新築マンションの価格が高騰する中、築年数が経過したマンションのリノベーションに注目している方も多いのではないでしょうか。マンションのリノベーションを行うことで生活に合わせた住環境に変更することができ、住み替えをすることなく気分転換できる機会にもなります。
しかし、マンションのリノベーションは物件の構造上の問題やマンションの管理規約によって制限を受けます。また、大きな費用がかかるため「出来るだけ失敗したくない」と不安に感じる方も少なくないでしょう。
そこで今回のコラムでは、マンションのリノベーションで失敗しないためのポイントを解説していきます。見積もりのコツや物件を選ぶ際のポイントなども紹介します。
目次
- マンションのリノベーションで失敗しないためのポイント
1-1.構造による違いを把握する
1-2.事前に管理規約を確認する
1-3.ローンの金利と返済期間に注意する
1-4.費用を抑える工夫を心得ておく
1-5.見積もり・業者選びのポイントを確認しておく - リノベーションに適した物件を選ぶ際のポイント
2-1.新耐震基準への適用の有無を確認する
2-2.生活利便性を確認する - まとめ
1 マンションのリノベーションで失敗しないためのポイント
マンションのリノベーションで失敗しないために、覚えておきたい5つのポイントについて解説していきます。
1-1 構造による違いを把握する
マンションとひと言で言っても、構造上の違いから、リノベーションがしやすいマンションとリノベーションしにくいマンションがあります。マンションの構造によって、希望通りのリノベーションができないこともあるため注意が必要です。
「ラーメン構造」か「壁式構造」か、また「直床・直天井」か「二重床・二重天井」の違いで、リノベーションのしやすさが異なります。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
「ラーメン構造」と「壁式構造」の違い
マンションの構造には、ラーメン構造と壁式構造の2つの種類があります。通常、ラーメン構造の方がリノベーションはしやすく、壁式構造はリノベーションに向いていないという特徴があります。
ラーメン構造 | 壁式構造 | |
---|---|---|
特徴 | 垂直方向の柱と、柱にかける梁で長方形を構成し、建物を支える構造 | 壁で建物を支える構造 床と天井、壁(4枚)の合計6枚で空間を支える |
メリット | 壁のない空間ができ、比較的自由な間取りを構成することが可能 | 面で支えるため、室内に凹凸がなくスッキリした空間に仕上げやすい |
デメリット | 室内に柱や梁が張り出してしまい、室内に制限がある場合がある | 支えている壁を取り除くことはできないため、間取りの変更には制限がある |
間取りを変更するといった大掛かりなリノベーションを希望する場合、壁を動かすことが難しい壁式構造では制限されることになります。対して、ラーメン構造の方がリノベーションの自由度は高くなります。
手元に図面がない場合、室内を見ることで構造がある程度わかります。ポイントは、室内に柱が出ているかどうかです。柱が飛び出している場合はラーメン構造と考えられるため、マンション販売会社や売主へ確認されておくと良いでしょう。
なお、壁式構造は耐震性に優れていますが、自重が重くなりやすいというデメリットがあり、5階建て以上のマンションはラーメン構造が主流になっています。
「直床・直天井」と「二重床・二重天井」の違い
マンションの床・天井の構造は、「直床・直天井」「二重床・二重天井」という2種類があります。マンションの上階と下階の間には天井と床がありますが、その間にはコンクリートスラブが設けられています。
直床・直天井は、このコンクリートスラブのすぐ上に直接フローリング材などの床仕上げ材が施工される構造です。対して二重床・二重天井は、コンクリートスラブの間に隙間を作り、その上に床仕上げ材を施工する構造です。
二重床・二重天井では、給排水管や電気配線などのスペースを確保することができます。そのため、キッチンやトイレ、バスなどの水回りの場所も移動しやすくなり、間取りを変更するなどのリノベーションがしやすいのです。
1-2 事前に管理規約を確認する
マンションにはすべての住人が利用できる共用部分と、区分所有者が利用する専有部分(居室)があります。このうち、専有部分はリフォームやリノベーションができることになっています。
ただし、どのようにリノベーションしても良いわけではありません。管理組合に工事の許可をもらったり、申請しなければいけないケースがあります。共用部分への影響がないか確認するためと、近隣の住戸に知らせる必要があるからです。
また、居室内にあっても下記のものは共用部分に当たり、リノベーションできないのが通常です。
- 構造体
- 玄関ドア
- 給排水管、ガス管
- 窓、サッシ
- バルコニー
- 天井高、など
マンションによって異なりますので、どこまでリノベーションができるのか事前に管理規約を確認しておきましょう。リノベーションをすると決めてから、変更しないといけない箇所がいくつも出てきてしまうと納得のいくリノベーションにならない可能性があります。
また古いマンションの場合、エアコン配管用の穴が空いていないケースもあります。外壁に穴を開けるのは管理規約上困難と考えられますので、事前に確認しておくことで「エアコンを設置するのに、工事費用が想定外に膨らんだ」といったような事態を回避することができます。
1-3 ローンの金利と返済期間に注意する
リノベーションの資金にリフォームローンの利用を検討している方も多いでしょう。しかし、ローンの支払いによって経済的な負担が大きくなることも考えられるため、融資条件について事前に確認することも大切です。
リフォームローンは住宅ローンの一種ですが、担保を必要としない分、住宅ローンよりも金利が高め、返済期間が短めになります。「ローンで払うから、少しくらい予算オーバーしても大丈夫」と、安易にローンを組んでしまわないようにしましょう。
リノベーションでローンを活用する際は、金利と返済期間を確認して、余裕を持って組むことで失敗を回避することにつながります。
1-4 費用を抑える工夫を心得ておく
リノベーションは間取りに加えて、室内の構成や仕様、設備なども新しくすることができます。そのため、せっかくだからと詰め込んでしまい、予算オーバーになってしまうことも考えられます。
予算オーバーを回避するコツとしては、例えばリノベーション業者に全体の見積もりをとってもらい、その内容を予算に寄せていくという方法があります。希望のリノベーション内容を見積もりに反映してもらい、そこから予算に合わせて優先順位の低いものから削っていくことで予算内に収めていくのです。
その他、具体的には、下記のような方法もあります。
- 今の間取りを生かす
- 使える設備は使う
- 収納スペースなど見えない部分は資材の質を落とす
- リノベーション業者の得意な施工方法を生かす、など
例えば、給排水管の位置を確認してから、水回りの位置を決めるといった方法でも、リノベーション費用を抑えられることもあります。見積もりと予算を見ながら検討していくことで、予算に合った納得のいくリノベーションを目指すことができるのです。
1-5 見積もり・業者選びのポイントを確認しておく
リノベーションを依頼する業者選びも大切なポイントです。例えば、設計事務所ではデザイン性に優れたリノベーションに期待が持て、不動産会社では物件選びからアフターサービスまでワンストップで依頼したい場合に適しています。
主なリノベーションの依頼先と特徴は下記です。
- 不動産会社:物件の購入からリノベーションまで、ワンストップで依頼できる
- リフォーム会社:設備交換やクロスの張り替えなどが中心。大規模なリノベーションにも対応しているケースがある
- リノベーション専門会社:中古マンションのフルリノベーションの他、定額制プランなどを用意しているケースも
- 設計事務所:請け負うのは設計のみで、施工は別会社に依頼するというケースが主流
リノベーション業者を選ぶ際には、下記のポイントを確認しましょう
価格体系
リノベーション費用はパッケージプランを用意しているとわかりやすいですが、その場合は費用と施工内容が納得できるか、しっかり確認することが大切です。また「面積×㎡単価」といった費用の算出方法を採用している場合もあるため、他社と比較する場合は同じ内容で見積もりを出してもらうことがポイントになります。
設計・施工体系
リノベーション業者を選ぶ際には、実績を確認することが欠かせません。他社や下請け業者などに依頼している場合は施工の質がわかりにくく、自社施工か他社に委託するのかも注意したいポイントです。また、建築士や施工管理技士、インテリアコーディネーターなどの有資格者が在籍しているかどうかも確認すると良いでしょう。
アフターサービス
リノベーションは大規模な工事になりますので、住み始めると不具合が発生してしまうこともあります。そのためアフターサービスが充実しているかどうかも、業者を選ぶ際のポイントになります。保証制度を用意しているほか、アフターサービス専門の部署を設置している、専用の問い合わせ窓口を設けている、定期的に点検してくれる、などアフターサービスの内容も業者選びのポイントになります。
2 リノベーションに適した物件を選ぶ際のポイント
所有しているマンションではなく、新たに中古マンションを購入してリノベーションしたいというケースもあります。その場合は、リノベーションに適したマンションを選ぶことが大切です。具体的なポイントを解説していきます。
2-1 新耐震基準への適用の有無を確認する
リノベーションに適したマンションを選ぶには、前述したようにリノベーションしやすい構造をしていることが必要です。ただし二重床・二重天井は、2000年に「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」が施行されて以降に施工するマンションが増えており、それ以前の物件では多くありません。そのため、直床・直天井のケースを想定しておくこともポイントになります。
そのほかの確認ポイントは下記になります。
- 共用部の管理状況
- 大規模修繕計画の状況
- セキュリティ対策
- 新耐震基準への適用の有無
- 築年数
- 居室内の付帯設備、など
耐震基準とは、地震に対して倒壊や崩壊しないように耐えられる性能のことで、1981年6月1日から新耐震基準が適用されています。それ以前のマンションは旧耐震基準に則って建てられているため、新耐震基準を満たしていないケースが考えられます。
リノベーション後に長く住むことを考えると、新耐震基準を満たしているマンションを購入したいものです。そのため築年数と耐震基準への適用を確認しておきましょう。
新耐震基準に適用していない場合、マンションの管理組合などに今後の方針を聞くことも検討しましょう。新耐震基準を満たすような修繕工事が予定されているかもしれません。また、リノベーションの際に、居室内の耐震性能を向上させるといったことも考えられます。
付帯設備を確認することは、費用の抑制にもつながります。中古マンションの場合、どの設備が付帯しているのか個々の物件で異なります。そのため付帯設備の有無や状況を確認することで、継続して使用できそうな設備があるか判断しやすくなるのです。例えば、エアコンが比較的新しいのであれば、継続して使用することでリノベーション費用を抑えることができます。
2-2 生活利便性を確認する
マンションの管理状況など暮らしやすさを確認しないと、「リノベーション自体はうまくいったけど、暮らしにくい」といったことになる可能性もあります。マンション選びの際は、下記の点も確認しておくと良いでしょう。
- 管理費と管理体制
- 交通アクセスなどの利便性
- 公園や商業施設、コンビニなどの周辺の生活利便施設
- マンション住人間のトラブルの有無
- ゴミ置き場の状況
- 周辺地域の治安、など
まとめ
マンションをリノベーションすることで、自分の暮らしに合わせた住まいにすることができます。ただし、希望通りのリノベーションが、すべてのマンションでできるわけではありません。そのため、所有している、あるいはこれから所有しようとしているマンションがどのような構造になっていて、どの程度のリノベーションができるのか、事前に確認することが重要です。
またリノベーション業者によっても得意・不得意が異なります。予算だけで選ぶことなく、自分の理想通りのリノベーションができるのか実績を確認し、比較検討しながら適切に判断していきましょう。
倉岡 明広
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