合いを進めて、相続人同士の事情を確認しておくと良いでしょう。
また、不動産にローンが残っている場合には債務として同時に相続することになりますが、債務の相続は基本的に相続人全員が法定相続分(民法で定められた相続人・割合)に応じて負担することが決められています。残債の大きさによっては相続を行うことが大きな負担となる可能性もあるため、残債があるのか、ある場合には返済が可能であるかどうか判断しましょう。
まとめ
不動産を含む相続では、遺言書の有無の確認や遺産分割協議、遺産分割協議書の作成など7つの手順を踏み遺産分割協議書を作成、遺産を分配します。
遺産分割協議書にフォーマットはありませんが、被相続人の名前や住所・亡くなった日、不動産の所在地・面積、相続人などを明記し、相続人全員が署名・押印します。なお、役所・法務局などに提出する際には、押印した相続人全員の印鑑証明書が必要となるため注意しておきましょう。
この記事を参考に、相続財産に不動産がある場合の遺産分割協議書の作り方・手順を知り、相続発生時には後のトラブルとならないよう手続きを進めていきましょう。
田中 あさみ
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