米マクドナルド(ティッカーシンボル:MCD)は5月19日、撤退を決めたロシア事業をフランチャイズ契約を結ぶ現地のオーナーに売却することで合意したと発表した(*1)。撤退に伴う損失を12億~14億ドル(約1,500億~1,800億円)計上する見通しだ。
2015年より極東シベリアでマクドナルドを25店舗運営しているアレクサンダー・ゴボール氏が、ロシア国内にあるすべての店舗をひきつぎ、新しいブランドで運営する。同氏は少なくとも2年間にわたり同条件のもとで従業員の雇用を維持するほか、交渉がまとまるまでの間に発生したロシア国内45地域で働く従業員の給料にくわえ、サプライヤー向けの負債や家賃、電気・ガスなどの公共料金を支払うことでも合意した。
当局の承認を経て、今後数週間で取引を完了する見込みだ。事業売却に関する金額は明らかにされていないが、マクドナルドはロシア撤退に伴う関連損失として12億~14億ドルを計上する見通しである(*2)。同社はソ連が崩壊する直前に、西側のファストフードチェーンとしては初めてモスクワへ進出し、東西冷戦終結を象徴するものであったが、事業の売却により一つの時代の終わりを告げることになる。
マクドナルドはロシアで約850店舗を展開し、そのうち84%は直営店で残りはフランチャイズチェーン(FC)加盟店となる(*3)。また、同国内で6万2,000人の従業員をかかえる。ロシアがウクライナへ侵攻したのちの3月初旬、マクドナルドはロシアで展開する全850店を一時閉鎖する方針を明らかにした(*4)。
クリス・ケンプチンスキー最高経営責任者(CEO)は「食料へのアクセスを提供し、何万人もの一般市民を雇用し続けることは正しいと主張する人もいるかもしれないが、ウクライナでの戦争によって引き起こされた人道危機を無視することはできない」と述べた(*5)。
米イェール大経営大学院によると、ロシアからの撤退や事業停止などの事業見直しを表明した企業はすでに1,000社を超えた(*6)。23日にはスターバックス(SBUX)がロシア事業からの撤退を表明(*7)。ウクライナ侵攻の長期化により、各社がグローバル戦略の見直しを迫られている。
【参照記事】*1 マクドナルド「McDonald’s agrees to sell Russian business to current licensee Alexander Govor」
【参照記事】*2 マクドナルド「McDonald’s To Exit from Russia」
【参照記事】*3 CNBC「McDonald’s to sell Russian business to existing Siberian licensee」
【関連記事】*4 米マクドナルド、ロシア全850店を一時閉鎖。コカ・コーラやスタバなども
【参照記事】*5 マクドナルド「An update on our operations in Russia」
【参照記事】*6 イェール大経営大学院「Almost 1,000 Companies Have Curtailed Operations in Russia—But Some Remain」
【参照記事】*7 スターバックス「Update to Starbucks partners on our business in Russia」
HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム
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