9月末にアメリカの不動産案件を専門に取り扱うソーシャルレンディング会社、ガイアファンディングで投資家への返済遅延が発生しました。
今回の問題へのガイアファンディングの対応や、他の海外案件を取り扱うソーシャルレンディング会社の状況などと合わせて考えていきたいと思います。
目次
- ガイアファンディングで遅延が発生
1-1.遅延が起きた理由は自然災害に依るもの
1-2.その後の対応は順調に進んでいる - 海外案件を専門に扱うクラウドクレジットの現状
2-1.いくつかの案件で元本割れも発生
2-2.欧州の個人向け融資案件ではマイナスも
2-3.2018年7月末の平均利回りは7.8% - アメリカの不動産を専門に扱うアメリカンファンディングは大丈夫なのか
3-1.アメリカンファンディングでは返済遅延や貸し倒れは発生していない
3-2.ガイアファンディングと同様のリスクがあると考えるべき - まとめ
1 ガイアファンディングで遅延が発生
ガイアファンディングは自社サイトにおいて9月26日、返済遅延が発生したことを投資家に報告しています。まずはその内容を見てみましょう。
1-1 遅延が起きた理由は自然災害に依るもの
https://www.gaiafunding.jp/apl/information/news?id=450
上記リンクに今回の返済遅延が起きた理由が詳しく書かれています。
【遅延理由】
案件所在地は、テキサス州のヒューストンと港のあるフリーポート市の間に位置するマンヴェル市内です。
テキサス州に甚大な被害をもたらした、昨年8月のハリケーン『ハービー』の影響により、
当該土地は更地で大きな影響はなかったものの、許可申請に対する当局の手続きが遅れたことが理由です。【期失の事由】
ガイアファンディングまたはmaneoプラットフォームにおいて、再募集が想定されていました。
しかし、maneoマーケットは、リファイナンス案件の審査基準に必要な各種エビデンスを期日までに揃えることができず、再募集が叶わなかったことが主たる理由です。
返済遅延の理由としては、ハリケーンの被害により土地に建物を建てることができず、そのため、予定通りに案件の運用が行われなかったからだとされています。また、返済への対応として、リファイナンス案件を組成しようとしました。
しかし、maneoプラットフォームから募集の許可が下りず、リファイナンス案件の募集ができなかったため、今回の事態に陥ったことがわかります。
直接的な遅延の理由は、アメリカのカントリーリスクとも言えるハリケーン、言わば自然災害です。
1-2 返済交渉は進行中
https://www.gaiafunding.jp/apl/information/news?id=451
そして、その2日後には案件の処理のため、どのように対応しているかをホームページで公開しています。
【売却先について】
工事完了後の売却先として住宅建設事業者との契約が締結済みで、
すでに頭金もエスクロー口座に入金されており、エビデンスも確認しております。【案件2C社について】
案件2の最終貸付先C社につきましては、
今回、ガイアファンディングまたはmaneoプラットフォームでの再募集を想定しており、
この案件2についてもリファイナンスすることを前提に調整しておりました。
その結果、案件1と同様に遅延となりました。
急ぎC社との打ち合わせを行い、返済する意思を確認できております。
返済時期については改めてお知らせいたします。
この内容を見ると、すでに物件の売却は契約済みであり、融資した資金の回収について問題ないことが報告されています。非常に短期間ながらも事後処理について投資家に報告の上、さらにはホームページを通じて会社としての対応を明らかにしたことは評価できるポイントです。
ハリケーンによる自然被害は、アメリカでは避けることのできないリスクです。日本でも台風などの自然災害による被害は想定する必要がありますが、ハリケーンの規模は日本の台風をはるかに超えています。建物が跡形もなくなってしまうほどの被害が起こることもあるのです。
今回は建築前だったため、建物に被害はありませんでした。仮に賃貸物件を運用していた場合、建物の崩壊によって収益が一気に飛んでしまう事態も想定しておかなければいけません。
もう一つ、maneoマーケットが、リファイナンス案件の募集を許可しなかったことも注目に値します。maneoマーケットは本年6月、グリーンインフラレンディングの案件募集に際し、監視業務の不徹底によって金融庁から行政勧告を受けました。
勧告以降のmaneoマーケットは、募集案件の内容をしっかりと審査し、投資家が不利益を被る怖れのある案件は募集を許可しないようになりました。今回の件を見るに、投資家目線の業務フローが着実に構築されてきていることが分かります。
*【追記】11月19日には、ガイアファンディングが138ファンドにおいて35,102,393円の利息が遅延したとの公表がされています。
【延滞発生に関するご報告】 2018年11月19日運用終了予定案件および全ファンドの利息
2 海外案件を専門に扱うクラウドクレジットの現状
ソーシャルレンディングで海外案件を多く取り扱う会社といえば、クラウドクレジットです。クラウドクレジットは、アメリカンファンディングやガイアファンディングのようなアメリカの不動産専門ではなく、世界各国で多様な業種のソーシャルレンディング案件を組成し、世界中の投資家に融資を行っています。
クラウドクレジットの現状は、どのようになっているのでしょうか。
2-1 いくつかの案件で元本割れも発生
クラウドクレジットでは毎月、案件の運用状況を報告するページを作成、公開しています。そのページを見れば、アイコンで現在の運用状況がどのようになっているのか、また、収益が想定どおりに得られているのかどうかが一目で把握できます。
https://crowdcredit.jp/operation/entry/329/2
上記に挙げたリンク先のページを見ると、ほぼ利益がない状態になっている案件や損失が発生する可能性が高い案件もいくつか含まれていることが分かります。
2-2 欧州の個人向け融資案件ではマイナスも
傾向としては、特に欧州の個人向け融資案件で利益が出ない、もしくは、損失が発生する状態の案件が目立っています。欧州の個人向け融資は特に担保を設定しておらず、利回りが比較的高い代わりにリスクも高くなっています。この内容についてはクラウドクレジットも常に投資家に対し、周知を図っています。
また、クラウドクレジットは、トップページでこれまで投資家に償還した案件数と貸し倒れが発生した案件数についても公開をしています。
2018年10月現在、貸し倒れ件数は8件です。他のソーシャルレンディング会社と比べると多いですが、それでも2018年8月に運用資産残高が100億円を突破するなど、クラウドクレジットの事業は順調です。
クラウドクレジットは、「貸し倒れは起こるもの」と投資家に対して理解を求め、投資家もリスクを承知の上で投資しているため、貸し倒れが起きても投資家離れが起きないのです。
2-3 2018年7月末の平均利回りは7.8%
https://crowdcredit.jp/operation/entry/314/24
上記のリンク先は、2018年7月末時点での投資家利回りの平均値であることが分かります。
このように、クラウドクレジットでは投資判断に必要となる利回りや貸し倒れなどに関するデータ・情報をサイト上で公開していますので、投資をする前にきちんと確認をしてから、リスクとリターンをしっかりと検討すると良いでしょう。
3 アメリカ不動産を専門に扱うアメリカンファンディングは大丈夫なのか
ガイアファンディングと似た案件を募集している会社として、アメリカの不動産案件を専門としたアメリカンファンディングがあります。こちらもガイアファンディングと同様にカントリーリスクを被る可能性がありますが現在、問題は発生していないのでしょうか。
3-1 アメリカンファンディングでは返済遅延や貸し倒れは発生していない
アメリカンファンディングの募集状況や案件の運用状況を見ると、現在、返済遅延や貸し倒れは1件も発生していません。この9月・10月と順調に案件の募集を続けており、アメリカンファンディングではハリケーンによる不動産への被害がないことが分かります。
3-2 ガイアファンディングと同様のリスクがあると考えるべき
アメリカンファンディングでも、ガイアファンディングと同じ問題が起こる可能性は高いと言えます。同じアメリカという国にある以上、アメリカンファンディングで扱っている案件がハリケーンの被害を受けないとは考えにくいです。
また、不動産業界に問題が起これば、同様の影響を受けるでしょう。ガイアファンディングとアメリカンファンディングの2社への分散投資は、あまり効果がありません。
海外案件において分散投資をするのであれば、ガイアファンディングとアメリカンファンディングのどちらか1社、そしてアメリカ以外の海外案件を取り扱うクラウドクレジットなどに投資する分散方法が必要になってきます。
まとめ
これからソーシャルレンディング会社を選ぶには、これまで問題が一度も起きていない会社よりも、問題が起きた時に対応力があり、投資家への補償が確約されている会社を選んだ方が、安全に投資できる可能性が高いと考えられます。
そして、海外案件に投資する場合、カントリーリスクは起こるものとして分散投資を行い、どれくらいの確率で起こるのか、一度の発生でどれくらいの損失を被るのかなどのデータについても調査・把握をしておくことが大切です。
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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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