アパート経営でフルローンは組める?不動産投資ローンのリスクや注意点も

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土地付きの共同住宅を運営するアパート経営では物件価格が高額となりやすく、区分マンションや戸建て住宅と比較してフルローンを組むことは難しくなります。

それでも、フルローンを組むことができるケースはあるのでしょうか。また、フルローンを受けた場合にはどのようなリスクがあるのでしょうか。

本記事では、アパート経営でフルローンを組めるケースについて考え、組んだ場合のリスクと注意点について説明します。

目次

  1. アパート経営でフルローンが組めるケースとは
  2. アパート経営でフルローンを組むリスク
    2-1.マンション投資に比べてキャッシュフローが厳しい
    2-2.キャッシュフローが少ない割に税金がかかる
  3. アパート経営でフルローンを組む際の注意点
    3-1.全体収入に対する返済比率を抑え、手元資金を確保する
    3-2.リスクのシミュレーションを綿密におこなう
  4. アパート経営でフルローンを組めなかった時の対策
    4-1.融資審査を受ける時点での属性を改善する
    4-2.共同担保を設定する
    4-3.住宅ローン・カーローンなどを減らし、返済比率を下げる
  5. まとめ

1.アパート経営でフルローンが組めるケースとは

一棟アパートの多くは木造であるため、基本的に法定耐用年数は22年となります。新築であっても融資期間はこの法定耐用年数を目安に設定されることが多く、融資期間が短くなって月々の返済額が多額になる傾向があります。

返済のシミュレーションが厳しくなることから、アパート経営でフルローンを組むのは、マンション投資に比べると厳しいといえるでしょう。

ただし、アパート経営では、マンション投資に比べると全体価格に占める土地の割合が高くなります。そのため、路線価が高く、賃貸需要の多い立地のアパートを選ぶことで、資産性を高く評価され、場合によってはフルローンが受けられることがあります。

例えば、新築アパート投資会社の「アイケンジャパン」では、厳選したエリアの中でも駅から徒歩15分圏内の好立地に無駄なスペースを省いたアパートを建築してます。好立地のアパートは土地の評価額が高く、金融機関の融資審査で高い評価を得られることがあります。

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さらに、給与収入や金融資産などの属性が高い場合、それらが返済原資の一部として評価されることで、フルローンが組めるケースもあります。不動産投資の実績があれば、その家賃収入や資産が評価され、より良い融資条件でローンを組める可能性を高められるでしょう。

いずれのケースでも、月々の返済額が大きいため、家賃収入に代わる返済原資として充分であると評価されることが重要と言えます。

2.アパート経営でフルローンを組むリスク

フルローンを組んで不動産投資をおこなうと、キャッシュフローを悪化させて様々なリスクを増大させるおそれがあります。アパート経営では、投資額が大きくなり、返済期間も比較的短いため、これらのリスクがより顕在化しやすく注意を払う必要があるといえます。

2-1.キャッシュフローの悪化が深刻になるおそれがある

アパート経営では、投資額が大きくなり返済期間が短い傾向があるため、キャッシュフローの悪化が深刻になるおそれがあります。

このことを検証するために、5,000万、利回り8%の新築アパートを、金利2.5%、返済期間25年でフルローンを組んで購入した場合のシミュレーションを行ってみます。すると、おおよそ下記のようになります。

  • 毎月返済額:224,000円
  • 毎月の家賃収入額:330,000円
  • 返済比率:約68%(224,000÷330,000×100)

このケースでの返済比率は約68%に上ります。空室リスクを考慮すると、家賃収入のみでローンを返済していくのは厳しい状態であると考えられます。

維持管理費も家賃収入の10~20%程度かかることから、経年劣化による家賃下落によって赤字になる可能性もあり、大規模修繕や金利上昇などのリスクに耐える余裕がない状態であることが分かります。

2-2.キャッシュフローが少ない割に税金がかかる

アパート経営では、全体価格に占める建物割合が低いうえに、ローン元本返済額が大きいため、キャッシュフローが少ない割に利益が大きくなり、税金が高くなる傾向があります。

上述の5,000万のアパートをフルローンで購入した場合において、建物価格2,000万とし、毎月のキャッシュフローと税金のかかる利益を比較してみましょう。

キャッシュフロー 税金のかかる利益
毎月の家賃収入額 330,000円 330,000円
毎月の管理費 50,000円 50,000円
借入金元金返済額 120,000円
借入金利息額 104,000円 104,000円
毎月の減価償却費(耐用年数22年) 76,000円
毎月残高 56,000円 100,000円

毎月のキャッシュフローは、家賃収入―管理費―借入金元本・利息支払額=56,000円となります。これに対して、税金のかかる毎月の利益は、家賃収入―管理費―借入金利息額―減価償却費=100,000円となります。

表をみると、キャッシュフローと税金のかかる利益との差額は、借入金元金返済額と減価償却費との差になっていることが分かります。

このように、フルローンのアパート経営では減価償却費が借入金元金返済額を上回ることが多いため、キャッシュフローの割に税金がかかってしまい、賃貸経営を圧迫していくリスクが高いといえます。

3.アパート経営でフルローンを組む際の注意点

アパート経営ではフルローンを組むのはリスクが高いことがお分かりいただけかと思います。

しかし、家賃収入以外の属性が高く、手元資金に余裕がある状態であれば、できる限り自己資金を減らすことなく不動産投資を拡大するのも戦略の一つです。

ローン返済後も見据えた長期的なスパンで投資計画を立てているのであれば、キャッシュフローが一気に改善するというメリットもあります。

以下では、リスクを踏まえたうえで、フルローンを組んでアパート経営をおこなう際の注意点について説明します。

3-1.全体収入に対する返済比率を抑え、手元資金を確保する

アパート経営でフルローンを組む際、家賃収入に対する返済比率は高くなることは避けられません。そこで、給与収入や他の不動産・株式配当などの資産運用による収入を合わせた全体の収入に対する返済比率を抑えるように注意しましょう。

手元資金を確保し、万一のリスクに対応する余力を持つことも重要です。余剰資金で行うなど、リスクに対処してもなお生計を圧迫しない程度の余力を保てることを基準にしましょう。

3-2.リスクのシミュレーションを綿密におこなう

アパート経営におけるリスクには、主に、家賃下落・空室リスク、修繕リスク、金利上昇リスクがあります。

アパートの家賃下落は、法定耐用年数経過時までに15%程度下落する傾向にあります。また、修繕リスクのうち、必要となる可能性が高い外壁・屋根塗装には、数100万の費用がかかります。金利上昇リスクも1%程度の上昇リスクを見積もっておくとよいでしょう。

これらのリスクを数値化してシミュレーションをおこない、ローン返済が完了するまで全体収入と比較してキャッシュフローが厳しくならないか、手元資金は充分か、について綿密に推計することが大切であるといえます。

4.アパート経営でフルローンを組めなかった時の対策

事業規模の大きいアパート経営でフルローンを組むとキャッシュフローが厳しくなりやすいというリスクがあることから、金融機関としてもハイリスクな借手であると言え、フルローンでの融資を実行するケースは多くありません。

フルローンの融資を受けられなかった時の対策としてどのような改善方法があるのか、見て行きましょう。

4-1.融資審査を受ける時点での属性を改善する

融資資産は物件の担保評価と同時に融資を受ける人の属性評価を行います。年収や勤務先、金融資産額、不動産事業経営の実績など、様々な観点で評価が為されます。

融資審査で高い評価を受けられるように、改善できそうなポイントがあればひとつずつクリアにしていくと良いでしょう。特に2023年時点、金融機関の評価の傾向として不動産事業の経営実績について詳しく見られることがあります。

小規模な不動産事業を軌道に乗せて潤沢なキャッシュフローによって健全な経営が為されていれば、プラスに評価されやすくなります。ただし、他の不動産事業のローンが多いと返済比率が高まり融資審査には悪影響が出てしまうため、まずは多額の融資を引かなくても購入できる規模の物件を検討されていくと良いでしょう。

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4-2.共同担保を設定する

アパートローンでは、購入する物件を担保に入れるだけでなく、すでに所有している物件を共同担保にすることも可能です。例えば、自宅の住宅ローンが完済している場合や、他に所有している投資用不動産があれば、共同担保に設定できることがあります。

金融機関としては、返済が滞ってしまった時の抵当権を多く設定することができるため貸出リスクが下がり、良い条件での融資を実行しやすくなります。担保性の高い不動産を所有している際は検討されてみると良いでしょう。

なお、返済が滞ってしまった際は購入するアパートだけでなく、共同担保に設定したアパートも差し押さえの対象となります。共同担保を設定してまでフルローンを組むということは相応のリスクが発生しているという点に十分な注意が必要です。

4-3.住宅ローン・カーローンなどを減らし、返済比率を下げる

住宅ローンやカーローンなど、私生活で利用しているローンを解消し、返済比率を下げておくことも有効な対策です。ご家族がいる方の場合は、私生活とのバランスをとって検討してみましょう。

その他、使用していないクレジットカードの枚数が多いという場合も、少なからず借入の可能性があると見なされて融資審査に悪影響がある可能性があります。自身の借入状況を見直し、丁寧に整理されていくと良いでしょう。

まとめ

アパート経営でフルローンを組むのは、マンション投資に比べると厳しいといえますが、家賃収入に代わる返済原資が充分であると評価されれば、フルローンを組めるケースもあります。

家賃収入のみでは、キャッシュフローの悪化が深刻化するおそれや税金の支払いも負担となる可能性があります。全体収入に対する返済比率を抑え、手元資金を確保し、諸々のリスクに耐えることができるかどうかについて慎重にシミュレーションをおこなうようにしましょう。

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佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。