不動産は価格帯が高額になりますので、購入も売却も、失敗するとそのぶん大きな損害を被る可能性があります。例えば想定していた価格よりかなり低い価格でしか売却できなかったり、契約解除されて予定していたお金が入ってこなかったりすると、自分だけの問題ではなくなることもあります。
しかし、そのような大きな損害でも、中にはルールを知っておけば回避できることもあります。今回は不動産売却の流れを確認した上で、知らないと危険な不動産売却の時に注意すべき5つのポイントをご紹介したいと思います。
目次
- 不動産売却までの流れ
- 知らないと危険?不動産売却の時に注意すべき5つのポイント
2-1.査定価格は売却価格ではない
2-2.ローンが残っていると引き渡しができない
2-3.親から相続された不動産の場合は注意が必要
2-4.解約防止のために手付金はなるべく多く受け取ること
2-5.買主は引き渡しが終わっても瑕疵担保責任が発生する - まとめ
1.不動産売却までの流れ
まずは不動産売却の流れを確認しておきましょう。以下は売却をする際に踏む手順を順番に表したものです。
不動産売却の手順 | 内容 |
---|---|
1.簡易査定 | 不動産会社が机上での査定を行う |
2.訪問査定 | 不動産会社の担当者が現地を確認して査定する |
3.買主の募集 | 不動産会社が募集広告を掲載する |
4.物件の内覧 | 購入希望者が不動産を内覧する |
5.売買契約 | 買主と売買契約を結ぶ |
6.金融機関と本契約をする | 買主がローンの契約をする |
7.引き渡し | 金銭の授受と登記をする |
売却にあたってはまず不動産価格を査定する所から始まります。査定は物件情報をもとに行われる簡易査定と、実際に物件を確認して調査する訪問査定の2回に分けて行われます。訪問査定が終わり売出価格を決定したら、不動産会社が買主の募集を開始し、問い合わせが入り次第内覧案内をする、という手順になります。
その後、条件交渉を通じて売買契約を交わし、買主のローンが無事下りて決済が完了したら、所有権移転登記を行って一連の流れが完了します。
2.知らないと危険?不動産売却の時に注意すべき5つのポイント
不動産を売却すると決めてから引き渡しまでの間で注意すべき5つのポイントを見てみましょう。
2-1.査定価格は売却価格ではない
不動産を売却する際、最初に簡易査定と訪問査定を行い売り出し価格を決めますが、実際にその価格で売れるかどうかは別だということを知っておきましょう。
また、査定価格が自分の希望した価格より高いという理由で、その業者にその後の売却の作業を丸投げするのはリスクが伴います。査定の時点では高い価格で引き付けておいて、次第にその価格では売れないからと値下げをする不動産会社があったりするからです。
その場合、売却までの時間が長くなるといった心配が出てきます。また、仮に希望の価格で売りに出しても、買主との交渉などで最終的な売却価格が低くなる可能性もあります。
このように査定価格は実際に売却される価格ではないということを認識しましょう。査定をする場合は複数の不動産会社に依頼し、比較検討することが大切です。
2-2.ローンが残っていると引き渡しができない
売却する不動産のローンが残っている場合は残債を完済するタイミングに注意しましょう。一般的には買主から不動産の購入代金が入ってきた際に、そのお金をそのままローンの完済にあてることになります。
相続などですぐに大きな資金が入ってくるからローンは残して後で完済しよう、といったことはできません。ローンが完済できていないと抵当権が外せないために、売買契約をしても引き渡しができないからです。あとからいくら大きなお金が入ってくる予定があっても、決済時にローンを完済することは必須です。
2-3.親から相続された不動産の場合は注意が必要
親から相続で引き継いだ不動産の場合は注意が必要です。相続をした際に不動産の名義変更をしておらず、登記簿上で所有者が親の名義のままになっている事例はよくあることです。その場合は一旦、自分の名義に書き換えない限り売却はできません。
親が亡くなっている場合、相続登記という手続きをする必要があり、相続人が自分であっても、手続きの際に相続人全員の戸籍謄本や遺産分割協議書など複数の書類を揃えなくてはなりません。とても手間と時間がかかる作業になりますので、相続された物件の場合は早めに手続きを済ませることが大切な作業となります。
相続された物件を売却する場合は早い段階で名義を確認するようにしましょう。
2-4.解約防止のために手付金はなるべく多く受け取ること
売買契約時には、一般的には売買代金の全額を受け渡す前に手付金を入れます。手付金は物件価格の5%~10%くらいが相場ですので、例えば3,000万円の物件の場合おおよそ300万円が手付金の最高額になります。買主は手付金を入れ、残金を融資資金で支払うという流れになります。
この場合、どうせ残金はローンで入ってくるからという理由で手付金の値引きをしないことが大切です。この場合であれば、買主が300万円支払えるのであれば300万円しっかりと受け取るようにしましょう。これは解約の防止にもなるからです。
不動産の契約の場合、相手方が契約の履行に着手する前であれば、買主は手付金を放棄し契約解除することができます。手付金が多ければ多いほど解約の可能性を減らすことができます。
契約の履行に着手するという言葉の意味は「客観的に外部から認識しうるような形で履行行為の一部をなし、または履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合」と判例で定義されています。つまり「購入や売却にあたって必須となる行為を行ったり、発注したりする」行為のことを指します。
売買契約後の売主にとっては、次の「契約の履行」は物件の引き渡しになるケースがほとんどです(売却にあたり土地の分筆が必要な場合など例外もあり)ので、引渡し前までは解約される可能性があることを認識しておくことが大切です。
2-5.買主は引き渡しが終わっても責任が発生する
不動産の引き渡しが完了すると所有権は買主に移りますので、物件で何か起きても売主はもう関係がないようにも思えますが、実際には瑕疵担保責任が残るということを知っておきましょう。瑕疵とは引き渡しの時には気が付かなかった物件の欠陥や損壊のことを言います。
例えば「排水管が壊れていて水漏れをした」とか「押入れの隅が腐っていて異臭がする」といったようなことで瑕疵担保責任を問われます。瑕疵担保はたとえ売主が知らなくても発生する義務であり、引き渡し後一定期間は売主の責任になりますので、知らなかったでは済まされません。
また、瑕疵担保責任が発生した場合は、修理代金だけでなく、瑕疵によって引き起こされた二次災害の賠償金も請求される可能性があり、とても怖いものです。賠償金を支払うことのなないようにするためにも、売却前に自分で欠陥を調べて修理などをしておく必要があります。
まとめ
今回は不動産を売却するにあたって、失敗すると大きな損害を被る可能性があるものについてご紹介しました。契約時の登記や引き渡し、瑕疵担保責任など、どれも知っていれば事前に対応できるものばかりですが、逆にあらかじめ知っておかなければ、いざ問題に直面した際にすぐ解決することは難しいというのが現実です。
不動産を売却する際は不動産会社と密に相談しながら、失敗のないように取り組むようにしましょう。
西宮光夏
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