旧耐震基準の中古マンションのメリット・デメリットは?リスクや注意点も

旧耐震基準の中古マンションを市場で見かけ、購入判断に迷うことも多いかと思います。新耐震基準と耐震性はどのように異なり、耐震性以外にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

本記事では、旧耐震基準と新耐震基準との違い、旧耐震基準の中古マンションのメリット・デメリットについて解説していきます。

※記事内の税金・税率などは2021年5月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁などのサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。

目次

  1. 旧耐震基準の中古マンションとは
    1-1.耐震基準を見分ける方法
    1-2.新耐震基準との違い
  2. 旧耐震基準の中古マンションのメリット
    2-1.価格が割安であり下落リスクも低い
    2-2.立地や環境が良いことがある
    2-3.眺望が良いことがある
  3. 旧耐震基準の中古マンションのデメリット
    3-1.コンクリートが老朽化している可能性がある
    3-2.共用の建物設備が老朽化している可能性がある
    3-3.税制面の優遇措置が受けられない
    3-4.修繕積立金が高額になることがある
    3-5.建て替えリスクがある/a>
  4. 旧耐震基準の中古マンションを購入する際の注意点
    4-1.耐震診断を確認する
    4-2.地盤の強さを確認する
    4-3.地震に強い形・構造であるかどうかを確認する
  5. まとめ

1.旧耐震基準の中古マンションとは

旧耐震基準の中古マンションの判断は、竣工年ではなく、建築確認の日付が1981年6月以前であるか後であるかが目安となります。新耐震基準との違いは、大規模地震への対策を考慮しているかどうかという点にあるといえるでしょう。以下、詳しく解説していきます。

1-1.耐震基準を見分ける方法

旧耐震基準による建物とは、建築基準法が改正された1981年(昭和56年)6月より前に、建築確認申請が受理されたものをいいます。

建築物は各行政機関に建築確認申請をおこない、各審査機関での審査によって建築基準法の構造計算に適合しているかどうかの判定がなされます。そして、建築確認の確認済証の交付を受けてから着工となります。

この建築確認済証(建築確認通知書)の交付日によって、旧耐震基準による建物であるかどうかが判断できることになります。通常は、売主側が保存しているものですので、確認させてもらいましょう。

万一、紛失している場合は、地方自治体の窓口で建築確認台帳記載事項証明の発行を依頼することで確認することも可能です。

1-2.新耐震基準との違い

現行の新耐震基準は、震度5強程度の中規模地震に対して、ほとんど損傷を生じず、震度6強から震度7程度の大規模地震に対しては、人命に危害を及ぼすような倒壊等の被害を生じないことを目標にしています。

これに対して旧耐震基準では、1971年(昭和46年)にRC造の躯体を強化する基準が設けられており、震度5強程度の揺れでも建物が倒壊せず、破損したとしても補修することで生活が可能な構造基準として設定されています。地震へに対する強度の面で、旧耐震基準は劣ってしまう点が大きな相違点となります。

2.旧耐震基準の中古マンションのメリット

旧耐震基準の中古マンションには、次のようなメリットがあるといえるでしょう。

  • 価格が割安であり下落リスクも低い
  • 立地や環境が良いことがある
  • 眺望が良いことがある

以下で、それぞれの内容をみていきましょう。

2-1.価格が割安であり下落リスクも低い

中古マンションは、築25年程度までの価格下落幅が大きく、それ以上の築年数になると下げ止まる傾向があります。そして、築年数が古いマンションのなかで市場価格に差が生じるのは、「新耐震基準であるかどうか」という要素も大きく影響します。

旧耐震基準で建てられたマンションは、新耐震基準のマンションに比べて価格が割安である傾向があり、その後も価格が大きく下がるリスクが低いということが、メリットといえるでしょう。

2-2.立地や環境が良いことがある

近年、分譲マンションの東京都の着工シェアは下がっており、利便性の高い用地を取得して分譲マンションを供給することが難しくなってきています。

マンションは土地価値の占める割合が戸建と比べると低いとはいえ、その価値のうちに立地や環境の要素が与える影響は大きいといえます。特に、不動産投資として賃貸用にする際は、賃貸需要を大きく左右する立地や環境の良いマンションを購入することが大切になってきます。

旧耐震基準で建築された時期は、東京都に隣接する利便性の高い地域で民間デベロッパーによる大型開発が盛んであった時期であり、近年に建築されたマンションに比べて立地や環境の良いマンションも少なくありません。

このような立地や周辺環境のメリットを重視する際、旧耐震の中古マンションを選択肢に検討するケースが考えられます。

2-3.眺望が良いことがある

1970年(昭和45年)の建築基準法改正によって建築物の絶対高さ制限が撤廃され、容積率制限に置き換えられました。その結果、1968年から1973年までの間に、6階建て以上のマンションの数も増加しています。

ただし、これによって日照紛争などが増加したことから、各都市において絶対高さを制限する最高限度高度地区の指定が導入されるようになっていきます。

旧耐震基準で建てられたマンションの中には、このような絶対高さ制限の再導入を受ける前に建てられたものもあり、近年ではその地域に建てることができない高さのマンションもあります。

このようなマンションの眺望はその地域では得ることが難しいものであり、他のマンションにはない価値のある財産の一つと考える方もいます。

3.旧耐震基準の中古マンションのデメリット

旧耐震基準の中古マンションには、建築資材であるコンクリートや共用設備の老朽化リスクがあります。

また、税制面の各種優遇措置が受けられないか受けることが難しいこともデメリットといえるでしょう。その他、修繕積立金、建て替えに関するリスクがあることも念頭に置いておきましょう。

3-1.コンクリートが老朽化している可能性がある

鉄筋コンクリート造の建物の法定耐用年数は47年ですが、法定耐用年数は税務上の減価償却期間として設定されているものであり、マンションの経年劣化の進度を正確に推し測るものではありません。

マンションの老朽化によって外壁にひび割れなどが生じると、コンクリートの中性化が生じることがあります。これを適切に補修せずに放置していると、中性化や鉄筋の腐食が進み、マンションの構造の耐久性に悪影響を及ぼすこともあります。

このように、旧耐震基準のマンションでは、コンクリートの老朽化によって建物の強度が損なわれているリスクがあるといえるでしょう。

3-2.共用の建物設備が老朽化している可能性がある

マンションには共用部分に電気設備、ガス設備、給排水設備があります。これらの法定耐用年数は15年とされています。また、国土交通省のマンション管理標準指針では、電気設備は30年、ガス設備・給排水設備は20年~30年が改修あるいは交換の目安とされています。

適切な保守、管理をおこなって日常的に正常に使用できている状態であれば問題はないですが、老朽化が進んでくると、電気設備では高圧受電設備が劣化して停電事故が生じたりすることがあります。

ガス設備についてはガス配管の腐食によりガス漏れが生じたり、あるいは、給排水設備では配管の錆びや腐食、詰まりなどによって、漏水や臭気が発生したりすることがあります。

旧耐震基準のマンションでは、このような生活に必須の共用設備に問題が生じ、設備を改修・交換するなどの大規模な工事をおこなう必要性が生じるリスクがあるといえるでしょう。

3-3.税制面の優遇措置が受けられない

旧耐震基準で建てられたマンションでは、様々な税制面での優遇措置が受けられないデメリットがあります。

登録免許税・不動産取得税では、いずれも現行の耐震基準に適合する住宅と土地について、税額の軽減措置があります。また、住宅ローン控除・住宅取得資金一括贈与の特例においても、現行の耐震基準に適合する住宅であることが条件の一つになっています。

このような税制面の優遇措置について、旧耐震基準のマンションでは、原則として適用を受けられないことになります。なお、不動産取得税、住宅ローン控除、住宅取得資金一括贈与では、旧耐震基準であっても、現行の耐震基準に適合する証明書を取得することで、適用を受けられる可能性があります。

登録免許税・不動産取得税

不動産を購入すると必ず課されることになる、登録免許税・不動産取得税では、一定の条件を満たす住宅とその住宅用の土地について、軽減措置が講じられています。

登録免許税では、特定認定長期優良住宅について税率が2%のものが0.1%に軽減され、不動産取得税では、現行の耐震基準に適合する一定の住宅と土地について税額を軽減する措置があります。

※出典:国税庁「登録免許税の税率の軽減措置

住宅ローン控除・住宅取得資金一括贈与

また、所得税の住宅ローン控除では、一定の条件の下、現行の耐震基準に適合する中古マンションを取得した場合、居住開始年から10年間、その毎年末ローン残高の1%(限度額40万円)を税額から控除することができます。

他にも、贈与税の住宅取得資金一括贈与の特例で、直系尊属から贈与された自己居住用の住宅取得資金は1,000万円まで非課税となりますが、この特例を利用できるのは、現行の耐震基準を満たす住宅とその住宅用の土地とされています。

※出典:国税庁「中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)

3-4.修繕積立金が高額になることがある

マンションの修繕積立金は、長期修繕計画に基づいて修繕工事に必要な費用を算出して、各区分所有者が負担する分として決定されます。

この長期修繕計画は通常、25年程度の期間とされることが多く、定期的な調査・診断をおこなった結果や、各設備・部材などの耐用年数を踏まえて見直されていくことになります。

建物老朽化に伴い、長期修繕計画が見直されて見積もられた修繕費用がかさんでいくことも考えられ、旧耐震基準など中古のマンションでは、修繕積立金が高額になることがあるといえるでしょう。

3-5.建て替えリスクがある

老朽化したマンションでは、建て替えを検討したいところですが、マンションの建て替えについては様々な障壁があります。

たとえば、区分所有法の建て替え決議に必要な、区分所有者および議決権の5分の4以上という条件を満たすことができなかったり、専有部分の占有者に賃借人がいる場合、明け渡しを求める必要があったりする、という問題があります。

旧耐震基準のマンションを購入した後、老朽化が進んで賃貸需要が少なくなったり、あるいは売却による収益が少ないため、建て替えようとしてもなかなか建て替えが進まない状況に陥るリスクが高いと言えます。

4.旧耐震基準の中古マンションを購入する際の注意点

旧耐震基準のマンションを購入する際、特に耐震性という観点からは、耐震診断、地盤の強さ、建物の形・構造にも注意してみましょう。以下で詳細を説明していきます。

4-1.耐震診断を確認する

旧耐震基準のマンションが、現行の耐震基準に照らしてどの程度の耐震性があるのか、耐震診断によって確認することが可能です。

旧耐震基準のマンションを購入する際は、このような耐震診断を受けているかどうかを確認してみましょう。耐震診断を受けて、新耐震基準と同等の耐震性が確認されているか、あるいは、新耐震基準に適合するような改修がなされているかを確認すると良いでしょう。

4-2.地盤の強さを確認する

実際に建物がどの程度の地震に耐えることができるのか、というのは、その建物の立地する地域の地盤の強さにも影響を受けます。

内閣府のウェブサイト「防災情報のページ」では、全国を1km四方に区切ってどの地域が相対的に揺れやすいかを表した地図を作成しています。さらに、各地方自治体では、それぞれの地域での揺れやすさを細かく表した地図を作成している場合もあります。

旧耐震基準のマンションを購入する際は、このような地図を利用して、そのマンションが比較的強い地盤にあるのかどうかを確認するとよいでしょう。

4-3.地震に強い形・構造であるかどうかを確認する

建物には、地震に強い形や構造というものがあります。例えば、壁体や床板など平面的な構造体のみで構成する壁式構造と、柱と梁を一体化した骨組構造であるラーメン構造があります。ラーメン構造は間取り変更の自由度が高いメリットがありますが、壁式構造の方が地震に強い特徴があります。

その他、建物の形ができるかぎり平面的・立面的に整形に近い形であり、壁の配置につり合いの取れている建物が、比較的地震に強い建物といえるでしょう。

このように、旧耐震基準のマンションを購入する際は、マンションが比較的地震に強い形や構造であるかどうかも参考にしてみましょう。

まとめ

旧耐震基準の中古マンションは、現行の耐震基準と比較すると大規模地震への備えが充分でないことがあります。その他にも、コンクリートや共用設備の老朽化リスク、優遇税制を受けられないことや、修繕積立金、建て替えに関するリスクがあります。

しかし、価格の割安さ、立地・環境の良さ、眺望の良さなどのメリットもあります。耐震性リスクは、耐震診断、地盤の強さ、建物の形・構造などをチェックすることで、ある程度軽減することも可能です。

それぞれのメリット・デメリットを比較し、予算の範囲内で目的に合ったマンションを購入するよう心掛けてみましょう。

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佐藤 永一郎

佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。