不動産ファンドは、少額から間接的に不動産投資ができる方法として人気の高い投資先の一つです。この不動産ファンドの種類の一つに、障害者向けの不動産ファンドがあります。
本記事では、障害者向けファンドは具体的にどのような仕組みのファンドなのか、投資するメリットや意義、投資するときに注意すべきリスクなどについて取り上げます。
※「障がい者」の表記について
視覚障害を持つ方が記事を音声ブラウザで読む場合に「さわりがいしゃ(障がい者)」と読み上げられる場合があるため、本記事では「障害者」と表記させて頂いております。
目次
- 障害者向けグループホームファンドとは
- 障害者向けグループホームファンドの意義、投資のメリット
2-1.障害者の自立を促す社会的な意義がある
2-2.補助金が支給されるのでリスクが軽減される
2-3.他のファンドと同水準の運用期間、やや高めの利回りが期待できる - 障害者向け不動産ファンドのデメリット、リスク
3-1.オペレーションリスク
3-2.空室リスク - 障害者向け不動産ファンドに投資できるサービス
4-1.TECROWD(テクラウド) - まとめ
1.障害者向けグループホームファンドとは
障害者向けグループホームファンドは、障害者が共同生活を行う障害者向けグループホームを取得し、運営するファンドです。
自立支援を受ければ生活できるような障害者の方たちは、日本には潜在的に多くいると考えられています。しかし、地方自治体によっては、サービスの提供体制が不十分であり、必要とする人々すべてにサービスが行き届いていないことが指摘され、平成18(2006)年には「障害者自立支援法」が施行されています。(※参照:厚労省「障害者福祉:障害者自立支援法のあらまし」)
障害を持つ人々が家族から独立してグループで生活できることから、グループホームの需要は多いと見込まれています。
障害者向け不動産ファンドでは、ファンドで集めた資金を利用し、例えば中古戸建などを取得したり新築戸建を建てることで個室と共同生活スペースの両方を設け、支援員の設置、仕事や家計などで障害者支援員の支援を受けながら、障害者の人達が自立しながら生活を送る場所を提供することができます。
障害者向け不動産ファンドは、建物を準備した後、入居者から賃料を受け取ったり、またグループホームを運営する事業者に売却したりして運用益を生み、投資家に分配していく仕組みになっています。
2.障害者向け不動産ファンドの意義、投資のメリット
2-1.障害者の自立を促す社会的な意義がある
グループホームの需要は年々増加傾向にあります。以下、厚生労働省が令和3年に公表した資料からの引用です。
障害者の地域生活を支えるグループホームについては、平成18年度に障害者自立支援法のサービスとして位置づけて以降、入所施設や精神科病院等からの地域移行を推進するために整備を推進してきたところであり、利用者数は令和元年11月に入所施設の利用者数を上回り、令和3年2月には約14万人に増加。
※引用:厚生労働省「障害者の居住支援について(共同生活援助について)」
障害者自立支援法の施行から徐々に地域生活への移行を推進したことにより、入所施設の利用者を上回っていることが指摘されています。障害者向け不動産ファンドの数が増えれば、グループホームの設置が促進され、自立できる障害者が増えていくことが期待されます。
障害者の方が扶養を受けた生活を継続していると、例えば親が亡くなった時に生活できる場所がなくなり、将来の生活に困難が生じる恐れがあります。このような将来に不安を抱える障害者の方が自分で独立生活できる場が整えることが出来れば、障害を持つ方の将来的な生活の一助となり、社会的な意義を持つファンドだと言えるでしょう。
2-2.補助金が支給されるのでリスクが軽減される
社会的な貢献の意義だけではなく、事業性においても一定のメリットがあるファンドとなっています。障害者向けグループホームの場合は入居する障害者に家賃補助が支給されます。
障害者向けグループホームの補助金を実施する自治体の事例
- 川崎市「川崎市障害者共同生活援助事業運営費補助金交付要綱」
- 茅ヶ崎市「グループホーム等利用者家賃補助金」
※2022年12月時点
また入居者の方も一定の労働に従事していることが多く、補助金と入居者の方の労働収入から家賃を受け取ることができます。間接的に自治体の補助金から家賃が支払われるため、家賃未納リスクは小さくなっています。経営面においてもメリットのあるファンドであると言えるでしょう。
2-3.他のファンドと同水準の運用期間、やや高めの利回りが期待できる
不動産投資型クラウドファンディングでは、運用期間が定められています。極端に短い運用期間で資金の運用効率が悪くなったり、極端に長い運用期間では市況変化リスクがあり、事前に運用期間についても確認しておくことが大切です。
障害者向け不動産ファンドの利回りや運用期間を見ると、運用期間は半年から1年ほどと、居住用不動産ファンドと大きな差がありません。平均的な水準であるため、他の案件と相対的にみて中程度のリスクであると見ることが出来ます。
また利回り面も、年利4%から7%程度となっています。居住用不動産を運営する不動産ファンドと比較してやや高めの水準といえるでしょう。
3.障害者向け不動産ファンドのデメリット、リスク
障害者向け不動産ファンドのリスクにはどのような点が挙げられるでしょうか。一つ一つチェックしていきましょう。
3-1.オペレーションリスク
グループホーム運営側の人員配置などのオペレーションリスクがあります。障害者向けグループホームを運営するためには、物件運営のためのノウハウが必要であり、居住用物件の運営のように、貸したあとは入居者任せというわけにはいきません。
グループホームに認定されるためには、専門の人員を配置する必要があり、運営には人件費がかかります。また障害者一人一人の生活空間が用意されることになりますが、障害者の方同士のコミュニケーションや独立した生活が必ずしも成立するとは限らない入居者リスクもあります。
きちんとした経験のある担当者を採用し、障害者同士がうまく共同で生活できるような空間を整えていくというように、人員面、建物面、入居者面それぞれでのリスクがあるのです。
3-2.空室リスク
障害者グループホームでも、空室は発生します。入居者がいれば自治体からの家賃補助があるので家賃収入を確保しやすくなりますが、空室しかない状態では、自治体からの家賃補助は支給されません。
物件のあるエリアにそもそも人があまり住んでいない、グループホームの需要がないといった立地の悪い物件を選んでしまうと、空室が多く発生して、家賃収入を得ることができなくなってしまいます。
4.障害者向け不動産ファンドに投資できるサービス
障害者向けファンドに投資できる不動産投資型クラウドファンディングサービスを見て行きましょう。
4-1.TECROWD(テクラウド)
TECROWD(テクラウド)はTECRA株式会社が運営する不動産投資型クラウドファンディングサービスです。運営会社は日本や海外で建設業や不動産業を営んでおり、不動産の設計・建築、売買・賃貸の仲介、管理など、幅広い事業を手掛けています。
東アジアの案件を中心に取り扱う不動産投資型クラウドファンディングサービスTECROWDでは、AMANEKUという名前の障害者向けグループホームのファンドを募集しています。
利回りも5~7%と高めであり、定期的に募集することで障害者向けグループ施設の数を増やすことにも貢献しています。
まとめ
障害者向け不動産ファンドとは、障害者が共同生活するグループホームを取得して運営するファンドが中心となっています。障害者の自立支援は少子高齢化によって将来的な福祉負担が懸念される日本社会の問題を解決するための一つの対策であり、社会的な意義も大きなものとなっています。
障害者向け不動産ファンドは金銭的なメリットにフォーカスした投資の側面だけでなく、社会的な問題解決の側面があります。一方、通常の不動産ファンドと同様に空室リスクがあることに加え、専門的なサービスが必要なためにオペレーションリスクがあることに注意が必要になります。投資を検討される場合は、一つの案件に資金を集中させるのではなく、分散投資を心がけておくと良いでしょう。
社会貢献につながる資産運用を検討されていた方、興味のある方にとって、障害者向け不動産ファンドでの運用も選択肢の一つであると言えます。本記事を参考に、投資先を検討されてみてください。
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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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