日本で暮らす外国人は増加傾向にあり、そのうちのほぼ半数の世帯が賃貸住宅に住んでいます。不動産投資でも外国人の方の受け入れについて検討されている方もいるでしょう。
しかし、生活様式の異なる外国人の方のを受け入れに不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回のコラムでは、外国人の入居者を受け入れるメリットと注意点を解説していきます。また管理業務などを担う不動産会社の対応事例も紹介していきます。
目次
- 不動産投資で外国人入居者を受け入れるメリット
1-1.外国人の賃貸ニーズを狙える
1-2.室内設備のグレードを高く求める外国人入居者は少ない
1-3.周辺の家賃相場よりもやや高めに設定できることも - 不動産投資で外国人入居者を受け入れる注意点
2-1.生活習慣の違いによるトラブルの可能性
2-2.オーナーへ通知せずに友人を住まわせる
2-3.家賃滞納・未収時の回収リスク - 不動産投資における外国人入居者のリスクを軽減するには
3-1.国土交通省のガイドラインを参考にする
3-2.外国人入居者向けの保証会社を活用する
3-3.外国人入居者に対応した不動産会社に依頼する - 外国人入居者向けにサービス提供する不動産投資会社
4-1.シノケンプロデュース
4-2.グローバル・リンク・マネジメント - まとめ
1 外国人入居者を受け入れるメリット
出入国在留管理庁の発表によると、日本で暮らす外国人の数(特別永住者数含む)は2022年6月末時点で296万1,969人となっており、2021年末より20万1,334人(7.3%)の増加となっています。
また、2015年の国勢調査では、ほぼ半数の世帯が賃貸住宅を住まいとしていることも報告されています。
しかし外国人入居者が暮らせる賃貸住宅はそれほど多くなく、そのため下記のようなメリットがあると考えられます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
1-1 外国人の賃貸ニーズを狙える
半年間で20万人の在留外国人が増えていますが、外国人を積極的に受け入れている賃貸物件はそれほど多くありません。そのため外国人入居者を受け入れる体制を整えれば、入居者の対象が幅広くなるため空室を埋めやすくなります。
同じ国籍のコミュニティから部屋が見つからない友人を紹介してくれたり、退去の際に次の入居者を紹介してくれるケースもあります。
1-2 室内設備のグレードを高く求める外国人入居者は少ない
外国人入居者は設備などに高いグレードを求めるケースは少なく、築古物件などでも、大規模な修繕工事をしなくても入居者が決まるケースがあります。これには、下記のような背景があります。
- 入浴の習慣がないので3点ユニットバスやシャワーのみでも構わない
- 日本らしいと和室での暮らしにも積極的
- 母国の住宅事情もあり、設備が古くても住みやすいと感じる外国人もいる、など
借りられる賃貸物件が少ないため、住めればいいと考えている外国人も少なくありません。そのため、無料Wi-Fiや家具・家電付きなどにする程度で、入居者を確保できる可能性があります。
1-3 周辺の家賃相場よりもやや高めに設定できることも
外国人入居者を受け入れる賃貸物件が少ないため、2023年時点では貸し手市場となっています。相場よりも高い家賃設定でも入居者が決まる可能性はあると言えるでしょう。
ただし、周辺の物件で外国人入居者を受け付けていたり、外国人入居者の賃貸ニーズが少ない物件では効果が薄いことも考えられます。家賃設定は物件の収益と入居率に大きく影響を与えるため、管理会社とも相談しながら慎重に検討しましょう。
2 不動産投資で外国人入居者を受け入れる注意点
外国人入居者を受け入れるメリットについて紹介しましたが、注意しておきたい点やリスクもあります。この項目で解説していきます。
2-1 生活習慣の違いによるトラブルの可能性
生活習慣やマナーに関する意識の違いから、外国人がトラブルの発端となるケースがあります。
例えば、騒音トラブルです。友人とのコミュニケーションを積極的に取る方もいるため、多人数でお酒を飲んだり、騒いだりといったケースがあります。またハロウィンやクリスマスなどのイベントの際にはパーティを開催することもあり、他の入居者にとっては迷惑に感じることもあります。
また、次に多いのがゴミ出しのトラブルです。ゴミ出しのルールは地域によって異なりますが、国によっても大きく異なります。特に日本は細かく厳しいとされ、外国人にはルールが理解しにくいとも考えられます。
このようなトラブルが続くと、他の入居者からクレームや苦情などが入ることがあり、対応が適切に行われないと退去につながるケースもあります。
2-2 オーナーへ通知せずに友人を住まわせる
日本人の場合でも稀にありますが、特に部屋を見つけるのが難しい外国人の場合は、友人を住まわせるといった理由で、オーナーや管理会社が知らないうちに居住者が増えていることもあります。
また海外ではルームシェアしながら居住するケースもあり、部屋を知人に貸し出すといったことが日常的に行われている国もあります。又貸しが契約違反と認識しておらず、別の人に部屋を貸し出しているリスクにも注意が必要です。
2-3 家賃滞納・未収時の回収リスク
外国人入居者の方に家賃滞納・未収のトラブルが起きた際は、日本人入居者よりも注意して対応しなければなりません。家賃未払いのまま自国に帰ってしまうと、資金の回収の難易度が非常に高くなってしまうためです。
荷物を置いたままということもあり、管理会社も旅行や出張などと思いしばらく気づかないことがあります。
このような事態になると、未納となっている家賃の回収が難しくなることに加え、原状回復工事が必要な場合にも費用を請求することができません。また荷物を処分するにも費用がかかるため、この費用もオーナーの持ち出しになってしまう可能性があります。
3 不動産投資における外国人入居者のリスクを軽減するには
これまで紹介してきたように、外国人の入居者を受け入れるには注意すべき点があります。そこでそのリスクを軽減するための方法について解説していきます。
3-1 国土交通省のガイドラインを参考にする
まずは外国人の入居者を受け入れるにあたって、指針となるガイドラインを参考にしましょう。国土交通省では賃貸人、仲介業者、管理会社のための事務対応マニュアルとして「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」を作成しています。
第2章の「実務対応Q&A」では、受け入れの際に準備することや注意点、日本式の契約の進め方などについてQ&A方式でわかりやすく説明しています。外国人入居者の受け入れを検討している段階でも参考になるため、一度読されてから方針を決めるのも良いでしょう。
3-2 外国人入居者向けの保証会社を活用する
国土交通省のガイドラインにも記載されていますが、外国人に対応した保証会社を利用するのも一つの方法です。外国語が話せるスタッフが日本と外国の生活様式の違いなども熟知しており、トラブルの際も迅速に対応してくれます。トラブルが発生した際も、訴訟に関するアドバイスを受けることもできます。
3-3 外国人入居者に対応した不動産管理会社に依頼する
部屋の使い方や賃貸借契約について正しく理解できない外国人の方もいるため、外国人入居者に対応している管理会社や仲介会社などを選ぶことも良いでしょう。トラブルを未然に防ぐことができるほか、トラブルが発生した際も適切に対応してもらえます。
次の項目では、代表的な不動産会社の対応事例を紹介していきます。
4 外国人入居者向けにサービス提供する不動産投資会社
前項で紹介した、外国人入居者に対応できるよう体制を整えている不動産会社について、シノケンプロデュースとグローバル・リンク・マネジメントの事例を紹介していきます。
4-1 シノケンプロデュース
シノケンプロデュースは、全国に7,000棟以上の自社開発アパートを建築しているアパート経営・不動産投資のパイオニアです。中国やシンガポールなどの拠点を中心にグローバルな事業展開も行っており、外国人入居者のためのサポート体制も構築しています。
グループ全体で外国人の住まい探しをサポートする一方、外国人入居者を受け入れる物件オーナーのサポートも行っています。その一つが、管理業務を担うグループ会社のシノケンファシリティーズが展開する「多言語コールセンター」です。8カ国語に対応しており、外国人入居者の不安や不満などにも適切に応えられる体制を整えています。
4-2 グローバル・リンク・マネジメント
東京23区など首都圏を中心に投資用不動産の開発・供給を行っているグローバル・リンク・マネジメントでは、「夢を目指すひとを応援する」というコンセプトのもと、留学生や国内外労働者向けマンション「団扇」 (Uchiwa)を事業として展開しています。国内外のファンドや富裕層投資家に向けた投資用マンションで、主な特徴は下記になっています。
- 高品質な設備…家具、家電が設備されており、トランクだけで引っ越しができる
- 便利な支払い手段…初期費用と毎月の家賃は銀行振込のほか、アリペイも選べる
- コンシェルジュサービス…資格外活動許可、留学ビザ更新などのサポート、など
このほか、進学指導やアルバイトサポート、就活サポートなどの他、各種セミナーも実施し、留学生の日本での生活をサポートしています。
まとめ
日本で暮らす外国人は、2022年6月末時点で296万人を突破しており、今後さらに人数が増えていくことが予想されます。
空室が気になる物件を持つ物件オーナーにすると、外国人入居者を対象とすることは効果的な空室対策になる可能性もあります。ただし、生活様式やマナー、ルールに対する意識の違いから、注意すべき点も少なくありません。注意点を把握し、適切に検討されると良いでしょう。
今回のコラムを参考に、外国人入居者の受け入れを想定した不動産の運用を検討してみてください。
倉岡 明広
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