総合不動産サービスの ジョーンズラングラサールインコーポレイテッド(以下。JLL)日本法人は、国内外の投資家を対象に「新型コロナウイルスによる不動産市場への影響」についてオンラインアンケートを実施、5月26日に結果を公表した。実施期間は4月20日~4月27日、対象はデベロッパー、AM/資産管理会社、国内ファンド、J-REIT/私募 REIT、不動産賃貸業、海外ファンド、ビルオーナー、事業会社、金融機関、保険会社(生損保)などで、有効回収数235件。回答者の約75%が今後も積極的に不動産へ投資する考えを示す一方、投資対象物件不足が継続するとの予測もある。
現在の投資スタンスについては約 75%が積極的に投資すると考えており、内訳は「価格調整があれば新規投資を積極的に行う」67.2%、「物件のクオリティさえよければ新型コロナ発生前と変わらぬ価格で新規投資を積極的に行う」7.7%と、引き続き不動産投資への高い関心をうかがわせた。
ただし、物件取得価格水準については、投資家の約 9 割が「5%以上下落する」と回答。新型コロナウイルス感染拡大の影響が不動産価格の下落につながり、一定の価格調整があると見る投資家が多い。保有物件の売却を検討するという回答は 2.6%(既存所有物件の一部売却検討1.7%、既存所有物件の売却検討0.9%)と少数に留まった。同社は「不動産への投資意欲が依然として強い一方で、新型コロナ発生以前からみられた投資対象物件の枯渇した状況が今後も継続する」と予測する。
投資ロケーションに関しては、複数回答で東京都心 5区が 16.5%、首都圏全域が 14.7%、東京23区が14.3%とトップ3を占め、約5割の投資家が首都圏への投資が第一と回答した。首都圏以外では福岡 11.7%、大阪都心 3 区 11.1%、名古屋圏が 10.5%、関西圏が 10.4%、大阪市 8.3%と拮抗。四大都市圏で柔軟に対応する意向の投資家が多くみられ、地方都市への投資意欲も依然高い。
セクター別では、オフィスが全体の 22.6%を占めトップになったが、レジデンシャル(賃貸住宅)も全体の 22.3%とオフィスと同程度の関心を集めた。さらに物流は17%と、リテール(商業施設)の 9.8%を上回った。「物流はテナントとの契約形態が長期であることや生活必需品の需要が増加し、新型コロナの影響が追い風になっている」ことが要因とする。景気後退局面で耐性を持つ、いわゆる「インフラ系」セクターの賃貸住宅と物流を併せた三本柱が今後の投資戦略として支持されたといえる。
現在物件取得にあたっての障害を聞く質問では、「価格が投資目線に合うかどうか」が 21.1%と最多。次いで「レンダーの融資姿勢の不明確さ・意思決定の遅延」を懸念する声や「投資判断に必要な情報が不足」もそれぞれ約 15%となった。ほか、入国規制や外出自粛による物件デューデリジェンスへの支障やテレワークなどによる意思決定プロセスの遅延など、物理的な障害も挙げられた。
調査結果について、同社は「今後の投資で最も重要な点は『価格の妥当性』(34.1%)だが、確信できるだけの情報が不足しており、また今後の新型コロナウイルス感染拡大も予測ができないことから、投資意欲は旺盛でも、現時点では様子をみている投資家が多い」と分析している。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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