昨日行われたFOMCは市場の予想通り0.75%の利上げとなり、3会合連続で0.75%政策金利の引き上げが決定された。0.75%政策金利が引き上げられたことによって、FF金利の誘導目標は3.00%-3.25%となったが、パウエル議長の会見で市場が予想している以上にタカ派姿勢が確認されたことから、市場は上下に激しい展開となっている。
まずは今回のFOMCのポイントは2点。①FRBボードメンバーの先行きの市場予想の変化②パウエル議長の発言。
出典:Federal Reserve Board「Summary of Economic Projections」
FRBが公開しているFOMC後に発表するFRBメンバーの今後の予想は、まずFF金利の年末予想が6月は3.4%だったことに対して、4.4%という数字に変化している。
そして来年末のFF金利も4.6%と6月の3.8%から大きく引き上がっており、市場が想定している来年の政策金利の引き下げの可能性を完全に否定する数字となった。
次に失業率は来年に4.4%まで上昇すると予想しており、6月の3.9%から更に悪い数字になると予想されている。
コアインフレ率も来年3.1%と6月の2.7%から上昇しており、物価上昇が完全に抑制されないということと総じて6月の見通しから大きく引き上げられていることがわかる。
パウエル議長のコメントは、引き続きインフレ抑制を最優先にコミットすることを改めて市場に伝えた会見となり、総じてタカ派の発言が見られた。
まず「政策金利の引き上げによる成長の減速、労働市場の弱まりは当然国民全体に痛みはと伴うものの、物価安定を最優先にして行動する」ということを伝えたことが大きいポイントだ。
またインフレ抑制という任務を達成するまでは根気強く続けていくともコメントしており、ソフトランディングを達成することも困難だろうという意見も述べているということは驚きだったかもしれない。
中央銀行が最初からソフトランディングは難しいものの、それでもインフレ退治を行うということを示唆していることは、やはり完全に市場の需要を一旦潰しにいくということに他ならないため、コメントから見ても一旦は株安方向で推移せざる得ないというのが今回のFOMCで感じた筆者の私見である。
住宅市場に関しては金利上昇によって需要が後退することから正常な市場に戻るということもコメントしており、足元のアメリカ住宅市場の急落に関しては予定通りとも言えるような発言も見られていた。
上記は年末における市場の利上げ見通しだが、FOMC以降に4.25%までの利上げが織り込まれ始めている状況。
今回個人的に考えているのは来年以降のターミナルレートが4.5%付近となってきていることが見えてきており、この辺りまで上昇した後のドル高は期待できないとも言えることから、ドル高方向の目線は少し注意しておきたいところ。
上記はFOMC後のドル円、米国債10年金利、NYダウの動きだが、一旦予想通りだったこともあり株高に振れる場面もあったが、パウエル議長の会見を受けて一気に株安方向に動いており、ドル円下落、米国債金利も下落とチグハグな動きとなっている。
米国債2年金利は上昇しているため米ドル自体は対主要通貨で上昇しているものの、ドル円は円買い圧力が強かったのか下落する動きとなり、10年債が低下しても株安になっているのは不思議な動きとも言えるだろう。株安の動きとなりビットコインも連れ安となっていることも頭に入れておきたい動き。
また、アメリカが更にタカ派にシフトしたため、今後短期的には株価は下落すると想定される。
そして次に欧州でロシアの火種が再度出てきている中で、高インフレに悩まされていることから、ECBもアメリカに習ってタカ派にシフトするものと想定できるため、欧州株の下落シナリオでトレードしていきたいところ。
また日本株に関しては日銀次第というところもあり、緩和路線を一貫して続ける場合は日本株の下落幅は欧米と比較して小さくなるものと想定している。
為替市場は米ドルの強い地合いは変わらないが、米ドル高というのは企業業績に逆風となるため、先行きの見通しが見えてきているということはドル高が抑制される方向に向かう可能性も出てきたのではないかと考えている。
ドル円は高値は1998年の147円あたりが警戒ラインであるため150円は流石にないだろうというシナリオでトレードを行う予定。
中島 翔
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