放置した不動産が「特定空き家」に指定されたらどうなる?注意点や対策も

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2015年5月に、「空家等対策の推進に関する特別対策措置法」(以下、「空き家対策法」)が全面施行されました。

これに伴い、「特定空き家」等に指定された場合、行政から改善、解体の指導、勧告がなされることになります。全国各地で同法に基づく条例が制定され、「特定空き家」の指定がなされています。

「特定空き家」の指定により解体の勧告がなされた場合、従わないときは強制解体もありえます。

この記事では、「特定空き家」に指定されたらどうすればいいのか、注意点や対策を中心に、「特定空き家」に指定されうる条件や、空き家の有効利用の方法を解説します。

目次

  1. どんな不動産が「特定空き家」に指定されるのか
    1-1.倒壊等保安上危険のある状態
    1-2.著しく衛生上有害になる状態
    1-3.著しく景観を損なっている状態
    1-4.放置することが不適切である状態
  2. 「特定空き家」に指定されたらどうなる?
    2-1.「特定空き家」の改善指導、勧告の流れ
    2-2.固定資産税の優遇措置解除とは
    2-3.「特定空き家」解体強制執行の事例
  3. 「特定空き家」の指定を解除してもらうには?
  4. 「特定空き家」に指定されないように有効利用
    4-1.空き家を売却する
    4-2.空き家を賃貸物件に転用して運用する
  5. まとめ

1.どんな不動産が「特定空き家」に指定されるのか

どのような不動産が「特定空き家」に指定される可能性があるのでしょうか。「空き家対策法」2条2項では、「特定空き家」の指定条件として、次の4つを挙げています。

  1. 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  2. 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  3. 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
  4. 周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
(*国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)」を参照)

それぞれの条件を、国土交通省のガイドラインで示されている判断基準に基づいて、説明します。

1-1.倒壊等保安上危険のある状態

倒壊等保安上危険のある状態とは、建物が倒壊したり、屋根や外壁が脱落、飛散したりする可能性がある状態です。

建物に大きな傾きや沈下があったり、基礎や土台・柱の破損、腐食などがあったりして、構造上の耐久性に問題があると判断されると、保安上危険であるとされることになります。この他、擁壁(ようへき)の老朽化なども該当します。

1-2.著しく衛生上有害になる状態

アスベスト等が飛散しており住民が吸引してしまうおそれがあったり、排水設備等が故障して排水が流出し臭気が発生したりしている状態などが該当します。ごみの放置、不法投棄により臭気が発生している状態なども衛生上有害とみなされます。

1-3.著しく景観を損なっている状態

景観法の基づく景観計画が策定されている場合などで、既存の景観計画やルールに著しく適合しない状態が該当します。

ガイドラインで挙げられている具体例としては、汚物や落書きで傷んでいたり、窓ガラスが多数割れたままであったり、立木が建物を覆う程度まで繁っていたりする状態が該当するとされています。

1-4.周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

立木が腐朽・倒壊して敷地・道路に散乱していたり、空き家に住み着いた動物が原因で騒音・臭気・羽などが発生して住民の日常生活を妨げていたりする状態などとされています。

施錠がされておらず、窓ガラスが割れていることにより、不特定多数の者が出入りできる状態なども該当します。

2.「特定空き家」に指定されたらどうなる?

「特定空き家」に指定されてしまったらどうなるのでしょうか。

空き家のある自治体によって、空き家対策法に沿って手続きを進めるのか、あるいは、独自に定めた条例によって手続きを進めるのか、多少異なります。

基本的には、空き家対策法の手続きに従って、「特定空き家」とされる原因となった状況を改善するように、指導がなされます。

指導に従わない場合、勧告がなされて、それでも状況が改善されないときは、固定資産税の優遇措置がなくなったり、罰金が科されたりするなどの懲罰的措置がとられます。場合によっては、行政代執行手続きによって強制的な措置がなされたりします。

2-1.「特定空き家」の改善指導、勧告の流れ

次に、空き家対策法の手続きに則った、「特定空き家」の状況の改善指導、勧告の流れを見て行きましょう。

「特定空き家」に指定されたら、まずは行政(市役所など)から、所有者等に対して改善を求める助言、指導がなされます。助言、指導によっても改善がなされないとき、行政は、一定の猶予期間をもうけて勧告を行います。

勧告に従わなかった場合には、固定資産税の優遇措置が解除されます。そして、一定の猶予期間をもうけて、改善措置命令が出されることになります。

命令にも従わなかった場合、一定に履行期限ののちに、行政代執行法に基づいて、代執行の時期、見積額などが通知されます。代執行日に、強制的に改善措置がなされます。強制執行に要した費用は後から徴収されます。

2-2.固定資産税の優遇措置解除とは

特定空き家に指定されて、行政の改善勧告に従わない場合、固定資産税の優遇措置が解除されます。

居住用住宅が建っている底地は、住宅用地の特例が適用され、固定資産税が最大6分の1まで減額されています。都市計画税も住宅用地の特例によって最大3分の1まで減額されていますが、これも解除されます。

2-3.「特定空き家」解体強制執行の事例

「空き家対策法」制定以前の事例ですが、東京都墨田区では「墨田区老朽建物等の適正管理に関する法律」条例に基づき、2014年12月に老朽化して倒壊の危険があった木造2階建ての強制解体処分を行いました。(*墨田区「老朽建物等の行政代執行を実施」を参照)

5年以上前から倒壊の危険があると通報が相次いでいた建物であり、2階部分が崩落し、壁面が傾いて隣家に倒れ掛かっていたものです。同建物には別棟の平屋もあり、こちらは屋根が損壊、柱が傾いて、建築資材の落下事故や火災の可能性が高くなっていました。

2014年1月に改善指導を行ったものの、改善が図られなかったため、学識経験者等で構成される墨田区老朽建物等審議会に諮問のうえ、勧告、命令を経て、行政代執行がおこなわれました。

3.「特定空き家」の指定を解除してもらうには?

「特定空き家」に指定されても、すぐに罰則が科され、行政代執行となるわけではありません。行政から改善の助言、指導がなされたから一定期間の猶予があります。その期間内に、改善内容についての対策を講じることが、第一にすべきことと言えます。

倒壊の危険がある場合は解体が主な対策となりますが、構造上の耐久性に問題がないような修繕を行ったり、衛生上の有害性が問題の場合は、問題となっているごみを撤去したりするなどの改善が確認できれば、指定は解除されます。

また、空き家対策法では14条4項において、改善命令の直前の段階で、命令を出そうとする相手に対して下記の3点を通知するものとされています。

  • 命じようとする措置の内容とその理由
  • 意見書の提出先
  • 意見書の提出期限

この意見書の提出は、行政の命令に対して意見があれば申し出るチャンスにもなります。

空き家の管理が行き届かないことにつき、やむを得ない理由などがあれば、証拠を提示してこのときに申し出るようにしましょう。できれば、行政法に詳しい弁護士を代理人に立てた方がよいでしょう。

その後、命令が決定した後も、通知されてからは不服申し立ての期間が設けられています。その期間内であれば、その市町村町長に対して異議申し立てをすることが可能です。

行政を相手に訴訟を起こす場合は、まずは異議申し立ての手続きを経ることが慣例です。2016年の行政事件訴訟法の改正で、いきなり取消訴訟を起こすことも可能になりましたが、まずは話し合いでの解決を目指して、順序を踏まえた対応が良いでしょう。

4.「特定空き家」に指定されないように有効利用

「特定空き家」に指定されてしまうのは、空き家の管理が行き届いていないことがそもそもの原因です。空き家を放置すれば、資産価値が低下し、維持管理の手間と費用がかさむ負債となってしまう可能性があります。

しかし、空き家への対処をきちんと行えば、特定空き家には指定されず、収入を生み出す資産となる可能性もあります。空き家を放置せず、しっかりと対策していくことが大切です。

以下では、空き家を有効利用する方法について、解説します。

4-1.空き家を売却する

最もスタンダードな空き家の利用方法は、売却することです。地方や郊外の古い不動産で、売却できないと考えて放置しているのであれば、「不動産一括査定サービス」の利用を検討してみましょう。

不動産一括査定サービスでは、物件情報を登録するだけで複数の不動産会社による査定を無料で依頼することが可能です。査定価格や査定の根拠、担当者の対応力を比較したうえで実際に売却を依頼する不動産会社を選ぶことができるため、1社だけに依頼するよりも良い条件で売却できる可能性が高まります。

また、スムーズに不動産を売却するには、買い手のニーズを把握して適正な価格、適切な方法で売り出すことが有効です。まずはどのような価格で売却が可能なのか、空き家の査定をしてみましょう。

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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧

ただし、地域によっては不動産会社による査定が難しい場合があります。そのような場合には「空き家バンク」のような行政の売買支援事業を利用してみるのもいいでしょう。

空き家バンクでは行政が仲介手数料を支援してくれたり、建物の改修費用を補助してくれたりするので、買い手が付き易くなります。

4-2.空き家を賃貸物件に転用して運用する

建物が比較的新しく、立地も人口が多い都市部などにあるのであれば、賃貸して運用することも検討できるでしょう。戸建ての賃貸物件は、ニーズに比べ供給数が少なく、郊外や地方であっても入居者を得られる可能性があります。

入居者が付けば、家賃収入が毎月入ってくるので、維持管理費以上のストック収入が期待できます。

最低限のリフォームをしなければならないので、最初にある程度投資する必要はありますが、空き家の賃貸オーナー向けの補助金を出している自治体などもあります。該当するものがあれば利用を検討してみるのもいいでしょう。

また、空き家を賃貸して運用する場合はシェアハウスとしての運用も選択肢の一つです。住宅の確保に特に配慮を必要とする住宅確保要配慮者の入居促進にもつながることなどから、国土交通省も規制を緩和し、シェアハウス事業を推進しています。(*国土交通省「共同居住型賃貸住宅(シェアハウス)の運営管理ガイドブック」を参照)

住宅確保要配慮者を受け入れる賃貸住宅であれば、ソーシャルビジネスとしての意義もあり、リフォーム資金の補助なども受けられます。

その他、駐車場経営や賃貸併用住宅など、様々な活用方法が検討できます。不動産によってどの活用方法が適しているのか、慎重に検討することが大切です。

どのような活用方法が良いか迷った場合には「HOME4U」の土地活用サービスも利用を検討してみましょう。こちらのサービスでは最大7社まで土地活用の収益プランを比較可能なうえ、自分が選んだ企業以外から連絡がくることは一切ありません。

賃貸への転用は初期費用が発生する可能性があります。どのような活用方法が良いのかじっくり検討してみましょう。

【関連記事】土地活用がしやすい地域の特徴は?田舎でもできる活用方法も併せて紹介

まとめ

放置した不動産が「特定空き家」に指定された場合、行政から状態の改善について助言や指導があります。それでも改善しないときは、命令、行政代執行に至る可能性もあります。

強制執行のほかにも、固定資産税・都市計画税が増加し、罰金が科されます。行政からの助言や指導があった段階で内容を確認し、改善することが大切です。

行政命令が決定される前には、意見書の提出の機会がありますので、事情がある場合はその旨を申し出るようにしましょう。命令通知があっても、異議申し立てや取消訴訟などの手段もあります。

不動産を所有しているのであれば、できれば「特定空き家」の指定を受けないよう、空き家を有効に利用したいものです。居住予定の無い空き家を単純に売却するだけでなく、賃貸に出す方法も有効です。

空き家を活用する際は自治体によっては補助金を給付する制度があるケースがあります。状況に合わせて、それぞれの対策を検討してみましょう。

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佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。