コロナ禍で不動産の取引数や価格はどう推移した?データをもとに考察

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2020年以降拡大を始めたコロナウイルス感染症は、変異株が見つかるなど2021年6月の時点で収束の兆しを見せていません。

コロナウイルス感染症拡大は不動産市場にはどのような影響を与えているのか、都市別の不動産取引件数および価格推移のデータを用いて検証します。

目次

  1. 東京都の中古マンション市場動向
    1-1.東京都の中古マンション取引件数推移
    1-2.東京都の中古マンション平均取引価格推移
  2. 大阪府の中古マンション市場動向
    2-1.大阪府の中古マンション取引件数推移
    2-2.大阪府の中古マンション平均取引価格推移
  3. 愛知県の中古マンション市場動向
    3-1.愛知県の中古マンション取引件数推移
    3-2.愛知県の中古マンション平均取引価格推移
  4. まとめ

1.東京都の中古マンション市場動向

東京都ではコロナの前後で中古マンション市場がどう変化したのか、東日本不動産流通機構のデータに基づいて検証します。

1-1.東京都の中古マンション取引件数推移

東京都の中古マンション取引件数推移は以下グラフの通りです。緊急事態宣言および年末特別警報が発出された時期には取引件数が減っている様子が伺えます。

東京都の中古マンション取引件数推移

※東日本不動産流通機構「レインズデータライブラリー」を参照し筆者作成

2020年の4月〜5月には、東京都で中古マンションの取引件数が特に減少しました。対前年比率の推移を見ても、2020年4月はマイナス55.3%、2020年5月はマイナス37.6%となっています。

その後、夏から秋にかけては取引件数も回復しましたが、2020年12月には再び取引件数が落ち込みました。12月中旬には東京都が「年末年始コロナ特別警報」を発出し、外出自粛を要請しています。

また、11月以降は1日の感染者数が日本全体で2,000人を超えるなど、感染拡大傾向が顕著になりました。感染者数の増加と外出自粛要請が重なったことから、中古マンションの取引にも影響が出たものと考えられます。

なお、2020年2月は対前年比で取引件数が約10%のプラスとなりましたが、2021年2月はマイナス8.8%です。2021年1月に発出された2度目の緊急事態宣言が延長された影響があったものと考えられます。

2021年4月の取引件数は対前年比でプラス116.4%となりましたが、2020年4月は1回目の緊急事態宣言によって取引件数が大幅に減っていたため、前年比率が大幅に上昇しました。

1-2.東京都の中古マンション平均取引価格推移

東京都では、中古マンションの平均取引価格が、コロナの前後で以下グラフのように推移しています。

東京都の中古マンション平均取引価格推移

※同上

平均取引価格についても、緊急事態宣言が発出された2020年4月〜5月は大幅に落ち込みました。外出自粛要請によって多くの産業が営業に支障をきたしたため、景気動向を悲観する考え方が広がった影響もあったと考えられます。

しかし、その後は6月から7月にかけて大きく持ち直す動きを見せており、2021年4月には2019年末以降で最高値を更新しました。

値動きの原因は低金利の継続にあると考えられます。従来日銀は異次元金融緩和を続けてきました。また、コロナで景気が落ち込んでいる状況下では、利上げは先になるとの見解を示しています。

長期金利が据え置かれている影響から住宅ローン金利も低い状態が続いており、各デベロッパーは新築マンションの価格を下げていません。

もともと上昇傾向にあった新築マンション価格は、2021年春の時点ではまだ上昇を続けており、中古マンションの価格も新築マンションに引っ張られているものと考えられます。

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2.大阪府の中古マンション市場動向

つづいて、大阪府の中古マンション市場動向について、不動産流通機構のデータから分析します。

2-1.大阪府の中古マンション取引件数推移

大阪府における中古マンション取引件数の推移は以下グラフの通りです。東京都と同じような推移をしている様子が伺えます。

大阪府の中古マンション取引件数推移

※同上

大阪府の中古マンション取引件数は、全体的に東京都の50%前後です。しかし、最初の緊急事態宣言が発出された2020年4月から5月にかけては取引件数が大幅に落ち込むなど、推移としては東京都と似たような動きをしています。

しかし、大阪では2021年に入って感染者数が大幅に増加したほか、5月の時点で大阪府知事が「緊急事態宣言の解除についてはまだ議論できない」と表明するなど、感染拡大状況については予断を許しません。

2021年も人事異動の時期である3月は例年通り多くの取引数を記録し、4月は対前年比で約60%取引数が増えたものの、再び減少傾向に転じる可能性もあると言えるでしょう。

2-2.大阪府の中古マンション平均取引価格推移

大阪府の中古マンション平均取引価格推移は以下グラフの通りです。値動きについては東京都とは少し違った推移をしている様子が伺えます。

大阪府の中古マンション平均取引価格推移

※同上

大阪府でも、緊急事態宣言が発出された2020年の春には平均取引価格が落ち込んでいます。しかし、その後夏にかけて持ち直しました。東京では秋にかけても少しずつ価格が上がっていきましたが、大阪では横ばいで推移しています。

その後、2021年に入ってから大阪では再び価格が上昇していますが、2021年4月の平均取引価格は2,822万円で、2020年1月の2,748万円と大きくは変わりません。

東京では2021年に入ってから明確に価格が上昇していますが、大阪では2021年に入って、2020年の上半期で価格が下がった分を取り戻してきたという値動きになっています。大阪では価格上昇が続くのか、今後の価格動向には要注目です。

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3.愛知県の中古マンション市場動向

最後に、愛知県の中古マンション市場動向について、不動産流通機構のデータから分析します。

3-1.愛知県の中古マンション取引件数推移

愛知県ではコロナの前後で中古マンションの取引件数は以下グラフのように推移しています。

愛知県の中古マンション取引件数推移

※同上

取引件数の推移については、愛知県でも東京および大阪とそれほど大きな違いはありません。最初の緊急事態宣言が発出された2020年4月から5月にかけて、大幅な落ち込みが見られました。

しかし、2021年は例年取引件数が増える3月に多くの取引が集中しています。2021年4月の対前年比率はプラス72.7%で、ピンポイントで比較すれば大阪府よりも持ち直している点が特徴的です。

2021年5月時点では愛知県も緊急事態宣言の対象となっていますが、大阪と比較すると感染者増加の傾向が緩やかな点も影響していると考えられます。

3-2.愛知県の中古マンション平均取引価格推移

愛知県の中古マンション平均取引価格の推移は以下グラフの通りです。東京と比較すると、大阪と同じく値動きはそれほど大きくありません。

愛知県の中古マンション平均取引価格推移

※同上

2019年末からの値動きを見ると、2021年4月に最高額を記録している点は東京および大阪と同じです。しかし、2020年末にかけて再び価格が下がった点は、東京および大阪とは異なります。

なお、愛知県の2020年1月の平均取引価格は2,186万円で2021年4月の平均取引価格は2,268万円です。2021年4月の方が100万円高くなっていますが、東京と比較すると、値上がり幅は大きくありません。

大阪および愛知の値動きを見ると、東京の値上がり傾向は地方都市よりも強いことがわかります。

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まとめ

東京・大阪・愛知でそれぞれ中古マンションの取引件数推移を見ると、最初の緊急事態宣言が発出された2020年4月から5月にかけて、各都市とも取引件数が減少しました。しかし、その後は持ち直しており、2021年の4月は各都市とも対前年比で大幅に増加しています。

その一方で値動きには都市ごとに違いが出ました。各都市とも2020年の春には中古マンションの価格が落ち込んだものの、東京はその後段階的に値上がりを続けています。しかし、大阪は2020年下半期に横ばいで推移したほか、愛知は値下がりする時期もありました。

2021年4月時点では各都市とも値上がりしていますが、この価格推移には量的緩和策による強い影響が背景にあります。景気回復に伴ってテーパリングが行われた際はどのように変化していくのか、今後の価格推移には要注意です。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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