築古の長屋を売るには?スムーズな売却に向けた注意点や手順を解説

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相続によって不動産を取得した人の中には、相続した物件が一戸建てやマンションではなく築古の長屋だったという人もいるでしょう。

築古の長屋は現行の建築基準法に対応できていないケースも多く、一般的な戸建やマンションとは異なる特殊な不動産であると言えます。そのため、売却方法を知った上で売却を進めることが重要です。

この記事では、築古の長屋をスムーズに売却する手順と注意点について解説します。

目次

  1. 長屋とはどのような物件なのか
  2. 築古の長屋を売却する際の注意点
    2-1.住宅ローンの審査に通りにくい
    2-2.隣家と壁を共有している長屋は、再建築が困難
  3. 築古の長屋の売却手順
    3-1.不動産会社に長屋の買取を依頼する
    3-2.隣家の所有者に買い取ってもらう
    3-3.隣家を買い取って全体を売却する
  4. まとめ

1.長屋とはどのような物件なのか

長屋とは、隣家と壁を共有している住戸が連続して建っている集合住宅です。集合住宅には共用部や廊下を介して各住戸に出入りするものと各住戸に外部から直接出入りするものに分かれます。

共用部を介して各住戸に出入りするのが共同住宅、外部から直接各住戸に出入りするのが
長屋です。

長屋は共同住宅より法的な制約を受けにくいため、建設費用を安く抑えることができます。長屋は昭和の時代に多く建築されていて最近は見かける機会が減ってきましたが、テラスハウスやタウンハウスなどと呼び名を変えながら、現在も一部では建てられています。

2.築古の長屋を売却する際の注意点

長屋は、昭和の時代に数多く建築されていました。しかし、築年数の経過や時代のニーズの変化によって取り壊され、一戸建てやマンションに姿を変えているケースも増えました。

そのため、新規に長屋を取得するケースは多くありませんが、これから相続によって長屋を取得するケースも少なくないでしょう。

相続した長屋を売却する場合も一戸建てやマンションのように売却が可能ですが、以下の2つの点に注意が必要です。

  • 住宅ローンの審査に通りにくい
  • 再建築が困難

それぞれの注意点について詳しく見て言いましょう。

2-1.住宅ローンの審査に通りにくい

長屋は建て替える権利を有していても、壁を共有して隣家と接しているため、隣家と調整を図りながら協力して建て替えを行う必要があります。また、築古の長屋は、現在の建築基準法に適合していない可能性もあるため注意が必要です。

長屋を購入するにあたって住宅ローンを契約しようとしても、建築基準法の観点から担保の価値が低いと判断され、住宅ローンの審査に通りにくい傾向にあります。

築古の長屋を売り出しても住宅ローンの審査に通らないことが原因でなかなか買い手が現れない可能性があるという点に注意しましょう。

2-2.隣家と壁を共有している長屋は、再建築が困難

築古の長屋の購入を検討している人の中には、リフォームやリノベーションだけなく再建築を視野に入れているケースがあります。

しかし、長屋の再建築では隣家と調整を図りながら協力して建て替えを行わなくてはなりません。再建築を行う際に切り離して別の建物とすることも可能ですが、その際も隣家と調整を図りながら協力しなければならず、通常の戸建と比較して手間と時間がかかります。

また、切り離して別の建物にする際は、各戸が建築基準法を満たさなくてはならず、土地の広さによっては再建築が困難なケースがあります。

このように、長屋は同規模の戸建と比較してデメリットとなる部分も多く、購入後の維持管理に手間がかかります。長屋を売却するにあたってはこれらの特徴を踏まえ、どのように買い手へ物件のアピールをするかが重要になります。

3.築古の長屋をスムーズに売却する3つの対策

長屋は戸建やマンションと比較して法的な規制も多く、通常の仲介では売却が長期化してしまう可能性があります。

売却がうまくいかなかった場合に備え、いくつか対策を練りながら売却を進めることが重要です。築古の長屋の売却方法として以下の3つが挙げられます。

  • 不動産会社に買取を依頼する
  • 隣家の所有者に買い取ってもらう
  • 隣家を買い取って全体を売却する

それぞれの売却方法の手順について詳しく見ていきましょう。

3-1.不動産会社に長屋の買取を依頼する

買取とは、買取を実施している不動産会社に直接不動産を買い取ってもらう売却方法です。

仲介による売却では、購入を希望する買い手が見つからない限り、売却をすることが出来ません。一方、買取の場合は不動産会社が直接買い手となるため、長屋のような売却が難しい物件の早期売却が可能になります。

不動産会社による買取は長屋を早期に売却できることで、所有している期間に発生する固定資産税や都市計画税、管理費などの費用を削減できるメリットがあります。

しかし、買取には周辺相場より買取価格が2~3割安くなるデメリットがあります。不動産会社は買い取った不動産を再販して利益を得るため、不動産会社の利益分の差額が売却価格から差し引かれることになります。

また、長屋の状態や築年数、立地などの条件によって、不動産会社が買取を実施できないケースもあります。依頼しても必ず買い取ってもらえるとは限らない点にも注意しましょう。

【関連時期】不動産買取のメリット・デメリットは?不動産会社を見分ける3つのポイントも

3-2.隣家の所有者に買い取ってもらう

次に、長屋を売却する対策として、隣家の所有者に買い取ってもらうことが挙げられます。

隣家が買い取った場合は所有権が1人に集まるため、隣家の所有者が自由に再建築できるようになります。また、最終的に売却することになった場合は売却を有利に進められる可能性があります。

このように、長屋の売却では隣家も同じような状況に悩んでいるケースもあるため、所有権をまとめることで物件の資産価値を高める対策が検討出来ます。

隣家との交流がなく、直接の交渉が難しい場合は、間に不動産会社に入ってもらうなど工夫をして交渉を進めてみましょう。

3-3.隣家を買い取って全体を売却する

隣家に長屋を買い取ってもらうと言っても、隣家に買い取る資金がなかったり、購入意思がない場合は応じてもらうことができません。

買い取ってもらうことができない場合は、自分が買取を申し出るという方法も検討してみましょう。隣家もうまく売却できずに困っている可能性があります。そのような隣家に対して買取を申し出れば、応じてもらえる可能性が高いと言えるでしょう。

隣家を買い取って所有権を1人に集め、建築基準法の要件を満たした長屋は自由に再建築できるようになり、購入希望者が増えることで売却価格の向上が期待できます。

ただし、隣家を買い取っても建築基準を満たしていなかったり、その他の要因で買い手がつかなかった場合は、うまく売却できない可能性があります。

隣家を買い取る前に不動産会社に相談し、売却が長期化してしまう要因はどこなのか、隣家の取得によって改善できるのか慎重に確認することが大切です。

まとめ

長屋は昭和の時代に数多く建築された物件であるため、これから相続で取得する方も少なくないでしょう。

相続で取得した長屋を売却する場合は、一戸建てやマンションと同様に売却できるものの、住宅ローンの審査に通りにくく、再建築が困難なケースがあり、購入者の需要が限られる可能性があります。

買い手がうまく見つからない場合、不動産会社に買取を依頼する、隣家の所有者に買い取ってもらう、隣家を買い取るなどの方法が挙げられます。それぞれの対策を並行して検討し、売却を依頼している不動産会社へも相談してから行動に移しましょう。

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矢野翔一

関西学院大学法学部法律学科卒。宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)などの保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産投資を行う。HEDGE GUIDEでは不動産投資記事を主に担当しています。専門用語や法律が多く難しいジャンルですが分かりやすくお伝えしていきます。