不動産サービス大手のCBRE(日本本社:東京都千代田区)は6月13日に「CBREレンダーアンケート2019」を発表した。調査では、金融機関(レンダー)が不動産の新規融資に積極的な姿勢を示しながらも、国際情勢の悪化による景気後退懸念から物件の資産性や流動性、収益性などを昨年よりも重視していることが明らかになった。
本調査は不動産会社や不動産ファンドに融資するレンダー25社に対して実施した、今後の不動産市場の見通しや融資方針に関するアンケート調査の結果をまとめたもの。
調査によると、2018年度と比較して2019年度の融資額実績は「変わらない」または「増加する」と回答したレンダーの割合は、シニアローンで90%、メザニンローンで91%となった。また、2018年度の融資額に占める新規融資額の割合に対する回答では、全体の81%を占めるレンダーが融資額の7割以上が新規であることが明らかになり、新規融資に対する積極的な姿勢が伺えた。
一方で、不動産融資市場の最大の脅威を問う設問の回答では「国内外の経済ショック」が前年の38%から64%と大幅に増加。米中貿易摩擦による影響を警戒していると見られる。景気後退への懸念は、レンダーの融資判断軸にも大きく影響しているとみられ、融資判断に不動産資産の融資金額である「LTV(Loan To Value:不動産資産価値に対する負債の比率)」を重視する、という回答が2018年度に比べて28%から36%に、「安定した収益性」を重視する、という回答が2018年度に比べて20%から28%と大幅に増加している。
米中、さらにロシアを巻き込んだ対立が今なお悪化しつつある中、今後のレンダーの投資姿勢として、元本が確実に回収できるような物件を投資対象とする保守的な傾向が見られると予想される。
レンダーが魅力的と見ている都市は、賃貸マンションでは2018年度に引き続き、ランキング上位に東京23区や大阪、横浜が名を連ねた。賃料上昇が続き、人口増加も見込まれる都市部に安定した人気が集まっているが、今回のアンケート調査では福岡が6位から4位に浮上。物件の新規供給が限られている一方で、勤労人口が増加すると予測されている数少ない都市の一つとして、注目が集まっていると見られる。
今回のアンケート結果を受け、CBRE リサーチのアソシエイトディレクター、本田あす香氏は「低金利が続くなか、より高い収益が期待できる不動産投資事業は、レンダーにとっても引き続き重要な融資先。今回の調査結果は、融資姿勢は引き続き前向きながらも、慎重かつ冷静な取組みが続くとみられることを示唆している」とコメントした。
CBRE日本法人は、不動産賃貸・売買仲介サービスをはじめ、各種アドバイザリー機能やファシリティマネジメント(FM)などの18の幅広いサービスラインを全国規模で展開。前身は1970年設立の生駒商事で、日本における不動産の専門家として、全国10拠点で地域に根ざしたサービスを展開してきた。CBREグループは「フォーチュン500」や「S&P 500」にランクされ、ロサンゼルスを本拠とする世界最大の事業用不動産サービスおよび投資顧問会社(2017年の売上ベース)。投資家、オキュパイアーに対し、幅広いサービスを提供している。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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