衛星とAIでデジタルツインを作成し、自然環境をトークン化し続ける「Single Earth」とは?

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参照:Single Earth

目次

  1. Single Earthとは?
  2. B2Bサービスとしても提供
  3. Single Earthの変遷と展望は?
  4. Single Earthの展望を考察

Single Earthとは?

「Single Earth」は、ブロックチェーン技術を活用して自然資源をデジタルトークン化し、その保全を促進することを目的とするプロジェクトです。

地球の自然環境は、人間活動により前例のない速度で破壊されています。森林破壊、生物多様性の喪失、気候変動は、地球上の生命にとって深刻な脅威となっています。これらの問題は単に環境問題に留まらず、経済、社会、そして人類の生存自体に影響を及ぼすものです。従来の環境保護策の多くは資金不足や実施の難しさに直面しています。特に発展途上国では、経済成長と環境保全の間でバランスを取ることが困難であり、環境が犠牲になることが多くあります。

これらの課題に対処するために、ブロックチェーンを活用したReFiプロジェクトが盛り上がってきており、その中の1つにSingle Earthがあります。Single Earthは、ブロックチェーン技術を活用して自然環境をトークン化することで、環境保全に新たな方法を提供します。その仕組みはシンプルです。

  1. 土地所有者がSingle Earthに評価を申請
  2. Single Earthが評価員を派遣し評価
  3. 評価に応じてMERITトークンを発行
  4. Single Earthの衛星とAIを活用したデジタルツイン技術で定期的に監査
  5. 自然環境が維持されたままだと定期的にMERITトークンが付与される
  6. MERITトークンは自身で利用しても、投資家に売却しても良い

一般的なオンチェーンでのカーボンクレジットの生成とそこまで大きく差はありませんが、その中でも「MERITトークン」と「デジタルツイン技術」が特徴なので、この2点を深掘りして解説します。

MERITトークン

「MERIT」は現実の自然に価値が紐付けられたトークンです。1MERITは削減されたCO2 100kgに相当し、3EURの価値を持ちます。カーボンクレジットのトークン化と同じで、CO2が100kg削減される度に土地の所有者にMERITが発行される仕組みとなっています。

2022年9月に販売が開始され、投資家(一般ユーザーも企業も)がMERITトークンを地主から購入することができます。また、MERIT Payと呼ばれる決済ツールも開発中で、最終的には通常のお金と同じようにリアルな店舗やECで利用できるようになるとのことです。

このMERITは自然が保全されている限り永久に発行され続けます。これを自然によるトークンのマイニングとチームは呼んでおり、「自然は新しい金となる」と表現しています。環境を破壊するよりも環境を保全し続ける方が収益性が高くなるような仕組みを構築しています。

デジタルツイン技術

デジタルツインとは現実世界の情報をそっくりデジタル上に表現する技術のことです。カーボンクレジットの発行において最も難しく大切なのは定期的に監査し続けることです。発行以降に環境破壊に繋がる取り組みには意味がないので継続的に監査して、そのデータを元に保全し続けることがカーボンクレジットの定期的な発行に繋がるようにする必要があります。

しかし、定期的な監査に人員を派遣していたら監査に多大な費用が発生するため、クレジット発行者の金銭的なインセンティブは削がれてしまいます。これを解決するために分散型のMRVプロトコルや衛星を使ったリモートセンシングプロジェクトが続々と誕生しています。そして、Single Earthもこの領域に1つのソリューションを持っています。衛星データと機械学習(AI)の技術を活用して現実世界の自然をデジタルツインで表現します。

この仕組みによって定期的な監査を可能にし、MERITトークンの継続的な発行をサポートします。

B2Bサービスとしても提供

また、このソリューションを企業向けへの提供もしています。カーボンクレジットの代わりとなるMERITトークンの販売もそうですが、カーボンニュートラルのPRや証明に繋がる他のソリューションも提供しています。

売上の一部を自動寄付

自社商品やサービスの売上の一部が自動的に寄付に利用されるような設定ができます。金額は0.01ユーロから始めて、1ユーロ以上にも設定ができます。この設定をすることで顧客に対して環境に配慮したサービスであることを周知することができます。

監査&証明ダッシュボードとレポート

自社が取り組んでいるESGの取り組みを一覧化しダッシュボードとして公開できます。MERITトークンの購入によるオフセットや上記で解説した寄付ソリューションの利用状況など、環境に対しての取り組みを顧客や投資家に対してアピールすることができます。また、第三者による監査を受けた証明レポートを受け取ることもできます。

Single Earthの変遷と展望は?

Single Earthは2019年にCEOのMerit ValdsaluとCTOのAndrus Aaslaidによってエストニアで設立されたスタートアップです。2021年7月にEQT Venturesが主導するシードラウンドで790万ドルを調達しました。

その後にプラットフォームを拡大し、2022年9月からMERITトークンの早期販売をスタートさせています。今後はMERITを日常生活で利用できるMERIT PAYの開発やMERITトークンを取引所に上場させる計画があるそうです。

Single Earthの展望を考察

最後は筆者による考察です。

カーボンクレジットをトークン化する取り組みはReFiプロジェクトの中でも多く見られます。それぞれの土地ごとのクレジットをNFTで発行する形もありますし、KlimaDAOのように全てを包含して1つのトークンとして発行する形もあります。Single Earthは後者を採用しており、全ての土地で共通するトークンを発行しています。

その展望の発言にあった「自然は新しい金となる」は非常に面白い表現だと感じました。ここで言う”金”はお金になる資産のことを示しており、以前は石油で、現在はデータです。その時々で世界の時価総額ランキングで上位にいる企業を見ればその時代の”金(お金になる資産)”がわかります。そして、これからは”自然”になると主張しています。自然を保有し続けることでトークンが発行され、そのトークンを世界中の企業や投資家に販売することができます。自然環境がお金に変わるので、比喩ではなく、まさに”金のなる木”です。表現として適切ではないかもしれませんが、個人的にやはり金銭的なインセンティブがなければ世界は変化しないと考えているので、Single Earthの表現や挑戦には非常に共感します。

最終的には、自然環境の土地もトークン化して売買できることで、より良い自然環境を保有する人はMERITトークンの定期的な付与も受けれますし、良質な土地はトークンで分割して販売してキャピタルゲインも得ることが可能になります。これはまさにブロックチェーンにしか実現できない、新しいインセンティブモデルです。引き続き情報を追いかけていきます。