岩手県は、東北地方の太平洋側に位置する県です。県内には33の市町村があり、都道府県別で2番目に広い15275.01㎢(2020年10月1日時点)の面積を誇っています。2023年7月1日時点の人口は1,165,886人(535,066世帯)で、人口密度が全国で2番目に低いのも特徴です(出典:岩手県ふるさと振興部「いわての統計情報」)。
今回のコラムでは、このような特徴を持つ岩手県で不動産を売却する際に活用できる不動産一括査定サイト4社を比較しながら紹介していきます。また不動産市場の傾向、売却時の注意点も合わせて解説していきます。
目次
- 岩手県の不動産売却で活用できる不動産一括査定サイト
1-1.SUUMO不動産売却
1-2.LIFULL HOME’S不動産売却査定サービス
1-3.HOME4U
1-4.RE-Guide - 岩手県の不動産売却の傾向
2-1.岩手県の中古マンション売買の傾向
2-2.岩手県の中古一戸建て売買の傾向 - 岩手県で不動産売却をする際の注意点
3-1.一戸建ての割合が減少傾向にある
3-2.専有面積が狭い中古マンションは売却しにくい傾向がある - まとめ
1 岩手県の不動産売却で活用できる不動産一括査定サイト
不動産を売却するには不動産会社に査定をしてもらい、販売価格を設定すします。その際、複数の不動産会社に査定をしてもらうことで、「物件価格の相場が分かりやすくなる」「不動産会社を選ぶ際の参考になる」といったメリットがあります。
そこで便利なのが、一度の入力で複数の不動産会社に査定を依頼できる不動産一括査定サイトです。下記の表は、岩手県内の不動産を売却する際に活用できる代表的な4つの不動産一括査定サイトについて、2023年8月時点の情報をもとに作成したものです。
サイト名 | 参加企業数 | 同時依頼可能数 | 運営会社 |
---|---|---|---|
SUUMO不動産売却 | 約2,000店舗 | 10社 | 株式会社リクルート |
LIFULL HOME’S不動産売却査定サービス | 4,045社 | 6社 | 株式会社LIFULL |
HOME4U | 2,100社 | 6社 | 株式会社NTTデータ・スマートソーシング |
RE-Guide | 900社以上 | 10社 | 株式会社ウェイブダッシュ |
次の項目から、それぞれのサイトについて特徴を解説していきます。
1-1 SUUMO不動産売却
SUUMO不動産売却は、株式会社リクルートが運営する不動産ポータルサイトSUUMO(スーモ)が提供している不動産一括査定サービスです。提携数は約2,000店舗となっており、大手不動産会社から地元で展開している中小不動産会社まで査定を依頼することができます。
主な特徴は下記になります。
- 株式会社リクルートが運営する不動産ポータルサイトSUUMOのサービスの一つ
- 提携数は約2,000店舗
- 同時に依頼できる不動産会社の数は最大10社
同時に依頼できる不動産会社の数は最大10社で、情報を入力した後に依頼できる不動産会社が表示される仕組みです。不動産会社を絞り込む際に、「開店10年以上」「買い取り制度あり」といった項目で検索をすることも可能です。
不動産会社の詳細ページには店舗所在地や営業時間などが記載されているほか、「店舗の特徴」「売却実績」「スタッフ紹介」「購入希望者」「売却Q&A」といったコーナーでも特徴を把握することができます。
1-2 LIFULL HOME’S不動産売却査定サービス
LIFULL HOME’Sは、不動産ポータルサイトLIFULL HOME’S(ホームズ)が提供する不動産売却査定サービスです。2023年8月時点で4,045社が参加しており、今回紹介する不動産一括査定サイトの中では最も多くなっています。
主な特徴は下記になります。
- 株式会社LIFULLが提供する不動産ポータルサイトLIFULL HOME’Sのサービスの一つ
- 2023年8月時点で4,045社が参加
- サービスを利用した方は2022年1月時点で838万人
- 不動産会社の情報が見やすいサイトデザイン
査定を依頼できる不動産会社の情報が細かく掲載されているため、特色がわかりやすくなっています。「ひとことアドバイス」や「ココが強み」というコーナーのほか、取り扱いプランもわかるトピックなど、他社との比較がしやすいデザインも特徴的です。
これまでサービスを利用した方は2022年1月時点で838万人となっており、豊富な実績を積み重ねています。
1-3 HOME4U
HOME4Uは、2001年に日本で初めてサービスを開始した不動産一括査定サイトです。運営しているのは、情報サービス業界最大手NTTデータグループの株式会社NTTデータ・スマートソーシングです。
主な特徴は下記になっています。
- NTTデータグループの株式会社NTTデータ・スマートソーシングが運営
- 累計売却査定数は2022年11月時点で50万件
- 2,100社の優良企業を掲載
- 年間1,400万人が利用
- 情報の入力はチャット形式でできる
大手不動産会社から地域に精通した中小不動産会社まで2,100社の優良企業が掲載されており、NTTグループならではの独自の基準を設けて提携先を審査しているのが特徴です。
情報を入力する際は、チャット形式で行われる仕組みになっています。オペレーターの質問に回答していく形式になっており、戸惑うことなく入力が完了します。
1-4 RE-Guide
リガイド(RE-Guide)は、2006年に「SBI不動産ガイド」としてスタートした不動産一括査定サイトです。独自審査によって掲載企業を厳選しているのが特徴で、現在は大手不動産会社から中小不動産会社の900社以上が参加しています。
主な特徴は下記になっています。
- 大手不動産会社から中小不動産会社の900社以上が参加
- 同時に査定を依頼できるのは最大10社
- 独自の審査で掲載企業を厳選
- 日々、プロの目でサービスをチェック
情報を入力する際は、Yahoo!やFacebookのユーザー情報を自動入力することが可能です。そのため面倒な入力も簡単に終わらせることができます。同時に査定を依頼できるのは最大10社となっており、多くの不動産会社に査定をしてもらいたいケースではメリットとなります。
2 岩手県の不動産売却の傾向
スケジュールにある程度の余裕があれば、不動産事情がどういう状況なのかについても確認されておくと良いでしょう。
この項目では、岩手県ではどのような不動産が取引されているのか、東日本レインズ(公益社団法人東日本不動産流通機構)が公表している市況レポートから、傾向を解説していきます。情報を把握することで、不動産をスムーズに、また適切な価格で売却できる可能性が高くなります。
2-1 岩手県の中古マンション売買の傾向
岩手県での中古マンション売買の傾向を確認するために、東日本レインズ(公益社団法人東日本不動産流通機構)が公表している市況レポートを紹介します。下記の表は、「月例マーケットウォッチ全国版2023年1月度」から、2022年の月別の成約動向を抜粋したものです。
年月 | 成約件数(前年同月比) | 成約価格(前年同月比) |
---|---|---|
2022年1月 | 11件(83.3%) | 2,214万円(13.1%) |
2022年2月 | 15件(15.4%) | 1,550万円(32.8%) |
2022年3月 | 12件(−7.7%) | 1,848万円(19.1%) |
2022年4月 | 11件(37.5%) | 1,262万円(−12.7%) |
2022年5月 | 14件(100.0%) | 1,973万円(12.6%) |
2022年6月 | 19件(26.7%) | 1,485万円(54.9%) |
2022年7月 | 13件(30.0%) | 1,655万円(19.2%) |
2022年8月 | 9件(50.0%) | 2,460万円(142.0%) |
2022年9月 | 10件(25.0%) | 1,704万円(25.4%) |
2022年10月 | 9件(−18.2%) | 2,786万円(83.0%) |
2022年11月 | 19件(72.7%) | 1,481万円(18.0%) |
2022年12月 | 10件(25.0%) | 2,416万円(101.3%) |
※出典:東日本レインズ「月例マーケットウォッチ全国版2023年1月度」より抜粋
2022年における岩手県の中古マンションは、成約件数が毎月9〜19件の間で変動しています。前年同月比は12月中10月でプラスとなっており、成約件数が増えていることがわかります。総数でも、2021年の116件から152件となっており、36件の増加(前年比131.0%)となっています。
成約価格も、前年同月比がプラスとなっている月が12月中11月と上昇傾向となっています。前年より2倍以上の平均成約価格になっている月が2つあり、月別中央値も2021年の1,381万円から1,902万円と521万円の上昇(前年比137.7%)となっています。
2-2 岩手県の中古一戸建て売買の傾向
次は中古一戸建ての売買について見ていきましょう。同じく、東日本レインズの「月例マーケットウォッチ全国版2023年1月度」から、岩手県の中古一戸建ての成約件数と成約価格の平均値を抜粋したのが下記の表です。
年月 | 成約件数(前年同月比) | 成約価格(前年同月比) |
---|---|---|
2022年1月 | 6件(−40.0%) | 1,733万円(43.7%) |
2022年2月 | 11件(37.5%) | 1,678万円(10.8%) |
2022年3月 | 11件(37.5%) | 1,675万円(21.8%) |
2022年4月 | 8件(14.3%) | 1,406万円(25.7%) |
2022年5月 | 9件(−59.1%) | 1,411万円(−6.7%) |
2022年6月 | 3件(−76.9%) | 1,160万円(−25.3%) |
2022年7月 | 9件(−18.2%) | 1,794万円(24.3%) |
2022年8月 | 5件(−37.5%) | 1,728万円(42.1%) |
2022年9月 | 13件(18.2%) | 1,483万円(18.1%) |
2022年10月 | 10件(−16.7%) | 1,656万円(26.3%) |
2022年11月 | 1件(−88.9%) | ―(―) |
2022年12月 | 4件(−60.0%) | 1,953万円(37.1%) |
※出典:東日本レインズ「月例マーケットウォッチ全国版2023年1月度」より抜粋
中古一戸建ての成約件数は、12月のうち8月で前年同月比減となっており、減少傾向が見られます。総数でも、2021年の129件から2022年は90件と39件の減少(前年比69.8%)となっています。
一方、成約価格は、12月のうち10か月で上昇しています。月別中央値を見てみると、2021年の1,348万円から2022年は1,607万円となっており、259万円上昇しています。前年比119.2%と成約価格は上昇傾向にあると言えます。
3 岩手県で不動産売却をする際の注意点
次に、岩手県での不動産売却における注意点についても見ていきましょう。
3-1 一戸建ての割合が減少傾向にある
岩手県では、一戸建て住宅が約4分の3を占めていますが、20年間の推移を見てみるとマンションなどの共同住宅が増加しており、一戸建ての割合が減少傾向になっています。
下記の表は、「岩手県住宅マスタープラン(岩手県住生活基本計画)」から、建て方別の住宅の割合を抜粋したものです。
調査年 | 一戸建て住宅 | 共同住宅 | 長屋建 |
---|---|---|---|
1998 | 76.8% | 19.3% | 3.5% |
2003 | 75.0% | 21.7% | 2.9% |
2008 | 76.0% | 21.4% | 2.5% |
2013 | 72.7% | 22.4% | 4.6% |
2018 | 72.9% | 23.4% | 3.5% |
※出典:岩手県「岩手県住宅マスタープラン(岩手県住生活基本計画)」より抜粋
1998年から2018年までの20年間で、一戸建ては76.8%から72.9%に減少し、反対に共同住宅は19.3%から23.4%に増加しています。
2018年の全国平均は一戸建てが53.6%で、共同住宅は43.6%です。全国平均から比べると岩手県における一戸建ての割合は高い水準となっていますが、この20年間の推移から推測すると共同住宅への移行が今後も続くと想定されます。
3-2 専有面積が狭い中古マンションは売却しにくい傾向がある
岩手県では、専有面積が狭い中古マンションは売却しにくいという傾向があります。
下記の表は、東日本レインズ「月例マーケットウォッチ全国版2023年1月度」から、2022年の成約物件と在庫物件の専有面積を抜粋したものです。
年月 | 成約物件の専有面積 | 在庫物件の専有面積 |
---|---|---|
2022年1月 | 70.17㎡ | 52.36㎡ |
2022年2月 | 66.05㎡ | 52.68㎡ |
2022年3月 | 63.67㎡ | 52.76㎡ |
2022年4月 | 57.33㎡ | 52.12㎡ |
2022年5月 | 70.02㎡ | 49.68㎡ |
2022年6月 | 66.47㎡ | 49.66㎡ |
2022年7月 | 68.43㎡ | 49.76㎡ |
2022年8月 | 74.50㎡ | 48.97㎡ |
2022年9月 | 64.61㎡ | 52.12㎡ |
2022年10月 | 76.83㎡ | 51.03㎡ |
2022年11月 | 61.11㎡ | 50.43㎡ |
2022年12月 | 76.64㎡ | 51.81㎡ |
※出典:東日本レインズ「月例マーケットウォッチ全国版2023年1月度」より抜粋
表を見て分かる通り、成約物件の平均専有面積は57〜76㎡の間、在庫物件の平均専有面積は49〜52㎡の間となっており、専有面積が狭い物件が在庫になりやすい状況になっています。
「平成30年住宅・土地統計調査結果の概要(岩手県)」によると、岩手県の1住宅あたりの延べ面積は2018年の調査時で118.87㎡となっています。共同住宅に限ると専有面積の平均は47.81㎡で、1998年の41.48㎡から広くなってきており、共同住宅も広い専有面積が好まれるようになっていると想定できます。
このような背景から専有面積の広くない住宅を売却する際は、専有面積以外の強みを持たせて売却活動をするといったように工夫が必要と考えられます。そのため、こうした傾向を把握している不動産会社のサポートが重要です。
不動産会社を探す場合は、前述した不動産一括査定サイトを利用するなどして、効率的に不動産会社を比較されると良いでしょう。一度の入力で複数の不動産会社に査定を依頼することができるので、査定価格や不動産会社の対応力をしっかり調査する際に便利に活用することができます。
不動産会社を選ぶ際は下記の点がポイントになります。
- 物件のあるエリアに精通している
- スピーディーな対応をしている
- 売却する物件タイプを得意としている
- 豊富な実績がある
- 親身になって相談に乗ってくれる
- 知識に基づいたアドバイスをしてくれる、など
また宅地建物取引業免許を確認したり、行政処分歴がないかチェックすることで、より信頼のおける不動産会社を選ぶことができます。
まとめ
不動産を売却する際に便利なのが不動産一括査定サイトです。複数の不動産会社に一度の入力で査定依頼ができる上に、査定を通じて複数の不動産会社と接することで、不動産会社選びに役立てることもできます。
岩手県では、一戸建てが減少している、狭い中古マンションは売却しにくいといった傾向があります。このような不動産事情に精通している不動産会社を慎重に選ぶようにしましょう。
今回ご紹介した不動産一括査定サイトは全て無料で利用することができるため、複数サービスを並行して利用することも可能です。使い方やサービス内容、提携している不動産会社などにも違いがあるため、比較しながら使いやすい不動産一括査定サイトを選びましょう。
倉岡 明広
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