なぜ不動産投資市場はバブルになりやすいのか?不動産が持つ2つの特性とは

※ このページには広告・PRが含まれています

不動産市場はバブルになりやすいと言われます。1986年12月から1991年2月までのバブル景気は良く知られていますが、その後も2000年くらいからリーマンショックまでの数年間は多くの不動産会社が株式上場するなど、不動産業界はミニバブルとなりました。

歴史を見ると不動産バブルは数回到来していることがわかります。このように不動産市場がバブルを起こしやすい原因は何なのでしょうか。

今回は価格が上昇する要因とバブルが起きる仕組みを整理し、そこから見えてくる不動産投資の2つの特性について解説をしていきたいと思います。

目次

  1. バブル景気とはどういったものだったのか
    1-1.プラザ合意が日本に与えた影響
    1-2.バブル景気時の不動産価格の推移
  2. 不動産の2つの特性「希少性」と「価格抑制の仕組みがないこと」
    2-1.不動産には金と同じように希少性がある
    2-2.株式投資で行うことができる空売りの特性
    2-3.株式投資の「空売り」は価格上昇の抑制になる
  3. 価格が上昇すると買いが多くなることがある
  4. 不動産バブルで高掴みしない方法
    4-1.投資に感情移入しないで自分のルールを守る
    4-2.足を動かしてプロから市況の情報を集める
  5. まとめ

1.バブル景気とはどういったものだったのか

日本では1986年12月から1991年2月までの時期をバブル時代あるいはバブル景気と言います。資産価値は高騰し、株価も上昇、経済安定成長期ともいわれる時期です。この時期、不動産価格も上がりました。上がり続ける不動産価格にキャピタルゲインを狙った売買が繰り返され、軒並み不動産価格が上昇した時期です。

しかし、バブルが崩壊すると不動産価格は一気に下落し、遅い時期に不動産を購入した人は利確のタイミングを失い、大きな損失を被りました。

1-1.プラザ合意が日本に与えた影響

バブルのきっかけとなった主な出来事の一つが1985年のプラザ合意です。プラザ合意により、日本は円高ドル安の影響を受け、景気が低迷しました。以下は1980年~2018年までのアメリカドルと日本円の年推移と円高時の主な出来事を整理したグラフです。プラザ合意後一気に円高ドル安になっていることがわかります。

は1980年~2018年までのアメリカドルと日本円の年推移と円高時の主な出来事*日本銀行・外国為替市況のデータから作成

そこで日本は内需主導型の政策で経済の立て直しを図ります。その際に国が推進した主な政策が、公共事業への投資と金融緩和でした。

公共事業へ投資することで、国から委託される業者が潤い、多くの建設業が活況を帯びます。金融緩和政策では、銀行が企業や個人に対する貸し付けを積極的に行うようになりました。企業は融資を受け、工場などを建設するための土地を買い始めます。このことがきっかけとなり土地価格が上昇し始めます。この循環が不動産価格を押し上げていきました。

このような流れで上がり続けた不動産に多くの人が飛びついたため、さらに価格上昇の勢いが増したのです。

1-2.バブル景気時の不動産価格の推移

バブル景気では、早期に購入し売却した人は儲けていますが、バブル時代の後期に高値で購入した人の中には、売却できずに借金だけが残った人も多くいます。

バブル景気の商業地の最高価格のグラフを見てみましょう。以下は札幌市、仙台市、東京23区、名古屋市、大阪市、広島市、福岡市の商業地の最高価格を1987年から2018年までグラフにしたものです。

主な都市における商業地の「最高」価格の推移国土交通省「主な都市における商業地の「最高」価格の推移

バブル時代が含まれる昭和62年(1987年)から平成3年(1991年)の時期は価格が高騰しているのがわかります。昭和63年くらいまでに購入して1,2年で売却していれば利益が出たことが推測できます。

平成3年(1991年)をピークに価格は一気に下落していますので、1991年から1992年くらいに購入し、売却のタイミングを逃した人は大きな損益を被ることになります。

平成20年(2008年)に価格は再び高騰しています。この時期は新興の不動産会社が株式上場するなど、日本では再び不動産市場が沸き立ちミニバブルを引き起こした時期です。しかし2008年9月にアメリカで起きたリーマンショックの煽りを受けて、不動産価格は下落しました。

その後、平成26年(2014年)からはマイナス金利政策や相続税の改正などアベノミクスの政策の影響で再び上昇しています。

2.不動産の2つの特性「希少性」と「価格抑制の仕組みがないこと」

上記グラフではこの30年位の間に不動産は大きく浮き沈みを繰り返していることがわかります。何が原因でそのような現象が起きるのでしょうか。ここでは不動産価格の変動要因と株式投資の価格変動要因を比較してみましょう。

2-1.不動産には金と同じように希少性がある

不動産価格と株式投資の価格は需要と供給のバランスで価格が決まるという点では同じです。ただ、不動産には土地や物件の希少性が価格に影響してくるという点で、株式投資との違いがあります。

株式投資は様々な株式が上場されていますので、買い注文を入れて数が少なくて買えない、ということはありません。しかし、不動産の場合は同じ物件が2つとないため、一つの物件を取り合うことになります。所有者が売らないと言えば、購入することはできません。

また、株式投資と違い、不動産の場合は建設できない場所があります。東京都心では不動産を新しく建てる場所が少ないため、物件数が限られてきます。新築の物件が少なくなっている上に、近年では都心に住みたいという人が多くなり、都心回帰の傾向が強まっています。

そのため、すでに建てられている物件は順調に運用されている物件が多く、価格は下がりにくく、逆に上昇傾向にあると言えます。このような現象は株式投資ではあまり見られない要因です。

同じく希少性のある投資商品として金が挙げられます。金は希少性により価格が上昇する特性を持っています。そういった意味では不動産と金には似た特性があると言えるでしょう。

希少性があると手にしたいという人が多くなりますので、不動産や金は価格が下がりにくい側面を持っていると言えるでしょう。

2-2.株式投資で行うことができる空売りの特性

株式投資では価格の高騰を抑える仕組みとして「空売り」という売買手法の存在も影響しています。「空売り」とは、価格が下がることを予想した場合に、売り注文から入り、買い注文で決済をする特殊な売買手法です。

どうして持っていないものを売り注文できるのでしょうか?「空売り」を発注する際は、証券会社から株を借り受け、売りに出します。それを価格が下がったところで買い戻します。買い戻した株を証券会社に返し、価格が下がった分の差額を利益として受け取る仕組みになっているのです。

逆に「空売り」は価格が上がるとマイナスになります。マイナスになった場合は、その差額が損金として投資金から差し引かれます。以下の表を確認しましょう。

買い注文を入れて売り決済した場合と、売り注文を入れて買い決済した場合

空売りの差益

2-3.株式投資の「空売り」は価格上昇の抑制になる

「空売り」は価格が上がり、高値のピークに来たことを予想した場合に入れると効果的な注文方法です。そのため高値を付け「空売り」注文が多くなれば価格は上げ止まります。このように株式投資では高値を付けた時点で「空売り」注文が入ることで、価格が上がり続ける現象を抑制する仕組みがあります。

しかし、不動産投資の場合は「空売り」という注文方法はありませんので、高値を付けた場合、安値で売らない限り価格が下がることはありません。上げ基調だった場合は買い注文が多くなり、価格はさらに上がっていくことが予想されます。

このような特性から不動産では価格上昇に対して抑制する仕組みがないため、株式投資などと比較すると価格上昇が進みやすく、バブルになりやすい商品だと言えるでしょう。

3.価格が上昇すると買いが多くなることがある

「安く買って高く売る」ことが投資の基本ですが、不動産市場で一旦価格が上昇し始めると、高値でも買ってしまう傾向があります。一旦価格が上昇し始めると、さらに高くなるのではないか、と考え買いが増えるのです。そのような循環が続くことでバブルが引き起こされます。

しかし、高値で掴んだ場合は所有し続けることで損失を招くリスクがあります。上昇している価格の物件を高値で掴んでしまい、その後価格が一気に下落、売るタイミングを逃してしまう、というのがバブル期の損をした人のパターンのひとつでもあります。

バブルで利益を得た人とそうでなかった人との違いはそのような点にあります。上がってきたから買うのでは遅いということが先ほどのグラフでも分かるのではないでしょうか。では、高値で物件を掴まないようにするにはどうすれば良いのでしょうか。

4.不動産バブルで高掴みしない方法

不動産価格は他の投資商品と比較して、価格が高騰すると抑制する力が弱いことがわかりました。そのため投資家は上がり続ける価格を見て、このまま上がり続けるのではないか、という感情に流され、買ってしまう可能性があります。価格の上昇を抑制する力が弱いので価格はある程度上がりますが、売却が多くなると一気に下落します。

この場合損をする要因としては、購入を決断するのが遅いことが考えられます。価格が上がり始めても「もう少し様子を見て買おう」と考えるのが一般的でしょう。もう少し待って、さらに価格は上がってきたので「これは上がる」と判断して買ったところ、価格が一気に下がり始めた、というパターンは良くあります。

売却の際も「まだ上がるかもしれない」という感情がはたらき、せっかく高値で売れるタイミングでも売らなかった場合、利確のタイミングを逃してしまい、価格が下がってしまうということも良くあるパターンです。判断の遅さが損失を招く大きな要因と言えます。

そこで、今後またバブルになったとしても高掴みしない方法について見ていきましょう。

4-1.投資商品に感情移入しないで自分のルールを守る

投資はルールを決めたら、その通りに売買を行うのが鉄則です。価格が上がっているから、という安易な理由だけで買ったとしたら、損失を被る可能性が高くなります。

投資は感情に左右されるとよく言われますが、不動産の場合は価格帯が数千万円になりますので、慎重に売買しましょう。投資で成功するには感情移入をせず、自分で決めたルールを守ることが大切です。

例えば300万円利益が出たら売る、あるいは200万円損が出たら損切りをする、と決めて売買することです。仮にそこからまだ上がりそうだとしてもルールを守ることで、リスクを最小限に抑えることができるようになります。

4-2.足を動かしてプロから市況の情報を集める

不動産バブルになると価格上昇を抑制する仕組みがないことがわかりました。そのため、早い時期に購入し、ある程度の利益で売却できれば損をする確率は減ります。

逆に高値で掴んでしまい、売却のチャンスを逃し価格が下落してしまうと、損をしてしまうことになります。理屈ではわかってはいても、売買のタイミングを予測するのは素人には難しいのではないでしょうか。

不動産価格の上げ下げの情報を得たり、売買のタイミングの精度を高めたりするには、プロから情報を集めるのが最も効果的な方法です。しかし、プロといってもどこにいるのかわからないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

プロと言ってもテレビで解説をしている人だけではありません。不動産会社には資格を持った不動産のプロが必ずいます。無料のセミナー等にいくつか参加しておき、信頼できると感じた人とコネクションを保っておくことで、有益な情報が得られます。会社については、検討しているエリアや物件に強みを持つ不動産会社などを中心に探してみると良いでしょう。

そういった会社の人に日ごろから接点を持ち、情報を得るようにしましょう。プロから良い情報を得るためには、その時だけの関係ではなく、不動産会社に出入りするなど、普段から足を動かして良好な関係を築くことが重要です。

バブルは利益を出すチャンスでもあります。チャンスを逃さないためにも普段から情報収集を欠かさないようにしましょう。

5.まとめ

不動産市場は「希少性」と「価格を抑制する仕組みがない」ということから一度上昇し始めるとバブルになる傾向が高いことがわかりました。逆に価格が下がり始めると一気に下落してしまいます。バブルで損をしたという話を聞くことがありますが、その多くは高値で掴んでしまい、売るタイミングを逃して価格が下落してしまったことが原因です。

不動産価格は一度上昇し始めると長期間にわたり上昇が続きますので、上昇中に購入をするのが定石です。その際に高値掴みなどの失敗をしないためには、自分なりに決めた投資ルールを守ることと、普段から不動産のプロなどからの情報収集を怠らないことがコツだと言えるでしょう。

【関連記事】【投資初心者向け】0から学べる不動産投資セミナー7選

The following two tabs change content below.

西宮光夏

不動産会社での勤務や、所有している不動産運用の経験をもとにHEDGE GUIDEでは不動産関連記事を執筆しています。現在は主にふるさと納税の記事を担当しています。ふるさと納税記事では、地域の人たちが心を込めて提供する返礼品の素晴らしさを、少しでも多くの人にお伝えできればと思っています。