不動産投資では、所有物件を増やしていくことでより収入が増え、経営規模を拡大させていくことができます。しかし、2件目は1件目よりも不動産投資ローンの借入額が大きくなるため、金融機関の審査もより厳しくなってしまうことに注意が必要です。
そこで今回の記事では、2件目の賃貸用物件が購入できるかできないかの分岐点について、5つのポイントを解説していきます。また2件目を選ぶ際の注意点にもついても紹介します。
目次
- 不動産投資で2件目の購入を判断するための5つのポイント
1-1.不動産投資ローンの返済実績
1-2.1件目の経営実績
1-3.自己資金
1-4.不動産投資に使える時間と労力の確保
1-5.健康状態 - 不動産投資で2件目を購入する際の注意点
2-1.エリアが違う物件を選ぶ
2-2.物件タイプのバランスを考える - まとめ
1 不動産投資で2件目の購入を判断するための5つのポイント
不動産投資で2件目を購入する際の判断ポイントは、オーナー自身の状況による内的要因と、金融機関などによる外的要因の両面があります。今回は5つ取り上げて、紹介します。
1-1 不動産投資ローンの返済実績
金融機関から融資を受ける場合、融資の対象となる物件の収益性や資産性、事業計画に加えて、本人の属性が審査の対象になります。具体的には下記のような項目が審査されます。
- 年収
- 年齢
- 勤務先
- 勤務年数
- 雇用形態
- 資産の状況
- 借入金の状況、など
また、融資を借りている場合は返済実績も審査されます。つまり、不動産投資においては1件目の返済実績が、2件目を購入する際の審査項目になるのです。
この1件目のローン返済の際に遅延や滞納があるオーナーの場合は、返済能力に対して金融機関は不安を抱えることになります。物件自体の収益性や個人の属性に問題がなかったとしても、融資がおりないことも考えられます。
反対に、ローン返済計画に則って適切に1件目のローン返済を行っているオーナーの場合は、金融機関からの評価も高くなり、2件目の融資も獲得しやすくなるのです。
1-2 1件目の経営実績
前項で紹介したように、金融機関から融資を受ける場合、さまざまな項目が審査対象になります。特に2件目の場合は、1件目の経営状態も審査対象になります。
例えば、入居率や空室率、経費率、入居期間の長さなどについて1件目の経営がうまくいっていない場合、マイナスの評価をされる可能性があると言えるでしょう。反対に1件目の経営が順調であれば、融資に対しても前向きに検討してもらえる可能性が高まります。つまり1件目のアパート経営は、2件目の実績作りという側面もあるのです。
空室率や入居率を改善するには下記のような対策があります。
- 所有する物件の分析
- 競合する他物件の情報収集
- 設備の入れ替え
- リフォーム・リノベーション
- 内覧時の工夫
- 募集案件の見直し、など
こうした施策で賃貸用物件の運営に積極的に取り組み、常に状況の改善を図っていくことで、オーナーの経営姿勢も評価されます。
1-3 自己資金
不動産投資を拡大していくには賃貸用物件を購入する必要がありますが、その際に不可欠なのが自己資金です。不動産を購入する際は、物件価格の1〜3割程度の自己資金が必要になってきます。
これは物件を購入する際の頭金となるだけではなく、下記のような諸費用も必要になるからです。
- 仲介手数料
- 印紙税
- ローン保証料
- 司法書士への報酬
- 住宅ローン事務手数料
- 火災保険料
- 団体信用生命保険料
- 登録免許税
- 不動産取得税
- 固定資産税・都市計画税、など
また購入時だけではなく、2件の賃貸用物件を運用していく場合、税金の支払いが2件分になり、さらに修繕に備えて確保しておく費用も2件分になります。そのため2件目を購入し、運用していく際は、潤沢な資金を確保しておくことが重要なのです。
自己資金が潤沢に確保されていれば、1件目の経営が順調であることのアピールにもなり、金融機関からの融資も獲得しやすくなります。反対に自己資金が不足していたり、ギリギリであれば、経営手腕にも疑問符がつき、融資がおりない可能性もあるのです。そのためできるだけ自己資金を用意してから、2件目の購入を検討するようにしましょう。
1-4 不動産投資に使える時間と労力の確保
不動産投資には業務を代行する管理会社などの専門業者がおり、オーナーの意向によって委託することができます。しかしすべての業務が委託できる訳ではなく、オーナーが携わる場面も少なくありません。
具体的なオーナーの業務について、委託できるものとできないものを下記の表にまとめました。
委託できる業務 | オーナー自身が行う業務 |
---|---|
管理業務 税務処理 確定申告業務 清掃業務、など |
経営の方向性の決定 経費となる領収書などの収集・保管 クレーム対応に関する判断 入居の最終判断 修繕工事の最終判断 原状回復工事の最終判断、など |
例えば、修繕工事を行う場合、工事業者とのやりとりは管理会社が行いますが、見積もり通りの工事にするか、設備機器のグレードを上げるかといった判断はオーナーが行います。また入居者募集は管理会社が行いますが、入居希望者を入居させるかの最終判断はオーナーが行うものです。
所有する賃貸用物件が1件から2件になると、こうした業務が2倍となります。そのため本業があるなどで、このような業務を行う時間や労力を確保できない場合は、2件目の購入についても慎重に判断しなおす必要があるでしょう。
2件目の購入を検討する場合は、オーナー自身がどの程度、経営に携われるのかも確認することが大切なのです。
1-5 健康状態
金融機関の融資を利用する場合、融資条件の中で団体信用生命保険(団信)への加入を求められることがあります。
団信へ加入するには健康状態についての審査があります。不動産投資では融資金額が高額になるため、返済は10年や20年以上などの長期になることが多く、健康に不安がある場合はローン返済が滞る可能性があるからです。
加入する団信によって異なりますが、申込書類の記入欄に健康状態を記入して提出することになります。この申込書類をもとに保険会社で審査をした結果、「持病がある」「既往歴がある」など健康状態に不安があると、加入が見送られることもあります。
2 不動産投資で2件目を購入する際の注意点
不動産投資で2件目を購入する場合、優良物件を選ぶのに加えて、リスクを分散するために注意したいポイントがあります。今回は下記の2つの注意点を紹介します。
2-1 エリアが違う物件を選ぶ
不動産投資にはいくつかのリスクがありますが、分散投資の観点からは2件目を購入する場合は1件目とは違うエリアで物件を選ぶようにしましょう。エリアが同じ場合、地震や洪水などの災害が発生した際に2件とも被害に遭ってしまう可能性があるからです。
また、、エリアを分けることで空室リスクの軽減にもなります。例えば、同じマンション内に2つの学生向けの賃貸用物件を運用しているケースでは、近隣の大学が閉校した場合、新しい入居者が確保できないことも考えられます。こうした事態を避けるためにも、エリアを分けることが重要なのです。
2-2 物件タイプのバランスを考える
オーナーの意向や経営状態にもよりますが、同じような物件を所有するよりも、異なるタイプの物件を購入した方が所有する物件のバランスが良くなります。
例えば、賃貸用物件は築年数によって下記のような傾向があります。
- 築年数が浅い賃貸用物件:入居者は確保しやすいが、利回りは高くない
- 築年数が経っている賃貸用物件:空室率が高くなるが、物件価格が安く高利回りが狙いやすい
3件目を考えている場合は、1件目と2件目は入居者を確保しやすい築年数の浅い物件を購入して、3件目は利回りが高い物件を選ぶという戦略も考えられます。また、単身者向け物件とファミリー物件などといったように、物件タイプを分けておくとリスクの軽減にもなります。
単身者向け物件は入居者の入れ替わりが早い傾向があり、築年数が経つと入居者の確保が難しくなる一面もあります。それに対してファミリー向け物件は、入居期間が長期になる傾向がありますが、入居者希望者の母数が少なく空室期間も長くなる可能性があります。また家賃設定が単身者向け物件よりも高いため、空室になると収入の減少幅が大きいといった特徴もあります。
このようにそれぞれに長所と短所があるため、タイプの異なる物件を所有しておくことで、それぞれの短所を打ち消す効果が期待できます。
まとめ
不動産投資を事業として拡大していくには、1件目と同様、2件目にどのような物件を選ぶのかが重要になってきます。
今回は2件目を購入するための5つのポイントについて解説しました。1件目の経営を適切に行うことで、2件目を購入する際に金融機関からの融資も得やすくなります。今回のコラムで解説したポイントを踏まえ、2件目の購入を検討されてみると良いでしょう。
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倉岡 明広
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