未成年者に不動産相続をする方法は?適用条件や注意点も

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18歳未満の未成年者は一人で契約などの法律行為を行う事はできませんが、不動産の名義人となる事は可能です。未成年者に不動産を相続させるためには、どのように手続きを行えば良いのでしょうか?

本記事では未成年者が不動産相続をする方法、親権者と未成年者が共同相続人となる場合、未成年者が不動産を相続する手順・注意点を解説していきます。

※本記事は2022年5月時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。

目次

  1. 未成年者が不動産相続をするためには
    1-1.親権者が未成年者と共同相続人になる場合
  2. 未成年者が不動産相続をする手順
    2-1.遺言書又は遺産分割協議によって相続の内容を決める
    2-2.場合によっては後見人・特別代理人を選任する
    2-3.相続登記を行う
  3. 未成年者の不動産相続における注意点
  4. まとめ

1.未成年者が不動産相続をするためには

民法の一部改正により、2022年4月1日から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられましたが、18歳未満の未成年者は一人で法律行為ができない「制限行為能力者」となります。

携帯電話を契約する、部屋を借りる、ローンを組むなどの法律行為を行うためには親権者、親権者がいない未成年者は後見人の同意が必要です。

成人になると親権者・後見人の同意がなくても法律行為が一人でできるようになり、自身の住む場所、進学・就職といった進路などを本人の意思で決定できます。

相続では遺産分割協議・相続放棄などが法律行為にあたり、未成年者は遺産分割協議に参加できず親権者、もしくは後見人が代わりに参加します。相続放棄は親権者・後見人が代理で家庭裁判所に申請を行います。

以上のような制限は伴いますが、相続を要因として不動産の所有者(名義)を未成年者とすることは可能です。

1-1.親権者が未成年者と共同相続人になる場合

例えば、被相続人(亡くなった方)が未成年者の祖父母であり養子縁組を行っていたケースや、父親が亡くなり母親と未成年者が相続人となるケースなどでは、親子が共同相続人となります。

この時、親子は一方が利益を得て他方は不利益となる「利益相反」の関係となり、親が自身の取り分を多くする一方で未成年者の取り分を少なくすることも可能であることから「特別代理人」を選任しなければなりません。(※参照:裁判所「特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合)」)

相続で「利益相反」が起こる場面は以下の例が想定されます。

  • 夫(妻)が亡くなり妻(夫)と未成年者で遺産分割協議をする
  • 複数の未成年者の法定代理人として遺産分割協議をする
  • 相続人である母(父)が未成年者についてのみ相続放棄の手続きを行う
  • 同一の親権に服する未成年者の一部の者だけ相続放棄の手続きを行う

また、親権者の債務を担保するために未成年者が相続した不動産へ抵当権を設定する際にも、特別代理人の選任が必要です。

2.未成年者が不動産相続をする手順

  • 遺言書又は遺産分割協議によって相続の内容を決める
  • 場合によっては後見人・特別代理人を選任する
  • 相続登記を行う

2-1.遺言書又は遺産分割協議によって相続の内容を決める

基本的に相続は遺言書がある場合は遺言書通りに、遺言書が無い場合には遺産分割協議によって相続人や分割方法・割合などを決定します。

なお、相続人全員が合意している、遺留分(遺族の最低限の取り分)を侵害しているケースなどでは遺言書の内容通りではなく遺産分割協議で取り決めた内容によって相続が行われることもあります。

相続人が未成年者の場合、遺産分割協議には親権者もしくは後見人が出席しますが、先述したように親権者と未成年者、後見人と未成年者で利益相反が生じる時には特別代理人を選任します。

遺産分割協議は最終的に相続人全員が合意することで成立し、取り決めた内容を遺産分割協議書として作成します。

2-2.場合によっては後見人・特別代理人を選任する

未成年者に親権者がいない場合には後見人を、利益相反が生じる時には特別代理人を選任します。

後見人の選任

後見人は未成年者の住所を管轄する家庭裁判所に、意思能力のある未成年者、または親族・利害関係者が以下の書類を提出します。意思能力とは行為の結果を判断できる精神能力を指し、知的障害・精神障害などで意思能力が無いと判断された方は年齢に関わらず法律行為が無効となります。

  1. 申立書
  2. 添付書類
    1. 未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)
    2. 未成年者の住民票又は戸籍附票
    3. 未成年後見人候補者の戸籍謄本(全部事項証明書)※後見人が法人の場合は,法人の商業登記簿謄本
    4. 未成年者に対して親権者がいないことを証明する書類(例:親権者の死亡の記載された戸籍(除籍・改製原戸籍)の謄本)
    5. 行方不明の事実を証明する書類など
    6. 未成年者の財産に関する資料(例:不動産登記事項証明書・固定資産評価証明書)
    7. 利害関係者からの申立て:未成年者との利害関係を証明する資料
    8. 親族からの申立て:戸籍謄本(全部事項証明書)

※参照:裁判所「未成年後見人選任

手数料として800円を収入印紙で支払い、連絡用の郵便切手が必要となります。

後見人には不動産相続で利益相反となる者、未成年者、家庭裁判所で免ぜられた法定代理人・保佐人・補助人、破産者で復権していない者、未成年者に対して訴訟をした者とその配偶者及び直系血族(祖父母や父母等)、行方不明者は選任できません。

後見人を選任する未成年者に対して訴訟を行っていない父母・祖父母は後見人になることができますが、利益相反が生じる際には不可能です。

特別代理人を選任

未成年者と親(又は親権者・後見人)で利益が相反する時には特別代理人を選任します。

未成年者の住所を管轄する家庭裁判所に親権者もしくは利害関係者が以下の書類を提出します。

  1. 申立書
  2. 添付書類
    1. 未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)
    2. 親権者又は未成年後見人の戸籍謄本(全部事項証明書)
    3. 特別代理人候補者の住民票又は戸籍附票
    4. 利益相反であることが分かる資料(例:遺産分割協議書案・契約書案・抵当権を設定する不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)など)
    5. 利害関係者からの申立て:未成年者との利害関係を証明する資料

※参照:裁判所「特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合)

申し立て前に入手ができない書類がある場合には、申し立て後に追加で提出可能です。また、手数料800円(収入印紙)と、連絡用の郵便切手代がかかります。

特別代理人は相続における利益相反行為で代理権を行使するために選任されますので、相続が終わった時に特別代理人の任務は終了します。未成年者(被後見人)の利益を保護するために選任されますので、未成年者との関係や利害関係の有無などを考慮し、家庭裁判所が適任であるか否かを判断します。

2-3.相続登記を行う

相続による所有権移転登記(相続登記)を行います。登記の申請は民法で規定される私的な法律行為(契約・相続放棄・遺産分割協議など)ではなく、行政機関への手続きとなりますので意思能力があれば未成年者自身でも申請ができます。親権者・後見人・法定代理人が申請を行う事も可能です。

【関連記事】不動産相続に必要な手続き・費用・税金は?名義変更前の注意点も

3.未成年者の不動産相続における注意点

未成年者が不動産を相続し、所有者となる(名義人となる)ことは可能ですが、財産管理は基本的に親権者・後見人が行います。また、不動産売却は売買契約の締結が法律行為となりますので、親権者・後見人の同意が必要です。

また、未成年者が所有権を持つことにより18歳を迎えた後の不動産の管理責任や契約行為は所有者の方に帰属することになります。実物資産である不動産は金融資産とは異なる性質を持ち、専門的な知識を必要とすることもあるため慎重に検討したいポイントとなります。

不動産の管理や売却などについては不動産会社へ、相続割合などの法律関連の相談に関しては弁護士、相続税などの税金については税理士に相談されてみると良いでしょう。

例えば、相続に強い税理士を探す場合には「税理士紹介エージェント」という、インターネットを活用した税理士紹介サービスがあります。エージェントに希望条件を伝えることでニーズマッチした税理士を探してもらうことができ、税理士の選定や面談の設定などもエージェントに任せることが可能です。

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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧

まとめ

未成年者は親権者(又は後見人)が遺産分割協議に参加する、親権者・後見人と利益相反となる場合には特別代理人を選任することで不動産相続が可能となります。

未成年者が所有者(名義人)になることはできますが、財産としての管理や売却(売買契約)は親権者又は後見人の同意が必要です。

この記事を参考に未成年者に不動産を相続させる要件や手順・注意点を知り、実際の場面で活かしていきましょう。

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田中 あさみ

経済学部在学中に2級FP技能士(AFP)の資格を取得。ライターとして不動産投資を含む投資や年金・保険・税金等の記事を執筆しています。医療系の勤務経験がありますので、医療×金融・投資も強みです。HEDGE GUIDEでは不動産投資を始め、投資分野等を分かりやすくお伝えできるよう日々努めてまいります。