進化するNFTの販売モデル

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今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の太田航志 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. 販売モデルの概要
    1-1. スタンダードミントモデル
    1-2. フリーミントモデル
    1-3. デイリーオークションモデル
    1-4. グラデュアルダッチオークションモデル(GDA)
  2. まとめ

NFT(非代替性トークン)は、これまでデジタルアートやゲームアイテム、スポーツカード、音楽コンテンツなど、幅広い分野においてさまざまなユースケースを提供してきました。NFTコレクションの成功要因には、マーケティングやコミュニティビルディングなどをはじめとして、枚挙にいとまがないわけですが、今回はその一つ、NFTの販売モデルについて理解を深めます。

NFTの販売モデルというと、多くの方は流通量と初期のミント価格が決まっているスタンダードミントモデルを思い浮かべるかもしれません。しかしながら、NounsDAOが発行するNouns NFTでは、24時間ごとに1つのNounが自律的な仕組みでオークションにかけ続けられる仕組みを採用しているといったケースもあります。

今回はそんなNFTの販売モデルについて、新たに考案されている3つのモデルを比較しながらその概要やメリット、デメリットを踏まえて解説します。

販売モデルの概要

具体的に今回解説するNFTの販売モデルは、「スタンダードミントモデル」「フリーミントモデル」「デイリーミントモデル」「グラデュアルダッチオークションモデル」の4種類です。

以前に弊社で公開した記事では、スタンダードミントモデルに近い、定額販売や、イングリッシュオークションモデル、ダッチオークションモデルについて解説しました。しかしながら最近では、そのモデルの知見を生かした、新たなNFT販売モデルが考案されています。

1つ目はフリーミントモデルです。これは、スタンダードミントモデルと同様に決まった流通量が設定されているものの、ミント価格に関してはフリー、つまり無料で手に入れることができるモデルです。2つ目は、デイリーミントモデルです。もちろん毎日以外にも、毎週、毎月などのモデルも成立しうりますが、便宜上デイリーミントモデルと表現しています。最後はグラデュアルダッチオークションモデルです。これはその名の通りダッチオークションを採用した発展版のNFT販売モデルとなっています。これらのNFTの販売モデルについてそれぞれに焦点を当てて詳しくみていきたいと思います。

スタンダードミントモデル

ここからは、まずスタンダードミントモデルについてその理解を簡単に深めたいと思います。

これは、上記でも述べた通り、10,000枚なら10,000枚のみ発行というような決まった流通量が予め設定され、かつミント価格も設定されている販売モデルです。ここではスタンダードミントモデルのメリットやデメリットを整理して、下記で紹介するユニークなモデルの理解に繋げたいと思います。

まずスタンダードミントモデルは、そもそも我々が慣れ親しんでいるという理由もありますが、決まったミント価格や供給量が設定されており、ユーザーにとって非常に理解しやすいものです。またこの方式は、NFTの販売によってまとまった収益を一度に得ることができるため、NFTコレクションの運営側にもメリットがある仕組みと言えるでしょう。

しかしながらスタンダードミントモデルにも課題がないわけではありません。基本的にプロジェクト側は予めミント価格を設定してNFTを販売しますが、そもそもその基準となるミント価格を設定することは、非常に困難です。販売価格をあまりに高く設定すれば、ミントするホルダーが少なくなり、逆に低すぎると投機的な取引を招くほか、そもそもプロジェクトに必要な資金をNFTの販売によって集めきれないという可能性もあります。需給の想定を見誤れば、ガス代の高騰が発生し、NFTのプロジェクトやホルダーにもたらされる利益が、マイナーやバリデーターに奪われることになります。

フリーミントモデル

フリーミントモデルとは、NFTの供給量は設定されているものの、そのミント価格を無料とするモデルです。

フリーミントモデルの利点に関しては、第一にNFTの所有をより手軽にする効果があると考えられます。もちろんNFTコレクションごとで違いはありますが、NFT自体は、それ一つで、100ドルを超えることも全く珍しくありません。フリーミントモデルのNFTは、高額NFTの初期購入という一般ユーザーとっての参入障壁を押し下げるように機能するでしょう。またガス代以外のコストが基本的にかからないため、NFTコレクションに対する期待値が高くなりすぎず、長期的な目線でプロジェクトの成功を応援できるとも考察できます。それに伴いチームとコミュニティの間の緊張感も少なくなると想定されます。

一方デメリットとして挙げられる点は、以下の2点です。第一にフリーミントモデルを採用することは、これまで従来のNFTプロジェクトが得てきたプレセールでの収益を放棄することを意味します。したがって自己資金でプロジェクトをスタートさせる必要があり、多くの草の根的なNFTプロジェクトにとってそれは容易なことではありません。また一次流通で収益を挙げられないために、二次流通におけるロイヤリティの上昇も懸念されます。

デイリーオークションモデル

引用:@0xPrismatic


デイリーオークションモデルとは、決められた時間間隔で1つもしくは複数のNFTが永続的にオークションにかけられる仕組みです。したがって上段のスタンダードミントモデルとは異なり、NFTコレクションの供給量は時間の経過とともに直線的に増大します。

デイリーオークションモデルのメリットの一つは、NFTが毎日ミントされることで、いつでもコミュニティに参加でき、より公平性が高いといえます。またこのモデルでは、最初から供給量が多い状態でスタートするのではなく、スモールスタートでプロジェクトを開始することができます。これによりNFTプロジェクトがコミュニティビルディングやマーケティング、プロジェクトロードマップを着実に実行するにつれて、その需要と供給量を増やすことを可能とします。

一方デイリーオークションモデルのデメリットとして、当然コレクションホルダーのコミュニティは小さく始まり、ゆっくりと成長します。またNFTに供給上限がない一定のインフレは、一旦需要が低くなることにより、その価格が断続的に低下することも予想されます。レアリティなどの導入も難しいでしょう。

グラデュアルダッチオークションモデル(GDA)


そもそもダッチオークションモデルとはその名の通り、ダッチオークションの仕組みを採用したNFTの販売モデルです。

まずダッチオークションとは、最高値から段々と呼び値を下げていき、最初に買い手がついた価格で売買が成立するオークションモデルのことを指します。通常のオークションでは、入札する買い手側が価格をつり上げながら、最終的に最も高い価格を提示した買い手が落札しますが、反対にダッチオークションでは、価格が順番に下がっていく仕組みになっています。NFTコレクションを販売する場合でも、販売価格は高値で始まり、最低価格に達するか、すべてのトークンが売り切れるまで、一定期間にわたって段階的に下がっていく仕組みとなります。

その中でグラデュアルダッチオークションモデルは、NFTの売却を一連の離散的ダッチオークションに分割して行うモデルです。このモデルでは、NFTプロジェクト側が一定の割合で排出されるNFTをダッチオークションで販売します。連続する各ダッチオークションは、前のオークションよりも高い価格で開始されます。この仕組みによってNFTの販売期間が実質的に延長され、市場と買い手のマッチングがよりスムーズに発生します。

またこのモデルやそのさらなる進化系であるVRGDAなどもありますが、基本的に実験途上な概念となっています。したがってこれらのモデルによる明確な成功例は未だにありません。またGDAやVRGDAのデメリットとしてその仕組みが複雑で、ユーザー側が理解できず、モデルが正しく機能しないことなども懸念されます。

まとめ

今回は、NFTの販売モデルについて、その理解を深めてきました。多くの人々にとって、NFTの販売方法といえば、スタンダードミントモデルを考える方が多かったと思います。しかしながら、昨今、新しくまた複雑なNFTの販売モデルが登場しており、注意が必要です。これらのモデルはそれぞれに一長一短があり、その特性を理解することで、より効率的、公平的なNFTの売買が期待されます。また、NFTの購入者側もこれらのモデルを理解しないままに、NFTを購入し、思わぬ損失やそもそもNFTの購入自体ができない場合も懸念されます。NFTの販売モデルを改めて整理し、理解を深めることは、本記事を通じて良い機会になると考えます。

ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。

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Fracton Ventures株式会社

当社では世の中をWeb3.0の世界に誘うことを目的に、Web3.0とDAOをテーマに事業を行っています。NFT×音楽の分野では、音楽分野のアーティスト、マネジメント、レーベルなどとNFTを活用した新しい体験を図るプロジェクトを行っています。