親が亡くなった時に備え「相続税対策と収益性を両立した土地活用がしたい」とお考えの方もいらっしゃることでしょう。
しかし、相続税は基礎控除・各種控除があるため、相続税の支払い義務が発生するケースは多くありません。まずはおおよその遺産総額を試算し、控除額の範囲内に収まるか調べてみることが大切です。
相続税が課される可能性が高い方には、3つの土地活用方法をご紹介します。相続税が発生する条件や、相続税対策と収益性を兼ね備えた土地活用方法等について詳しく知りたい方は、ぜひご参考下さい。
目次
1.まずは相続税を支払う必要があるかを調べる
相続税には基礎控除があり、遺産総額が基礎控除と各種控除額の合計を上回った場合に相続税の支払い義務が生じます。
国税庁の発表した2018年の「相続税の申告事績の概要」によると相続税を支払った人の割合は8.5%で、相続税の支払い対象となるケースは決して多くありません。まずは相続税を支払う必要があるかどうかを計算してみましょう。
基礎控除額は以下の式で計算できます。
3000万円+(600万円×法定相続人の数)
※国税庁「相続税の計算」を参照
例えば法定相続人が、配偶者と子供の2人の場合、基礎控除額は4200万円となります。遺産総額が4200万円以上である場合に相続税が課され、相続税を支払う可能性があります。
その他配偶者控除や未成年者控除、障害者控除等を差し引いた結果、税金の対象となる金額が生じる場合相続税を納付する事となります。
相続税が基礎控除の枠内に収まるのであれば、相続税対策は行う必要が無いと言えます。相続税が発生しそうなケースで、相続税対策を含んだ土地活用を検討しましょう。
2.相続税対策と収益性を両立させる土地活用の事例3つ
相続税対策に一定の効果があり収益を出せる土地活用方法として、今回は賃貸・高齢者施設・太陽光発電経営の3つを取り上げています。
それぞれの特徴について、詳しく見て行きましょう。
2-1.賃貸経営
賃貸経営は土地の用途が「宅地」となり、様々な税制メリットが受けられる可能性のある土地活用方法です。
例えば、建物は「固定資産税評価額」が相続税評価額とみなされますが、固定資産税評価額は新築の場合工事金額の約60%となる傾向があります。
また、土地は相続税路線価をもとに計算され、実際の土地売買価格から20%ほど低い評価になる傾向があります。
これら、建物と土地の税計算の基となる評価額と実際の売買取引額の差額分、相続税の対象となる金額を減額できる可能性があります。また賃貸用の土地は「貸家建付地」として計算され、相続税評価額が一定の割合で減額されます。(※国税庁「貸家建付地の評価」を参照)
一方、賃貸経営の収益性に関しては、都市圏の比較的に資産価値が高い区分マンションは表面利回り3~5%程度、郊外のアパート一棟は5~8%程度が一定の目安となります。
ただし、賃貸経営の収益性は物件により左右される点が大きく、物件の条件や運営状況によって利回りは大きく変動します。賃貸経営を行う際は不動産賃貸事業の調査・勉強をすることが大切です。
不動産会社によっては物件選定から確定申告、運営・管理業務までほとんどの業務を委託する事が可能ですが、委託費用がかかります。これらの費用や手間を考慮したうえで慎重に検討してみましょう。
【関連記事】放置している空き家で賃貸経営はできる?メリット・デメリット、手順も解説
2-2.高齢者施設経営
高齢者施設には「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」「有料老人ホーム」等があり、高齢化が進む中、多くの需要を見込める可能性がある土地活用方法と言えます。
サービス付き高齢者向け住宅とは、介護・医療と連携したサービスを提供するバリアフリー構造の住宅のことを指します。サービス付き高齢者向け住宅を運営する場合、国土交通省の登録制度に登録する事で情報を発信することも可能です。
ただし床面積25㎡、便所・洗面設備等の設置等の一定の条件をクリアする事が必要で、医療・介護スタッフの確保も課題となります。
有料老人ホームも同様の高齢者向けサービスですが、入居者と賃貸借契約を結ぶサ高住と異なり、利用者との利用契約を結ぶ契約形式となります。
これらの活用手段の相続税対策としては、賃貸経営と同様に建物の固定資産税評価額が工事金額の約60%となります。
また、サブリースで運営した場合、「貸家建付地の評価」で計算式に含まれている「賃貸割合」が100%となり、評価額の減額割合が大きくなります。固定資産税や不動産取得税も軽減制度があり、建設にあたり一定の条件を満たすことで補助金が出る自治体もあります。
ただし、これらの運営には広い土地が必要で、初期費用が多額になる事からハイリスク・ハイリターンな事業と言えます。
2-3.太陽光発電経営
太陽光発電経営は、土地の上に太陽光発電設備を建設し、国の固定買取価格制度(FIT)で電力を買い取って貰い、売電収入を得て利益を出す仕組みとなります。
FIT制度により20年間一定の価格で買い取って貰えるため、定期的に一定額の収入が見込めるメリットがあります。
太陽光発電設備は相続の際、取得価格から「減価償却費」を差し引いた額が財産として評価されます。太陽光発電装置の耐用年数である17年間減価償却費の計上が可能で、耐用年数に応じた償却率で計算します。
12.5~100%の割合で、償却率が定められており、設備が新しければ新しいほど償却率は高くなります。設備部分が100%償却した場合、設備に対しては相続税が課されないケースもあります。
土地も賃貸時と同じく相続税路線価で評価されるため、公示価格の80%程度となります。
太陽光発電も他の事業経営と同様に経営のノウハウと労力が必要となりますが、業者に業務を委託する事が可能です。忙しい方や土地が遠方にあり自身で管理が出来ない方は検討してみましょう。
ただし、太陽光発電は他の活用と比較して収益性は劣り、固定買取価格制度の買取価格も年々下落傾向にあります。他の活用方法と同様、リスクのある投資であると認識し、慎重に検討することが大切です。
3.相続税対策だけを目的にしない
上でご紹介した賃貸経営、高齢者施設経営、太陽光発電経営は業者に委託しない場合、事業のノウハウや知識だけでなく税務面、法人化等、業務は多岐に渡ります。事業であるために、収支がマイナスになるリスクも存在します。
相続税対策だけを目的としてしまうと、その後の経営に行き詰まる可能性や事業破綻や制度改正、災害等のリスクが降りかかる事態に陥ってしまった際に対応することが難しくなります。
相続税の減額が出来たとしても、トータルの収益がマイナスとなる可能性があります。まずは、所有している土地に適した事業経営で利益を生み出す事を優先し、相続税対策は副次的効果と捉えることが大切です。
複数の土地活用方法から比較検証する
土地活用を検討する際は一つの活用方法だけにこだわらず、複数の活用方法を比較して慎重に検討することが大切です。どのような土地活用でも投資金や維持費が回収できないリスクがあり、このようなリスクは土地の特徴によって大きく差が出てくるためです。
複数の活用方法を比較する際は、「HOME4U(土地活用)」の利用を検討してみましょう。HOME4Uではマンション経営やアパート経営、駐車場経営、賃貸併用住宅、大規模施設など土地の活用方法を選択することで、最大7社からの収益最大化プランを比較することが可能です。
また、土地は都市計画法や建築基準法等の利用規制によって、建築可能な建物用途や建物の階数等に制限を受けています。土地の利用規制についてもHOME4Uを通して無料で診断できるため、土地調査の手間を省くことが出来ます。
【関連記事】HOME4U土地活用の評判は?メリット・デメリットや利用の流れも
4.まとめ
将来財産を相続する予定の方は、まず遺産総額を試算し控除額内におさまるか調べてみましょう。控除額内におさまる予定であれば、相続税対策を行う必要性は少ないと言えます。
また、収益性と相続税対策を同時に見込める土地活用の方法として、本記事では「賃貸・高齢者施設・太陽光発電経営」の3つを取り上げましたが、相続税対策のみを目的として事業を始める事は避け、土地に適した活用方法を模索することが重要です。
事業経営の知識や意欲がある方があらかじめリスクがある事を踏まえた上で、自身に合った活用方法を選択してみましょう。
田中 あさみ
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