2022年8月現在、米国の第2QのGDPがマイナスとなりテクニカルリセッションとなりました。また、一時的にFRBの利上げ織り込み剥落と共にUSD売りが進行しました。
その後、FOMCメンバーからの相次ぐタカ派発言により再びUSD買いが戻ってきています。
今回は、FRBの今後の金融政策の方針を予想する上で重要なヒントとなる、ジャクソンホール会議とPCEデフレーターについて、詳しく解説していきます。
※本記事は8月22日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- ジャクソンホール会議
1-1.ジャクソンホール会議の概要
1-2.過去のジャクソンホールでの出来事
1-3.今回のジャクソンホールでの注目点 - 米7月PCEデフレーター
2-1.PCEデフレーターの概要
2-2.前回米6月PCEデフレーター
2-3.米7月PCEデフレーター予想
2-4.指標発表後の反応予想
1.ジャクソンホール会議
1-1.ジャクソンホール会議の概要
ジャクソンホール会議は、1978年以降、毎年8月下旬に米カンザスシティ地区連銀の主催で開催されている経済シンポジウム(研究討論会)です。著名学者などとともに、世界各国の中央銀行首脳が多数出席し、FRB議長による講演も行なわれます。金融関係者によるダボス会議のようなものとなっています。
学術的に金融政策の在り方を考えようというシンポジウムです。本来政策的な意味合いはありません。
しかし2010年にこの場で当時のバーナンキFRB議長が量的緩和を示唆したことをきっかけに、注目されるようになりました。
ちなみに、ジャクソンホール(Jackson Hole)とはワイオミング州北西部に位置する谷のことを意味します。地名のHole(穴)とは、谷の北側と東側の山があまりにも高く、斜面が急であることから、わな猟師たちが穴に入ったように感じたことから付きました。
※ダボス会議…スイス・ジュネーブに本拠を置く非営利財団、世界経済フォーラムが毎年1月に、スイス東部の保養地ダボスで開催する年次総会。この会議では毎年、世界を代表する政治家や実業家が一堂に会し、世界経済や環境問題など幅広いテーマで討議します。各界から注目され、世界に強い影響力を持っている。日本からも首相や著名な経済学者などが参加している。
1-2.過去のジャクソンホールでの出来事
ジャクソンホール会議が特に注目されるようになったのは2010年からですが、それ以前からも金融政策に関わる、多くの興味深い出来事がありました。
最近のジャクソンホール会議の動きとしては、2020年の会議ではFRBの金融政策の枠組みの見直しが発表され、主な変更点として低失業率の数値のみに基づいた利上げは行わないこと、緩和策を外すにはリアライズド・インフレ率の動きを最重要基準にすること、柔軟な平均インフレ目標(AIT)を正式導入し、インフレ目標を「2%」から「一定期間の平均が2%」を目標に変更することの2点を挙げ、コロナショック後から回復する中で金融緩和をより継続しやすい状況を作りました。
また2021年には、高インフレは供給障害を背景とした一時的なものであると強調し、実際その後もハト派スタンスを引っ張ったということが挙げられます。
1-3.今回のジャクソンホールでの注目点
テーマは、「経済や政策の制約要因を再評価」です。コロナショック後の供給制約やロシアのウクライナ侵攻後に加速した高インフレのなか、金融政策の運営をどうするべきかといった議論になることが予想されます。
足元の状況では、インフレはピークを打ったという期待が高まっているものの、FRBは利上げを継続する姿勢を堅持しています。9月のFOMCについては、0.5%と0.75%の利上げ確率が五分五分となっています。
次回FOMCまでにはCPIと雇用統計は後1回ずつ発表があります。9月会合の方針を決定付けるような発言が出るとは考えにくいものの、市場が織り込んでいる2023年中の早期利下げ観測に対し、これまで以上に踏み込んで牽制をするのかどうかや、今後のターミナルレート(利上げの最終地点)を巡り何かしらの方向性を示すのかに注目です。
2.米7月PCEデフレーター
2-1.PCEデフレーターの概要
PCEデフレーターは、消費段階での物価上昇圧力を測る尺度として用いられます。米商務省が毎月末に発表している個人消費の物価動向を示す指標です。個人消費支出(Personal Consumption Expenditure)のデフレーターで、名目PCEを実質PCEで割ったものです。
PCEデフレーターから、価格変動が激しい食品とエネルギーを除いたものを「PCEコアデフレーター」と呼び、FRBが最も重視している物価指標として知られています。同様の指標に消費者物価指数があります。PCEデフレーターの方が調査対象は広いため、実際の物価動向を反映しているとされています。
2-2.前回米6月PCEデフレーター
広範なインフレ圧力によって前年比+6.8%と更に加速し、コアデータでも+4.8%と直近1年で最も急速な上昇が起きました。前月比でも+0.6%と高い伸びを見せています。
内訳を見ると、需要と供給の不均衡が特に住宅・光熱費カテゴリーで顕著にみられています。また医療関連費でも賃金上昇が川下に波及する形で価格上昇が続き、交通サービス費や非耐久財など、広範囲で価格上昇圧力が確認されました。
2-3.米7月PCEデフレーター予想
前年比+6.4%と6月の+6.8%から若干落ち着く予想となっています。直近のCPIと同様、総合指数は前月比横ばい、コアは前月比+0.3%となっています。
2-4.指標発表後の反応予想
指標発表後にジャクソンホール会議でのパウエル議長の講演を控えていることから、どのような指標が出たとしても反応は限定的となりそうです。
ただし、最近のFOMCメンバーからタカ派発言が相次いでおり、どちらかというと特にコアの数字が落ち着いていた時の方がUSD売りのインパクトは大きくなると予想します。
HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム
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