家の売却、住宅診断(ホームインスペクション)のメリット・デメリットは?

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宅地建物取引業法の改正によって、住宅診断(ホームインスペクション)に関連する規定が不動産の契約書に盛り込まれるようになりました。

住宅診断とは何なのか、住宅診断にどんなメリットとデメリットがあるのか気になっている人も多いと思います。

この記事では、これまでの契約と何が違うのか知りたい方や、住宅診断という言葉を初めて聞いたという方に向けて、住宅診断とは何なのか、住宅診断のメリットとデメリットを解説します。

目次

  1. 住宅診断(ホームインスペクション)とは
  2. 住宅診断のメリット
    2-1.住宅売却後のトラブルを軽減できる
    2-2.不動産の売却をスムーズに行いやすくなる
  3. 住宅診断のデメリット
    3-1.完全に劣化を把握できるわけではない
    3-2.住宅診断を受けるための費用がかかる
  4. 買主に住宅診断を依頼された場合はどうするか
  5. まとめ

1.住宅診断(ホームインスペクション)とは

住宅診断(ホームインスペクション)とは、中古住宅の売買のトラブルを未然に防ぐために建築士が建物の検査や調査を行うことです。

中古住宅の流通が多いアメリカは住宅診断が広く普及しています。日本は新築住宅の方が中古住宅よりも需要が多いため、中古住宅の流通を促すために住宅診断を普及する内容が宅地建物取引業法に盛り込まれました。

住宅診断では、以下のような構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分に調査を行います。

  • バルコニー
  • 屋根
  • 外壁
  • 基礎
  • 土台
  • 内壁
  • 天井

住宅診断は比較的短時間で行う簡単な検査です。住宅診断の実施は義務ではありませんが、不動産会社に仲介を依頼する際に住宅診断業者の斡旋、重要事項説明時に住宅診断実施の有無と結果の説明が行われます。

売却した不動産に瑕疵が潜んでいた場合、補償を受けることができる既存住宅瑕疵保険に加入するには住宅診断の実施が必須となっています。これまでと比較して中古住宅の売却における住宅診断の必要性が高まったと言えるでしょう。

2.住宅診断のメリット

住宅診断は中古住宅を売却する場合に、売却した中古住宅に瑕疵が潜んでいてトラブルに発展することを未然に防ぐための検査や調査であることが分かりました。

住宅診断は義務化されているわけではないため、実施すべきなのか悩んでいる人も多いと思います。住宅診断を実施することにはどのようなメリットがあるのでしょうか?

住宅診断を実施するメリットとして、以下の2つが挙げられます。

  • 売却後のトラブルを軽減できる
  • 売却をスムーズに行いやすくなる

それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。

2-1.住宅売却後のトラブルを軽減できる

売却した不動産に何らかの瑕疵が潜んでいた場合、これまでは瑕疵担保責任という法律が適用されていました。しかし、2020年4月1日に民法が改正され、瑕疵担保責任は契約不適合責任という法律に変わりました。

瑕疵担保責任は売主が負うのは原則隠れた瑕疵に限られていましたが、契約不適合責任は明示されていない瑕疵に関しては原則全ての責任を負わなくてはなりません。

【関連記事】売主が不利に?不動産売却の契約不適合責任(瑕疵担保責任)を解説

以前よりも売主に課される負担が大きくなっているため、瑕疵が潜んでいないかどうかを売却前にしっかり確認しておく必要があります。住宅診断を実施すれば、おおよその瑕疵を把握できるため、売却後のトラブルを軽減できるでしょう。

2-2.不動産の売却をスムーズに行いやすくなる

住宅診断を実施している中古住宅かどうかは、重要事項説明の際に分かります。住宅診断が実施されている中古住宅は、建物の状態を分かった上で購入を決めることが可能です。

また、劣化がある場合はそれを修繕するためにいくら費用がかかるのかを把握できるため、リフォーム費用の負担をどのように精算するのかを決めやすいと言えます。

また、既存住宅瑕疵保険に加入している場合は、万が一瑕疵が潜んでいても補償の範囲内で修繕を受けることができます。

住宅診断が実施されている中古住宅は、実施されていない中古住宅よりも需要が高いため、売却をスムーズに行いやすいことがメリットと言えるでしょう。

3.住宅診断のデメリット

住宅診断には、売却後のトラブルを軽減できる、売却をスムーズに行いやすくなるといったメリットがありましたが、以下のようなデメリットも伴います。

  • 完全に劣化を把握できるわけではない
  • 住宅診断を受けるための費用がかかる

それぞれのデメリットについて詳しく見ていきましょう。

3-1.完全に住宅の劣化を把握できるわけではない

住宅診断は瑕疵が潜んでいた場合に費用負担が大きくなる構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分に限って検査や調査を行います。調査と言っても、目視や計測によって行う調査が主体となるため、完全に劣化を把握できるわけではない点に注意が必要です。

また、設備の瑕疵の有無に関しては調査が行われません。設備に劣化が潜んでいた場合でも住宅診断の結果には反映されないため、設備の劣化が買主に指摘されるリスクは残ります。

住宅診断を受けたからと言って、完全に劣化を把握し、中古住宅の売却におけるトラブルを完全に防ぐことができるというわけではないので注意しましょう。

3-2.住宅診断を受けるための費用がかかる

住宅診断は専門家である建築士に検査や調査を依頼するため、基本的に無料ではありません。調査の内容で費用は大きく異なりますが、戸建住宅の住宅診断は5万円程度の費用を想定しておく必要があります。

大手不動産会社の中には自社の住宅診断部門で無料の住宅診断を実施しているところもあります。ただし、無料の住宅診断を受けるには、売却をその不動産会社に依頼することが前提となるケースが多いでしょう。

少しでも住宅診断にかかる費用を抑えたい人は、このような大手不動産会社の無料診断を利用するのも1つの選択肢と言えるでしょう。

【関連記事】大手6社によるマンション売却一括査定、「すまいValue」の強みと注意点

4.買主に住宅診断を依頼された場合はどうするか

中古住宅を売却するにあたり、買主から住宅診断を行うように依頼される場合があります。このような場合は、売却後のトラブルを未然に防ぐため、スムーズに売却を進めるためにも住宅診断を行うことを検討しても良いでしょう。

しかし、住宅診断は売主が負担しなければならないというルールは設けられていません。買主から住宅診断を依頼されたのであれば、話し合いで買主もしくは売主のどちらが負担するのかを決める必要があるでしょう。

住宅の規模や築年数、売却価格によって住宅診断の費用をどちらが負担するのかはケースバイケースとなります。仲介を依頼している不動産会社へ相談しながら慎重に交渉を進めて行きましょう。

まとめ

宅地建物取引業法の改正で住宅診断に関する内容が新たに盛り込まれました。住宅診断の斡旋や住宅診断の実施の有無が重要事項説明の際に説明されるようになりました。

住宅診断を実施すれば、売りに出されている他の中古住宅との差別化を図ることができる、瑕疵が潜んでいたことによって責任を負うリスクを軽減できます。

住宅診断は行うことが義務化されているわけではありませんが、中古住宅を売却する際は実施を検討してみましょう。

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矢野翔一

関西学院大学法学部法律学科卒。宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)などの保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産投資を行う。HEDGE GUIDEでは不動産投資記事を主に担当しています。専門用語や法律が多く難しいジャンルですが分かりやすくお伝えしていきます。