親族間や再建築不可物件といった訳あり物件の売買では、金融機関の融資を受けられない可能性が高く、買主の費用負担が大きくなります。しかし、分割払い(割賦契約)であれば買主の費用負担を少しは抑えることが可能です。
そのため、不動産の売却を検討している人の中には、一括ではなく分割払い(割賦契約)を選択できるのか気になっている人も多いのではないでしょうか?
この記事では、不動産を分割払い(割賦契約)で売却する方法、注意点などを解説します。
目次
- 不動産売買の割賦契約とは
1-1.融資を利用できないケースで有効 - 割賦契約で不動産を売却する方法
2-1.買主・売主の双方の合意が必要
2-2.金融機関の抵当権を抹消する - 割賦契約で不動産売却を行う際の注意点
3-1.無利息の場合は贈与税が課される可能性がある
3-2.支払いの遅延に備え、担保の提供を求める
3-3.不動産会社へ仲介を依頼することも検討する - まとめ
1.不動産売買の割賦契約とは
不動産を売却する際は、売買契約の締結時に買主から手付金を受け取り、不動産の引渡時に残代金を受け取る流れとなります。売主に住宅ローンの残債がある場合は、引渡時に受け取った代金で残債を完済し、抵当権を抹消した後に所有権移転登記を行います。
一方、割賦契約とは、上記のように引渡時に残代金を一括で支払うのではなく、分割払いによって売買代金を支払う契約方法です。
1-1.融資を利用できないケースで有効
不動産を購入する際には住宅ローンを契約し、引渡時に一括で売買代金を支払うケースが多いため、割賦契約を締結することは基本的にありません。
しかし、親族間での売買や資産価値の低い再建築不可物件といった訳あり物件の売買では、金融機関のローン審査に通らず、購入手段が自己資金のみに限られることもあります。
なお、親族間で不動産を譲渡する場合、一定の条件を満たしていれば控除を受けられるものの、基本的に受け取った側が税率の高い贈与税(みなし贈与)を負担することになるケースがあります。
【関連記事】親族間で不動産売買をするメリット・デメリットは?みなし贈与の注意点も
割賦契約であれば、買主の費用負担を軽減できるので売買契約を進めやすく、正式な売買契約なので買い手に贈与税が発生しないというメリットがあります。
このような事情から、融資を受けにくい親族間での不動産売買、訳あり物件の売買を予定している人は、割賦契約を検討するのも選択肢の1つと言えるでしょう。
2.割賦契約で不動産を売却する方法
不動産を割賦契約で売却する際の方法について詳しく解説していきます。
2-1.買主・売主の双方の合意が必要
不動産の売買契約を締結するにあたり、代金の支払い方法を一括払いではなく分割払いに変更することを禁止する法律はありません。
契約自由の原則に基づいて当事者間で自由に契約条件を決めることができるため、代金の支払い方法を分割払いにすることも可能です。
ただし、当事者間での合意が必須となります。売主のみまたは買主のみが割賦契約を了承しており、どちらか一方が了承していないケースでは、分割払いによる売買契約を締結できないので注意してください。
2-2.金融機関の抵当権を抹消する
買主と売主の双方が割賦契約を了承していても、住宅ローンを完済していないケースでは割賦契約を選択できない可能性があります。
住宅ローンを契約する際は金銭消費貸借契約を締結しますが、契約条項に「承諾なく勝手に不動産の名義変更することを禁止する」という内容が盛り込まれていることがあります。
売主側で残債を一括返済できるのであれば、抵当権を抹消することができます。しかし、返済に充てるためのまとまった資金がない場合、不動産売却の代金による一括返済ができないために抵当権の抹消もできないということになります。
このような事情から、割賦契約を行うには、残債を一括返済できるほどの自己資金がある場合、もしくはローンを完済している場合にのみ検討できる方法となります。
3.割賦契約で不動産売却を行う際の注意点
割賦契約は不動産売買では特別な契約形態なので、契約後のトラブルを回避するためにも割賦契約の注意点を事前に押さえておくことが大切です。それぞれの注意点を詳しく説明していきます。
3-1.無利息の場合は贈与税が課される可能性がある
割賦契約を締結する際に、「最終的に売却代金を受け取ることができれば問題ない」という理由から、無利息の割賦契約を締結しようとする人もいると思います。
しかし、割賦契約は長期に渡る高額な借り入れであると考えられることから、通常は利息を返済額に上乗せして支払います。
無利息にすることは問題ありませんが、買主に有利な契約条件となるため、利息分について贈与税が課される可能性があります。
契約期間、金額がどのくらいであれば贈与税の課税対象になるという基準はありません。ただし、無利息で契約した場合には、買主の負担が大きくなる可能性があるため、割賦契約を締結する際は税理士への相談も検討しておきましょう。
3-2.支払いの遅延に備え、担保の提供を求める
分割払いによる売買契約を締結し、不動産の名義変更手続きを済ませた場合、買主の返済が滞れば売主は残債を回収できないリスクを伴います。
そのため、割賦契約を締結する際は、以下の2つを押さえておくことが大切です。
- 強制執行認諾文言付きの契約書を作成する
- 対象不動産に抵当権を設定する
強制執行認諾文言付きの契約書とは、買主の返済が滞った際に一括返済による強制施行を認めるものです。公正証書で契約書を作成しておくことも検討してみましょう。
また、一括返済による強制執行を認めてもらっても、買主に返済能力がないケースもあります。このような場合に備え、対象不動産に抵当権を設定していれば、滞納時には不動産を売却し、現金化することで残債を回収できます。
3-3.不動産会社へ仲介を依頼することも検討する
個人間での不動産売買では、自身で売買契約書を作成し、取引を行うことも可能です。しかし、専門的な知識や後の法的トラブルに備えた契約書の作成が必要となり、これまで個人間売買の契約書作成のノウハウがない方にとっては非常にハードルが高いと言えるでしょう。
不動産会社へ仲介を依頼すると、仲介手数料の費用発生がある点はデメリットですが、不動産会社の専門的な知識を持って売買契約書の作成も行ってもらえます。買主がすでに決まっている契約であれば、仲介手数料の交渉を行ってみるのも良いでしょう。
不動産仲介を依頼する際は、複数の不動産会社へ問い合わせを行い、それぞれの条件を比較することが大切です。例えば、不動産一括査定サイトの「すまいValue」では大手不動産会社6社へ同時に査定依頼をすることができます。
不動産一括査定サイトは複数社の不動産の価格査定を行うサービスですが、備考欄に「知人との割賦契約を検討している」旨を記載しておくことで、事情を踏まえた回答を得ることもできます。このような使い方も検討してみると良いでしょう。なお、下記は主な不動産一括査定サイト5社の比較表です。
主な不動産一括査定サイト
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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧
4.まとめ
不動産売買契約の内容は当事者間で設定できるため、代金を一括払いではなく分割払いに変更することも可能です。
割賦契約を選択すれば、親族間や訳あり物件などの住宅ローン審査に通りにくい物件でも成約の可能性が高まります。しかし、ローンの残債がある場合には、抵当権をどのような方法で抹消するのかがポイントとなってきます。
また、買主の分割支払いが滞ってしまった時、どのように資金を回収するのかまで、契約時点で想定しておくことも大切なポイントです。後でトラブルに発展する可能性も考慮し、注意点をよく確認してから売買契約を締結しましょう。
矢野翔一
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