投資用不動産を買う前に知っておきたい「物件の売り時」の見極め方

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投資用不動産を買っても、いずれは何らかの理由によって売ることになります。しかし、売却するといっても「すぐに買い手が見つからない」「予想より低い価格で売買が成立した」というケースも多いため、将来損をしないように、あらかじめ物件の売り時を視野に入れながら投資用不動産を買う必要があります。

そこで今回は、投資用不動産を買う前に知っておきたい「物件の売り時」がいつなのか解説します。

目次

  1. 投資用不動産の売り時は状況によって変わる
  2. 今後の投資用不動産の売り時を見極めるための4つのポイント
    2-1.好調なインバウンドを背景に地価が上昇傾向
    2-2.マイナス金利政策による低金利
    2-3.2020年オリンピックの閉会による地価下落
    2-4.2022年生産緑地指定解除による供給増加
  3. これから不動産投資を始める場合の動き方
    3-1.2020年、2022年が過ぎた買い時に購入する
    3-2.大きな修繕を始める前に売る
    3-3.満室状態で売却する
  4. まとめ

1 投資用不動産の売り時は状況によって変わる

投資用不動産を売ることだけに限らず、不動産全てに共通して言えることは、売り時次第で不動産の売却価格に大きな差が生じるということです。

国土交通省が発表した「平成31年地価公示」によると、バブル全盛期であった1988年における東京23区の1㎡あたり平均住宅地価格は約136万円でした。バブルが崩壊した後は右肩下がりになっていき、2004年には1988年の約3分の1の、約44万円/㎡まで価格が下落しました。その後は上昇に転じたものの、2008年にアメリカの投資銀行の破綻によるリーマンショックが生じたことによって再度下落に転じました。

このように、不動産価格は経済状況や需要と供給のバランスの影響で大きく変動するため、その時々の状況を見ながら判断することが重要と言えるでしょう。

2 今後の投資用不動産の売り時を見極めるための4つのポイント

投資用不動産の売り時は、経済状況や需要と供給のバランスを考慮する必要があります。これからの不動産の売り時を判断するのに有効な4つのポイントを以下でご紹介したいと思います。

  1. 好調なインバウンドを背景に地価が上昇傾向
  2. マイナス金利政策による低金利
  3. 2020年オリンピックの閉会による地価下落
  4. 2022年生産緑地指定解除による供給増加

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

2-1 好調なインバウンドを背景に地価が上昇傾向

1つ目のポイントは、現在は好調なインバウンド観光を背景に地価が上昇傾向にあることです。日本を訪れる外国人観光客は増加傾向にありますが、それに対して宿泊施設が不足しているのが現状です。

その結果、宿泊施設の新築を目的として土地を取得しようとする業者が増えたほか、主要な駅の周辺などでは老朽化した施設が多いことから、再開発が進むなどで地価が上昇傾向にあります。

例えば、東京の住宅地の平均価格は、リーマンショック前に1㎡約58万円まで回復した後下落していましたが、2019年には約60万円と右肩上がりに上昇しています。また、商業地の最高価格を見ると、1991年に1㎡3,850万円を付けた後にバブル崩壊、リーマンショックで下落していましたが、2019年には1㎡5,720万円と最高価格を更新しています(国土交通省「平成31年地価公示」より)。

インバウンド需要は今後もしばらく高い状況が続くと考えられますので、不動産需要にはプラスに働くと言えるでしょう。

2-2 マイナス金利政策による低金利

また、現在はマイナス金利政策による低金利の状況であることも、不動産の売り時を見極める上で重要なポイントです。借入金利は高ければ高いほどローンの返済総額が増えるため、消費者の財布の紐が堅くなります。

2016年2月のマイナス金利政策導入の以降、借入金利が歴史的な低い水準であるため、「今が買い時なのでは?」と買う側としてはメリットを感じやすく、車や住宅、不動産などの購入が増加しています。

例えば、5,000万円の融資を金利4%・35年返済(元利均等)で受けると、月々の返済額は約22万円、返済総額は約9,300万円と、4,300万円ほど余分に支払わなければなりません。一方、金利2%であれば、月々の返済額は約17万円、返済総額は約6,960万円と余分な支払いは1,960万円で済みます。

マイナス金利政策は景気を良くすることを目的として導入しているため、そのうち景気が良くなれば金利は上昇します。そのため、低金利が続く今の状況は購入意欲が高い(=需要が大きい)時期と言えるので、売り手としては金利が低い間に不動産を売ることを目指したほうが良いでしょう。

2-3 2020年オリンピックの閉会による地価下落

2020年オリンピックの閉会も、不動産の売り時を考えるにあたって重要な重要な節目の一つです。2020年オリンピックの開催地が東京に決まってからは、これを商機と東京に投資する個人や企業が増加しました。その結果、好調なインバウンドに対するホテルの建設ラッシュや再開発を後押しする形となったため、商業地の地価上昇に拍車がかかりました。

しかし、2020年オリンピックの閉会後は選手村に使用する建物を住宅に転用することが予定されており、供給が増えることによって短期的に需要と供給のバランスが崩れることが予想されます。また、オリンピック閉会後は、商機として東京に投資していた個人や企業が撤退する可能性が高いことから、地価の下落が生じる可能性が高いと言えます。

2-4 2022年生産緑地指定解除による供給増加

2022年に予定されている生産緑地指定解除による住宅の供給増加も見逃せません。生産緑地は、市街化を推し進める地域である市街化区域の内部で指定される「農地として保全する地域」です。

生産緑地は、指定されると固定資産税などが一般の農地より低い税額に抑えられることがメリットでした。しかし、2022年に生産緑地の最大8割が指定を外れる可能性があり(参考:国土交通省「特定生産緑地指定の手引き」)、指定を外れると固定資産税が宅地並みに変わるため、売却する土地の所有者が増えることから供給増加による地価下落が生じると予想されています。

供給の増加は不動産価格の下落要因となるため、いま売り時を検討しているという方は2022年までを一つの目安に据えておくと良いでしょう。

3 これから不動産投資を始める場合の動き方

では、これから不動産投資を始めたいという方は、どのように動けばいいのでしょうか。以下では今後の買い時と売り時について解説していきます。

3-1 2020年、2022年が過ぎた買い時に購入する

先程触れたように、2020年の東京オリンピック終了後や2022年の生産緑地指定解除による宅地の供給増によって、不動産価格は下がると予想されています。現在の不動産価格はかなり高い水準にあるため、地価の下落を待ってから購入するのは堅実な選択肢と言えます。地価が下落する局面では融資がつきにくいと考えられますので、その時を狙う場合は手元に現金を多く用意しておくことが必要となります。

なお、今投資用不動産を購入したからと言って必ずしも不動産投資が失敗するわけではありません。なぜなら不動産価格はこれまで15年前後で上がり下がりのサイクルを繰り返しているからです。新築不動産を購入して長期的に保有したいという場合には、目先の不動産価格よりも年数が経過しても需要が落ちない立地や建物を選ぶことを優先したほうが良いでしょう。

また、どんな時期にも掘り出し物はあります。そのため、これから投資するのを諦める必要はなく、気になる物件があれば冷静に収支のシミュレーションを行ったうえで投資判断をすると良いでしょう。

3-2 大きな修繕を始める前に売る

また、今後投資用不動産を購入した後の売り時の一つとしては、大きな修繕を始める前が挙げられます。少しでも売却価格を高くするために、または早く買い手を見つけるために、簡単な修繕をして物件の状態を良く見せてから売りに出すのは重要な戦略の1つです。

しかし、アパート投資や戸建住宅投資で、外壁の塗装や防水のやり直しなどが生じた場合は、やり直すことで買い手は付きやすくなるかもしれませんが、膨大な費用がかかる分を売却価格に上乗せすると、買い手の希望条件よりも高い価格帯になり、反響が減る可能性も考えられます。

そのため、アパート投資や戸建住宅投資では、外壁の塗装や防水のやり直しといった膨大な費用がかかる大きな修繕を始める前が売り時と言えます(ただし、数年はそのままでも持つ程度の余裕を持たせることが望ましいでしょう)。

また、マンション投資では、修繕積立金を毎月積み立てているため、大規模修繕工事が始まっても基本的には大きな支出は生じません。しかし、足場が組まれて外観が悪く見える、工事の騒音でしばらく住環境が良くないなどの理由から買い手が現れにくい可能性があります。それらを考えると、マンション投資でも、大きな修繕の前が1つの売り時と言えるでしょう。

3-3 満室状態で売却する

2つ目の売り時は満室の状態であることです。投資家が不動産を購入する際には、その不動産を購入して長期的な家賃収入が得られるかどうかを熟考します。そのため、アパート投資では、少しの空室はあっても問題ないかもしれませんが、満室状態であれば買い手が付きやすく、価格が高くなりやすいので売り時と言えます。

戸建住宅投資やマンション投資では、空室状態では家賃収入が0であるため、空室状態で売却すると買い手がなかなか現れない、もしくは買い叩かれてしまう可能性もあります。しかし、戸建住宅投資やマンション投資の場合はアパート投資と異なり、投資用物件としてではなく居住用物件として売却するという選択肢もあります。

居住用物件として売却する場合には、買い手が見つかる可能性が上がるほか、売却価格を左右するポイントが収益性からその物件の資産価値へと変わるため、高く売れる可能性があります。その時の状況をよく考えながら売却を決めるのも1つの選択肢と言えるでしょう。

4 まとめ

立地条件の良い投資用不動産は、安定した需要が期待できることから長く運用する価値が高いと言えます。しかし、日本は少子化で人口が減っていることを考えると、あらかじめ売却などの出口戦略を検討しながら不動産投資を始めることが重要です。

不動産投資は他の資産運用より投資額が大きくなる傾向があり、それに伴って銀行から融資を受けるのが一般的であるためリスクは高いと言えます。物件の売却時期によっては、せっかく家賃収入を得ていても売却損により利益が減る、あるいはマイナスになるといったリスクもあります。

不動産投資において売却のタイミングはトータルの利益額を決定する非常に重要な要素です。市況を読みながら定期的に査定を依頼する、自分で市場価格を調べてみるなど、高く売れる時期を見極める工夫が重要になってくると言えるでしょう。

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矢野翔一

関西学院大学法学部法律学科卒。宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)などの保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産投資を行う。HEDGE GUIDEでは不動産投資記事を主に担当しています。専門用語や法律が多く難しいジャンルですが分かりやすくお伝えしていきます。