シービーアールイー株式会社は7月13日、特別レポート「日本の賃貸住宅市場 – 少子高齢化でも需要が見込める理由」を発表した。日本の賃貸住宅市場が「今後も有望な投資対象」であることの背景について、人口動態、家計、住宅市場、消費者の傾向から考察し、日本の住宅投資市場の現状と魅力をまとめている。
レポートは、日本人の賃貸志向が比較的強いことを挙げる。CBREのGlobal Consumer Surveyで将来の転居先を賃借するか購入するかという質問には「賃借」とした日本の回答者の割合は46%で、世界全体の35%を上回った。そして、賃借の割合とGDPから各国の賃貸住宅市場の潜在的規模を推計すると、日本は米国、ドイツ、中国に次ぐ規模を誇ると推測される。日本の賃貸住宅市場はアジア太平洋地域では数少ない成熟した投資市場であり、国内外の様々な投資家によって物件が取引されている。そして、賃料はオフィスなどと比較して安定している。これについて同社は「日本の賃貸住宅は市場規模と流動性、キャッシュフローの安定性などの観点から事業用不動産の投資家にとって魅力的なセクター」と明言する。
日本の総人口は2010年にピークに減少に転じ、最新の予測では2050年までに2000万人減る見込み。一方で労働力人口は増えており、就労機会の多い都市部への人口流入が続いている。現在も日本の人口の30%が主要21都市に集中しているが、その割合は今後上昇することが見込まれる。特に、東京23区は、人口が2030年までに2015年比で5%増えることが予想されている。「人口が集中する東京都心やその他主要都市では、賃貸住宅ニーズが長期にわたって期待できるだろう。しかし、それら都市部では世帯数に対する住宅ストックが十分とは言えない状況」に、同社は需要増の可能性を見出す。
賃貸市場の主要なターゲット層は「共働き世帯」と「単身シニア世帯」。日本では女性の労働参加率が上昇しており、共働き世帯が増えている。共働き世帯の世帯年収は全体的に高く、賃料の負担能力も高いと考えられる。また、このような世帯は仕事場へのアクセスや子育ての環境などの利便性を重視し、都市部に住む傾向が強い。
しかし、大都市の賃貸住宅ストックの6~7割は小規模なワンルームや1ベッドルームタイプだ。都市部は若い単身者の割合が多いため、このような住戸に対する需要は潤沢だが、一方で共働き世帯が求めるファミリータイプの広めの住戸は少ないと同社は分析する。
一方、2040年には日本の世帯の5分の1が単身のシニア世帯となると予想されている。他方、2010年代半ば以降、高齢者の雇用制度の整備が進められたことから60歳以上の労働参加率は高まっており、65歳以上は今後さらに上昇する余地がある。同社は、このようなアクティブなシニア層を対象とした物件は「長期にわたって需要が見込める」と予測している。条件は、仕事場へのアクセスが良く、生活インフラが充実した駅に近い立地。さらに「現在は若者の需要が中心のシェアハウスも、将来的には単身シニアの住まいの選択肢にもなる」という見方を示した。
コロナ禍を経て、「より質の高い住居」「より広い住居」「より良い住環境」を転居先に求める人が増え、特に高所得者層およびシニア層は、住宅選びにおいてサステナビリティを重視する傾向があることもわかった。経済的な余裕のある共働き世帯やシニア世帯が増えれば、高スペックの広めの賃貸住宅のニーズは高まると同社は予測している。
また、最近の日本の住宅市場で住宅価格は上昇しており、分譲マンションの価格高騰がとりわけ目立つ。現在は低金利環境が続いているが、将来的に金利が上昇すれば、家計における住宅ローンの返済負担は増える。レポートは「日本の家計は総じて健全で、返済負担能力に余裕があると考えられる。それでも、住宅のアフォーダビリティが現状に比べて低下し、返済負担が高まる局面では、賃貸住宅を選択する世帯は増えるだろう」としめくくっている。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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