投資用不動産を扱う株式会社グローバル・リンク・マネジメント(GLM)は8月23日、「投資対象としての賃貸型物流不動産の可能性~今後拡大が見込まれるエリア、機能とは?~」と題したレポートを公表した。グローバル都市不動産研究所による調査・研究の第17弾。物流施設の市場規模、中でも投資対象としての注目すべき賃貸型物流施設の機能・エリアの可能性に注目している。
電子商取引(EC)市場の拡大や、サード・パーティ・ロジステックス(3PL)事業の進展によって、物流施設は、「倉庫」から梱包や流通加工、高機能設備などを有する「ハイテク物流センター」へと変わりつつある。これらの施設は「物流不動産」として有力な投資対象ともなってきた。
企業の経営環境の変化、顧客ニーズの高度化・多様化、3PL事業の促進・定着によって大規模かつ高機能な「賃貸型物流施設」の需要が拡大しており、この動きを下支えしたのは不動産投資市場の高まりだと同研究所は指摘する。不動産投資の環境整備を受け、2000年初頭から外資系を含む不動産ディベロッパーなどさまざまなプレーヤーが「賃貸型物流施設」に本格参入。物流系ファンドやリートも次々と設立されたことで投資対象として広く認知され、その投資額もオフィス系に次ぐまでに成長している。
賃貸型物流施設の形態は大きく2つに分類される。1つは「BTS(Build to Suit)型物流施設」で、特定のテナントの要望に沿った立地・構造・設備(例えば複数温度帯の冷蔵・冷凍倉庫、医薬品保管、重量物対応など)を兼ね備えた物流施設を建設し賃貸する形態。もう1つが、「マルチテナント型物流施設」で、1棟の物流施設を複数のテナントに賃貸する形態。多種多様な顧客ニーズに対応するため、庫内フロアはレイアウトの自由度を確保した大空間となっており、最近では大規模災害に備えたBCP(事業継続計画)機能である免震構造や非常用電源を標準装備し、太陽光発電や敷地内緑化、ラウンジやカフェテリアなど作業環境の快適性にも十分配慮した施設が作られている。
これら賃貸型物流施設は、テナントの定着率が高く賃料収入も安定的であることから投資対象として注目され、とくに汎用性が高いマルチテナント型物流施設は人気が高いとされる。
もう1つ注目を集めている物流施設が「冷蔵・冷凍倉庫」。EC市場で規模が大きい「生活家電・AV機器等」、「衣類・服飾雑貨等」「食品・飲料等」などのうち、これから規模の拡大が見込まれるのは食品・飲料等だ。日本でもアマゾンフレッシュが17年から生鮮食品の宅配を始め、楽天は西友と提携し本格的なネットスーパーに参入、食品宅配サービス大手のオイシックス・ラ・大地も生鮮品だけでなくミールキットや無添加加工食品の販売など業容拡大している。コロナ禍の20年に食品・飲料等のEC市場は前年比で21.13%の伸びをみせた。外出の自粛から、次第に家庭内で調理を楽しむ形態が進んだとの指摘もあり、同研究所はコロナ収束後も需要は継続・拡大していくと予想。食品・飲料等のEC化率は20年でも3.31%と低水準で、今後の成長余地は大きい。
また、東京都心部には築40~50年の古い倉庫が多く(都内で現時点で築40年超が3割弱、10年後には5割を超える)、災害への安全性(耐震性など)、最新設備の欠如、環境性能などが懸念される。市川宏雄所長は、こうした都心部の倉庫の再開発や、都心外周部のマルチテナント型物流施設のタイアップなどが進んでいくと予想している。老朽化した倉庫群の景色が一転、投資市場に新たな風を呼び込むかもしれない。
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