不動産売却を複数社に掛け持ちで依頼するときのコツは?契約手順や査定時のポイントも

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不動産売却を複数社に依頼すると各社で売却活動を行ってくれるため、より良い条件での売却やスムーズな売却を期待できることがあります。

しかし、複数社に掛け持ちで依頼することで、1社あたりの売却意欲が低下してしまったり、媒介契約の種類などにも注意を払う必要があります。複数社に掛け持ちで依頼するのであれば、スムーズな取引を行うためにコツが必要になるのです。

そこで今回のコラムでは、不動産売却を複数社に依頼する際のコツについて解説していきます。また、契約する際の手順や、査定を受けるときのポイントなども紹介します。

目次

  1. 不動産売却を複数社に依頼する際のコツ
    1-1.大手企業と中小企業に分けて依頼する
    1-2.依頼する不動産会社の数は2〜3社程度を目安にする
    1-3.相場に近い価格設定で短期間での売却を狙う
    1-4.情報を広めるためレインズへの登録を希望する
    1-5.各社の販売活動について確認して調整する
  2. 不動産売却を複数の不動産会社に依頼する方法
    2-1.不動産会社とは一般媒介契約を締結する
    2-2.複数の不動産会社と契約する際の流れ
    2-3.不動産査定を複数社へ依頼する際のポイント・注意点
    2-4.一般媒介契約を結ぶ際の注意点
  3. まとめ

1 不動産売却を複数社に依頼する際のコツ

不動産売却を複数社に依頼する際は、情報が拡散しやすいといったメリットを活かしつつ、複数社へ依頼するデメリットの対策をする工夫が必要です。今回はそのコツとして5つ紹介します。

1-1 大手企業と中小企業に分けて依頼する

不動産会社には、大手企業と中小企業といったように規模が異なる会社が存在しています。規模が異なるだけではなく、売却活動の特徴にも違いがあります。下記がその一例です。

不動産会社のタイプ 特徴 得意な広告戦略
全国組織の大手企業 ・ネームバリューがあり、幅広いターゲットに訴求できる
・多くの個人投資家と付き合いがある
大掛かりな広告展開ができる
地元密着型の中小企業 ・エリアの特性などを把握している
・地元の有力なオーナーなどと取り引きがある
ターゲットを絞った売却活動ができる

このように売却活動が異なるため、大手企業だけ、中小企業だけといったようにしてしまうと、情報が広がらない可能性があります。大手企業から1社、中小企業から2社といったように、複数の不動産会社に依頼する際は会社の規模を考えて選ぶのがコツの一つです。

大手不動産会社としては、仲介取扱件数全国1位(2020年度まで36年連続、累積取扱件数100万件)の実績を持つ三井不動産リアルティの「三井のリハウス」があります。

その他、東急不動産グループの「東急リバブル」では、チャットによる売却相談やAIによるスピード査定、オンライン相談などで、売主および買主が利用しやすい環境を整えています。大手不動産会社の中でも各社の特徴が異なるので、比較されてみると良いでしょう。

【関連記事】三井のリハウスの不動産売却査定の評判・口コミは?申込み手順も【取材あり】

1-2 依頼する不動産会社の数は2〜3社程度を目安にする

不動産の売却仲介によって得られる仲介手数料は成果報酬となっており、成約を仲介した1社だけです。つまり、不動産の売却を5社に依頼した場合、4社は収入が得られないことになります。

依頼する不動産会社を多くすると、仲介手数料を回収できないリスクが高まるため、不動産会社の売却意欲が低下し、積極的に売却活動を行ってくれなくなる可能性があります。

こうした事態を避けるために、依頼する不動産会社の数は2〜3社程度を目安に検討すると良いでしょう。

1-3 相場に近い価格設定で短期間での売却を狙う

複数の不動産会社によって売却活動が始まると、不動産ポータルサイトなどで同じ物件の情報が数多く表示されるようになります。

この時、長い期間にわたって掲載され続けていると、買主候補に「売れ残っているのでは?」と悪いイメージを抱かせてしまう可能性もあります。こうなると興味を示す買主候補がさらに現れにくくなります。

売却期間が短くなるように、相場価格に近い価格で売り出しをかけることが大切です。複数社に提出してもらった査定価格を適切に判断し、さらに売却を依頼する不動産会社からアドバイスをもらいながら売り出し価格を決めるようにしましょう。

1-4 情報を広めるためレインズへの登録を希望する

レインズとは国内唯一の不動産データベースで、国土交通省の指定流通機関である不動産流通機構が運営しています。現在の売り出し物件情報が登録されており、数多くの不動産会社が物件情報を得るために利用しています。

しかし、不動産売却を複数社に依頼するには一般媒介契約を選ぶ必要があります。この一般媒介契約による媒介契約では、物件情報をレインズに登録する義務はありません。つまり、複数社へ売却依頼をすると、レインズへの登録が行われず、数多くの不動産会社に物件情報が伝わらない可能性があります。

複数社へ売却依頼ができる一般媒介契約を締結した際は、不動産会社に「レインズに登録してほしい」という意向を伝えるようにしましょう。レインズに登録することで、より多くの不動産会社の目に物件情報が触れることになります。

1-5 各社の販売活動について確認して調整する

売却活動は、不動産会社によって方針や具体的な手段など内容が異なります。また得意としている売却活動、不得意な売却活動があるものです。

具体的な売却活動には、下記のような活動があります。

  • 不動産ポータルサイトへの物件情報の掲載
  • 自社サイトへの物件情報の掲載
  • 新聞、雑誌への物件情報の掲載
  • 折込チラシやポスティングによる広告活動
  • 自社で登録している買主候補者への斡旋
  • オープンハウスの開催、など

不動産会社によって抱えている買主候補の数は異なり、またオープンハウスを得意としていたり、自社サイトの閲覧数が多い不動産会社もあります。そのため、不動産会社ごとにどの方法が得意なのか、見極めて売却活動を依頼することも大切です。

例えば、折込チラシやポスティングのエリアや日時が被ってしまうと、効果が半減してしまうことも考えられます。そのため各社の売却活動を確認して調整するようにしましょう。

2 不動産売却を複数の不動産会社に依頼する方法

不動産の売却を複数の不動産会社に依頼する際のコツについて解説しましたが、この項目ではどうしたら複数の不動産会社に依頼できるのか、その方法について解説していきます。

2-1 不動産会社とは一般媒介契約を締結する

不動産の売却を不動産会社に依頼するときは、通常、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があります。

それぞれ下記のような特徴があります。

項目 一般媒介契約 専任媒介契約 専属専任媒介契約
複数の不動産会社への依頼 × ×
自分で見つけた買主との単独契約 ×
指定流通機構への登録義務
販売活動の報告義務
契約期間 規制は無し 3ヵ月以内 3ヵ月以内

専任媒介契約と専属専任媒介契約では1社しか契約できませんが、一般媒介契約の場合は複数の不動産会社と契約できる媒介契約方法となります。不動産売却を複数の不動産会社に依頼したい場合は、一般媒介契約を選ぶ必要があるのです。

2-2 複数の不動産会社と契約する際の流れ

一般媒介契約を締結する際の手順は、通常と変わりありません。ただし複数社との契約になるため、契約日時の調整を適切に行いましょう。

具体的には下記のように進めていきます。

  1. 査定してもらう不動産会社を選ぶ
  2. 机上査定をしてもらい、結果を精査する
  3. 訪問査定をしてもらう不動産会社を選ぶ
  4. 訪問査定をしてもらう
  5. 提出された査定価格を検討する
  6. 売却活動をしてもらう不動産会社を選択する
  7. 不動産会社と媒介契約の締結をする
  8. 不動産会社が売却活動を開始する

複数の不動産会社と契約する際は一般媒介契約になります。査定結果を比較し、売却依頼をする不動産会社を選択する時点で、一般媒介契約を締結したい旨を不動産会社に確認しておきましょう。そのときに、価格をはじめ条件のすり合わせを行うのも良いでしょう。

また販売価格だけではなく、値下げ可能な幅をあらかじめ伝えておくなど、同じ条件を提示しておくと良いでしょう。なお、買主と成約した場合は、契約中の不動産会社すべてにその旨を伝えることも忘れないようにしましょう。

2-3 不動産査定を複数社へ依頼する際のポイント・注意点

複数社へ依頼するか、1社に厳選して依頼するか、どちらにしても不動産売却の際には複数の不動産会社による査定結果を比較しておくことが重要です。複数の不動産会社に査定価格を提出してもらい、査定価格や査定の根拠、売却活動の内容などを確認することができるためです。

複数の不動産会社へ査定依頼をするには手間がかかりますが、その際に便利なのが不動産一括査定サイトです。不動産一括査定サイトでは、物件情報を一度登録するだけで同時に査定依頼をかけることができます。

不動産一括査定サイトは数多くありますが、サービスによって提携している不動産会社が異なります。以下では悪質な不動産会社の排除を積極的に行い、全国エリアに対応している無料の不動産一括査定サイトをご紹介します。

主な不動産一括査定サイト

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なお、不動産会社に訪問査定をしてもらう際は、不動産会社が鉢合うことがないように日時の調整を適切に行うことが必要です。通常、1時間〜2時間程度かかるため、十分に間隔を開けてスケジュールを組むようにしましょう。

査定してもらう時点で一般媒介契約と決めている場合は、その旨を不動産会社の担当者に伝えるようにしましょう。一般媒介契約の場合、別の会社で成約すると販売活動が無駄になってしまうため、不動産会社や担当者によっては敬遠されることもあります。そのため事前に伝えておくことで、不動産会社を選定する際にも役立つのです。

2-4 一般媒介契約を結ぶ際の注意点

一般媒介契約には、契約する不動産会社をすべての不動産会社に伝える明示型が原則になっています。

特約によって非明示型を選ぶこともできますが、不動産会社にしてみるとライバルとなる不動産会社が不明になるため、販売戦略が立てにくくなることも懸念されます。

なお、媒介契約のルールに従って他の不動産との契約を通知しないと、違約金を請求されることもあるので注意が必要です。契約を通知していない不動産会社の仲介で買主と売買契約を締結した場合、それまでにかかった広告費や人件費などが請求されることもあります。

一般媒介契約は自由度の高い契約方法ですが、宅地建物取引業法第34条の2などで定められているルールがあります。他社で成約した時の取り扱いや依頼の取り下げ方法などについては、契約締結前に各社でしっかり確認をとっておきましょう。

まとめ

不動産売却を複数の不動産会社に依頼する場合、一般媒介契約を結ぶ必要があります。一般媒介契約は複数の不動産会社に依頼することができるなど、自由度の高い契約方法ですが、不動産会社の売却意欲を低下させてしまったり、契約内容によっては違約金が発生してしまうなどの注意点もあります。

また、不動産売却をスムーズに進めるためには、「不動産会社の規模で選ぶ」「数を多くしない」「売却活動を調整する」などのコツがあります。今回のコラムで紹介した5つのコツを参考に、ぜひご自身の不動産売却にお役立てください。

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倉岡 明広

経済学部経済学科卒業後、出版社や編集プロダクション勤務などを経てフリーライターとして独立。雑誌や新聞、インターネットを中心に記事を執筆しています。初心者が抱く不動産投資の疑問や質問を解決できるよう丁寧な記事を執筆していきます。