不動産投資、借地権付きの物件のメリット・デメリットは?注意点も

不動産投資市場では、借地権付きの物件が売りに出されていることがしばしばあります。比較的利回りが高いことも多く、魅力的に感じる物件もあると思います。しかし、借地権付き物件には、注意したいデメリットもあります。

本記事では、借地権付き物件で不動産投資をおこなうメリットとデメリット、注意点について解説します。

目次

  1. 借地権の種類
    1-1.旧法借地権
    1-2.普通借地権
    1-3.定期借地権
  2. 借地権付き物件で不動産投資をするメリット
    2-1.初期費用を抑えることができる
    2-2.運用利回りを上げることができる
    2-3.土地の不動産取得税・固定資産税がかからない
    2-4.長期間土地を利用し続けることができる
  3. 借地権付き物件のデメリット
    3-1.不動産投資ローンの融資を受けにくい
    3-2.流動性が低く、出口戦略が難しい
    3-3.売却や増改築の際、地主の承諾が必要となる
    3-4.地主に地代を支払う必要がある
  4. 借地権付き物件を検討するときの注意点
    4-1.流動性リスクを考慮した収支シミュレーションをおこなう
    4-2.土地を利用し続ける費用を考慮した収支シミュレーションをおこなう
    4-3.借地権の種類、借地契約の内容に注意する
  5. まとめ

1.借地権の種類

借地権とは、建物を建てるなどするために、地代を支払って地主から土地を借りる権利です。借地権の種類は、主に、平成4年7月以前の旧借地法による借地権、平成4年8月に制定された借地借家法に定める借地権、定期借地権の3つに区分されます。

1-1.旧法借地権

平成4年7月以前の旧借地法による借地権であり、借主の権利が強いのが特徴です。借地契約の存続期間が満了しても建物がある場合、正当な事由がない限り、地主は契約の更新を拒むことができません。

また、正当な事由がないのにもかかわらず、地主が契約の更新に応じない場合、自動的に更新されることになります。存続期間は、堅固建物では30年以上、非堅固建物では20年以上となります。

契約期間の定めがない場合、堅固建物は60年、非堅固建物は30年とされ、存続期間の定めのない場合、建物が老朽化し朽廃すれば借地権は消滅するとされます。ただし、存続期間の定めがあり、その途中で建物が滅失した場合は、借地権は存続します。

1-2.普通借地権

平成4年8月に制定された借地借家法に定める借地権であり、契約更新を前提としています。旧法借地権と同様に、地主は正当事由がない限り、契約を更新しなければなりません。存続期間は、建物の構造に関わらず30年以上となります。

存続期間の定めのない場合は30年とされ、更新後1回目は20年、それ以降は10年になります。

借地権の存続期間中は、建物が滅失しても借地権は消滅しないものとされ、滅失後に残存期間を超えて存続する建物を再建することも可能です。しかし、契約期間更新後に、地主の承諾なく再建をおこなった場合、地主の請求によって借地権が消滅する可能性があります。

1-3.定期借地権

契約更新がなく、期間満了とともに土地を地主に返還しなければならない借地権です。一般定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付借地権、の3つがあります。

一般定期借地権は、存続期間は50年以上ですが、借主は、原則として期間満了時に建物を取り壊して地主に返還する必要があります。

建物譲渡特約付借地権は、存続期間を30年以上とし、地主が建物を買い取ることによって借地権を消滅させる特約の付いた借地権です。地主が特約を行使しない場合、借主は期間満了時に更地で返還することになります。

事業用定期借地権は、事業用建物の所有を目的に、存続期間を10年以上50年未満とします。借主は、原則として期間満了時に建物を取り壊して地主に返還する必要があります。

2.借地権付き物件で不動産投資をするメリット

借地権付き物件で不動産投資をおこなうメリットには、次のような点が挙げられます。

  • 初期費用を抑えることができる
  • 運用利回りを上げることができる
  • 税金がかからない
  • 長期間土地を利用し続けることができる

以下で詳述していきます。

2-1.初期費用を抑えることができる

借地権付き物件は、所有権の物件よりも市場価格が安いことが多いといえます。国税庁公表の2020年分借地権割合によると、東京都の住宅地はおおむね60%~70%に設定されており、通常の所有権の物件よりも安く購入できる可能性があります。

また、借地権付き建物の売買では、建物に所有権移転登記をおこなえば、借地権を主張できるため、土地に関する権利の登記はおこなわないことが多いといえます。その分、登記費用も抑えられることになります。

※参照:国税庁「路線価図・評価倍率表

2-2.運用利回りを上げることができる

借地権付き物件であっても、入居者から得られる家賃収入は、立地や築年数などの要因に基づく相場から決定され、所有権の物件と変わりはありません。一方、物件取得の初期費用は、借地権付き物件では所有権の物件より抑えることが可能です。

そのため、立地や築年数が同一の条件下で不動産投資をおこなうとすると、所有権の物件よりも借地権付き物件の方が運用利回りを上げることができるといえます。

2-3.土地の不動産取得税・固定資産税がかからない

借地権付き物件では土地を所有しないため、土地への税金がかかりません。土地を取得した時に課税される不動産取得税、および、不動産の所有者に毎年課される固定資産税・都市計画税が家屋についてのみ適用され、土地については課税されなくなります。

不動産取得税は、固定資産税評価額の4%(令和3年3月31日まで3%に軽減措置)、固定資産税は、課税標準額に対して1.4%、都市計画税は0.3%課されることになり、評価額の高い不動産では、キャッシュフローに大きな影響が生じます。

立地の良いエリアでは土地の固定資産税評価額が高い傾向にあります。土地についてこれらの税金がかからないことは大きなメリットとなります。

2-4.長期間土地を利用し続けることができる

借地権付き物件では、旧法借地権、普通借地権、いずれの場合であっても、建物が利用できる状態であれば借主は借地契約を更新し、土地を利用し続けることができます。

建物が老朽化して朽廃した場合や滅失した場合は契約更新できないケースもありますが、地主の承諾があれば利用し続けられる可能性は高いと言えます。

このように、借地契約の存続期間が長期であったり、長期でなくても更新できる場合には、実際上、所有権と同じくらい長期にわたって土地を利用し続けることができるとも考えられ、メリットがあるといえるでしょう。

3.借地権付き物件のデメリット

借地権付き物件で不動産投資をおこなうデメリットとして、次のような点が挙げられます。

  • 不動産投資ローンの融資を受けにくい
  • 流動性が低く、出口戦略が難しい
  • 売却や増改築の際、地主の承諾が必要となる
  • 地主に地代を支払う必要がある

以下で、それぞれについて詳述していきます。

3-1.不動産投資ローンの融資を受けにくい

金融機関が不動産の担保評価をする際、借地権は所有権に比べて評価が低くなる傾向があり、融資そのものが受けられない場合もあります。

借地権を譲渡する際、地主の承諾が必要であり、処分が難しい場合があることや、契約期間を更新できない場合があることが、担保価値を引き下げているといえるでしょう。

ただし、借地権付き物件も対象とする住宅ローンや不動産投資ローンを取り扱っている金融機関もあり、融資姿勢は金融機関によって様々です。融資額が伸びなかったり、融資を受けられなかったりすると、投資効率が低くなってしまうことになり、デメリットであるといえます。

3-2.流動性が低く、出口戦略が難しい

借地権は融資を受けにくいため、購入資金を調達できる第三者の買主が限定され、流動性が低くなる傾向があります。また、売却の際に地主の承諾が必要な場合があり、そのことも流動性を低くしているといえるでしょう。

出口戦略として、借地権を地主に買い取ってもらうという方法もありますが、借主が地主に対して買取を請求する権利があるというものでもなく、買取に応じてもらえるかどうか、また、いくらで買い取ってもらえるかは、交渉次第であり不確実であるといえます。

このように、土地の所有権を取得する不動産投資と異なり、借地権付き物件の出口戦略は難しい点はデメリットとなります。

3-3.売却や増改築の際、地主の承諾が必要となる

借地権付き物件では、第三者に売却する際に、地主の承諾が必要となります。

譲渡が地主に不利となるおそれがないときは、借地借家法によって裁判所が承諾許可を与えることができると定められていますが、地主との交渉や裁判手続きなどに時間や手間がかかることになります。

さらに、借地権の売却の際には、借主から地主に対して借地権価格の10%程度の譲渡承諾料が支払われる慣行があります。

その他、借地契約によっては、借地権の転貸や建物の増改築にあたって、地主の承諾などの条件を定めていることが多いといえます。そして、地主の承諾を得る際には、承諾料が支払われる傾向があります。

このように、売却や増改築の際、地主の承諾が必要となり、承諾料の支払いが発生する可能性があることがデメリットといえます。

3-4.地主に地代を支払う必要がある

借地権付き物件では、地主に対する地代の支払いが固定費として発生します。地代の金額は、借地契約において定められますが、土地の更地価格の年6%程度の金額が相場の目安です。

また、借地契約を更新する際には、地主に対して更新料の支払いが発生する場合があります。更新料の金額は、土地の更地価格の5~10%程度が目安となります。

4.借地権付き物件を検討するときの注意点

借地権付き物件の購入を検討するときは、収益性を慎重に検討することが重要です。出口戦略を重視するのか、あるいは、土地を長期間利用するのかで、収支シミュレーションの方法は異なります。

また、借地権の種類や借地契約の内容によって、投資条件が変わるため、注意しましょう。

4-1.流動性リスクを考慮した収支シミュレーションをおこなう

借地権付き物件は、流動性が低く、売却の際は地主に譲渡承諾料の支払いが発生することが多いといえます。購入を検討する際は、借地契約の存続期間を念頭におき、売却のタイミングと方法を考慮した収支シミュレーションをおこなうようにしましょう。

売却の方法については、借地権を第三者に売却できない場合に、地主に買い取り交渉することも検討しておくと良いでしょう。

4-2.土地を利用し続ける費用を考慮した収支シミュレーションをおこなう

土地を利用し続けることを前提とすると、借地契約の更新を視野に入れる必要があります。毎年の地代の支払いに加えて、契約更新と建物の増改築や建て替えのタイミング、地主への更新料や承諾料の支払いなどを考慮し、充分に収益が出ることを検証するようにしましょう。

特に、融資を受けられないか、あるいは融資額が伸びない物件の場合、投資効率も下がるため慎重に検討する必要があります。

4-3.借地権の種類、借地契約の内容に注意する

借地権付き物件を購入する際は、借地権の種類、借地契約の内容を充分に確認してから購入するようにしましょう。

更新を前提とする旧法借地権や普通借地権であるかどうか、借地契約の残存期間がどれくらいかを確認し、今後どれぐらいの期間土地を利用し続けることができるかという観点から借地権を評価するようにしましょう。

また、増改築や建て替えについての条件や地主の承諾の要否についても、確認するようにしましょう。

まとめ

借地権付き物件で不動産投資をおこなうことは、初期費用を抑え、運用利回りを上げることができます。しかし、流動性が低く、地主との間で交渉や支払いが発生することがデメリットとなります。

購入を検討する際は、出口や長期間の運用を念頭に置いて、収益性を慎重に検証するようにしましょう。

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佐藤 永一郎

佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。