2023年4月29日に入国制限解除を含む新型コロナウィルス感染症の水際対策が終了してから、外国人旅行者数は増加傾向にあります。外国人観光客数が高いレベルで維持されていることから、不動産投資の対象として注目されているのがホテル投資です。
今回のコラムでは、ホテル投資のメリット・デメリットを紹介し、個人投資家がホテル投資に参画する方法も解説していきます。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- ホテル投資のメリット
1-1.外国人観光客の利用が見込める
1-2.収益性が高い
1-3.自分に合った投資スタイルが選べる - ホテル投資のデメリット
2-1.経営スキルのレベルが高い
2-2.初期投資が高額になりやすい
2-3.人件費やランニングコストがかかる
2-4.出口戦略が難しい - 個人でホテル投資に参画する方法
3-1.既存のホテルを購入する
3-2.ホテルコンドミニアムを購入する
3-3.ホテル特化型リートに投資する
3-4.クラウドファンディングを利用する
3-5.民泊を運営する - まとめ
1 ホテル投資のメリット
ホテル投資とは、ホテルを購入して、管理・運用することで利益を得る投資手法です。どのようなメリットがあるのか、詳しく見てみましょう。
1-1 外国人観光客の利用が見込める
ホテルと言っても、シティホテルやビジネスホテルといった大規模なホテルだけではなく、ゲストハウスやマンスリーホテル、民泊といった小型のホテル・宿泊施設に対する需要もあります。
日本政府観光局によると、2023年上半期の外国人旅行者は2019年以来4年ぶりに1,000万人を突破しています。2023年8月の訪日外国人も2,156,900人(2019年同月比85.6%)で、新型コロナウイルス感染症の拡大以降初めて2019年同月比8割超となっています。
訪日する外国人観光客がコロナ前の水準に近づいてきていることから、今後もさらにホテルに対する需要が上昇すると考えられます。
1-2 収益性が高い
賃貸経営は所有する不動産を貸すことで1か月ごとの家賃を得るビジネスモデルですが、ホテル投資は短期の宿泊者に宿泊施設を提供するビジネスです。1日ごとの短期利用のため単価が高く、空室期間が短くなるほど収益性が高くなるという特徴があります。
例えば、賃貸経営では1LDKの部屋を1カ月10万円で貸すことで、毎月10万円の収益があります。しかしホテルでは、1LDK相当の部屋の利用料を1泊1万円に設定した場合、利用者が1カ月間宿泊してくれれば30万円の収益が上げられることになります。必要経費にもよりますが、高利回りを目指すこともでき、ハイリターンの収益モデルと言えます。
1-3 自分に合った投資スタイルが選べる
ホテルと言ってもさまざまなタイプがあるため、自分の方針に合った投資スタイルを選ぶことができます。本格的にホテル運営を手掛けたいのであれば、土地取得からホテルを建設する方法もありますが、手軽に投資したいのであれば賃貸物件を転貸したり、宿泊施設を対象とした金融商品を購入することで間接的に投資ができる手法もあります。
主なホテル投資の種類は以下になります。
- ホテル運営
- ホテルコンドミニアム
- ホテル特化型リート
- クラウドファウンディング
- 民泊運営、など
投資先によってリスクとリターンの度合いが異なるのも特徴で、「低リスクに長期的な収益を上げたい」「ホテル投資に参画したい」といったように投資家の投資方針や目的などに合わせて選ぶことができます。
2 ホテル投資のデメリット
一方、ホテル投資にはリスクやデメリットもあります。詳しく見てみましょう。
2-1 経営スキルのレベルが高い
賃貸経営の場合は管理会社が実際の管理を担うことが多いため、オーナーは快適な暮らしができるような部屋を提供することが賃貸経営の中心になります。一方、ホテル運営は利用者が快適に宿泊するための設備を用意するだけではなく、ホスピタリティのある人材を配置・育成したり、付加価値を感じさせるようなサービスを用意する必要もあります。
また、賃貸契約によって一定の利益を見込みやすい賃貸物件とは異なり、観光には繁忙期があるため季節によって収益に幅ができるといった特徴もあります。そのため賃貸経営に比べて、高い経営スキルが求められます。
2-2 初期費用が高額になりやすい
賃貸経営は予算に合わせて投資先の不動産を選ぶことができますが、ホテル投資の場合は選べる物件が少ない傾向があります。例えば、中古マンションで区分投資を始める場合、数百万円の物件が市場で販売されていますが、区分販売されているホテル投資の選択肢はそれほど多くありません。
ホテル1棟を購入するケースでは、初期費用はさらに高額になります。客室だけではなく、エントランスロビー、浴場、貸し室、レストランなども設ける場合もあり、初期投資の資金調達段階から高い事業性を求められるでしょう。
ホテル運営にはノウハウが必要なため、経営の未経験者がすぐに利益を出すことは難しく、金融機関の融資審査が厳しくなりがちなのもデメリットの一つです。
2-3 人件費やランニングコストがかかる
賃貸物件に比べて、ホテルを運用するには維持管理費が高額になることが想定されます。ホテル運営にかかる主なランニングコストは下記になります。
- 電気使用量
- 水道使用量
- 備品代
- 設備の清掃・メンテナンス費用、など
小規模なホテルであっても、オーナー1人で運用することは難しく、そのため人材を雇う必要があります。インバウンド需要が見込める地域であれば、他言語に対応できる人材も必要で、人件費が高くなる可能性もあります。
人件費やランニングコストがかかるホテル投資の場合、稼働率が低下すると赤字経営に陥る危険性があり、賃貸経営に比べて経営リスクが高いと考えられます。
2-4 出口戦略が難しい
ホテルを所有して行うホテル投資の場合、出口戦略の選択肢が限られてしまいます。宿泊客が快適に過ごせるように施設が設けられているホテルはマンションなどに転用することは難しい上に、購入者が限定されるからです。
また、ホテルとして需要のある場所でも、住宅地として需要のある場所とは限りません。そのため、建物を解体して更地で売却するケースでもスムーズに進むかは不透明なのです。
このように出口戦略の選択肢が限られている中での投資は、将来的にリスクが高くなる可能性があると考えられます。
3 個人でホテル投資に参画する方法
個人でホテル投資に参画するには、ホテルを購入すること以外にもさまざまな方法があります。代表的な5つの方法について紹介していきます。
3-1 既存のホテルを購入する
営業しているホテルを購入して、ホテルの運営を引き継ぐ方法です。初期費用は高額になりますが、すでに営業しているホテルを活用することができるため、大規模な修繕やリフォームの必要はなく、人材を引き継ぐことも可能なケースもあります。経営状況が良いホテルであれば、黒字経営のまま引き継ぐことが可能で、利益もすぐに出せる可能性があります。
ただし大規模なホテルを購入するには大規模な資金調達が必要になります。個人で取得するには費用が高額なため、ゲストハウスや貸別荘などからスタートする方法もあります。
3-2 ホテルコンドミニアムを購入する
ホテルコンドミニアムは、欧米では広く利用されていますが、日本国内では比較的新しい不動産投資商品です。「分譲ホテル」と言われるリゾート地のホテルの一室を購入し、自身が使用しない時に宿泊施設として貸し出すという投資方法です。
購入時にホテル運営会社と「ホテル賃貸借契約」を交わすことで、不使用時の客室稼働に関わる業務はすべてホテル運営会社が担うことになります。そのため主なメリットは以下になっています。
- オーナー自身がリゾート地を楽しめる
- 使用しない期間に貸し出すことで賃料収入が得られる
- 貸出に関する業務はホテル運営会社が行う
- ホテル内のレストランやプールといった施設が利用できる、など
部屋の貸出に関する業務はホテル運営会社が行うためオーナーの手間はかかりませんが、賃料はホテル運営会社から還元される仕組みになっているのが注意点です。収益性や事業性について適切に確認しましょう。
3-3 ホテル特化型リートに投資する
不動産投資信託(リート)とは、不動産を中心に運用する資産運用会社に投資する金融商品です。その中には、ホテルや旅館を展開しているホテル特化型リートという銘柄があり、これらの銘柄に投資することでホテル投資に参画することができます。
投資家から集めた資金をもとに資産運用会社がホテルや旅館運営を行うというもので、投資家がホテルを所有するわけではありません。投資信託と同じように、資産運用会社が得た収入から経費などを差し引いた分が、投資家に分配金として分配されることになります。
下記は、国内の不動産投資信託市場で取引ができる代表的なホテル特化型リートです。
- いちごホテルリート(証券コード:3463)
- 星野リゾート・リート(証券コード:3287)
- ジャパン・ホテル・リート(証券コード:8985)
- 大江戸温泉リート投資法人(証券コード:3472)
- 森トラスト・ホテルリート投資法人(証券コード:3478)
ホテル運営に関するノウハウなども不要で、個人投資家として始めやすいホテル投資の一つです。
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3-4 クラウドファンディングを利用する
複数の投資家から集めた資金をもとに、投資用マンションなどの賃貸物件の運営を行うのがクラウドファンディングですが、投資対象をホテルに限定しているファンドもあります。一口単位でホテルに投資することができ、口数に合わせて収益が分配されます。
不動産投資信託との違いは、企業ではなくホテル単位で投資ができるため、案件ごとの情報をもとに投資先を選択できることです。また開業の準備段階からファンドが募集されることが多い、口数単位で少額から始めやすい、というのもクラウドファンディングによるホテル投資の特徴です。
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3-5 民泊を運営する
民泊とは、所有するマンションやアパートの一室を、宿泊施設として旅行者に貸し出す仕組みです。その際、宿泊者から宿泊料を徴収することで利益を得ることができます。
空き家や空室、自宅の一部などを活用し、家具や家電、リネン類など最低限の設備を導入するだけで始められます。また、業務内容は以下のようになっており、オーナー一人でも対応することが可能です。
- 宿泊客の募集
- 受付業務
- チェックアウト後の清掃
- 消耗品の補充
- 問い合わせへの対応、など
オーナーの負担を軽減させるには、管理業務を民泊運営代行会社に外注することもできます。
ただし、民泊は住宅宿泊事業法(民泊新法)に則って運営することになっており、「営業日数が年間180日まで」などホテルとの違いがいくつかあります。許認可の不要な賃貸経営とは異なり、民泊新法や旅館業法に基づいて営業許可を受ける必要があるのも注意点です。
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まとめ
日本では人口減少が顕著になっている一方、海外からの観光客が継続的に増えており、ホテル投資は今後も高い収益が見込める可能性があります。実際にホテルを購入してホテル運営を始める方法から、不動産投資信託やクラウドファウンディングといった金融商品を購入する方法など、ホテル投資への参画方法が多彩なのも特徴です。
ただし、実際にホテル運営するケースでは、高度な経営ノウハウや経営スキルが必要になるなど、オーナーの負担が大きくなるデメリットもあります。事業性や将来性を加味した上で、慎重に検討されると良いでしょう。
倉岡 明広
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