不動産を売却する際は、まず不動産会社に物件の査定を依頼し、売却価格を出します。その上で広告を出し買主の問い合わせを待つ形となります。この際、適正な売却価格は不動産会社に頼らずに個人でも計算して算出することが可能です。
実際に算出した価格で売りに出さないとしても、おおよその価格帯は自分で把握しておいた方が、その後の売却活動は有利に働くことが考えられます。では、物件の価格はどのようにして試算すれば良いのでしょうか。
この記事では適正な売却価格を知っておくと役に立つ理由を確認した上で、収益不動産の価格を知る方法と自分で価格を試算する方法をご紹介します。
目次
- 不動産の売却価格査定の流れ
1-1.売却をする際の査定は2回行われる
1-2.査定価格で不動産が売却できるとは限らない - 不動産査定を依頼する前に適正価格を知っておくと得られるメリット
2-1.査定価格は不動産会社によって違う
2-2.不動産会社との交渉だけでなく買主との交渉にも役に立つ - 不動産の適正な売却価格を知る方法と査定の仕方
3-1.知っている不動産会社に聞く
3-2.大手不動産情報サイトで調べる
3-3.不動産一括査定サイトを利用する - 自分で不動産価格を試算する方法
4-1.原価法
4-2.取引事例比較法
4-3.収益還元法 - まとめ
1.不動産の売却価格査定の流れ
まず、不動産売却をする際の査定の流れについて確認してみましょう。
1-1.売却をする際の査定は2回行われる
不動産の売却をする際は、まず不動産会社に査定を依頼します。その際の査定は、簡易査定と訪問査定の2回に分けて行われます。
簡易査定は不動産の物件情報やエリアの情報から、机上で価格を試算する方法です。不動産会社が物件の積算評価額や過去の取引事例、周辺の家賃相場などから価格を机上で計算し、売主がその価格で話を進めても良いと思った場合は、不動産会社の担当者が物件を見に行き、より詳しく価格を査定します。
現場では物件以外にも駅からの距離や周辺環境も確認し、それらの情報も考慮して査定されます。
1-2.査定価格で不動産が売却できるとは限らない
価格査定後、売り出し価格を決めたら、不動産会社に募集広告を出してもらう形となります。しかし最終的に不動産を売却する際の成約価格は、査定価格をもとにした売値のままとは限りませんので、認識しておきましょう。
募集広告を見た買主が不動産会社に問い合わせ、内覧などを経て契約まで至る流れになりますが、その間に買主が値下げ交渉をしてくる可能性があります。その内容や条件によっては、価格を下げて売却するという判断を行う場合もあるでしょう。
この際やみくもに値下げをしてしまうと、売却後に、思ったより手元に残るお金が少なかった、という状況になる可能性もあります。このようなことにならないためには、売却の計画を立てる際に、いくらまで値下げに応じられるかを考慮して計画することが大切です。
2.査定を依頼する前に価格を知っておくと得られるメリット
査定を依頼する前に価格を知っておくと、どのような点でメリットがあるのでしょうか。
2-1.不動産査定価格は不動産会社によって違う
不動産会社に査定を依頼した場合に提示される価格は、全て同じというわけではなく、会社によって査定価格は異なります。仮にある不動産会社が査定した価格が適正価格と大きくかけ離れている場合、自分でおおまかな査定価格を知らなければ、気付かずにそのまま話を進めてしまう可能性があります。
適正価格と大きく異なる価格で話を進めてしまわないためにも、あらかじめ自分で相場価格を把握しておくことが大切です。これによって、長期間売れない状況に陥ったり、必要以上に安く売ってしまったりすることを防げるようになります。
2-2.不動産会社との交渉だけでなく買主との交渉にも役に立つ
適正価格を知っておくメリットには、不動産会社とのやり取りの際だけではなく、買主との交渉にも役に立つことが考えられます。買主から価格交渉をされた際に、物件の適正価格を事前に知らなければ、売却を優先するあまり、むやみに価格を下げてしまう可能性があります。
しかし、自分で価格を試算している場合は、納得できなければ価格交渉に応じない選択肢が取りやすくなります。
買主は価格を下げたいと考えるので、中には妥当性のない値下げ交渉をしてくる場合もあります。そういった交渉に流されないためにも、自分で査定価格を試算しておくことは役に立つと言えるでしょう。
3.不動産の適正な売却価格を知る方法
不動産の適正な売却価格を知るにはどのような方法があるのでしょうか。具体的な方法について見てみましょう。
3-1.知っている不動産会社に聞く
もし、付き合いのある不動産会社があるなら、マンションの売却価格がいくらになるのかを聞いてみると良いでしょう。ただし、どの程度本格的にヒアリングするかで、査定の仕方も変わってくると考えられますので、大まかに知りたいのか、それとも価格が良ければ売却を考えているのかなど、売却への意向を伝えて依頼するようにしましょう。
なお、不動産会社によって事業内容が違いますので、売買を本格的に行っているかどうかを調べてから確認をするようにしましょう。また、本格的に売却活動をする際は、1社だけでなく複数の不動産会社に査定を依頼することが大切です。
3-2.大手不動産情報サイトで調べる
大手の不動産情報サイトで、エリアや築年数、広さなどで絞って類似している物件の価格を調べることで、自分のマンションの大まかな価格を知ることができます。また、サイトによっては詳細な設定をして相場を調べることができるものもあります。
ただし物件によっては相場価格とはかけ離れた売主の希望価格で販売されている場合もあるため、サンプル数によっては実際にその価格でニーズがあるのかどうかがわかりにくい可能性もあります。
3-3.不動産一括査定サイトを利用する
不動産一括査定サイトを使って査定依頼をすると、そのサイトで契約している複数の不動産会社から査定価格を提示してもらうことができます。複数の会社の査定価格を知ることで、大まかな相場価格が把握できたり、最高値や最安値を確認しながらより適正な価格帯を把握したりすることができます。
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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧
一社ずつ不動産会社に査定を依頼するのは大きな手間がかかりますが、一括査定サイトならサイト上で個人情報と物件情報を入力するだけで、すぐに査定結果を受け取ることができます。無料で利用できますので、活用を検討してみると良いでしょう。
4.不動産価格を試算する方法
次に、不動産価格を試算する方法について見てみたいと思います。不動産の特徴に合わせて3種類の計算方法がありますので、どのようなものかを見てみましょう。
4-1.原価法
原価法とは同じ物件を建てるのにいくらかかるか、という再調達価格を出し、それを築年数の経過によって老朽化し価値が下がっている分を差し引いて価格を算出する方法です。この方法で算出された価格を積算価格と言います。原価法は主に金融機関が物件の評価を出す際に使う計算方法です。
4-2.取引事例比較法
取引事例比較法は、物件自体の価格ではなく、周辺の類似物件の取引価格をもとに、個別の要因を考慮して価格を出す方法です。この方法は主に自宅として使用する住宅を査定する際に使われる方法です。この方法で算出された価格のことを比準価格と言います。
4-3.収益還元法
収益物件の価格を算出する際に使われる計算方法です。収益還元法には直接還元法とDCF法の2種類があります。どちらも得られる収益から価格を試算しますが、現状の収益から出す方法が直接還元法、将来得られるであろう収益から逆算して現在の物件価格を出す方法がDCF法になります。以下に計算式を記載しておきます。
・直接還元法
物件価格=(年間の家賃収入-経費)÷還元利回り×100
・DCF法
物件価格=年間の収益÷(1+割引率)^n
(nはべき乗で、所有年数を入れる)
DCF法での計算が難しい場合は、直接還元法で試算するといいでしょう。
5.事例をもとに収益不動産の価格を試算
では、事例をもとに収益不動産の価格を試算してみましょう。収益不動産の場合、収益還元法が使われますので、ここでは収益還元法の直接還元法を使って出してみます。
仮に年間の家賃収入120万円、経費5万円、周辺の利回りの相場がおよそ6%とした場合の物件価格を試算してみます。試算方法は以下のようになります。
物件価格=(120万円-5万円)÷6%=1,916.6万円(小数点2位以下は切捨て)
この場合の物件価格は1,916.6万円になります。この物件を売却する場合、事前にこの価格を把握した上で売却活動をすることで、値下げ交渉などで不利にならず、売却活動を円滑に進められると考えられます。
ただし、収益還元法で算出された不動産価格が相場価格であるとは限らない点に注意が必要です。不動産の利回り相場は立地だけでなく建物の築年数、設備のスペック、空室率などの指標によって大きく左右されるため、単純に割り戻した価格とは乖離が出てしまうことも少なくありません。
自分で調査した価格は参考としてとらえ、査定価格と大きな乖離が出た際など、不動産会社へ査定根拠を確かめる時に利用すると良いでしょう。「周辺の利回り相場6%で計算したところ1,916.6万円になったのですが、査定額が大きく異なるのはなぜでしょうか?」などのように質問してみると、スムーズに回答してもらえる可能性があります。
まとめ
収益物件を売却する際の価格を自分で求めるべき理由と、自分で計算する方法についてご紹介しました。
査定価格は試算する不動産会社によって異なりますので、その査定価格になった理由を確認し、納得した上で売却活動をすることが大切です。しかし、理由を聞いても、おおまかな価格を把握している場合と、していない場合では理解力が変わります。そのようなことから、できるだけ価格は自分で計算したり、調べたりした上で売却活動に取り組むようにしましょう。
西宮光夏
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