不動産投資の重要な業務の一つが物件管理です。実務は管理会社に委託できますが、最終的な判断、さらには適切に管理されているのかチェックするのはオーナーの役割です。
そこで今回のコラムでは管理業務の一つである入居者からの苦情(クレーム)について、どのような対応が適しているのか事例を用いて解説していきます。
目次
- 不動産投資の賃貸管理の業務は主に4つ
- 賃貸経営における代表的な苦情(クレーム)の種類
- 入居者から出た苦情(クレーム)別の対応方法
3-1.騒音に対するクレーム対応
3-2.水漏れに対するクレーム対応
3-3.設備の故障に対するクレーム対応
3-4.ゴミ出しルール違反に対するクレーム対応 - まとめ
1 不動産投資の賃貸管理の業務は主に4つ
不動産投資において賃貸管理は重要です。現場で起きる日常的なトラブルに適切に対応することで、退去予防などの空室対策にもつながります。
賃貸管理には様々な業務がありますが、代表的な業務は「入居者募集」「クレーム対応」「家賃回収」「契約更新および退去」の4つです。それぞれの業務内容を下記の表で確認してみましょう。
管理業務 | 主な内容 |
---|---|
入居者募集に関わる業務 | 入居者募集、入居者の選定、賃貸借契約の締結 |
クレーム対応に関わる業務 | 入居者間および近隣トラブルへの対応、設備や機器の故障などへの対応 |
家賃回収に関わる業務 | 家賃回収、滞納者への催促 |
契約更新および退去に関わる業務 | 契約更新および退去手続き、敷金の精算、室内クリーニングおよび原状回復工事 |
管理会社に管理を委託しているのであれば直接対応するのは管理会社ですが、原則として管理会社もオーナーの意向に沿って対応していきます。そのためクレームに対応する方法を適切に把握しておきましょう。
2 賃貸経営における代表的な苦情(クレーム)の種類
賃貸経営における入居者からのクレームは、大きく「生活・モラル関連」「設備・仕様関連」「そのほか」の3つに分けることができます。それぞれのクレームについて、代表的なのは次のような事例です。
生活・モラル関連のクレーム | 設備・仕様関連のクレーム | そのほかのクレーム |
---|---|---|
・隣戸・上下階からの騒音 ・ゴミ出しルール違反 ・マナー違反 ・ペットの匂いや鳴き声、など |
・蛇口や水道管からの水漏れ ・エアコンや給湯器の故障 ・換気扇の異常音 ・トイレのつまり ・トイレの悪臭、など |
・共用玄関の電球切れ ・敷地内に落ちているゴミ ・防犯カメラの設置要望 ・無料Wi-Fiの設置要望 ・鳩の糞害 ・害虫の発生、など |
賃貸経営におけるクレームの種類はある程度限定されています。そのため、クレームに対する心構えを事前に持つことで、適切な対応につなげられる可能性があります。下記は、クレーム対応に欠かせない代表的なポイントです。
- スピーディーな対応
- クレーム相手の話を丁寧に聞く姿勢
- 問題点を把握する能力
- 内容を精査する能力
- 契約内容との的確な照合
- 「できる」「できない」の的確な判断
- 解決方法の的確な選択
- 入居者への丁寧な説明
- 納得できない入居者への粘り強い説明、など
管理会社に任せているから安心というのではなく、物件オーナーとして関わることで早期に解決するクレームもあります。状況を適切に把握して、迅速な判断をするようにしましょう。
また、公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会が作成している「クレームの未然防止と上手なクレームの対応法」も参考になります。その中で、「クレーム対応の基本要領」として次の5つを挙げています。
- 迅速な対応
- 顧客の意向をよく聞き、冷静な判断を
- 企業として適切・妥当な解決を
- まちがった愛社精神は企業を危うくする
- 業法違反を伴うクレームは民事解決を優先
管理会社向けの基本ですが、賃貸物件のオーナーにとっても参考になるので確認しておくと良いでしょう。
3 入居者から出た苦情(クレーム)別の対応方法
クレームに対応する心構えを把握したところで、クレームへの具体的な対応法を紹介していきます。今回、解説するのは「騒音」「水漏れ」「設備故障」「ゴミ出しルール違反」の4つです。
3-1 騒音に対するクレーム対応
騒音は、人によって不快に感じる度合いが異なるため、対応の難しいクレームです。そのため正確な数値を用いるなどで、状況を把握することも選択肢の一つになります。
- 入居者に騒音の状況を確認する
- 録音などをしてもらい状況を的確に把握する
- 状況把握が難しい場合は騒音計などで騒音レベルをチェックする
- 騒音によって被害が考えられる場合は該当入居者に注意および警告を行う
- 生活音の範囲であれば当事者が特定できないように、入居者全体にお願いのチラシを配布する
- 該当入居者による騒音が改善されなければ、契約内容をもとに退去を勧告することも検討する
環境省では「騒音に係る環境基準について」において騒音の基準を設けており、住宅地では昼間が概ね50〜60デシベル以下、夜間が40〜50デシベル以下を環境基準としています。つまりそれ以上の大きな音は、人の健康に影響を及ぼす可能性があるということです。騒音対策には、このような数値を用いて具体的な対策を練ることも有効な手段となります。
3-2 水漏れに対するクレーム対応
水漏れといっても、場所やレベルによって対処法が異なります。壁紙クロスやカーペットの張り替えだけではなく、さらにひどい場合は仮住まいの手配が必要になるケースもあります。
- 入居者に水漏れの程度を確認する
- 水道工事業者に依頼し、水漏れの原因を確認する
- 緊急対応として水漏れの原因を修復する
- 壁紙、カーペットなど、水漏れによる被害の有無を確認する
- さらに工事が必要な場合は工事計画を立てる
- 上下階や隣戸への被害の有無を確認する
- 損害保険に加入している場合は保険会社に連絡をする
- 保険会社によって状況の確認および保険適応が判断される
- 工事を行う
- 工事代金を支払う(保険が適用される場合は保険金が支払われる)
騒音とは異なり、実被害が発生することもありますので、その確認を怠らないようにしましょう。
また水漏れによって建物の躯体に影響が及ぶ場合があります。水道管の修復工事だけではなく、劣化防止のために周辺への影響も確認しながら工事を行うようにしましょう。
3-3 設備の故障に対するクレーム対応
室内の設備が故障した場合、まず確認するのが緊急度です。夏にエアコンが壊れた、冬にお湯が出ないといったクレームは緊急度が高く、すぐに対応する必要があります。
- 設備の故障について状況を確認する
- 故障のレベルについて確認に伺う
- 専門業者に見てもらう
- 専門業者の判断を参考に修理または交換をする
- 損害保険が適用になるか確認する
- 修理または交換費用を支払う(保険が適用される場合は保険金が支払われる)
設備が故障した場合、入居者の故意あるいは過失によるものであれば、入居者に費用を請求できる可能性があります。入居者とオーナーのどちらに費用が発生するのか見極める必要がありますので、入居者に確認および同意を得ながら進めていくようにしましょう。
3-4 ゴミ出しのルール違反に対するクレーム対応
ゴミ出しに関しては物件だけではなく、地域や自治体のルールやマナーに対する違反ともなります。そのため入居者を管理する立場として、適切な対応をするようにしましょう。今回はアパートの場合におけるクレームへの対応を紹介します。
- 掲示板や郵便受けにゴミ出しのルールを確認する旨のチラシを配布する
- 改善しない場合は防犯カメラを設置する
- 該当者が判明した場合は個別に注意をする
- それでも改善しない場合は管理規約に則り退去勧告を検討する
ゴミ出しルールは一人が違反することによって、「他の人がやっているなら自分もいい」と人数が増えていくことも考えられます。気づいたとき、あるいはクレームが来たときにはすぐに対応し、マナー違反を波及させないことも大切なポイントです。
まとめ
賃貸物件を管理する上で、入居者からのクレーム対応は重要なポイントになります。対応を間違えると退去者が出たり、入居者が決まらないといったことも考えられます。
「クレームを出させない」「クレームを大きくさせない」ような工夫をすることも、賃貸管理のコツの一つということです。設備機器や水道管などは適切な時期にメンテナンスを行ったり、管理会社を通して住環境についてヒアリングをするなど、定期的に入居者から意見を聞くといった手法もあります。
クレームに対する心構え、そしてクレーム対応術を身につけていくことで、トラブルの少ない不動産投資を目指しましょう。
倉岡 明広
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