物件概要書は不動産会社から提示されるアパート資料です。アパート以外にもマンションや土地といった不動産売買の際に用いる書類ですが、不動産取引の経験が無い方にとって、どのような点に注目して比較検討すれば良いのか悩まれることも多いのではないでしょうか。
そこで今回は、物件概要書を見る際の4つのポイントについて解説していきます。アパート経営を検討している方、これから不動産投資を始める初心者の方はご参考ください。
目次
- アパートの物件概要書に記載されている主な内容
1-1.アパートの所在地
1-2.アパートの価格
1-3.アパートの利回り
1-4.アパートの築年月
1-5.アパートの構造
1-6.アパートの面積
1-7.アパートの地目・用途地域
1-8.アパートの建ぺい率・容積率
1-9.アパートの設備
1-10.アパートの引き渡し希望日 - アパートの物件概要書で注目したい4つのポイント
2-1.アパートの利回り
2-2.違法建築物件・既存不適格物件
2-3.アパートの積算価格
2-4.アパートのキャッシュフロー - まとめ
1 アパートの物件概要書に記載されている主な内容
物件概要書とは、対象となる不動産の情報を記載した書類です。主に不動産の住所や面積、構造、さらには価格なども記載しています。またアパートなどの投資用物件であれば利回りだけではなく、調査時点の入居率なども記載されていることがあります。
アパートの物件概要書に主な情報として記載されているのは下記の項目になります。
1-1.アパートの所在地
物件がどこにあるのか住所が記載されています。所在地に合わせて、最寄り駅や交通アクセス、最寄り駅からの距離などが記載されていることもあります。
最寄駅までの距離が徒歩◯分として書かれている場合、おおよそ距離「徒歩1分=80m」が目安となります。例えば、徒歩5分であれば約400mとなります。アパートの場合、駅から徒歩圏内であれば入居付けしやすいため、所在地は重要なポイントになります。
ただし、現地調査をすると実際には坂道になっていたりなどで徒歩時間の目安から大きく外れてしまうこともあります。物件概要書の徒歩時間はマップ上で算出されていることが主なため、現地調査の際に必ず確認しておくと良いでしょう。
1-2.アパートの価格
アパートの物件概要書に記載されている価格は、売主が希望する販売価格です。土地は非課税ですが、建物は消費税がかかりますので、通常は税込価格で表記されます。税込表記がない場合は問い合わせの際に確認しておきましょう。
1-3.アパートの利回り
表面利回りが記載されていることが通常ですが、「満室時の想定表面利回り」「現況表面利回り」「想定実質利回り」「現況実質利回り」といったようにより詳細に記載されていることもあります。
表面利回りは販売価格と家賃収入をもとにした利回りの計算方法で、実質利回りは税金などの経費を差し引いた利回りになります。実質利回りの方が実際の収益に近い数字になります。
それぞれ、計算式は下記になります。
- 表面利回り=年間の家賃収入÷物件価格
- 実質利回り=(年間の家賃収入-年間で支払った経費)÷物件価格
1-4.アパートの築年月
アパートが建てられた年月を表しています。法定耐用年数との兼ね合いもありますので、価格や利回りの相場を判断する際に築年月は重要な要素になります。
また、金融機関から融資を受ける際にも重要な情報となります。
1-5.アパートの構造
建物がどのような構造で建てられているのかを表記しています。代表的なのは下記の構造になります。
- 木造(W造)
- 軽量鉄骨造(S造)
- 鉄骨造(S造)
- 鉄筋コンクリート造(RC造)
- 鉄筋鉄骨コンクリート造(SRC造)
建物の階数や規模にもよりますが、アパートの場合は、木造(W造)、軽量鉄骨造(S造)、鉄骨造(S造)、鉄筋コンクリート造(RC造)などで建てられます。構造によって法定耐用年数が異なりますので、必要な情報となります。
1-6.アパートの面積
アパートの広さを表す場合、土地の面積と建物の面積が必要になり、建物の場合はさらに階数ごとの面積が表記されているのが通常です。建物の面積には「延床面積」と「建築面積」の2種類がありますので、混同しないように覚えておきましょう。
- 延床面積:建物の各階の床面積を合計した面積
- 建築面積:建物の建っている土地面積
単位の主流は㎡ですが、中には坪で記載されていることもあります。1坪は約3.3㎡ですので、例えば40坪であれば約130㎡ということになります。
1-7.アパートの地目・用途地域
地目とは、用途によって分類される土地の種類のことです。代表的なのは「宅地」「田」「畑」「山林」「雑種地」などで、不動産登記法に定められた区分は23種類あります。
また、住みやすい街を作るために、使う目的によって土地は13種類の用途地域に区分されます。この用途地域によって、建てられる建物が異なるため、要確認事項です。
代表的な用途地域は「第一種低層住居専用地域」「第二種低層住居専用地域」「第一種住居地域」「商業地域」などです。アパートは13種類のうち12種類で建てられますが、「工業専用地域」では建てられません。
1-8.アパートの建ぺい率・容積率
土地に建物を建てる際には建築基準法の制限を受けます。その基準の一つが建ぺい率と容積率です。用途地域によって異なるもので、建物の大きさに関わってきますので適切に確認しましょう。
建ぺい率とは土地の広さに対して建築できる建築面積の割合のことで、一方の容積率は建築できる建物の容積の割合のことです。例えば、建ぺい率が60%、容積率が200%であれば、土地の広さに対して建築面積は60%以内、容積率は200%以内でなければなりません。
それに対して建ぺい率が80%、容積率が300%であれば、同じ土地面積に対して先の例よりも大きな建物が建てられるということになります。つまり、同じ敷地面積の土地でもそれだけ部屋数が多くなり、収益性も高くなる可能性があります。
1-9.アパートの設備
アパートの場合、建物本体の設備と各部屋に設置されている設備の両方が記載されていることがあります。主な設備は下記のようになっています。
- 建物の設備:電気、水道(上水道、井戸)、ガス(プロパンガス、都市ガス)、排水(浄化槽、下水道)、駐車場(平置き、機械式、屋根付き、地下)など。
- 部屋の設備:給湯器、エアコン、コンロ、シャワートイレ、モニター付きインターフォン、床暖房、など。
例えば、シャワートイレやモニター付きインターフォンなどは入居者のニーズが多い設備です。ターゲット層によって入居率に影響することもあるため、一つひとつ詳しく確認するようにしましょう。
1-10.アパートの引き渡し希望日
売主の希望として、いつ引き渡したいのか、記載されています。住戸用の不動産であれば、売主の退去との関係で指定されていることがありますが、投資用アパートであれば「要相談」となっていることもあります。
売買交渉、契約と進む中で、不動産会社を通して引き渡し日を決めていくことになりますが、希望がある場合は事前に伝えておくようにしましょう。
2 アパートの物件概要書で注目したい4つのポイント
アパートの物件概要書の情報をもとに、不動産投資用として購入に値するのか、という判断をすることもできます。アパートの資産性や収益性、担保価値なども読み取ることができますので、解説していきます。
2-1 アパートの利回り
投資用アパートを見る上で分かりやすい情報が利回りです。利回りは物件の販売価格に対して、どのくらいの収入があるのかが分かる数字です。◯%として表され、高い数字の方が収入が多いということになります。ただし、前述したように表面利回りなのか、実質利回りなのかという確認も重要です。
エリアによって土地価格や賃貸需要が異なるため、アパートの表面利回りには大きな幅があります。投資用として販売されている新築・中古アパートの表面利回りの目安としては下記となります。
物件の種類 | 表面利回りの目安 |
---|---|
新築物件 | 2〜5% |
中古物件 | 3〜10% |
表面利回りは高いほど期待できる収益率が高くなりますが、高利回りの物件になるほど築年数が経過していたり、家賃の低下リスクを抱えている傾向があります。最寄り駅からの距離が遠い、入居率が悪いなどのリスクが考えられますので、その他のポイントと総合的に判断するようにしましょう。
2-2 違法建築物件・既存不適格物件
建築物は法律を守られて建てられますが、中古アパートの場合は建築時から法律が改正されてた既存不適格物件であったりなど、何らかの事情で現行の法律に違反している物件もあります。
このような違法建築物件はのちにトラブルに発展しやすく融資も受けにくいため、売却時に苦戦してしまうなどのデメリットがあります。建築物で適用される法律は主に下記の3つです。
- 建築基準法:建物の構造上の安全基準や接道義務などに関する法律です。
- 都市計画法:用途地域などによって建築制限が設けられています。
- 消防法:火災報知器や消火設備などの消防設備および防災設備について基準が設けられています。
アパートで特に気をつけたいのが容積オーバー物件と、再建築不可物件です。どちらも価格を安くして販売していることがありますが、融資が下りにくい、出口戦略が立てにくいなどのデメリットもあります。備考欄などに「容積オーバー物件」「再建築不可物件」などと表記されていますので、慎重に検討しましょう。
2-3 アパートの積算価格
積算価格とは、土地と建物のそれぞれの現在の価格を合計した評価額のことです。アパートの積算価格を求めるには、土地の固定資産税評価額と建物の再調達価格を求める方法が主流となっています。
- 土地の現在の価格=土地の価格×土地の面積
- 建物の現在の価格=建築単価(再調達単価)×延床面積×(残存年数÷耐用年数)
この2つを足すことで現在の建物の価格を推測することができます。積算価格は金融機関が物件の担保性を評価する際にも重要視しているため、積算価格が低い場合には金融機関からの融資が受けにくくなる可能性もあります。積算が低い物件を購入する際には自己資金を多く用意するなどの対応策が必要になることが予想されます。
2-4 アパートのキャッシュフロー
キャッシュフローとはお金の流れのことです。アパート経営をする上で必要な資金を確保するためにも、どれくらいのお金が毎月残るのか、もしくは支出するのかをあらかじめ計算しておくことは重要です。物件を購入して運営を始めたときに、資金が足りずにアパート経営から撤退せざるを得ないという状況を避けるためです。
キャッシュフローを計算する際は、下記の計算式を用います。
キャッシュフロー=家賃収入×(100%-空室率)-銀行返済額(利子+返済)-経費
物件の規模や築年数などの状況、オーナーの意向などによって異なりますので、いくらくらい手元に残るといいのか、事前に決めておくと物件探しをスムーズに進められる可能性があります。
まとめ
今回のコラムでは、物件概要書の見方について解説しました。アパートの購入を検討する際に、資料の一つとして不動産会社が提供してくれるのが物件概要書です。この物件概要書があれば物件についてある程度のことを知ることができます。
まずは物件概要書で検討し、気になる物件があった場合には詳しい資料をもらったり、詳しい状況について問い合わせをされてみると良いでしょう。
倉岡 明広
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