アパート経営において、住人の安全を守るために地震や火災に備える対策は欠かせないものです。
今回のコラムでは、アパート経営で実施したい地震・火災への災害対策について解説していきます。また、耐震性に優れたアパートを提供する不動産会社も紹介します。
目次
- アパート経営における地震リスクとは
1-1.地震リスク対策の重要性
1-2.代表的な地震リスク対策 - アパート経営における火災リスクとは
2-1.火災リスク対策の重要性
2-2.代表的な火災リスク対策 - 入居者に安心してもらうための災害対策
3-1.防災グッズを提供する
3-2.共用部分に防災スペースを設ける
3-3.非常用電力を用意しておく - 耐震性に強みがあるアパート建築会社
4-1.シノケンプロデュース
4-2.アイケンジャパン - まとめ
1 アパート経営における地震リスクとは
この項目では、アパート経営における地震リスクについて掘り下げていきます。
1-1 地震リスク対策の重要性
気象庁のデータ「令和2年12月地震・火山月報(防災編)」「令和3年12月地震・火山月報(防災編)」「令和4年12月地震・火山月報(防災編)」によると、日本全国で発生した地震は2020年が1,714回、2021年が2,424回、2022年が1,964回となっています。震度別の内訳を表にしたのが以下です。
震度 | 2020年の発生回数 | 2021年の発生回数 | 2022年の発生回数 |
---|---|---|---|
震度1 | 1,138回 | 1,584回 | 1,282回 |
震度2 | 412回 | 605回 | 475回 |
震度3 | 119回 | 181回 | 156回 |
震度4 | 38回 | 44回 | 36回 |
震度5弱 | 6回 | 4回 | 7回 |
震度5強 | 1回 | 5回 | 6回 |
震度6弱 | 0回 | 0回 | 1回 |
震度6強 | 0回 | 1回 | 1回 |
震度7 | 0回 | 0回 | 0回 |
合計 | 1,714回 | 2,424回 | 1,964回 |
※参照:気象庁「令和2年12月地震・火山月報(防災編)」「令和3年12月地震・火山月報(防災編)」「令和4年12月地震・火山月報(防災編)」より抜粋
2022年のデータを都道府県別で見ると、最も多いのは福島県の338回で、最も少ないのが佐賀県の10回となっています。数の多少はありますが、日本全国のどこでも地震は起きうると考えられます。
なお「気象庁震度階級関連解説表について」によると、震度6弱で「かなりの建物で、壁のタイルや窓ガラスが破損、落下する。」としており、震度6強では「木造建物で耐震性の低いものは、倒れるものが多くなる。」としています。
つまり、2021年と2022年は1回ずつ、木造建築物が倒壊する危険がある地震が起きていることになります。
1-2 代表的な地震リスク対策
地震に対する対策として考えられるのは、まずは国土交通省のハザードマップを確認して地震が発生しやすい場所、揺れが大きい場所を避けることです。
加えて、アパートの耐震性を高めることと、発生した際に被害を補ってもらえるよう地震保険をかけておくと良いでしょう。耐震性能を高める方法と地震保険について詳しく見てみましょう。
アパートの耐震性能を高める
地震による被害として、第一に考えられるのは建物の倒壊です。「強い揺れ」「繰り返し」「共振現象」によって起こるとされ、特に老朽化が進んでいる建物は耐震性が低く、震度に関わらず倒壊の危険性が高くなります。
アパートを建築する際の主な構造は、RC造(鉄筋コンクリート)、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート)、S造(鉄骨)、木造の4種類があり、耐震性が高い順番は以下のようになります。
RC造=SRC造>S造(重量鉄骨)>S造(軽量鉄骨)>木造
また、耐震等級を取得しているアパートを選ぶことで、地震リスクに備えることもできます。耐震等級とは、「一般社団法人住宅性能評価・表示協会」が運営している住宅性能表示制度の一つで、下記のように3つのレベルに分けています。
- 等級1:建築基準法のレベル
- 等級2:建築基準法の1.25倍
- 等級3:建築基準法の1.5倍
※参照:一般社団法人住宅性能評価・表示協会「地震などに対する強さ(構造の安定)」
アパートを供給する不動産会社やハウスメーカーでは、耐震等級を取得している工法によってアパートを建築しているケースもあります。こうした不動産会社を選ぶことで、適切な地震リスク対策ができると考えられます。
【関連記事】アパート経営で注目される「住宅性能評価」とは?導入しているアパート経営会社も
地震保険に加入する
地震保険とは、地震保険法に基づいて運用されている損害保険です。通常の火災保険は火災や水害などが補償対象で、地震による災害に対しては補償されないため、損害保険で地震リスクに備えるには地震保険に加入する必要があります。
地震保険の補償対象は、地震だけではなく噴火や津波などを起因とする火災や損壊などの被害です。ただし、地震保険単体で加入することはできない仕組みになっており、住宅火災保険や住宅総合保険とセットで加入することになります。
2 アパート経営における火災リスクとは
2-1 火災リスク対策の重要性
総務省消防庁の「令和4年版消防白書」によると、2021年の出火件数は全国で35,222件となっています。
その他、火災による被害状況をまとめたのが以下です。
- 建物焼損床面積…992,353㎡
- 損害額…104,213(百万円)
- 死者数…1,417人
- 負傷者数…5,433人
- 1日あたりの火災発生件数…96件
- 1日あたりの火災による死者数…3.9人
※参照:総務省消防庁「令和4年版消防白書」より抜粋
火災発生1件あたりの建物焼損床面積は28.2㎡、1件あたりの損害額は2.96百万円となっており、1度火災が発生してしまうとアパート経営の先行きが見通せなくなってしまいます。そのため、火災リスクに備えておくこともアパート経営にとって重要なのです。
2-2 代表的な火災リスク対策
火災リスクに対する代表的な対策は、耐火構造の屋根を採用したり、防炎加工された壁紙などを使用することです。詳しく見てみましょう。
耐火や防炎に優れたアパートにする
防火・準防火地域では、耐火構造の屋根や外壁、梁、柱などを採用するなどで耐火建築物や延焼防止建築物にする必要があります。しかし、火災リスク対策をするのであれば、防火・準防火地域以外でも耐火構造などにこだわる方法もあります。
具体的には、以下のような火災に強い仕様や設備を活用することで火災リスクへの対策ができます。
- 防炎認定を受けた壁紙やじゅうたんを使用する
- 防災ガラスや網入りガラスなどを採用する
- 防炎カーテンや防災レースカーテンを提供する
- 消火器を各居室に設置する
- スプリンクラーを各部屋に設置する、など
また、木造よりはRC造の方が延焼防止になるため、RC造のアパートにするなどでも火災リスク対策になります。
火災保険の補償を手厚くする
アパートが加入できる損害保険の種類は、「住宅火災保険」か「住宅総合保険」です。対象の災害が異なっており、大きく以下のように分けられます。
火災保険の種類 | 補償内容 |
---|---|
住宅火災保険 | 火災だけではなく、落雷、破裂・爆発、風災・雹災・雪災も対象となっており、建物および家財に対して補償を受けられます。 |
住宅総合保険 | 住宅火災保険の補償範囲に加えて、洪水や床上浸水、水漏れ、盗難、水災などによる被害に対して補償を受けられます。 |
「住宅火災保険」はアパートに対応する標準的な内容で、火災リスクに備えたい場合に選ばれやすい保険です。一方、「住宅総合保険」はより広い範囲の災害に対応している保険で、特に水害による災害が発生しやすいエリアのアパートには適していると考えられます。
このほか、特約を追加することで火災による損害を手厚くカバーすることができます。例えば、家賃補償特約特約は火災などで入居者の確保が難しい場合に賃料収入を補償してくれる特約で、火災発生時の損害を抑えることができます。
3 入居者に安心してもらうための災害対策
地震や火災だけではなく、アパートオーナーとしてあらゆる災害に備えておくことで空室対策になることもあります。ここでは代表的な3つの災害対策を紹介していきます。
3-1 防災グッズを提供する
居室内の収納スペースなどに、防災グッズを置いておくことも災害対策になります。下記は、代表的な防災グッズです。
- 携帯ラジオ
- ヘルメット
- 懐中電灯
- 簡易トイレ
- 簡易消火器
- カセットコンロ
- ドライシャンプー
- ペーパー歯ブラシ
- 非常用保存食・保存水
- 救急箱、など
保存食や保存水の使用期限は5年程度ですが、懐中電灯や簡易トイレ、ヘルメットなどは使用期限がないものがほとんどです。そのため、一度購入すると長期期間は再度購入しなくて良いという特徴があります。
入退去を繰り返しても入れ替える必要がないため、経費をかけずに長年にわたって防災対策になります。「入居祝い」などとして入居者に進呈することで、空室対策にするという方法も考えられます。
3-2 共用部分に防災スペースを設ける
アパートの共用部を活用して、普段から防災意識を高めておくことも災害対策になります。災害が起きた際の避難場所を明示するだけではなく、適切な避難行動などを明確に掲示しておくことで、万が一地震や火災が起きても適切な行動をすることができます。
また、出入り口近くの共有スペースに以下のような防災グッズを置いておくのも良いでしょう。
- 防災グッズ
- マンホールトイレ
- 人命救助用品
- レスキューセット
- (水害発生に備えるための)土のう、など
アパートの出入り口近くであれば入居者がすぐに使用できるため、こうしたアイテムを置いておくことで安心して暮らしてもらうことができます。
3-3 非常用電力を用意しておく
地震などの自然災害が発生した際には停電になることが多いため、入居者に普段通りの生活をしてもらえるよう非常用電力を用意しておくのも良いでしょう。
発電機などを備えておくほか、アパートの電力供給を太陽光発電システムや蓄電池システムなどから行うことで、災害時でも普段と変わらずに電気を使用することができます。
4 耐震性に強みがあるアパート建築会社
入居者が安心して暮らせる物件にすることも、アパートオーナーの役割の一つです。例えば、地震などの自然災害に強いアパートであれば、災害リスクに対して不安を抱く方に訴求できるため、空室対策にもなります。ここでは、耐震性に優れたアパートを供給している2社の不動産会社を紹介していきます。
3-1 シノケンプロデュース
シノケンプロデュースは、一般投資家向け賃貸住宅経営のパイオニアとして土地の選定から企画、設計、施工、引き渡し後の賃貸管理まで一貫したサービスを提供する不動産会社です。これまでのアパート供給棟数は自社施工で7,000棟以上を数えており、全国賃貸住宅新聞「賃貸住宅に強い建築会社ランキング」の「年間アパート開発棟数部門」では9年連続No.1に輝いています。
グループ会社のシノケンファシリティーズの管理戸数は47,000戸以上(2023年12月末時点)で、入居率は98.56% (2023年年間平均入居率)となっています。5,000店舗以上(2024年5月時点)の仲介業者と提携しており、仲介店と良好な関係を築いていることも入居率の高さにつながっています。
さまざまな工法や技術を駆使し、耐震性能を向上
シノケンプロデュースでは、これまで7,000棟以上のアパートを供給していますが、震度7クラスの地震を経験しても倒壊および半壊は0棟、液状化による被害も0棟です。
以下が、高い耐震性能を持っている代表的な理由です。
- 建築予定地の土地に対して、第三者の地盤調査会社による地盤調査を実施
- 調査内容に応じて適切な対策工事を実施
- 強固な土地に鉄筋コンクリートを打ち込むベタ基礎構造を採用
- 制震装置により、地震の揺れを最大60%軽減
- 構造躯体として鉄の約2倍、コンクリートの約12倍の強度を誇る木材を使用、など
また、劣化対策等級2級準拠の耐久性能を合わせ持っており、2世代から3世代にわたって受け継ぐことができるとしています。
最寄り駅から徒歩10分以内の立地にこだわったアパートを提供
シノケンプロデュースでは、入居者が通勤・通学しやすいように以下の基準で土地を取得しています。
- 大都市圏のターミナル駅から電車で30分以内
- 賃貸需要の高い最寄り駅から徒歩10分以内
土地によって形状や特性が異なるため、取得した土地に合わせて1棟ずつオリジナルの設計を行うのも同社ならではです。また快適に暮らせるよう、独立洗面化粧台、サーモスタット付水栓、システムキッチン、カラーモニター付きインターフォンといった設備のほか、オートロックや防犯カメラなどの防犯設備も積極的に導入しています。
3-2 アイケンジャパン
アイケンジャパンは、「堅実なアパート経営」をコンセプトに「グランティック」「レガリスト」などのアパートブランドを全国で展開する不動産会社です。2021年12月には、全国で供給しているアパートの総数が1,000棟を突破しています。
賃貸管理の実績として8,545戸(2023年6月末時点)の管理を行っており、99.4%(2022年12月時点)となっています。オーナーの負担が大きく、効果が一時的なフリーレントや家賃の値下げを行わずに高い入居率を維持しているのも特徴です。
建築基準法の約1.3倍の耐震性能で倒壊リスクを低減
アイケンジャパンは高性能のアパートを提供していることでも知られており、耐震性能は建築基準法の約1.3倍になっています。要因は、独自のBSP構造(Basic rubber Seismic board Protect)をすべてのアパートに採用しているからです。アパートの土台と基礎の間に積層ゴム「キソゴム」を設置したり、壁の変形に対応する「耐力壁」を多用するなどで倒壊するリスクを低減しています。
また、2017年3月以降に完成したすべての物件で、劣化対策等級が最高レベルの等級3の評価を第三者機関より獲得しています。そのため、75〜90年程度大規模改修工事の必要がなく、2世代から3世代にわたって引き継ぐことが可能です。
アパートとは思えないような仕様・設備を標準
アイケンジャパンでは、土地を選定する際の基準として「最寄り駅から徒歩15分以内」を掲げています。それは「入居者が入り続けるエリア」がアパート経営を成功へと導くとしているからです。
また、女性の社会人をメインターゲットにしており、ビルトインキッチンや温水洗浄便座、浴室テレビといったアパートとは思えないような設備を標準にしています。このほか、アパートの弱点とされる防音に対しても独自の工法や間取りの配置などで対応しており、このようなアパートに対するこだわりが高い入居率につながっています。
まとめ
アパート経営にとって災害対策は欠かせないものです。入居者が安心して暮らせるようにするほか、アパートが被害に遭うとアパート経営を続けることが不可能になってしまうからです。そこで今回のコラムでは、地震と火災に対するリスク対策を中心に解説しました。
また、耐震性に優れたアパートを供給する不動産会社2社を紹介しました。どちらも定期的に開催されるセミナーや無料でもらえる資料などで、アパートの特徴などについて説明しています。気軽にセミナーに参加したり、資料をもらうことができるので、まずは情報収集として検討されてみるのも良いでしょう。
倉岡 明広
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