ゼブラ投資のメリット・デメリットは?個人が投資に参加する方法も

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ゼブラ投資とは、ゼブラ企業に投資する投資手法です。ゼブラ企業はユニコーン企業と対になる概念で、環境・社会との共存性を重視する企業を意味します。

ベンチャーキャピタルなどのファンド投資と比べて、長期的な視点でリターンを追求する傾向があるのもゼブラ投資の特徴です。ゼブラ投資では、投資家と社会全体が長期にわたり共に発展していくことを目指しています。

今回はゼブラ投資のメリット・デメリットのほか、個人がゼブラ投資を実践する方法についても紹介します。この記事を参考にゼブラ投資にチャレンジしてみてください。

目次

  1. VC投資とゼブラ投資
    1-1.投資方針
    1-2.投資期間
    1-3.投資する資産
    1-4.期待リターン
    1-5.収益獲得方法と損失リスク
  2. ゼブラ投資のメリット・デメリット
    2-1.ゼブラ投資のメリット
    2-2.ゼブラ投資のデメリット
  3. 個人がゼブラ投資を実践する方法
    3-1.株式投資型クラウドファンディングの活用
    3-2.貸付型クラウドファンディングで社会貢献を重視するファンドに投資
    3-3.支援に重きを置くなら寄付型クラウドファンディングを活用
  4. まとめ

1 VC投資とゼブラ投資

VC投資・ゼブラ投資の違いを知る上では、前提としてゼブラ企業のことを理解しておく必要があります。ゼブラ企業とユニコーン企業の典型的な特徴を、比較表にまとめました。

ゼブラ企業とユニコーン企業の比較

ゼブラ企業 ユニコーン企業
方向性 他社との共栄 急成長
重視する受益者 社会全体のステークホルダー 出資者(株主)
他者とのかかわり方 共存
Win-Winを目指す
競合
勝者か敗者
想定される帰結 共存・共栄 独占・寡占

※Zebras Unite「Where unicorns fear to tread — building businesses that are better for the world」を参照し、筆者作成

ゼブラ企業とユニコーン企業の違いについては以下の記事でも詳しく紹介しているので、合わせて参考にしてください。

【関連記事】ゼブラ企業とは?ユニコーン企業との違いや企業事例、ゼブラ投資家も

ゼブラ投資とVC投資の比較

VC投資 ゼブラ投資
対象企業 急成長を目指すベンチャー企業 ゼブラ企業
目的 収益の最大化 社会的インパクト
ステークホルダー全体の幸福最大化
時間軸 3-5年 5年以上(明確な時間軸がない場合も)
金融手法 株式出資 株式・メザニン出資・債券など
目指す金銭的リターン ハイリターン ローもしくはミドルリターン
投資家の利益創出手法 IPO・M&Aなどによるイグジット IPO・M&Aなどによるイグジット
配当・金利収入
コミュニティへの売却など

ベンチャーキャピタル(VC)が主にユニコーン企業に投資するのに対して、ゼブラ投資は主にゼブラ企業に投資し、ゼブラ企業と同様に社会との共存・共栄を重視しています。ここからは、ゼブラ投資の特徴についてまとめました。

1-1 投資方針

ゼブラ投資の投資方針は、ゼブラ企業と同様に社会的なインパクトやステークホルダー全体の便益の最大化を目指します。この点は株主や経営者の利益が前面に来るVCとは対照的です。

ゼブラ投資を実践すれば、自然とサステナブルな社会の実現に向けた課題解決に貢献できます。また、資金を集めて急成長する企業より、コミュニティやさまざまなアイデアを組み合わせながら社会を着実によりよい方向に変えていく企業を選好します。

1-2 投資期間

ゼブラ投資は基本的に長期間を見据えて投資します。一つの目安として5年以上の時間軸で投資先を考えるケースが多くありますが、ゼブラ投資はそもそも投資家の経済的価値だけを重視して投資するわけではありません。

そのため、明確な投資回収期間やイグジットのタイミングの目途が存在しないファンドもあります。

1-3 投資する資産

ベンチャーキャピタルは、多くの場合投資先の株式を所有する「出資」の形で投資します。投資先の資産価値が向上すれば、保有する株の価値が上がって投資収益になるという仕組みです。

対して、ゼブラ投資の投資方法は株に限定されません。社債やメザニン投資など多様な手法で投資を行います。

1-4 期待リターン

ベンチャーキャピタルはあくまで企業と投資家の利益を重視して運用するため、期待リターンだけをみると、ベンチャーキャピタルの方が高くなりがちです。

ゼブラ投資は、投資家の利益を最優先に考える投資ではないため、投資家に還元されるリターンの絶対値が低くなるケースが多いといえます。

1-5 収益獲得方法と損失リスク

ベンチャーキャピタルは、主にIPOやM&Aによるイグジットを狙います。IPOやM&Aでは、株を高い価格で譲渡・売却できる傾向にあるため、キャピタルゲインによる高いリターンが期待できるのです。

ゼブラ投資でも、キャピタルゲインによるリターンを追求するケースはありますが、そのほか配当や金利収入を通じたインカムゲイン、関係性の深い団体やコミュニティへの売却などを行うなど、さまざまな方法で収益を獲得します。

なお、ベンチャーキャピタルの方が相対的にはハイリスク・ハイリターンな傾向にあり、失敗した場合の損失リスクは大きいといえるでしょう。ゼブラ投資が取り入れる、メザニン投資や債券への投資は、株と比較して低リスクな傾向にあります。

2 ゼブラ投資のメリット・デメリット

ゼブラ投資は、社会と共栄しながら長期投資ができるのが大きなメリットです。その反面、短期での高利益を上げるには不向きといえます。また、ゼブラ企業の理念を厳格に達成するのは容易ではないという点にも留意が必要です。

2-1 ゼブラ投資のメリット

ゼブラ投資のメリットを整理すると、次の通りとなります。

  • サステナビリティに投資の領域で貢献できる
  • 社会やさまざまなステークホルダーと同じ方向を向いて投資できる
  • 相対的に長期で安定したリターンが期待できる

ゼブラ企業は、持続的な社会の発展を重視する企業群です。ゼブラ投資では自分が投じた資金がゼブラ企業の事業に投じられるため、間接的にサステナビリティに対する課題解決に貢献できます。

さらに、ゼブラ投資では社会全体や他のステークホルダーと利益を分け合い、同じ方向を向いて投資できるのも特徴です。ベンチャー企業のように競争の中で資産価値の向上を追求するということは、その裏で競合他社が敗者となって損失を被っています。

業界全体が急成長していた場合でも、価格高騰により消費者の負担が重くなったり別の産業にしわ寄せが行ったりして、社会の誰かが損をしている可能性があるのです。

ゼブラ企業は、社会全体・ステークホルダー全体の共栄を重視する投資であるため、誰かに損失を押し付けることなく、事業に関わる人それぞれが投資によるリターンを得ながら発展していけます。

また、ゼブラ投資は社債やメザニン投資など、株よりもローリスクな投資商品・投資方法を好んで取り入れるため長期的な収益の獲得が期待できます。

2-2 ゼブラ投資のデメリット

ゼブラ投資のデメリットは次の通りです。

  • 短期で高収益を志向する投資家には不向き
  • ゼブラの理念を厳格に実現するのが容易ではない

ゼブラ投資は長期的な利益や社会的リターンんを産み出しやすい半面、短期的なキャピタルゲインで高収益を実現するには不向きです。ハイリスク・ハイリターンの投資を志向している方は、リターンが物足りない印象を持つでしょう。

また、ゼブラ企業の理想を厳格に達成するのは容易ではありません。企業としては社会貢献や共存・共栄を目指しているつもりでも、実は特定のステークホルダーの活動の阻害要因となるケースもあります。

たとえば、生物多様性の保護を目的に活動するゼブラ企業がいたとします。社会全体で見れば生物保護に役立ちますが、その結果、規制が強化されて地元の猟師や農家の活動を圧迫するといったケースも想定されるでしょう。

ゼブラ投資においては、その理想をできるだけ高いレベルで達成している投資先を見つけるのが難しいといえます。

3 個人がゼブラ投資を実践する方法

ゼブラ投資はまだまだ発展途上で、個人が実践する方法は限られています。ゼブラ投資を中心に行うファンドは日本でも複数ありますが、いずれも個人投資家向けとは言い難いものです。そのなかでゼブラ投資に近い精神で投資が行える方法を3つ紹介します。

3-1 株式投資型クラウドファンディングの活用

株式投資型クラウドファンディングは、ベンチャーなどの未公開株式に少額で投資できるサービスです。個別のファンドやサービスにもよりますが、10万円程度あれば投資可能な企業が複数あります。

本来はベンチャー企業投資を行うものですが、中には社会との共存・共栄を重視するゼブラ的な考えを持つ企業や、社会課題の解決を重視して事業展開する企業もあります。

たとえば、大手株式投資型クラウドファンディングのFUNDDINOで以前募集された「株式会社FMG」は、アフリカで自動車ファイナンスの仕組みを発展させ、アフリカの車所持率の改善を図る企業です。

銀行口座を持たないアフリカの低所得者層に自動車のリースと、ライドシェア型の仕事の提供をセットで行う仕組みとなっています。

自動車を普及させて利便性を向上させながら、失業の減少に貢献しているのが特徴です。新規事業をアフリカの社会発展と結びつけている点で、ゼブラ企業に近い性質を持っています。

このように株式投資型クラウドファンディングの案件を精査して、ゼブラ企業を発掘して投資するのが一つの方法です。

【関連記事】ファンディーノ(FUNDINNO)の評判は?メリット・デメリットやイグジット案件も

3-2 貸付型クラウドファンディングで社会貢献を重視するファンドに投資

貸付型クラウドファンディングのなかにも、社会貢献を前面に出したファンドは多数存在します。一例をあげると、海外への貸付を中心にファンド組成しているクラウドクレジットのファンドは、基本的に海外の特定地域や世界の発展を目指してファンド組成がされています。

たとえば、過去には「ペルー女性事業主向け協同組合支援」として、女性起業家向けの貸付を行う団体を支援するファンドを募集しました。これは、女性の社会進出を後押しするものです。

特定の起業家への支援や投資をするのではなく、女性起業家全体にとって役立つ支援制度をバックアップしている点でも、共存・共栄を重視するゼブラ的なプロジェクトといえるでしょう。

【関連記事】クラウドクレジットの貸し倒れや返済遅延は?投資リスクの対策も

3-3 社会全体のリターンに重きを置くなら寄付型クラウドファンディングを活用

投資リターンよりも社会全体のリターンを前面に考えているなら、寄付型クラウドファンディングを利用するのもいいでしょう。

経済的なリターンを追求するものではないため、寄付型クラウドファンディングそのものはゼブラ投資とはいえませんが、寄付型クラウドファンディングでは、収益化が難しい社会課題や問題への取り組みが多数プロジェクト化されています。

投資収益を追求する必要がない分より公益性の高い案件が多いため、共存・共栄の精神を実践するうえで有効な選択肢の一つです。

ゼブラ企業が一部の事業やプロジェクトの資金を「寄付型クラウドファンディング」として募集することもあるため、視野に入れておくと良いでしょう。

【関連記事】クラウドファンディングと寄付の違いは?仕組みや特徴を比較

まとめ

ゼブラ投資は、社会とのサステナブルな共存・共栄を目指すゼブラ企業へ投資する方法です。短期で高いリターンは見込みづらいですが、イグジットによるキャピタルゲインだけに依存しない、長期的な視点に立ったリターンを追求しやすいのも特徴です。

日本の個人投資家がゼブラ投資を実行するのは容易ではありませんが、クラウドファンディングなどを通じて社会貢献性の高いファンドに投資するのは、ゼブラ投資に近い手法の一つといえるでしょう。

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伊藤 圭佑

資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。 新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。