仕組債のメリット・デメリットは?種類や購入方法、銘柄選びのコツも

仕組債の特長は高い利率です。銘柄によっては利率が10%に近いものもあります。仕組債は一般的な債券とは異なり、償還金額は仕組債に仕組まれているデリバティブ(オプションやSWAP)に依存します。そのため、償還金が額面を下回ることもあり、投資する場合にはリスクを理解してから投資する必要があります。

今回は仕組債のメリット・デメリットや種類、購入のタイミングについて解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 仕組債とは
  2. 高金利の正体はプット・オプションの売り
  3. 仕組債の種類と購入方法
    3-1.日経リンク債
    3-2.EB債(他社株転換可能債)
  4. 仕組債のメリット
    4-1.高い金利
    4-2.オーダーメイドできる
  5. 仕組債のデメリット
    5-1.元本割れの可能性
    5-2.流動性が低い
    5-3.適正な利率か判断できない
    5-4.習慣性がある
  6. 仕組債の銘柄選びのコツ
    6-1.株価や指数の下落時に投資する
    6-2.償還までの期間が短い銘柄を選ぶ
    6-3.ノックイン水準の低い銘柄を選ぶ
    6-4.原資産の動きが小さい銘柄を選び
  7. まとめ

1.仕組債とは

仕組債とは、オプションやスワップなどのデリバティブが組み込まれた債券です。仕組債は、デリバティブを売った売却益がクーポンに変換されるため、表面金利(クーポン)は普通社債よりもかなり高い水準に設定されています。

何事もなければ元本を下回ることはありませんが、組み入れられたデリバティブが一定の条件に達すると、償還金が元本を下回ってしまう場合があります。仕組債は高い格付けの銘柄が目立ちますが、格付けは発行企業の格付けであり、仕組みの安全性を示すものではありません。

2.高金利の正体はプット・オプションの売り

オプションとは権利のことで、買う権利であるコール・オプションと、売る権利であるプット・オプションの2種類があります。このうち仕組債にはプット・オプションが組込まれています。

オプションには売り手と買い手がいて、買い手が売り手に手数料(プレミアム)を支払うことで売買が成立します。このプレミアムが仕組債の高い利率の原資となります。つまり、仕組債にはプット・オプションの売りが仕組まれています。

多くの場合、単純なプット・オプションではなく、ノックイン・プット・オプションの売りが仕組まれています。ノックインとは、設定された水準まで株や指数の価格が下落すると、高い設定価格のプットの売りが発生する仕組みです。

A社株が1,000円の時、行使価格1,000円のノックイン・プットのノックイン価格を700円とします。株価が下落し700円を付けると、1,000円プットの売りが発生します。このタイミングで仕組債の保有者は、A社株を1,000円で購入する義務が発生します。

3.仕組債の種類と購入方法

日本の仕組債市場では、主に日経リンク債とEB債(他社株転換可能性)の2種類が販売されています。仕組債は証券会社で購入できます。各証券会社が募集期間を決めて独自の仕組債を販売しているため、各社のホームページ上で確認する必要があります。

代表的な日経リンク債とEB債を見てみましょう。

3-1.日経リンク債

日経リンク債とは日経平均株価の動きに応じて、元利金が変化する仕組み債のことです。
例をみてみましょう。

銘柄 S銀行 2024年4月19日満期 
期限前償還条項付デジタルクーポン型 
日経平均株価参照円建て社債(ノックイン60)
発行体格付け A1(ムーディーズ)/ A(S&P)
期間 3年
利率 当初6ヵ月 年率2.7%
以降:①利率判定価格以上の場合 年率2.7%
   ②利率判定価格未満の場合 年率0.5%
基準価格 29,500円
利率判定価格 25,075円(基準価格の85%)
ノックイン価格 17,700円(基準価格の60%)
期限前償還評価日 2021年10月以降の利払い日の10営業日前
判定価格 2021年10月:30,975円(基準価格の105%) 以降、
期限前償還評価日ごとに基準価格に乗じる割合が2.5%ずつ逓減
償還日 2024年9月19日
償還金額 (ⅰ)日経平均株価が常にノックイン価格を超えていた場合額面の100%
(ⅱ)日経平均株価が一度でもノックイン価格以下になった場合
①最終償還参照価格が最終判定価格以上の場合:額面金額の100%
②最終償還参照価格が最終判定価格未満の場合           
 額面金額×最終償還参照価格÷基準価格
最終償還参照価格 償還日の10営業日前の日経平均株価終値
最終判定価格 27,287.5円  (基準価格×92.5%(少数第3位四捨五入))

この仕組債はクーポンに特徴があります。2022年4月以降の利払いが日経平均株価の水準により2.7%か0.5%に設定されています。現状の金利を考慮すると0.5%クーポンでもメリットがあります。

この仕組債の場合、日経平均株価が一度でも17,700円(ノックイン価格)を付けると、29,500円(基準価格)で日経平均株価を買う義務が発生し、元本の40%を失ってしまうことになります。ノックインした場合、最終的には最終償還参照価格が27,288円(最終判定価格)以上の場合、償還金額は額面と同額となりますが、27,288円未満の場合、額面割れとなります。

また、日経平均株価が上昇しても早期償還が設定されているため、債券の価格は額面以上に上昇することはまずありません。投資家にとって最も良いケースは、償還まで日経平均株価指数が利率判定価格の25,075円以上、各期限前償還判定価格未満で推移していることです。

3-2.EB債(他社株転換可能債)

EB債と転換社債は似ていますが、仕組みは全く異なります。転換社債は、株価上昇に伴い価格も上昇します。一方、EB債の価格は株価が上昇しても上昇しません。仕組まれているオプションが、転換社債はコールの買いに対し、EB債はプットの売りだからです。下記のような例があります。

銘柄 H銀行2021年11月10日満期 早期償償還条項付きEB債(対象:野村総合研究所)
発行体格付け A3(ムーディーズ)/ AA-(S&P)
対象株式 野村総合研究所
利率 5.20%
償還日 2021年11月10日
申込単位 100万円
行使価格 3,390円
早期償還判定水準 3,559.5円(行使価格×105%)
ノックイン価格 2,712円(行使価格の 80%)
償還金額 (ⅰ)ノックイン価格を超えていた場合額面の100%が現金にて償還
(ⅱ)一度でもノックイン価格以下になった場合
①最終価格が行使価格以上の場合:額面金額の100%が現金にて償還
②最終価格が行使価格未満の場合:交付株式数の対象株式と現金調整額交付株式数=(100万円÷3,390円)=294.985株のうち単元株200株
現金調整額=(100万円÷3,390円-200株)×最終価格

償還日までの期間が6カ月ですが表面利率は5.2%と高い水準です。その背景にはノックイン・プットの売りがあります。株価が下落し2,712円を付けると、現金償還ではなく野村総合研究所の株式200株(簿価3,390円)と現金調整額が償還金となります。

4.仕組債のメリット

仕組債のメリットは以下の通りです。

4-1.高い利率

仕組債のメリットは、高い利率です。現在、日本はゼロ金利政策下で債券利回りは歴史的な低水準ですが、仕組債は利率の原資が一般的な債券と違うため、高い利率を設定することが可能なのです。

4-2.オーダーメイドできる

仕組債は、ある程度の資金があれば、オーダーメイドできます。自身のタイミングでの仕組債購入が可能です。HIS証券では約1,000万円から仕組債をオーダーメイドすることができます。

5.仕組債のデメリット

また、デメリットには以下のようなものがあります。

5-1.元本割れの可能性もある

償還金額が元本を大きく下回る可能性があることが大きなデメリットです。原資産価格がノックイン水準まで下落する可能性は低いのですが、もし下落した場合、償還金額が額面を下回ってしまう可能性が高まります。

5-2.流動性が低い

仕組債は償還まで保有することが原則で、途中売却はほぼ不可能です。そのため、余裕資金で購入するようにしましょう。

5-3.適正な利率か判断できない

仕組債は、仕組みが複雑なため、設定されている利率がフェアな水準かどうかを判断することができません。また、証券会社の手数料が開示されていないため、利率が適正か判断できません。

5-4.習慣性がある

仕組債は一度償還すると、また同じ銘柄を購入する習慣性があります。その都度、市場環境をよく吟味したうえで再投資を検討するように心がけましょう。油断は禁物です。

6.仕組債の銘柄選びのコツ

仕組債の銘柄選びにおいては、ノックインの確率を低くすることが重要です。

6-1.株価や指数の下落時に投資する

ノックインは、その時点の株価指数の水準が基準となります。株価や指数が高値を更新している状況では、市場が崩れた場合、ノックイン水準まで下落する可能性が高いと言えます。一方、株価下落時は、その水準を基準にノックイン価格が設定されるため、ノックインの水準に下落する可能性は低いと言えます。株価や指数水準が低迷している時が仕組債を購入するタイミングとしてふさわしいでしょう。

6-2.償還までの期間が短い銘柄を選ぶ

償還までの期間が短い銘柄を選ぶこともノックインの可能性を下げる方法の一つです。市場は予想不可能です。そのため期間が1年を超える銘柄を避けることで、ノックインの可能性を下げることができます。

6-3.ノックイン水準の低い銘柄を選ぶ

銘柄ごとにノックインの設定水準が違うため、できるだけ水準が低い銘柄を選ぶことで、ノックインの可能性を下げることができます。

6-4.原資産の動きが小さい銘柄を選ぶ

高い利率の原資はオプションを売却することによるプレミアムです。オプション価格の算出時に用いる重要要素の一つに、原資産(株価や指数)価格の変動があります。株価や指数の動きが大きいほど、ノックインに到達する可能性が高まります。そのため、過去の動き(変動)が大きな銘柄より小さな銘柄を選ぶことで、ノックインの可能性を低くすることができます。

過去データがあればエクセル上の関数を利用し簡単に求めることができます。償還までの期間やノックインの水準が同じなら、標準偏差が小さな銘柄ほどノックイン価格を付ける可能性が低いということになります。

まとめ

仕組債の高利率はメリットです。仕組債の高金利の原資は、オプションやスワップなどデリバティブの売却料です。元本割れのリスクが一般的な社債より高いため、仕組債に仕組まれているリスクを把握した上で投資するように心がけましょう。また、仕組債は途中売却ができないため、なるべく期間が短い銘柄を余裕資金で購入するようにしましょう。

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藤井 理

藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。