先進国金融政策はどうなる?円安動向や各通貨の売買戦略も解説【2024年6月】

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2024年6月末時点で、先進国各国の金融政策に乖離が生まれ始めています。2023年あたりまではコロナショック後の緩和による悪いインフレが進行したことによって、日本以外の先進国各国は利上げ方向に舵を切りました。しかしインフレ鈍化の兆しが生まれる中で、利下げを行うタイミングに違いが見え始めています。

本稿では、プロトレーダーの筆者が、先進国各国の金融政策や各通貨の売買戦略を解説します。是非参考にしてみてください。
※本記事は2024年6月29日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。


目次

  1. 先進国各国の現状
    1-1.アメリカは利下げタイミングに注目
    1-2.日本は円安継続か
    1-3.イギリスの利下げは早くとも8月か
    1-4.ヨーロッパは利下げペースに注目
    1-5.スイスは利下げを継続
    1-6.オセアニア通貨はロング目線
  2. まとめ

1.先進国各国の現状

1-1.アメリカは利下げタイミングに注目

2024年6月現在、アメリカは、次のアクションは利上げではないというパウエル議長の発言を受け、利上げの可能性がほぼなくなりました。市場の注目は、いつ利下げを行うのかに移っています。

利下げ方向が意識されるなか、半導体関連銘柄が指数を牽引し、S&P500やNASDAQは大幅上昇しています。NVIDIAが指数を牽引している点には警戒したほうがいいでしょう。一方で経済指標を見ると、労働市場が軟化し、個人消費のセンチメントが悪化する中で、景気減速懸念が強まっています。

今後発表されるPCEデフレーターの数字によっては、金利が一時的に上昇する可能性があるものの、トレンドとしては、金利は低下しドル安となるでしょう。また、大統領選挙が控えているため株安にはなりにくく、株式市場が一時的に調整する局面では買い場になるでしょう。

ただしプロトレーダーの筆者としては、短期的にはドルは売り通貨として判断しています。

1-2.日本は円安継続か

日銀は2024年6月に国債買い入れオペの減額を行わず、7月に先延ばししました。6月に国債買い入れ減額を行い、円安を牽制する動きが出ると予想されていたものの、アクションがなかったため、円安が進行しています。ドル円は160円台前半の高値をトライしつつあり、円売り材料が強いことから上昇を続けています。

また日本国内ではインバウンド消費が日本の収益に寄与しています。円安による来日外国人の増加を考慮すると、円高に推移させるメリットが小さいため、円安方向でトレンドが作りやすいでしょう。

2024年5月の消費者物価は、前年比で+2.5%と4月の+2.2%から加速しています。日銀の議事要旨をチェックすると、タカ派のスタンスが見え隠れしているため、7月に利上げが行われると予想する市場参加者もいます。

円は引き続き売り目線でのトレードが主流になるものの、円ショートが大きく拡大しているため、一気に巻き戻すリスクがあることには注意してください。

1-3.イギリスの利下げは早くとも8月か

イギリスでは、政策金利が7会合連続で据え置きとなり、賛成票と反対票の比率も変化がありませんでした。しかし声明文では賃金上昇を示す指標が緩和方向に向かっていると評価されており、これまで以上にハト派に傾き始めています。

賃金やサービス価格のインフレが鈍化しているという自信を強めてはいるものの、不透明感が強くなっています。そのためイギリスポンドは、金融政策からはやや売り通貨と判断できます。

7月にイギリスで総選挙が行われることから、政治リスクがある点には注意しましょう。選挙があることから利下げは早くても8月になるでしょう。

1-4.ヨーロッパは利下げペースに注目

EUの経済は大きく落ち込んできており、特に不動産は、ドイツを中心に米国と同等のレベルまで落ち込み始めています。

企業の景況感も悪化しており、製造業およびサービス業のPMIも大幅に低下し、総合PMIも50を下回っており、景気の落ち込みを確認できる数字となりました。

ECBは2024年6月に予想通り利下げを行っており、先行きに関しては連続利下げというわけではなく、経済指標で判断するとしています。この点に関しては、市場参加者の予想よりもタカ派だったと考えていいでしょう。

ラガルド総裁のコメントからは金融政策は転換期に入っていると判断でき、どのくらいのペースで利下げを行うのかに注目が集まっています。

また欧州議会選挙で各国の与党が大きく敗退していることから政治不安が強まっています。フランスでは、下院を解散して総選挙を行う動きがサプライズとなり、EU全体で政治の混乱のリスクが高まっていると判断できるでしょう。

プロトレーダーの筆者としては、ユーロは買いでも売りでもないと判断しています。

1-5.スイスは利下げを継続

スイス中銀は連続利下げを行っており、今後も継続するスタンスを示しています。ここまで明確に利下げスタンスを示してきている先進国は、スイスが先鋒と言えるでしょう。

EU各国の経済状況が悪い中で、インフレが鈍化していることから早めに手を打ちたいというのが本音でしょう。そのためスイスフランは継続して下落すると考えており、売り通貨の筆頭候補になります。

2023年までは日本円売りがベースで、どの通貨を買うかを考える必要がありましたが、売り通貨が日本円からスイスフランに変化しつつあると言えるでしょう。

1-6.オセアニア通貨はロング目線

最後に豪ドルとNZドルについて解説します。

オーストラリアとNZは、利下げ方向へなかなか転じることができていません。

オーストラリア中銀はインフレ動向が不透明であることを示しており、インフレが再上昇する可能性が出てくれば利上げを検討するスタンスです。

CPIは予想を上回る上昇をしており、先進国各国のインフレ鈍化する中で、オーストラリアだけはなかなかインフレが沈静化しません。そのため豪ドルは買う通貨と判断できるでしょう。

NZドルはインフレが鈍化し、利下げスタンスが中央銀行のステートメントから垣間見られるようになるまではロング目線でのトレードを検討してみてください。

2.まとめ

本稿では各国の金融政策の状況を簡単にまとめ、通貨ごとのスタンスを解説しました。

プロトレーダーの筆者としては、オセアニア通貨を買っていきつつ、スイスフランを売ることを基本戦略として考えています。

また、日本円のロングポジションにも収益チャンスがあるでしょう。市場参加者の多くが円安方向を予測している中で、日本円のショートが積み上がっており、巻き戻しが発生する過程では短期的に大きな値幅となる可能性があります。

なお、短期的な値動きは金融政策で測ることができないため、長期目線でのトレードで参考にしてください。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12