親の不動産を代理で売却する手順は?委任状の作成方法や注意点も

※ このページには広告・PRが含まれています

何らかの事情で親が所有する不動産の売却活動ができない場合、子供が代理で不動産を売却する手順を知りたい方も多いのではないでしょうか。

基本的に不動産の売買活動は本人が行うこととされていますが、本人が売却する事が難しい場合には、委任状を作成し代理人となることで売買契約・引き渡しなどの売却活動を行うことが出来ます。

本記事では親の不動産を代理で売却する手順と委任状の作成方法、注意点を解説していきます。親の代わりに不動産を売却する方、予定のある方はぜひご覧ください。

目次

  1. 親の不動産を代理で売却する手順
    1-1.親と不動産の売却条件や代理権の範囲などについて、よく話し合う
    1-2.委任状を作成する
    1-3.不動産の売却活動を行う
  2. 親の代理で不動産を売却する際の注意点
    2-1.不動産を所有する親が認知症の場合
    2-2.公正証書で任意後見契約を結ぶという選択肢も
  3. まとめ

1.親の不動産を代理で売却する手順

不動産の売買取引は基本的に本人が行いますが、不動産が遠方にある、所有者が高齢であるなど、本人が売却活動を行う事が困難である場合には、代理人に権利を委任することができます。

代理人には「法定代理人」と「任意代理人」があり、法定代理人は法律で定められた成年後見人を指します。任意代理人は法定代理人以外のすべての代理人のことです。

親の不動産を代理で売却する際には、子供が「任意代理人」となり委任状を作成することで、親に代わり売却活動を行う事が出来ます。売却活動までの流れは以下の通りです。

  1. 親と不動産の売却条件や代理権の範囲などについて、よく話し合う
  2. 委任状を作成する
  3. 売却活動を行う

1-1.親と不動産の売却条件や代理権の範囲などについて、よく話し合う

不動産取引では、委任者(親)の意向と受任者(子供)の認識にズレが生じると後にトラブルに発展してしまう可能性があります。

例えば、売却代金で両者の認識に差があると金銭トラブルに発展してしまい、引き渡し時期を確認していないと仮住まいが必要になってしまうケースなどがあります。

代理権に関しても「売却活動のみ」であるのか、「物件の手付金や清算など金銭の授受も行う」又は「引き渡し・清算の時のみ代理で立ち会う」など権限の範囲を明確にしておくことで、後のトラブルを防ぐことが出来ます。

話し合いで決まった後は、「委任状」に代理権の範囲を記載しておきましょう。代理で売却活動も行う場合には、売却代金や手付金の額など売却条件に関する項目も記載する必要があります。

1-2.委任状を作成する

委任状には法的に定められた形式はありませんが、上記で話し合った項目について明記しておきます。氏名・住所を自筆で記入、印鑑は実印を用い印鑑証明書を添付しておきましょう。

委任状の見本

委任状の見本

委任状に関するポイントは以下の通りです。

  • 委任者(親)と受任者(子供)の住所・氏名をそれぞれが自筆で記載し押印は実印
  • 印鑑証明書を添付する
  • 売却の対象となる不動産を表示する
  • 売却条件・代理権の範囲についても記載しておく

1-3.不動産の売却活動を行う

不動産会社に仲介を依頼します。査定を複数の不動産会社に申し込んだ後に、数社に絞り訪問査定を依頼し、媒介契約を結ぶ業者を決めましょう。

媒介契約を結んだ後は売り出し価格を決定し、売却活動を行います。購入希望者が現れ、内覧対応や契約の交渉などを行い売買契約が成立、場合によっては手付金を受け取ります。

引き渡し・売却代金の清算を行い売却活動は終了ですが、利益が出た場合には確定申告が必要となります。

なお、不動産売買においては「本人の売却意思の確認」、「本人確認」のために親と仲介業者が最低でも1度は顔を合わせる必要があります。

【関連記事】相続不動産を査定する手順は?トラブルを回避する相続の注意点も

2.親の代理で不動産を売却する際の注意点

親が認知症又は認知症の疑いがある時には、家庭裁判所に申し立て成年後見人を選任して売却活動を行いましょう。

親に判断能力があるうちに「任意後見制度」を利用し、任意後見人を選任しておくことで、不動産の売却だけではなく入院の手続きや医療に関する契約を結ぶことなどが可能となります。

2-1.不動産を所有する親が認知症の場合

親が認知症である場合には家庭裁判所に成年後見人を申し立て、成年後見人が代わりに売却を行うことができます。

成年後見人は、判断能力が十分ではない方を保護するための制度で、本人に代わって契約を結ぶ、契約を取り消すなどの行為が可能です。財産管理のために幅広い権限を持ち、親族だけではなく、弁護士や司法書士などの専門家を選任できます。

【関連記事】認知症になった親の不動産の売却手順は?成年後見制度を使った売却の流れや注意点

2-2.公正証書で任意後見契約を結ぶという選択肢も

上記の成年後見制度は判断力が十分でない方のための制度ですが、親に判断能力があるうちに「任意後見契約」を結んでおくことで、代理で財産の管理や必要な契約締結等を行う事が出来ます。

あらかじめ任意後見人を選任しておくことで、親にとって面識があり信頼関係のある人物と契約を行うことが出来ます。

後見人は不動産や預貯金等の管理、税金や公共料金の支払い等の財産管理を始め、要介護認定の申請等に関する諸手続き、医療契約の締結、入院の手続きなどを行います。成年後見人と同様に、親族や専門家を選任するケースがあります。

任意後見契約は戸籍謄本、住民票など所定の書類を準備し、公証役場で公証人が「任意後見契約公正証書」を作成、法務局に登記され「登記事項証明書」が発行されます。登記事項証明書を提示する事によって、代理で手続きを行う事や契約を結ぶ事などが可能となります。

【関連記事】不動産相続、親が認知症になる前に準備・確認しておきたい3つのこと

まとめ

親の代わりに不動産を売却する時には、まずどこまで代理で行うかを話し合い、売却を行う場合には売却条件を詳しく決めておきましょう。委任状に売却条件を記載すると、後々トラブルが起こる可能性が低くなります。

親が認知症のケースでは、家庭裁判所に成年後見人を申し立て、成年後見人が売却を行います。不動産売却以外でも代理で契約の締結・解除などが必要となる場合には、公正証書で任意後見契約を結ぶことを検討しましょう。

The following two tabs change content below.

田中 あさみ

経済学部在学中に2級FP技能士(AFP)の資格を取得。ライターとして不動産投資を含む投資や年金・保険・税金等の記事を執筆しています。医療系の勤務経験がありますので、医療×金融・投資も強みです。HEDGE GUIDEでは不動産投資を始め、投資分野等を分かりやすくお伝えできるよう日々努めてまいります。