アパート経営、サブリース契約で家賃保証を受けるメリット・デメリットは?

※ このページには広告・PRが含まれています

アパート経営では、建築したアパートのハウスメーカーなどからサブリースや家賃保証を薦められることがあります。オーナー側からすると、管理運営だけでなく、一定期間家賃保証をしてくれるというのはメリットのある契約と言えるでしょう。

しかし、サブリース契約による家賃保証は、定期的に減額交渉を受けたり、サブリース契約を解約される可能性があるなど、デメリットもある契約です。契約前にメリットとデメリットを比較し、慎重に検討することが大切です。

そこで本記事では、サブリースや家賃保証のメリット・デメリット、契約する際の注意点について解説します。

目次

  1. サブリース契約とは
  2. サブリース契約のメリットとデメリット
    2-1.サブリース契約のメリット
    2-2.サブリース契約のデメリット
  3. サブリース契約を結ぶ前に確認したい注意点
    3-1.サブリース新法への対応
    3-1.保証家賃の金額
    3-2.家賃見直し期間
    3-3.修繕費用の負担
    3-4.解約条件
  4. まとめ

1.サブリース契約とは

サブリース契約とは、賃貸住宅の所有者からその賃貸住宅を借り上げて管理をおこない、入居者に転貸する契約のことです。オーナーには、毎月の家賃保証がなされ、サブリース業者は、借上げ賃料と転貸賃料との差益を主な収益とします。

転貸・管理をおこなう形態のほか、賃貸住宅の建設受注と転貸・管理を一体でおこなう形態や、投資用マンションの販売と転貸・管理を一体でおこなう形態があります。

アパート経営では、ハウスメーカーが自社で建設受注をしたアパートを数十年単位で一括借上げをし、所有者に代わって転貸・管理をおこなうサブリース契約が見られます。

2.サブリース契約のメリットとデメリット

サブリース契約は、長期間家賃保証をしてもらえるばかりでなく、煩わしい管理業務までをわずかな手数料を委託でき、オーナーにとってメリットがあります。

しかし、家賃保証といっても定期的な見直しによって家賃が減額されるリスクがあるなどのデメリットもあります。サブリース業者も借地借家法では賃借人として保護されることが背景にあり、注意が必要といえます。

サブリース契約のメリットとデメリットをそれぞれ詳しく見て行きましょう。

2-1.サブリース契約のメリット

サブリース契約のメリットは、賃貸業の事業としてのリスク・わずらわしさを軽減できることといえるでしょう。次のような点が挙げられます。

  • 家賃収入が一定額になる
  • ローンが借りやすくなる
  • 管理の手間が減る
  • 管理費用負担が減る

以下、それぞれについて解説します。

家賃収入が一定額になる

サブリース契約では、借上げによる家賃保証があり、毎月一定額の賃料を確保できるメリットがあります。

通常の賃貸経営では、空室や滞納によって家賃収入が途絶えるリスクがあります。滞納リスクは、保証会社と契約すればある程度回避できますが、保証には限度額が設定されているケースが多いでしょう。

滞納、空室リスクを長期間にわたり補償してもらえ、契約が見直されない限り家賃収入が一定になるメリットは大きいといえます。

不動産投資ローンが借りやすくなる

サブリースでは家賃収入が一定となるため、キャッシュフローも予測しやすく、金融機関も返済原資を確保しやすいと評価する傾向があります。金融機関の評価が得られることでローンが借りやすくなり、より良い条件でローン契約が出来る可能性があります。

管理の手間が減る

入居者管理、建物管理のすべてをサブリース業者に任せることができるのもメリットです。入居者管理業務には、募集、更新、退去以外にもクレーム対応などがあり、アパート経営では戸数も多く手間もかかるといえます。

建物管理業務も、部屋の原状回復工事やメンテナンスのほか、共用部分の管理・修繕もあります。サブリース契約では、これらの手間を削減できるメリットがあります。

管理費用負担が減る

サブリース契約では、管理にかかる費用負担を軽減できることがあります。

転貸のために必要な費用はサブリース業者が負担することが多く、広告費や仲介手数料などの費用はサブリース業者負担になります。

その他、入居者にとっての貸主はサブリース業者になるため、入居者トラブルが起きてもオーナーが当事者になることはなく、訴訟費用もサブリース業者の負担となります。

また、原状回復費を定額制にして一部をサブリース業者が負担するケースもあり、管理費用負担面からもオーナーにメリットはあるといえるでしょう。

2-2.サブリース契約のデメリット

サブリース契約には上記のようなメリットがある反面、サブリース業者との収益の配分やオーナーが負うリスクなど、いくつかのデメリットもあります。主な問題として、次のような点が挙げられます。

  • 保証料の分、通常の管理委託よりも多くの費用がかかる
  • 礼金・更新料などが受け取れない
  • 修繕費用の負担が残る
  • サブリース業者の解約・破綻リスクがある

以下、それぞれについて解説します。

保証料の分、通常の管理委託よりも多くの費用がかかる

サブリース契約によって月々にオーナーが受け取る家賃収入は、管理会社へ委託した場合よりも減ってしまうことになります。サブリース業者は管理料としてではなく、転貸による賃料差益が収益源となっているため、管理委託をした場合よりも大きな割合が差し引かれています。

空室が出ている際も一定の家賃が得られる点はメリットと言えますが、満室時でも同じ収益しか得られない点はデメリットと言えるでしょう。

また、築年数の経過や入居率の悪化に伴い、保証される借上げ家賃の減額交渉をされる可能性があることにも注意が必要です。「サブリース契約で家賃保証があるから安心」と考えず、通常の不動産投資と同じく将来的な賃貸ニーズについても慎重に検討する必要があると言えます。

礼金・更新料などが受け取れない

管理会社に管理を委託する場合は、入居者とオーナーの間で直接賃貸契約が締結され、礼金・更新料はオーナーに入ります。

一方、サブリース契約では入居者と賃貸契約をしているのはサブリース業者となります。敷金はサブリース業者に保管され、礼金・更新料もサブリース業者の収益となり、オーナーには入らない契約となるケースが多くなります。

サブリース契約のサービスメリットである、「借上げ家賃保証」の代わりに、これらの金銭を受け取れない点はデメリットと言えるでしょう。

修繕費用の負担が残る

原状回復に伴う修繕費用などはサブリース業者が負担してくれることもありますが、アパートの共用部分や全体にかかる修繕費用など、大きな費用は基本的にオーナー負担となるケースが多くなります。

不動産投資には台風や地震によって建物が損傷する災害リスクがあります。サブリース契約はこれらのリスクには対応していないため、災害リスクに備え家賃収入を貯蓄しておくなどの対策をしましょう。

サブリース業者の解約・破綻リスクがある

サブリース契約は、契約内容によってオーナー側からは借地借家法上の正当事由がないと途中解約するのは困難であるケースがあります。

しかし、サブリース業者からは、正当事由は必要とされず、業者の意向によりサブリース契約を終了させることができます。転貸借賃料収入がオーナーから借り上げている賃料を下回るなどで採算が取れなくなった場合、途中解約される可能性があります。

サブリース契約を締結する前に、オーナー側からも途中解約が可能かどうか、どのような条件が必要になるのか確認しておくことが大切です。

3.サブリース契約を結ぶ前に確認したい注意点

上述してきたサブリース契約のメリット、デメリットを踏まえ、サブリース契約を結ぶ前に確認したい注意点として、次のような点が挙げられます。

  • サブリース新法への対応
  • 保証家賃の金額
  • 家賃見直し期間
  • 修繕費用の負担
  • 解約条件

以下、それぞれについて解説します。

3-1.サブリース新法への対応

過去の事例として、上記のようなサブリースのデメリットをサブリース業者が隠していたり、分かりにくい広告や勧誘によって不動産オーナーが契約内容を誤認してしまうケースがあり、トラブルに発展してしまうことも少なくありませんでした。

このような経緯から、オーナーが正しい理解と判断ができるような環境を整えるために、2020年12月15日より、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の一部(サブリース新法)」が施行されました。

新法では、サブリース契約についてオーナーに正しく情報が伝わり、そのリスクを理解して契約を締結できるようにするため、広告や勧誘、契約時の重要事項説明の側面から規制がなされています。主な変更点は下記の3点です。

  • 誇大広告の禁止
  • 不当な勧誘の禁止
  • 重要事項説明の義務化

新法への改正により、メリットだけを誤認させるような広告、勧誘、契約が禁止され、サブリース業者にとってこれまでのサブリース契約よりも厳しい条件が設けられることとなりました。

サブリース契約(マスターリース契約)を締結する際は、サブリース業者がこれらの内容に違反していないか、適切な説明が為されているか、慎重に確認しておきましょう。

3-2.保証家賃の金額

保証家賃の金額が相場と比較して適正かどうか、は確認ポイントの一つといえます。

保証家賃の相場はサブリースの契約内容や設定される期間、物件エリアによって大きく異なりますが、10~30%程度の保証料率が設定されるケースが多くなります。

サブリースの保証料に妥当性があるのかどうか、同条件の物件の周辺家賃相場をポータルサイトで確認し、通常の管理委託をしたケースと比較してみましょう。

3-3.家賃見直し期間

上述したように、サブリース契約には保証家賃見直しの可能性があります。注意しておきたいのは、見直しの期間が設定されていなくても、家賃を減額しなければならない事情がある場合、家賃の減額は法的に有効となる可能性がある点です。

サブリース業者の家賃見直し実績を確認し、減額されても収支が赤字にならないよう慎重に投資計画を立てることが大切です。

3-4.修繕費用の負担

原状回復などの細かい修繕費用の負担は、サブリース業者の契約によって、オーナー負担と業者負担の部分が異なることがあります。

原状回復費用のすべてがオーナー負担である場合、業者の選定などがオーナー判断でできないため、費用がかさんでしまうこともあるので注意が必要です。

3-5.解約条件

契約のなかで、解約できない期間を設けていることもあります。解約できない期間と解約予告期間については、確認しておきましょう。

借地借家法上、サブリース契約で解約が禁止されていた場合はオーナー側からのサブリース契約の中途解約が出来ない可能性があります。どのような場合に解約できるのかについて、条件面についても確認しておきましょう。

まとめ

サブリース契約は家賃収入が一定となり、賃貸業のリスク軽減面からオーナーにメリットがある一方、サブリース業者との収益配分やオーナー側に残るリスクなどのデメリットもあります。

保証家賃の金額や見直し期間、修繕費用の負担について確認したうえで収支計画を練り、中途解約は難しいことを理解して慎重に契約を検討して行きましょう。

The following two tabs change content below.

佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。