グローバルで保険と資産運用ビジネスを展開する金融サービスグループ・アクサグループの一員であるアクサ・インベストメント・マネージャーズ株式会社の債券運用部債券ストラテジスト木村龍太郎が11月1日、2020年の世界経済に関する現時点における見通しを語った。同社によれば、2020年にリセッション(景気後退)に陥るリスクは低いものの、政策余地が限られる下で世界経済は長期停滞に突入する可能性が高く、本格回復は2022年以降になると言う。
今回の見通しの要因として、米中貿易摩擦の長期化、財政・金融政策の手詰まり、米欧の政治的リスクの3点を挙げている。
まず一点目の米中貿易摩擦の長期化に関しては、「米中貿易摩擦はいまだ事態収束へは向かっておらず、一時的な停戦となる公算が高い」としている。また、米中貿易摩擦による不確実性の高まりが企業の生産活動や設備投資などに悪影響を与え、経済全体が長期停滞に向かうという。
一方、景気を浮揚させる手段である財政・金融政策にも手詰まり感が否めない。欧州や日本など利下げ余地をほとんど持たない国では、新たな追加緩和が難しく、すでにリバーサルレート(金利の引き下げが金融緩和につながらず、かえって悪影響となる状況)に陥っていると指摘。主要国の財政出動も限定的なものになると見込む。
さらに、米欧の政治的リスクも見過ごせない。米大統領選挙に関しては、ドナルド・トランプ氏の弾劾手続きが実現する可能性は低いものの、ウクライナゲートの問題は投票を決めかねている中間層には影響が大きい。仮に、左派の有力候補であるエリザベス・ウォーレン氏が大統領となった場合には富裕層や企業にとって不利な状況となり、ドナルド・トランプ氏が再選した場合は対中強硬姿勢が続くと見られる。いずれのシナリオであっても、米国経済や世界経済にとってはマイナスとなることが想定される。
また、英国ではEU離脱交渉が依然として不透明な状況だ。解散総選挙後のメインシナリオは、ボリス・ジョンソン氏が提案するEU離脱法案が可決されると見るが、次のステップとして、新たなFTA(自由貿易協定)を締結する必要がある。この協定を取りまとめるには3年以上はかかると見ており、事態が早期に収束する見込みは薄い。
現時点での暫定的な値ながら、同社は主要国の2020年の予想経済成長率(*暦年ベースの実質GDP成長率)を、米国1.6%、ユーロ圏0.7%、日本0.3%、中国5.8%と見込んでいる。現在、NYダウや日経平均株価は年初来高値を更新するなど、株式市場では楽観的な見方も強いが、同社の債券ストラテジスト・木村氏は「2020年以降は企業の利益成長率低下により株式市場の魅力は低下し、新興国の債券などハイイールド債の魅力が高まる」としている。
アクサ・インベストメント・マネージャーズ社は、長期的かつグローバルにわたる多様な資産に対してアクティブな運用を行う資産運用会社。1994年の設立以来、多岐にわたる投資ソリューションを提供し、運用資産残高は2019年6月末時点で7566億ユーロ(約93兆円、2019年6月30日時点)、30都市21ヵ国において2,331名の従業員を擁し、747名の投資プロフェッショナルを配置している。グリーン、ソーシャル、サステナビリティ市場における代表的な機関投資家でもあり、運用資産の90%以上がESG対応となっている。
【関連サイト】アクサ・インベストメント・マネージャーズ株式会社

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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