不動産投資ローンを借りるときには審査を通過する必要がありますが、不動産会社の提携ローンでない場合は審査過程で面談が発生します。融資面談は審査通過の重要なプロセスの一つなので、スムーズに回答できるよう事前に対策しておきましょう。
この記事では、不動産投資の融資面談でしばしば聞かれる質問事項や面談時の注意点について紹介します。ローンを活用して不動産投資にチャレンジしようとしている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
- 不動産投資ローンにおける融資面談とは?
1-1.融資面談はどのタイミングで行う?
1-2.融資審査でみられるポイント
1-3.融資面談でチェックされるポイント - 不動産投資の融資面談でしばしば聞かれる質問と回答ポイント
2-1.現在の仕事状況・年収や職歴
2-2.不動産経営を行う理由
2-3.不動産経営の実績
2-4.購入不動産について
2-5.返済計画について
2-6.賃料収入が下がったらどうするか
2-7.災害や事故発生のリスクにどう対応するか - 不動産投資ローンにおける銀行面談・審査の注意点
3-1.不動産「投資」ではなく「事業」であると認識する
3-2.物件を下見してから面談に臨む
3-3.複数の金融機関にあたる準備をしておく
3-4.初心者は融資面談を回避できるローンを活用するのも選択肢 - まとめ
1 不動産投資ローンにおける融資面談とは?
金融機関は、多額の融資をおこなうとき多くの場合において面談を実施します。不動産投資ローンの面談では、不動産の収益性や担保価値が充分か、そして借り手が信頼できる人物かをチェックしています。
1-1 融資面談はどのタイミングで行う?
不動産投資における融資面談には、実は大まかに言って二つのパターンがあります。不動産投資ローンの融資を受けるプロセスは、最も段階が多いケースで次の通りです。
- 仮審査
- 本申込み・契約
- 審査
- 金銭消費貸借契約(いわゆる金消契約)
- 融資実行
このプロセスの中で、審査過程として実施する面談と「金消契約」を結ぶ際に実施する面談の二種類があります。前者は借り手や不動産物件などの信用力をみるもので、審査過程の一つと考えてください。回答内容によっては審査が通らない可能性も充分にあります。
一方で、金消契約における面談は、すでに一通りの審査が終わったあとに実施されるものです。金融機関のスタンスにもよるものの、基本的に行内の審査プロセスが完結したあとに実施しているため、問題がなければそのまま契約に移るプロセスとなります。
基本的には、前者の方が借り手の属性や不動産の経営方針などについて詳しくヒアリングを受けます。否決原因になるリスクも高いため、万全に準備して臨みたいものです。本記事では、これ以降は審査過程の面談を想定して、ポイントや対策などを紹介していきます。
1-2 融資審査でみられるポイント
融資面談をスムーズに通すために、まず前提となる不動産投資において評価されるポイントを理解しておきましょう。
融資審査における着目ポイント
- 購入予定物件の収益性・担保価値
- 借り手の年収
- 勤務先・職業
- 資産状況・拠出できる自己資金
- アパート経営の実績
優先順位や考え方は金融機関によって微妙に異なります。たとえば、資産状況は単純に資産全体が大きければプラスに働く金融機関もあれば、現預金の厚みを重視する場合もあります。
また、不動産投資の実績があると大きなプラスに働く金融機関が少なからずある一方で、既に不動産投資でローンを負っている点を理由にネガティブに評価するケースもあります。
1-3 融資面談でチェックされるポイント
融資面談では、主に次の3点をチェックしています。
- 審査時に提出した書類情報に偽りや誤りがないか
- 借り手が信頼できる人物か
- 不動産経営の計画に問題がないか
面談では、事前に提出済の申込書など審査書類に書かれた内容も質問されます。これは記載内容に虚偽や誤りがないかを確認するものです。もちろん不備があれば審査落ちのリスクは高くなるため、少なくとも記載内容については正しく解答しなければなりません。
また、借り手が信用のおける人物かを評価しています。返済能力や財務状況といった定量的なチェックに加えて、人間性に問題がなく長期にわたり付き合いをもって問題のない人物かもみているのです。
たとえば、極端に横柄な態度を取る人は、将来トラブルのリスクが高いと考えられて審査においてネガティブに働きます。
最後に、不動産経営の計画の健全性もみられます。すでに書面で資産価値や収益性を把握していますが、収益が計画を下回った時の対策などリスク管理のスタンスが銀行にとって重要です。
銀行は、あくまで確実に融資の元利金返済を遂行してくれることを求めています。そのため、リスクに対して適切に対応し、融資を返済していけるかをチェックしているのです。
2 不動産投資の融資面談でしばしば聞かれる質問と回答ポイント
融資面談で頻繁に聞かれる質問と回答ポイントを順番に紹介しています。ここで紹介する質問は以下の通りです。
- 現在の仕事状況・年収や職歴
- 不動産経営を行う理由
- 不動産経営の実績
- 購入不動産について
- 返済計画について
- 賃料収入が下がったらどうするか
- 災害や事故発生のリスクにどう対応するか
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
2-1 現在の仕事状況・年収や職歴
現在およびこれまでの仕事状況について聞かれます。年収は高い方が有利ですが、すでに書類に記載しているはずなので正確な値を答えましょう。
仕事内容については、現在の業務内容を簡潔に説明してください。もし不動産や経営に役立つ要素があれば、アピールするとよいでしょう。
転職が多い場合や現職の勤続年数が短いと指摘を受ける場合があります。その場合は、転職理由や現在の仕事について説明すると共に、自身のキャリアビジョンに沿った転職であれば、補足されておくと良いでしょう。
2-2 不動産経営を行う理由
金融機関の融資は「投資」ではなく「事業経営」への支援という名目で実行されます。そのため不動産経営を行う目的を答えなければなりません。
例えば、投資物件でも、地域発展のため、若い社会人の利便性向上、低所得者向け・高齢者向けなど、社会貢献性の高い事業内容であればそのように伝えてみると良いでしょう。ただし、不動産事業の内容と社会貢献に関連性が乏しいにも関わらず、事業内容を良く見せようと故意にアピールしていると、担当者の信頼を損ねてしまうこともあります。
不動産経営の理由については個人ごとの事情やエリア・物件ごとの背景によって様々です。事業計画段階から不動産経営を実施する理由を見つめなおし、面談でしっかりと伝えられるように準備しておきましょう。
2-3 不動産経営の実績
すでに物件がある方は、入居率、売上、利益といった基本的な経営状況を正確に答えられるようにしておいてください。基本的には不動産の経営実績があった方がプラスに働きますが、経営状況がわからない状態では、かえってマイナスに働く恐れがあります。
2-4 購入不動産について
購入不動産の選択理由について聞かれます。立地がよい、競合が人口の割に少ないなど、賃料収入が見込めると考えた背景を的確に答えてください。また、不動産経営を行う理由と結びついた選定理由を答えられるとさらによいでしょう。
たとえば、地域発展を不動産経営の理由としているのであれば「物件のある○○という街はオフィス街にほど近いにも関わらず高齢化が進んでいる。若い社会人をターゲットとした物件の経営を通じて地域振興に貢献したい」といったように説明できると良いでしょう。
2-5 返済計画について
不動産経営の場合は、賃料収入から返済していく流れとなります。金融機関が特に気にするのは、賃料収入に対する返済割合です。
どの程度の賃料収入・返済を見込んでいるのか答えてください。なお、これらの情報は書類で事前に見ているはずなので、書類通り正確に答えましょう。明らかに計画に無理があれば、面談前に書類で否認されている可能性が高いためです。
そのほか、長期の修繕計画やその資金の原資などについても説明します。修繕コストがどの程度でその費用は家賃から計画的に貯めておく予定であることを示してください。
さらに、空室率がどの程度になるまで黒字を維持できるか、空室が損益分岐点以下まで下がるリスクが低いと考える理由なども答えられるようにしておいてください。
2-6 賃料収入が下がったらどうするか
経営がうまくいかないリスクを正しく理解して、備えが充分であるかを聞いています。損益分岐点を答えたうえで、損益分岐点を下回っても当面はカバーできるほど潤沢な自己資産があることを示してください。
2-7 災害や事故発生のリスクにどう対応するか
災害や事故などにより損害を受けたり、賃料収入が途絶えたりするのは不動産経営にとって大きなリスクなので、適切に対策を講じていることをアピールしましょう。
まず第一に、保険にしっかり加入していて、大規模災害におけるダメージは限定されている点を答えてください。
火災保険と地震保険の他、家賃補償特約をつける予定であればさらによいでしょう。加入予定の保険の補償内容についても簡単に説明できるよう、あらかじめ理解しておいてください。
また、細かい破損や経年劣化へ対処するために、月々修繕に向けて資金をプールしていく方針であることも説明しましょう。
3 不動産投資ローンにおける銀行面談・審査の注意点
銀行の融資面談や審査については、次のような点に注意してください。
- 不動産「投資」ではなく「事業」であると認識する
- かならず物件を下見してから面談に臨む
- 複数の金融機関にあたる準備をしておく
- 初心者は融資面談を回避できるローンを活用するのも選択肢
3-1 不動産「投資」ではなく「事業」であると認識する
金融機関にとって、不動産投資ローンは事業融資の一環として提供するものです。あくまで説明するときには「事業経営」であるという認識を持ち、面談に臨みましょう。
不動産を活用した事業の経営者として、事業の将来性や収益性について整理しておいてください。経営者視点で物事を考えることで、審査担当者の印象がアップするだけでなく、収支や資金繰り、経営上のリスク管理といった点に目が向き、面談において説得力のある説明ができるようになります。
3-2 物件を下見してから面談に臨む
面談で物件の説明をする際には、事前に下見をしておきましょう。不動産は、実地で様子を確認しなければわからないことが多数あります。
たとえば、最寄り駅から物件までの道の雰囲気や起伏の激しさ、周辺の競合物件の多さ、商業施設の利便性などです。
豊富な情報を得られるはずの物件の下見をせずに面談に臨む相手に対して、銀行担当者は不安を抱く可能性が高いといえます。経営者として信頼されなければ、融資面談でポジティブな評価を得るのは難しいでしょう。
3-3 複数の金融機関にあたる準備をしておく
不動産投資ローンは、複数の金融機関を候補として準備しておきましょう。ここまで質問内容や注意点を紹介してきましたが、金融機関との特別なリレーションがない場合、個人による不動産投資ローンの審査通過率は決して高くありません。
一方で、金融機関によって評価するポイントはさまざまです。ある金融機関で否決されたとしても、別の金融機関で審査が通る可能性は充分にあります。始めから複数の金融機関に当たる覚悟で、準備しておくのがよいでしょう。
3-4 初心者は融資面談を回避できるローンを活用するのも選択肢
初心者で面談対策のハードルが高いと感じる方は、面談をスキップできるローンを利用してしまう方法もあります。
不動産会社と地銀などが提携しているローンの場合、不動産会社が紹介した顧客であることが「リレーション」があるのと同じ状態となり、審査が簡略化される場合が少なくありません。融資面談がスキップされて、申込書の記載情報と金消契約時の簡易的なエビデンスチェック程度で済む場合もあります。
必然的に提携ローンを扱える不動産会社から物件を購入しなければならないため、自分の目利きで高収益な不動産を購入できないなどのデメリットもあります。それでも、審査対応を簡略化させたい方には有効な選択肢の一つです。
なお、提携ローンでも、金消契約の段階では面談が実施されます。(オンラインの場合もあります)
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まとめ
まず、不動産投資の融資面談には、正式な審査と金消契約締結のための面談の2種類があります。特に前者は回答内容により審査結果が大きく左右されるため、頻繁に質問される事項をあらかじめおさえておいて、模範解答を準備しておきましょう。
不動産投資ローンの審査においては、あくまで不動産「経営」であるとのスタンスを取り、経営する理由や長期での事業計画を説明できるように準備してください。
多額の借入となる不動産投資ローンは、強いリレーションがない限り個人投資家にとってハードルの高い交渉です。一件の審査がだめでも、諦めずに他の金融機関に積極的にトライすることが大切です。
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伊藤 圭佑
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