企業活動における環境問題に対する取り組みが重要性を増している。事業用不動産サービス大手のシービーアールイー株式会社(CBRE)は6月20日発表した特別レポート「オフィスビルの環境認証の動向2023」で、環境認証を取得したビル「グリーンビル」が賃貸オフィスマーケットにおいてどのような評価を得ているのかを定量的に分析している。
レポートによると、賃貸オフィスマーケットにおけるグリーンビルの割合は2011年以降急増しており、現在、国内の主要13都市における環境認証ビルの面積割合は、44%に達している。調査では、グリーンビルと総称するものとしてLEED認証、WELL認証(WELL Building StandardTM)、CASBEE建築、CASBEE不動産(ともにB+以上)、DBJ Green Building認証、BELS認証(3以上)、さらに東京都優良特定地球温暖化対策事業所認定(トップレベル事業所、準トップレベル事業所)の環境認証制度を対象としている。
認証取得は、新しく、大きなビルほど進んでおり、結果、ここ数年大型ビルの供給が多い都市ほどグリーンビルの割合が高まっている。グリーンビルと未認証ビルを比較した際の賃料プレミアムは、直近23Q1時点で+5.4~6.4%だった。競争力が高く賃料水準が高いビルほどプレミアムの単価も伸びやすいが、率に換算すると徐々に割合が小さくなった。賃料水準が相対的に低い中小ビルでは希少性があり、プレミアム率は大きくなっている。
稼働率プレミアムは、2010年以降の期間平均で比較した場合、概ね+0.9~3.3%ptsの差が見られた。物件属性(規模や築年数)による傾向は確認されなかった。水道光熱費については、直近のエネルギー価格高騰の影響は、グリーンビルの方が相対的に小さいことが確認された。
調査結果から、同社は「グリーンビルは賃料及び稼働率プレミアムがあり、オーナーに収益上のメリットがある」と評価。また、稼働率の高さはテナントの満足度の高さの表れとして、水道光熱費の経済的安定性とあわせ「テナントにもメリットがあり、何より、地球環境を守るというメリットもあり、三方よしであると言える」と今後のさらなる普及に期待感を示した。
なお、環境認証は、環境負荷低減に対するオーナーやテナントの取り組みの結果およびその徴表であって、環境認証そのものの効果として当然に賃料及び稼働率のプレミアムが導かれるものではない。認証を取得しているビルでも、賃料や稼働率にプレミアムがみられないビルが存在する一方、認証を取得していないビルの中にも環境性能の高いビルや、テナントの満足度が高いビルは当然ながら存在する。そのため、同社はレポートに導き出された各プレミアムについては「あくまでも現時点におけるグリーンビルの全体の傾向を定量化、視覚化したもので、不動産という特性上個別性がある」と付言している。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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