アパート経営を地方や郊外で始めるメリット・デメリットは?注意点も

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リモートワークの浸透で地方暮らしが注目される中、地方でのアパート経営を検討している方もいます。

しかし、地方や郊外では人口減少傾向にあるエリアも多く、アパート経営には適さない立地であるケースも少なくありません。そのため、「アパート経営は本当に地方でも成功するのか」と不安に思う方も少なくないのではないでしょうか。

そこで今回のコラムでは、地方都市や郊外でアパート経営を始めるとした場合、東京と比べるとどのようなメリットとデメリットがあるのかに焦点を当てました。アパート経営を地方で始める際の注意点も合わせて紹介します。

目次

  1. 地方や郊外でアパート経営を始めるメリット
    1-1.物件価格が安い
    1-2.表面利回りが高い
    1-3.固定資産税の評価額が低い
  2. 地方や郊外でアパート経営を始めるデメリット
    2-1.入居需要が減少傾向
    2-2.売却が難しい
    2-3.遠方のアパートだと管理体制が見えにくい
    2-4.遠方のアパートだと融資が受けにくい
  3. アパート経営を地方で始める際の注意点
    3-1.管理会社の選定は慎重に
    3-2.利回りだけで判断しない
    3-3.競合物件の状況をチェックする
  4. まとめ

1 地方や郊外でアパート経営を始めるメリット

東京のような都心部での不動産投資では、人口増加傾向であることを背景に多くの賃貸需要を見込むことができます。しかし、地方都市や郊外にもアパートがあり、経営しているオーナーもいます。つまりアパート経営は地方でも、郊外でも成り立つのです。

そこで、地方や郊外でアパート経営にはどのようなメリットがあるのか見てみましょう。

1-1 物件価格が安い

東京に比べ、地方都市や郊外は物件価格が安い傾向にあります。例えば新築物件で考えた場合、アパートを建てる際の価格は建物と土地の値段で決まります。建材などは全国でそれほど価格に差はありませんが、人件費と土地の値段が安いため、アパートの売却価格は地方の方が安くなるのです。

次の表を見てみましょう。不動産投資と収益物件の情報サイト健美家(けんびや)が発表した「収益物件市場動向 年間レポート2020年」に掲載された一棟アパートの物件価格の登録情報を抜粋したものです。

都市 物件価格
札幌市 4227万円
仙台市 5743万円
埼玉県主要都市 5770万円
千葉県主要都市 6332万円
東京23区 9954万円
東京市部 6499万円
横浜市 6469万円
名古屋市 6970万円
大阪市 5418万円
福岡市 5567万円

※参照:不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家(けんびや)「収益物件市場動向 年間レポート2020年

表を見て分かる通り、東京23区が1億円に近い価格で群を抜いていますが、札幌市ではその半分以下の4227万円となっています。東京23区の次に高い名古屋市でも6970万円であるため、東京23区内の2/3程度ということが分かります。

この表は単純計算によるもので、実際には東京23区内でも低予算で始められる物件があります。しかし物件は限られているため、全体的にみると東京よりも、地方都市の方が低予算でアパート経営を始めることができる可能性が高いと言えます。

1-2 表面利回りが高い

前項の物件価格が安いこととも要因のひとつですが、東京23区に比べて地方都市の方が表面利回りが高い傾向があります。

都市 利回り
札幌市 10.51%
仙台市 9.15%
埼玉県主要都市 8.40%
千葉県主要都市 8.92%
東京23区 6.74%
東京市部 8.17%
横浜市 8.16%
名古屋市 7.22%
大阪市 9.43%
福岡市 7.40%

※参照:不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家 ( けんびや )「収益物件市場動向 年間レポート2020年

物件価格が最も低かった札幌市の利回りがこの中では最も高く、10.51%です。 東京23区と比べると約1.5倍となっています。表面利回りが高いことでキャッシュフローに余裕を持たせやすく、空室率を織り込んだシミュレーションをしやすいメリットがあります。

1-3 固定資産税の評価額が低い

不動産を所有すると税金を支払う義務が生じますが、そのうち固定資産税は土地や家屋などに対して課せられる地方税です。この固定資産税は下記のように計算されます。

固定資産税=課税標準額×1.4%

課税評価額とは、自治体が決めた土地や家屋の価値について評価した金額です。つまり自治体によって評価額が違うということですが、東京は地価が高いため同じ土地の広さでもこの評価額が高くなります。そのため固定資産税も高くなるのです。

同じ広さの土地を所有していた場合、東京よりも地価の安い地方都市では土地の評価額が低く、それだけ税金も安いということになります。

2 地方や郊外でアパート経営を始めるデメリット

アパート経営にはもともと空室リスク、資産減少リスクといったリスクがあります。それに加えて地方でアパート経営をするにはどのようなデメリットがあるのか、見てみましょう。

2-1 入居需要が減少傾向

アパート経営は入居者がいてはじめて家賃収入を得ることが出来ます。人口が減っている地域では、将来的に入居希望者が少なくなると予測でき、現在と同じ収益を保てなくなる可能性があります。

東京都内は人口流入も続いていて賃貸物件に対する需要はまだまだ多いですが、それに対して地方都市では人口減が顕在化してきたエリアもあります。

人口が少なくなると賃貸物件は供給過多になり、入居者を得るために家賃を下げる必要も出てきます。そうすると予定していた収入を得られなくなる可能性もあるのです。

2-2 売却が難しい

アパート経営の出口戦略として考えられるひとつの方法が売却です。しかし今後、人口減が予想されているため、地方にあるアパートを積極的に購入したいと考えるオーナー候補者も少なくなることが予想されます。

古い物件を高利回りで購入するといった特徴的な経営をするオーナーもいますが、売却したいときに売却したい価格で売れない可能性があるのです。

2-3 遠方のアパートだと管理体制が見えにくい

オーナーの居住地と経営するアパートの所在地が別の場合ですが、物件を頻繁に見に行ける訳ではないため、どうしても管理会社に管理を任せてしまいます。煩わしさはないものの、物件の状態が分からない、実際の管理の状況が分からないなどでオーナーとして気を揉む機会が増えることが考えられます。

特に空室がなかなか埋まらなかったり、退去が続いている状況などでは、アパート経営の先行きに不安を感じることが多くなります。

2-4 遠方のアパートだと融資が受けにくい

こちらも経営するアパートとオーナーの居住地が違う場合です。アパートを購入するときは金融機関から融資を受けることが大半ですが、アパートとオーナーの居住地が違う場合、金融機関からの融資が受けにくいことがあります。なぜなら融資審査の際、物件の所在地と投資家の居住地が金融機関の管轄地域にあることも融資の条件になることが多いからです。

融資は金融機関によって考え方が違うため一概には言えませんが、居住地が物件から遠い場合だと断られる可能性が高く、融資をしてくれる金融機関が限定されることがあることも覚えておきましょう。

3 アパート経営を地方で始める際の注意点

どの事業にもメリットとデメリットはつきものですが、特に地方でアパート経営を始めるときの注意点を3つ紹介します。

3-1 管理会社の選定は慎重に

アパート経営では管理会社選びが重要ですが、地方でアパート経営を始めるのであれば特に管理会社選びは慎重に行いましょう。例えば、遠方にいる複数のオーナーから物件を任せられているような管理会社を探すことを検討してみると良いでしょう。また新築物件なら販売元の不動産会社と提携している管理会社があります。

その他、中古物件なら購入時に管理している管理会社に継続して依頼することも検討できるでしょう。長年、管理を行っているので、過去の修繕工事履歴やトラブルの事例などを把握しているからです。入居者の属性も理解しており、修繕工事のタイミングなども的確にサポートしてくれる可能性が高いと言えるでしょう。

3-2 利回りだけで判断しない

投資先のアパートを選ぶ際、管理会社が提供する利回りなどの情報だけで判断しないようにしましょう。

例えば、最寄駅からの距離は分かったとしても、平坦か、坂があるのか、歩道の幅はどれくらいか、夜道の明るさはどれくらいか、といったことも実際には分からないものです。出身地や以前住んでいた地域であればいいのですが、地域のことを知らないと適切な経営判断ができないこともあります。

また中古物件であれば、物件全体の雰囲気だけでなく掲示板の使われ方、郵便受けの劣化具合、廊下のひび割れなど細かな部分もみることで物件管理の良し悪しが判断できます。移動距離が長いなどで物件を見に行くことが困難な場合もありますが、できるだけ自分の目で確認するようにしましょう。

3-3 競合物件の状況をチェックする

地方のアパート経営の場合は、競合物件の状況を丁寧にチェックすることも非常に重要です。東京と比較して賃貸需要は限られており、他の物件と競合した場合にできるだけ入居者に選んでもらうことが空室期間を短くするひとつのコツだからです。家賃や設備の充実度など競合物件がどのような条件なのか適切に把握し、それに対抗するよう対策を立てましょう。

また地方は土地価格が安いことにも注意しておきましょう。空き地や駐車場、古い住宅・アパート、ガソリンスタンド、個人商店などが、気づくと売却されてアパートやマンションの建設予定地になることがあります。近隣に空き地がないか、アパートやマンションになりそうな土地がないか、といったことにも気をつけて物件をチェックしてみましょう。

まとめ

東京以外の地方でアパート経営を始める際のメリットとデメリットを紹介しました。物件価格が安く利回りが高いというメリットと、将来的な入居需要が減少傾向にあるというデメリットをどう判断するかが鍵です。また、リモートワークが今後どれくらい進むのかといった将来を見極めることも判断材料になります。

今回のコラムでは、注意点も合わせて記載しています。地方でのアパート経営を始める際はぜひ参考にしてください。

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倉岡 明広

経済学部経済学科卒業後、出版社や編集プロダクション勤務などを経てフリーライターとして独立。雑誌や新聞、インターネットを中心に記事を執筆しています。初心者が抱く不動産投資の疑問や質問を解決できるよう丁寧な記事を執筆していきます。