事業用不動産サービスのCBRE(シービーアールイー)株式会社が6月15日公表したレポート「改革に邁進(まいしん)する物流業界と次世代の物流施設」で、今後3年間の事業環境の見通しは、「好転する」という回答が大勢を占めた。今後3年間の拠点戦略では、全体の74%が倉庫面積を拡大すると回答。物流企業に限ると「面積を拡大する」とした回答は82%に達した。調査は今年3月16日から3月26日にかけ実施、 有効回答数239社(物流企業170社、荷主企業69社)。
コロナ禍の2020年を経て、今後3年間の事業環境の見通しを聞く質問には「大幅に改善」「ある程度改善」とした回答を合計すると64%で、全体としては好転する見通しが大勢を占めた。一方で、「ある程度悪化」「大幅に悪化」とした回答16%あり、厳しい事業環境に置かれた企業も少なくないことをうかがわせた。
今後、倉庫面積を拡大する、または拠点を増やすと回答した企業のほとんどが、理由として「荷物量の拡大」を挙げている。物流量の増大が物流施設の需要を押し上げていることが改めて確認された。設備や施設の更新を望む回答も多くみられた。インターネットを利用した支出総額は20年12月時点で前年同月比24%増加しており、19年は 3%増だったことに比較するとEC利用額の増加は著しい。相次ぐ非常事態宣言や巣ごもり需要が EC利用を促進したことは間違いない。このため、同社はオムニチャネルに対応した配送センターの必要性が高まっていることも背景にあると見ている。
求められる立地やスペックについても変化がみられている。サプライチェーンの川上にある生産工場の近接地や大都市圏間を繋ぐような地域も、多くの企業が検討していることがわかった。スペック面では、66%が空調付き施設に対する需要が増えると回答している。物流業界では、倉庫内作業が増えるにしたがって雇用確保が重要課題になっており、「従業員ファースト」の姿勢が鮮明となっている。
次いで、多くの回答者が増加するとみているのは「非常用電源」(65%)。自然災害が多い日本ではBCP対策は年を追ってシビアになっており、非常用電源や免震などの災害対策を設備要件とした移転ニーズも時折見られる。
三番目に多かったのは「持続可能な施設」(49%)。多くの回答者が、環境対策のニーズを充たす施設が今後ますます求められるとみている。昨年の調査によると、環境性能評価を受けた施設を実際に一棟以上利用しているとした回答は27%だったが、同社は、将来的にはこの業界もESG(環境・社会・企業統治)を意識せざるを得ないと考える企業が増える」と 見込んでいる。
一方、コスト上昇圧力は依然として強い。そのため、今後の重点施策として、倉庫面積を拡張しながらも物流効率化を同時に進めようとする姿勢がうかがえた。効率化投資では、設備やテクノロジーを効果的に導入するために必要な倉庫面積は大きくなるが、それによる人員数や人件費の削減が期待されている。
結果から、同社は物流施設面積の総量はまだ拡大途上であるとする一方、テナントが求める立地やスペックはより細分化され、今後ますます多様化すると予測。「同じエリア内でも、スペックや立地により、リーシングのペースや賃料水準には差が見られるようになる。全国的に供給量が増加することも、この傾向に拍車をかける」と見る。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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