アジアの海外不動産は手頃な値段で買えるものも多いため、海外不動産投資の投資先として検討しやすい地域です。アジア全体が大きな発展を見せており、投資先を選ぶのに迷ってしまう方もいるでしょう。
この記事では、人口やGDPなどの要素にスポットを当てて、アジアの中からタイ・マレーシア・ベトナム・フィリピン・カンボジアの5ヶ国を比較します。
データを紐解いていくと、同じアジアの中でも国ごとの違った特徴が見えてきますので、投資先を選ぶ参考にしてみてください。
目次
- 東南アジア各国の人口・GDP・インフレ率・不動産価格の統計を比較
1-1.予測人口増加率
1-2.予測GDP成長率
1-3.インフレ率
1-4.不動産価格 - 2023年時点、東南アジアで海外不動産の期待が大きい国は?
- 東南アジア各国の詳細について
3-1.タイ
3-2.マレーシア
3-3.ベトナム
3-4.フィリピン
3-5.カンボジア - まとめ
1.東南アジア各国の人口・GDP・インフレ率・不動産価格の統計を比較
1-1.予測人口増加率
国際連合の機関であるUNPFによると、アジア各国における2020年~2025年の予測人口増加率は以下グラフの通りです。
比較している5ヶ国の中で予測人口増加率が最も高いのはフィリピンとカンボジアです。また、マレーシアもほぼ同水準となっています。一方で、ベトナムの予測人口増加率は1%を切っており、東南アジアの中では少し低い方と言えるでしょう。
また、タイの予測人口増加率は0.2%で東南アジアの中では最低水準です。2023年時点の日本では既に人口減少が始まっていますが、タイの人口増加率は最も日本に近い状態にあると考えられます。
1-2.予測GDP成長率
続いて、予測GDP成長率を比較します。IMFが発表している統計によると、東南アジア各国における2023年の予測GDP成長率は以下の通りです。
各国ともコロナウイルス感染症流行の影響を受けたため、2019年以前とは少し異なる傾向が表れていると考えられます。
2023年の予測GDP成長率を比較すると、5ヶ国の中で最も高水準なのはベトナムとカンボジアです。ベトナムは特に、コロナウイルス感染症の影響が最も大きかった2020年も、5ヶ国の中で唯一GDP成長率をプラスで推移させました。
ベトナムには今後も経済成長に期待がかかります。一方で、東南アジアの中では経済規模が大きい方に分類されるマレーシアの予測GDP成長率は、ベトナム・カンボジアなどと比較すると少し控えめです。
1-3.インフレ率
世界銀行の統計を用いて各国のインフレ率を比較します。東南アジア5ヶ国における2021年のインフレ率は以下の通りです。
比較している中で最もインフレ率が高いのはフィリピンです。カンボジアとマレーシアはほぼ同率、ベトナムとタイは1%台で推移しています。GDP成長率とインフレ率が両方とも高い状態にあれば、経済発展が起きていると言えるでしょう。
2021年時点のGDP成長率とインフレ率とを比較すると、タイ・マレーシア・カンボジアは双方の指標がほぼ同数です。一方で、フィリピンとベトナムはインフレ率よりもGDP成長率が高い状態になっています。
1-4.不動産価格
最後に、各国の不動産価格について比較します。
上記のグラフは各国における共同住宅1戸当たりの価格です。英国の不動産情報サイト「finder」を参照したためポンドでの表記となっていますが、為替変動の影響を排除するためにポンドのままで比較しています。なお、カンボジアは統計がありません。
4ヶ国の中で物件価格が最も高いのはタイで、反対に最も安いのはマレーシアとなっています。マレーシアは4ヶ国の中で最も経済規模が大きい一方で、物件価格は安い点が特徴的です。
しかし、マレーシアでは外国人がRM100万(=約20万ポンド:2023年1月時点)以下の物件を買えない規制があります。最低購入価格規制の背景にあるのは、物件の過剰供給による不動産市場の混乱です。
マレーシアにおける供給過剰状態は、毎年少しずつですが改善されつつあるため、今後は規制に変更が加えられる可能性も考えられます。
2.2023年時点、東南アジアで海外不動産の期待が大きい国は?
人口や経済に関する指標を比較することは、不動産投資の利益が大きいエリアを見極めることにつながります。特に、人口増加率やGDP成長率、インフレ率が高い国では今後のキャピタルゲインに関する期待も大きいものです。
各指標を比較すると、フィリピンとカンボジアは特に人口増加率やGDP成長率が高いため、今後キャピタルゲインの期待も大きいと考えることができます。
ベトナムも各指標が高水準ですが、GDP成長率とインフレ率との間に少し差があります。また、2023年時点では社会主義国であることから、今後外国人向けの規制が設けられる懸念もあるでしょう。
なお、タイは人口や経済に関する指標が比較的低めです。その一方で物件価格は各国の中でも高くなっていることから、東南アジアの中でキャピタルゲインに対する期待はあまり大きくないと言えるでしょう。
3.東南アジア各国の詳細について
ここからは、アジア各国のエリア情報など詳細について紹介していきます。
3-1.タイ
タイでの不動産投資先は、ほぼ首都のバンコク一択です。過去には、日系の自動車工場が集積していて、日本人街も形成されているシラチャでの投資物件も販売されていました。しかし、現在では工場での働き手が減っているため、必ずしも日本人駐在員の入居を見込めない状況となっています。
タイは日本との時差が少ないうえ、バンコクには日本人が経営する不動産会社も複数存在しています。バンコクでの物件選びがうまくいけば、賃貸運営のストレスが比較的少なくなる可能性があります。
ただし、バンコクの中心部は物件価格が上昇傾向にあるため、物件選びは慎重に行う必要があります。投資を検討する場合には、日本人不動産会社からしっかり情報を集めるようにしましょう。
【関連記事】タイ不動産投資、物件を購入する手順や流れは?リスクや注意点も
3-2.マレーシア
今からマレーシアで不動産投資をするのならば、首都のクアラルンプールが良いでしょう。
マレーシアでは、過去「イスカンダル計画」による都市開発区域として、シンガポールとの国境にあたるジョホールバルのコンドミニアムが盛んに販売されていました。しかし、現在のジョホールバルは当初計画されていたほどの発展を見せていません。
マレーシアでは、現在政府が対策に乗り出すほど不動産の供給過剰が起こっています。このため、慎重に物件を選ばないと、購入後すぐに入居者が入るかはわからない状況です。
一方、供給過剰によってコンドミニアムが値崩れを起こしているうえ、外国人に対する購入価格の規制も緩やかになるため、以前と比較して投資するハードルは下がっているとも考えられます。
一方、供給過剰によってコンドミニアムが値崩れを起こしているため、以前と比較して投資するハードルは下がっているとも考えられます。
マレーシアの経済成長率は上下を繰り返していますが、プラスの水準で推移しています。今後もクアラルンプールを中心として経済状況にも注目しておきましょう。
【関連記事】マレーシア不動産投資の利回りやリスクは?エリアや物件の選び方も
3-3.ベトナム
ベトナムは日系企業の進出も相次ぎ、首都ハノイのほか、日本人が多く集まるホーチミンなどは投資先として検討しやすい地域と言えるでしょう。
一方、ベトナムで投資する場合に気をつけるべきポイントは通貨です。まず、ベトナム国内で流通しているベトナムドンは、ドルや円と比較して信用度の高い通貨ではありません。また、ベトナムでは通貨の海外持ち出しに関する規制が定められており、海外送金の難易度が他国よりも高いです。
ベトナムは日本人の居住者も多く、海外不動産投資の投資先として検討しやすいと言えますが、為替リスクや海外送金の難易度に注意し、どのように進めていくか事前に確認をしておきましょう。
【関連記事】ベトナム不動産投資で注意すべきリスクは?他国との比較も
3-4.フィリピン
フィリピンは、今回ご紹介した5ヶ国の中で最も人口が多く期待利回りが高い国です。一方で不動産価格はその他のアジアの国と比較して安くなっており、利回りと物件の値上がりを期待する投資に向いています。
一方、フィリピンでの要注意ポイントの一つに竣工リスクが挙げられます。竣工リスクとは、未完成の物件に投資したものの、何らかの理由によって完成前に工事が中断されてしまうリスクのことです。
日本でも投資用のコンドミニアムが販売されていますが、未完成のまま工事が止まってしまった物件も数多くあります。無事竣工を迎えたとしても、粗悪な施工で賃貸に出せないというケースもあります。
フィリピンで投資を検討するならば、必ず現地に足を運んでエージェントとのコミュニケーションを頻繁に取るようにしましょう。また、物件完成後に賃貸管理を任せる不動産会社も慎重に選ぶことが重要です。
【関連記事】フィリピン不動産投資、日本人が所有できる物件の種類や特徴は?
3-5.カンボジア
カンボジアは、ご紹介した5ヶ国の中で最も人口増加率とGDP成長率が高い国です(2023年4月調査時点)。国の発展とともに物件の価格が値上がりしていく可能性があります。
日本から購入できるカンボジアの物件は、大半が首都のプノンペンに立地しているコンドミニアムです。しかし、プノンペンでも、マレーシア同様にコンドミニアムの供給過剰が懸念点として挙げられます。また、日本から購入可能なコンドミニアムは、家賃設定が高く富裕層向けとなるものが多くなっています。
投資を検討するのならば、入居者ターゲットはどのような人になるのか、ターゲットとなる人が周辺にはどのくらいいるのかなど、綿密な事前調査をするのがよいでしょう。
【関連記事】カンボジア不動産投資のリスクは?法整備の状況や不動産会社の選び方も
まとめ
今回ご紹介した5ヶ国の中では、国の将来性・物件価格の面ではフィリピンが投資先として魅力があるものの、フィリピンは、例えばタイなどと比較すると不動産に関する規制も未整備な部分が多く、投資には相応のリスクが伴います。
少しでもリスクを軽減するためには、現地に足を運び、街を目で見て確認することと、売主や賃貸づけをするエージェントとのコミュニケーションを密にすることが重要です。
このように、それぞれのデータを切り取ってみても国ごとに異なる特徴が見られます。まずは何を目的として投資するのかを定め、目的にあった国で投資することを心がけましょう。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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